第101回(H30) 助産師国家試験 解説【午後1~5】

 

1 国際連合<UN>で採択された持続可能な開発目標<Sustainable DevelopmentGoals:SDGs>で正しいのはどれか。

1.2000年に採択された。
2.主要な8つの目標が設定されている。
3.ジェンダーの平等の達成は目標の1つである。
4.安全な母性イニシアティブ<Safe Motherhood Initiative>の評価を基盤に策定された。

解答

解説

持続可能な開発目標SDGsとは?

持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)とは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標である。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいる。

(参考:「SDGsとは?」外務省HPより)

1.× 「2000年」ではなく2015年に採択された。ちなみに、2000年はミレニアム開発目標(MDGs)が採択された年である。
2.× 主要な「8つ」ではなく17つの目標が設定されている。17のゴール・169のターゲットから構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓っている。SDGsは発展途上国のみならず、先進国自身が取り組むユニバーサル(普遍的)なものであり、日本としても積極的に取り組んでいる。
3.〇 正しい。ジェンダーの平等の達成は目標の1つである。目標5に「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワメントをはかる」とされている。
4.× 安全な母性イニシアティブ<Safe Motherhood Initiative>の評価を基盤に策定されたのは、持続可能な開発目標(SDGs)ではなく、ミレニアム開発目標(MDGs)である。安全な母性イニシアティブ<Safe Motherhood Initiative>は、1987年にケニアで開催された「家族計画を通じた女性と子供のよりよい健康に関する国際会議」において提唱された、女性の安全な妊娠、出産を目的としたものである。UNFPA,UNDP, UNICEF, WHO, World Bank, NGOなど10機関が共同で実施し、家族計画、妊婦健診、清潔で安全な分娩介助、必須産科ケアなどを主要な活動として取り組んできた。その後、2000年にミレニアム開発目標(MDGs)の1つに妊産婦の健康改善が盛り込まれるようになった。2000年までに妊産婦死亡率を半分にすることを目標に掲げ活動した。

 

 

 

 

 

2 染色体が正常でありNT<nuchal translucency>異常値が観察された胎児が最も有しやすい異常はどれか。

1.横隔膜ヘルニア
2.腎低形成
3.心奇形
4.水頭症

解答

解説

後頸部透亮像とは?

後頸部透亮像(NT:nuchal translucency)とは、妊娠の11週から14週頃(日本産科婦人科学会が発行した「産婦人科診療ガイドライン」では、妊娠10〜14週での測定を勧められている)に、胎児を正中矢状断(身体の真ん中の縦向きの断面を胎児の側面から観察する方法)で、超音波で観察した時に、頚部(うなじのあたり)付近の皮膚が浮き上がってふくらんだ形に見えるものである。妊娠11〜13週で測定し、3.5mm以上が異常とされ、厚さに比例して胎児の染色体異常心奇形その他の先天奇形が出現する頻度が高くなる。後頸部透亮像(NT:nuchal translucency)値が大きく、かつ染色体正常であった児の予後の調査では、先天性心疾患が最も多かった。

詳細な検討によれば、皮膚表面がとくにふくらんでいない正常の皮下組織でも超音波で黒っぽく抜けて見える像になることがわかっている。つまり、後頸部透亮像(NT:nuchal translucency)は基本的には頚部皮膚の厚みが描出されただけのもので、ふくらんで見える場合は皮膚が局所的に浮腫(むくみ)状になったものと考えられている。後頸部透亮像(NT:nuchal translucency)は正常な胎児にも認められ、後頸部透亮像(NT:nuchal translucency)がない赤ちゃんが必ずしも健常な訳ではない。しかし、後頸部透亮像(NT:nuchal translucency)が厚くなると、その胎児には、染色体の異常とくに21トリソミーの危険性が高くなるという研究報告がある。21トリソミーを持つ赤ちゃんは、出生後にダウン症候群という病気を呈することが知られている。

1.× 横隔膜ヘルニアとは、生まれつき横隔膜に欠損孔があって、本来お腹の中にあるべき腹部臓器の一部が胸の中に脱出してしまう病気である。多くの場合、横隔膜の後外側を中心に生じるボホダレク孔が欠損孔であるため、別名ボホダレク孔ヘルニアとも呼ばれる。
2.× 腎低形成とは、腎の発生過程で,何らかの原因により生じる先天的な尿管芽の分岐異常により、組織学的には正常なネフロンを有するがネフロンの数が少ない病態をいう。症状は、血圧の上昇や息切れ、食欲不振、疲労感などの体の変化を感じるようになる。また、足にはむくみなどの病変を発現する。さらに、腎臓の機能低下の影響により、尿の量が増えるといった体の病状も表れる。
3.〇 正しい。心奇形は、染色体が正常でありNT異常値が観察された胎児が最も有しやすい異常である。後頸部透亮像(NT:nuchal translucency)を指摘された児に染色体異常は認めず、胎児の感染症や心臓の疾患が見つかって、出生後の早期治療に役立つ場合があることも報告されている。
4.× 水頭症(先天性水痘症候群)とは、妊娠初期(特に妊娠13~20週)において、水痘になってしまった場合、ウイルスが胎盤を経て胎児に感染することである。頻度は、1~2%以下で、症状は四肢皮膚瘢痕、四肢低形成、眼症状(小眼球症など)、神経症状(小頭症、水頭症など)などである。

 

(※図引用「産婦人科ガイドライン」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

 

 

 

3 遺伝性疾患を有する児が出生した。両親の検査によって、母親のみが原因の遺伝子をもっていることが確認された。今後この母親が出産する子どもには、性別によらず半分の確率で同じ疾患が生じる可能性がある。
 この疾患の遺伝形式はどれか。

1.細胞質遺伝
2.X連鎖劣性遺伝
3.常染色体優性遺伝
4.常染色体劣性遺伝

解答

解説

本症例のポイント

・遺伝性疾患を有する児が出生。
・原因の遺伝子:母親のみ
・母親が出産する子ども:性別によらず半分の確率で同じ疾患が生じる。

1.× 細胞質遺伝とは、細胞質に存在する遺伝因子によっておこる遺伝のことである。遺伝の多くは細胞核に存在する染色体に依存するが、ミトコンドリアや葉緑体などの細胞小器官に由来する遺伝もあり、これらを細胞質遺伝という。これは細胞小器官が独自にゲノムをもっているためである。例としては、①植物の斑入りの遺伝、②アザミ属の雌雄性、③トウモロコシの不稔性、④キイロショウジョウバエの炭酸ガス感受性などがある。 
2.× X連鎖劣性遺伝とは、変異遺伝子が劣性遺伝子のX染色体にあるものである。女性はXを2本持っており、一方、男性はXとYを持っている。変異遺伝子を母親からもらった男性は、半分が症状をもつ可能性がある。父親から息子に遺伝することはない。主な病気として、Duchenne型筋ジストロフィーがあげられる。
3.〇 正しい。常染色体優性遺伝である。常染色体優性遺伝とは、特徴が出やすい優性遺伝子に遺伝子変異があるために男女差なく1/2の確率で病気に関係する遺伝子症状が出る遺伝である。遺伝によって子孫に伝えられる性質(形質)が常染色体上の遺伝子で決定され、その形質が現れる場合のことを指す。
4.× 常染色体劣性遺伝とは、同じ部分に変異がある劣性遺伝子を持つ両親の間に変異が2つ揃った子どもが生まれる場合に起こる遺伝である。男女差はなく、両親のどちらもその病気の保因者であると考えられる。両親と他の親族に同じ症状を持つ人がいなくても、生まれてくる子どもだけが遺伝性疾患による症状を持つこともある。

 

 

 

 

 

4 新生児について正しいのはどれか。

1.飢餓に耐える能力が高い。
2.生理的な反芻(はんすう)を起こしやすい。
3.中鎖脂肪の吸収にはミセル形成が必要である。
4.母乳の凝乳塊(ミルクカード)は消化吸収されにくい。

解答

解説

1.× 新生児の飢餓に耐える能力は「高い」のではなく低い。新生児に起きる病態の一つに飢餓熱がある。飢餓熱とは、一般に新生児期(特に生後2~3日目)の乳児の発熱をいう。 生後まもなくは、母乳の分泌も不十分なことが多く、乳児の哺乳力も未熟なことが多い。その結果、新生児に必要な哺乳量、水分量が不足がちとなり、軽度の脱水状態になる。
2.〇 正しい。生理的な反芻(はんすう)を起こしやすい。なぜなら、新生児の胃は成人に比べて縦型であり、噴門部の括約筋が弱いため。反芻とは、一度飲み下した食物を口の中に戻し、かみなおして再び飲み込むことである。他にも溢乳を起こしやすい。溢乳とは、授乳後に口から少量の乳がだらだらと吐き出される生理的現象である。
3.× 中鎖脂肪の吸収には、ミセル形成が「必要」ではなく不要である。中鎖脂肪は母乳に多く含まれる。セル形成なしに直接小腸粘膜から吸収できる。理由としては、胆汁酸刺激リパーゼの恩恵を受けられたり、乳糖分解酵素の活性が早いことがあげられる。ちなみに、ミセル形成とは、脂質を水に溶けやすくする作用をするものである。
4.× 母乳の凝乳塊(ミルクカード)は、消化吸収「されにくい」のではなくされやすい。母乳は、胃酸の作用を受けてつくられソフトカードで吸収性がよい。一方、牛乳はカゼイン蛋白質が多く、凝乳(硬いカード)を形成し、消化しにくい特徴を持つ。ちなみに、凝乳(読み:ぎょうにゅう):カードとは、乳に酸や酵素を加えて、豆腐のような固形物になったものである。カードは、チーズの原料となるもので加熱したりくだいたりして、フレッシュチーズや、カッテージチーズなどを作る。

成人の胆汁について

肝臓で合成されるアルカリ性の物質で、胆嚢で濃縮されたうえ、貯蔵される。胆汁中には消化酵素は存在しない。しかし、胆汁中に含まれる胆汁酸は乳化作用とミセル形成作用を有するため、脂肪の消化吸収に重要な役割を果たす。胆汁はビリルビン、胆汁酸、コレステロール、リン脂質からなり、消化酵素は含まれない。胆汁は消化酵素の働きを助ける作用がある。

 

 

 

 

5 Aさん(25歳、1回経産婦)。妊娠13週。妊娠初期の検査でサイトメガロウイルスIgG抗体が陰性であった。
 Aさんに対するサイトメガロウイルスの母子感染を予防するための指導で適切なのはどれか。

1.ワクチンの接種
2.ネコの飼育の禁止
3.ガーデニング後の手洗い
4.上の子のおむつ交換後の手洗い

解答

解説

サイトメガロウィルスによりサイトメガロウイルス感染症が生じる。子宮内での発育遅延、早産、小頭症、黄疸、肝臓や脾臓の腫れ、点状出血、脳内の脳室周囲の石灰化、網膜炎、肺炎等が起こりやすく、 このような異常が見られた児では、後に難聴・精神発達遅滞・視力障害といった何らかの神経学的障害が明らかになる場合が多い。予防は、特に小さい子どもがいる場合や乳幼児の尿や唾液などの感染源を扱う場合は、手洗いを勧める。

1.× ワクチンの接種は、まだ開発されていないため行うことができない。
2〜3.× ネコの飼育の禁止/ガーデニング後の手洗いは、「サイトメガロウイルス」ではなくトキソプラズマである。トキソプラズマとは、原虫の一種のトキソプラズマによる人獣共通感染症で、経胎盤感染で、児に水頭症や脳内石灰化、知的能力障害などを起こすことがある。加熱処理の不十分な肉に生存するシスト、土壌中やネコの糞中に存在するオーシストから水平感染する。予防として手洗いと手袋の着用を勧める。
4.〇 正しい。上の子のおむつ交換後の手洗いをAさんに対する母子感染を予防するため指導する。サイトメガロウイルスは母乳感染、尿や唾液による水平感染が主経路であり、産道感染、輸血による感染、性行為による感染なども認められている。 初感染を受けた乳幼児はほとんどが不顕性感染の形で、その後数年にわたって尿あるいは唾液中にウイルスを排泄する。

(※図引用:「サイトメガロウイルス母子感染に注意しましょう」国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)より)

 

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