第101回(H30) 助産師国家試験 解説【午前16~20】

 

16 助産師が行う業務とそれを規定する法律の組合せで正しいのはどれか。

1.産婦の内診:母子保健法
2.助産所の管理:医療法
3.妊娠継続の相談:母体保護法
4.乳児家庭全戸訪問:児童虐待の防止等に関する法律

解答

解説

1.× 産婦の内診は、「母子保健法」ではなく保健師助産師看護師法医療法である。医師法17条は、医療行為が医師の独占業務であることを定めている。助産行為も当然医療行為に該当するため、医師以外の者が行うことは本来許されないが、保健師助産師看護師法3条は、例外として、助産行為については助産師が行いうることを定めている。30条は、助産師でない者が助産行為を行うことを禁じていることから、医師以外では助産師だけが助産行為を許容されることになり、それ以外の者が助産行為を行うことは許されていない。そして、内診は、分娩進行の正常・異常の判断の目的で行われる母児の安全に関わる重要な行為であり、医療行為たる助産行為に該当する。従って、医師・助産師以外の者が内診を行うことは医師法17条及び法30条に反し違法である(※一部引用:「産科における看護師等の業務に関する意見書」医療事故情報センターHPより)。ちなみに、母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。
2.〇 正しい。助産所の管理は、医療法に規定されている。助産所の管理(医療法第11条、第12条、第15条第2項)には、「助産所の開設者は、助産師に、これを管理させなければならない。自ら管理者となることができるものである場合は、原則として、自ら管理しなければならない。助産所の管理者は、助産所に勤務する助産師その他の従業者を監督し、その業務遂行に遺憾のないよう必要な注意をしなければならない。」など記載されている。ちなみに、医療法とは、病院、診療所、助産院の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。①医療を受けるものの利益と保護、②良好かつ適切な医療を効率的に提供する体制確保を主目的としている。
3.× 妊娠継続の相談は、「母体保護法」ではなく母子保健法である。母子保健法とは、母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため、母子保健に関する原理を明らかにするとともに、母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導、健康診査、医療その他の措置を講じ、もって国民保健の向上に寄与することを目的として制定された法律である。「妊娠継続の相談」については、母子保健法(9条:知識の普及)に、「都道府県及び市町村は、母性又は乳児若しくは幼児の健康の保持及び増進のため、妊娠、出産又は育児に関し、相談に応じ、個別的又は集団的に、必要な指導及び助言を行い、並びに地域住民の活動を支援すること等により、母子保健に関する知識の普及に努めなければならない」と記載されている(※一部引用:「母子保健法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、母体保護法とは、不妊手術及び人工妊娠中絶に関する堕胎罪の例外事項を定めること等により、母親の生命健康を保護することを目的とした法律である。1948年7月13日に公布された。
4.× 乳児家庭全戸訪問は、「児童虐待の防止等に関する法律」ではなく児童福祉法である。児童福祉法とは、児童の福祉を担当する公的機関の組織や、各種施設及び事業に関する基本原則を定める日本の法律である。児童が良好な環境において生まれ、且つ、心身ともに健やかに育成されるよう、保育、母子保護、児童虐待防止対策を含むすべての児童の福祉を支援する法律である。「児童福祉法」については、児童福祉法(第六条の三)に、「この法律で、乳児家庭全戸訪問事業とは、一の市町村の区域内における原則として全ての乳児のいる家庭を訪問することにより、厚生労働省令で定めるところにより、子育てに関する情報の提供並びに乳児及びその保護者の心身の状況及び養育環境の把握を行うほか、養育についての相談に応じ、助言その他の援助を行う事業をいう」と記載されている(※一部引用:「児童福祉法」e-GOV法令検索様HPより)。ちなみに、児童虐待の防止等に関する法律(児童虐待防止法)とは、児童虐待防止に関する施策を促進し、児童の権利・利益を擁護することを目的としている。児童に対する虐待の禁止、虐待に関する地方自治体の責務、児童の保護措置などが規定されている。

 

 




 

 

17 A助産師は助産所を開業予定である。助産所の建物は地下1階、地上2階建てで、分娩を取り扱い、産褥入院も計画している。
 助産所の構造設備で正しいのはどれか。

1.母子の入所室は地下にした。
2.個室の床面積は4.3m2にした。
3.分娩室の床面積は12m2にした。
4.入所室の収容人数を10人とした。

解答

解説

医療法施行規則第17条

医療法施行規則とは、医療法に基づき、病院、診療所及び助産所の開設、病院、診療所及び助産所の管理、病院、診療所及び助産所の構造設備、診療用放射線の防護、医療計画、医療法人、雑則等について定めた規則である。また、地方公務員である保健師の記録は、その地方公共団体の管理施策に定められていることが多い。医療法施行規則第17条に助産所の構造設備の基準が記載されている。

第十七条 法第二十三条第一項の規定による助産所の構造設備の基準は、次のとおりとする。
一 入所室は、地階又は第三階以上の階には設けないこと。ただし、主要構造部を耐火構造とする場合は、第三階以上に設けることができる。
二 入所室の床面積は、内法によつて測定することとし、一母子を入所させるためのものにあつては六・三平方メートル以上、二母子以上を入所させるためのものにあつては一母子につき四・三平方メートル以上とすること。
三 第二階以上の階に入所室を有するものにあつては、入所する母子が使用する屋内の直通階段を設けること。
四 第三階以上の階に入所室を有するものにあつては、避難に支障がないように避難階段を二以上設けること。ただし、前号に規定する直通階段を建築基準法施行令第百二十三条第一項に規定する避難階段としての構造とする場合は、その直通階段の数を避難階段の数に算入することができる。
五 入所施設を有する助産所にあつては、床面積九平方メートル以上の分べん室を設けること。ただし、分べんを取り扱わないものについては、この限りでない
六 火気を使用する場所には、防火上必要な設備を設けること。
七 消火用の機械又は器具を備えること。
2 前項に定めるもののほか、助産所の構造設備の基準については、建築基準法の規定に基づく政令の定めるところによる。(※一部引用:「医療法施行規則第17条」e-GOV法令検索様HPより)

1.× 母子の入所室は地下にすることはできない。医療法施行規則第17条1項に「入所室は、地階又は第三階以上の階には設けないこと。ただし、主要構造部を耐火構造とする場合は、第三階以上に設けることができる」と記載されている。
2.× 個室の床面積は、「4.3m2」ではなく「6.3m2」以上必要である。医療法施行規則第17条2項に「入所室の床面積は、内法によつて測定することとし、一母子を入所させるためのものにあつては六・三平方メートル以上、二母子以上を入所させるためのものにあつては一母子につき四・三平方メートル以上とすること」と記載されている。
3.〇 正しい。分娩室の床面積は12m2にした。医療法施行規則第17条5項に「入所施設を有する助産所にあつては、床面積九平方メートル以上の分べん室を設けること。ただし、分べんを取り扱わないものについては、この限りでない」と記載されている。
4.× 入所室の収容人数を「10人」ではなく9人以下にしなくてはならない。医療法施行規則第16条に「法第二十三条第一項の規定による病院又は診療所の構造設備の基準は、次のとおりとする。ただし、第九号及び第十一号の規定は、患者を入院させるための施設を有しない診療所又は九人以下の患者を入院させるための施設を有する診療所(療養病床を有する診療所を除く。)には適用しない。」と記載されている。

 

 

 

 

 

 

18 産科医療補償制度について正しいのはどれか。

1.分娩機関ごとに制度加入の手続きを行う。
2.分娩に関連した母親の後遺症は補償対象になる。
3.在胎週数35週未満の早産児は補償対象にならない。
4.子どもが生後3か月で死亡した場合は補償対象になる。

解答

解説

産科医療補償制度とは?

産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した脳性麻痺の子と家族の経済的負担を速やかに補償し、原因分析を行い、再発防止のための情報提供などを行う制度である。病院、診療所や助産所といった分娩を取り扱う機関が加入する制度である。原因分析の結果は、保護者と分娩機関にフィードバックされ、事例情報を整理し再発防止策を策定し広く一般に公開、提言される。産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致し、以下の3つの基準をすべて満たし、運営組織が「補償対象」として認定した場合に、補償金が支払われる仕組みである。

1.〇 正しい。分娩機関ごとに制度加入の手続きを行う。加入には、各種書類(加入依頼書、口座振替依頼書へ必要事項を記入)を代表者印を押印の上、運営組織である公益財団法人日本医療機能評価機構まで送付する必要がある。
2.× 分娩に関連した母親の後遺症は、補償対象とならない。「補償対象」と認定されるには、3つの基準を設けている。①在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件を満たして出生したこと、②先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること、③身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であることがあげられる。いずれにしても、まずは産科医療補償制度の定める「脳性麻痺」の定義に合致する必要がある。脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。
3.× 在胎週数35週未満の早産児は、「補償対象にならない」とは断定できない。なぜなら、3つの基準のうち、①在胎週数32週以上かつ出生体重1,400g以上、または在胎週数28週以上で低酸素状況を示す所定の要件を満たして出生したこと、②先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること、③身体障害者手帳1・2級相当の脳性麻痺であることがあげられるため。早産児とは、在胎22週以降37週未満に出生した児のことをいう。
4.× 子どもが生後3か月で死亡した場合は、補償対象に「ならない」。なぜなら、3つの基準のうち、②「先天性や新生児期等の要因によらない脳性麻痺であること」の備考に「お子様が生後6か月未満で死亡した場合は補償対象とならない」ことが記載されているため。(※参考:「産科医療補償制度の補償申請について」参加医療保障制度HPより)

早産児の定義

過期産児とは:在胎42週以上に出生した児。
正期産児とは:在胎37週以降42週未満に出生した児。
早産児とは:在胎22週以降37週未満に出生した児。
超早産児とは:在胎28週未満に出生した児。

 

 

 

 

 

19 分泌期の子宮内膜の変化で正しいのはどれか。

1.Naboth<ナボット>囊胞の形成
2.グリコーゲンの増加
3.核分裂像の増加
4.扁平上皮化生
5.偽重層化

解答

解説

月経周期

・卵胞期:1回の月経周期が始まると脳の底の方にある下垂体というところから、卵を包んでいる卵胞を刺激する卵胞刺激ホルモン(FSH)が分泌されはじめ、卵胞は大きくなると同時に女性ホルモン(エストロゲン)を分泌する時期。
・増殖期:女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期。卵胞期と増殖期とはだいたい同じ時期。
・黄体期:排卵した後の卵胞(黄体)から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されるようになる時期。
分泌期:子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期。

(※画像引用:日本医師会様HPより)

1.× Naboth<ナボット>囊胞の形成は、特に経産婦はかなり頻度が高くありふれている。月経の周期によってできやすいといった報告はない。貯留嚢胞(ナボット嚢胞)とは、頸管腺の出口が閉塞することによって粘液が貯留した良性の病変である。子宮頸部に頸管腺の排泄口が閉鎖し様々な形の嚢胞(水分がたまった部分)がみられる。
2.〇 正しい。グリコーゲンの増加は、分泌期の子宮内膜の変化である。分泌期とは、子宮内膜が成長を止めて受精卵が着床できるよう準備をする時期である。プロゲステロン(黄体ホルモン)の作用により、血管拡張、間質細胞の肥大が起こり、グリコーゲンに富んだ分泌物が内膜腺から分泌され、着床に適した内膜の状態になる。グリコーゲン増加は受精卵に栄養あげるために、分泌期におきる。その後、着床が始まるころに子宮内膜が脱落膜様変化となる。脱落膜化とは、子宮内膜が受精卵を受け入れるための準備で子宮内膜が増殖・肥厚して受精卵の着床を許容する状態に変化することである。脱落膜化の不全は、不妊症・習慣性流産・子宮内膜症などに関与すると考えられている。子宮内膜症は、本来は子宮内にのみ存在する子宮内膜が、卵巣、腹膜などの子宮以外の場所で増殖・剥離を繰り返す疾患である。
3.× 核分裂像の増加は、増殖期である。増殖期とは、女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期である。
4.× 扁平上皮化生は、主に腟部びらんで形成される。子宮膣部びらんとは、女性ホルモン(エストロゲン)が活発に働くと、子宮膣部がふくらんで子宮頚管内側の円柱上皮の部分が外側に張り出してくることである。性成熟期の女性の8~9割にみられ病気ではない。ちなみに、扁平上皮化生とは、正常状態では線毛円柱上皮で覆われている気管支上皮が、扁平上皮で置き換えられる現象である。
5.× 偽重層化は、増殖期である。増殖期とは、女性ホルモン(エストロゲン)が新しい子宮内膜を成長させていく時期である。イメージとして、内膜をふかふかにするために偽重層化(細胞が重なり合う)が起こる。

 

 




 

 

20 Aさん(35歳、女性)。ダグラス窩に10cmの卵巣囊腫がある。妊娠を希望している。Aさんは疾患について「妊娠や出産に何か影響がありますか」と質問した。
 Aさんへの説明内容で適切なのはどれか。

1.治療より妊娠を優先した方がよい。
2.妊娠期には卵巣の腫瘍マーカーは低値を示す。
3.妊娠中は手術ができない。
4.助産所で出産できる。
5.経腟分娩で胎児の下降障害のリスクがある。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、女性)
・ダグラス窩:10cmの卵巣囊腫
・妊娠:希望。
・Aさん「妊娠や出産に何か影響がありますか?」と。
→本症例は、ダグラス窩に10cmの卵巣囊腫が認められる。囊胞が大きい場合(長径 6cm 以上)または囊胞による症状がある場合は、手術を勧める(※一部引用:「産婦人科診療ガイドライン―外来編 2020 P72」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)。

・ダグラス窩(直腸子宮窩)とは、直腸と子宮を上から覆っている腹膜が臓器の間のすき間に入りこんでできる深いくぼみのこと。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―外来編 2020 P72」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.× 逆である。「妊娠」より「治療」を優先した方がよい。なぜなら、本症例は、ダグラス窩に10cmの卵巣囊腫が認められるため。長径6cm以上の囊胞では、捻転のリスクが高く、手術を勧める。長径6cm未満では、捻転のリスクが低いため、経過観察を勧める報告が多い。
2.× 妊娠期には卵巣の腫瘍マーカーは、一概に「低値を示す」とは言い切れない。なぜなら、妊娠の影響を受けないマーカー(CA19-9、 CEAなど)が存在するため。また、妊娠期には卵巣の腫瘍マーカーが高値となるものもある(例:CA125、LDH、AFP、TPAなど)。
3.× 妊娠中でも手術ができる。手術時期は妊娠12週以降が望ましい。なぜなら、胎盤からのプロゲステロン分泌が確立されるため。それ以前の手術では、流産予防のためのプロゲステロン補充が必要な場合がある。(※参考:「CQ15 妊娠初期の卵巣嚢胞の取り扱いは?」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)
4.× 助産所では出産できない。助産師と産婦人科医師との協働管理をするのが望ましい対象者の要件として、①理学的所見のあるもの(身長150cm未満、非妊時BMI 18.5未満または25以上、年齢35歳以上)、②産科以外の既往または合併症、③産科的既往がある妊婦、妊娠中の発症を認めないもの(妊娠高血圧症候群の既往、常位胎盤早期剝離の既往、妊娠34~36週の早産の既往)があげられるため。※詳しくは下図参照
5.〇 正しい。経腟分娩で胎児の下降障害のリスクがある。卵巣腫瘍を合併した妊婦に起こりうる合併症として、卵巣腫瘍の茎捻転は10~20%の頻度で起こるとされ、妊娠初期に起こりやすく、産褥期にも急激な妊娠子宮の縮小により起こるとされる。卵巣囊腫の破裂は分娩時に多く3%程度に、また流・早産も合併症としてあげられ、妊娠前半期に集中し5~15%に合併するとされる。さらに、卵巣腫瘍の存在により胎位異常、分娩遷延の原因となることもある。ちなみに、遷延分娩とは、有効な陣痛があるが子宮頸管の開大や胎児の下降が異常に緩徐な場合をいう。診断は臨床的に行う。治療はオキシトシン、鉗子・吸引分娩、または帝王切開による。

(※図引用:「Ⅲ.妊婦管理適応リスト」助産業務ガイドライン 2019より)

 

(※図引用:「CQ15 妊娠初期の卵巣嚢胞の取り扱いは?」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

 

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