第102回(H31) 助産師国家試験 解説【午前26~30】

 

26 妊娠中から産褥期に、母体敗血症からトキシックショック症候群、全身性炎症反応症候群<SIRS>、播種性血管内凝固<DIC>などを起こし、周産期の母児の死亡原因となるのはどれか。

1.梅毒
2.淋菌感染症
3.性器ヘルペス感染症
4.性器クラミジア感染症
5.A群溶血性レンサ球菌感染症

解答

解説

敗血症とは?

敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

1.× 梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータの一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。
2.× 淋菌感染症とは、淋菌の感染による性感染症である。淋菌は弱い菌で、患者の粘膜から離れると数時間で感染性を失い、日光、乾燥や温度の変化、消毒剤で簡単に死滅する。したがって、性交や性交類似行為以外で感染することはまれである。女性では男性より症状が軽くて自覚されないまま経過することが多く、また、上行性に炎症が波及していくことがある。米国ではクラミジア感染症とともに、骨盤炎症性疾患、卵管不妊症、子宮外妊娠、慢性骨盤痛の主要な原因となっている。その他、咽頭や直腸の感染では症状が自覚されないことが多く、これらの部位も感染源となる。淋菌感染症は何度も再感染することがある。
3.× 性器ヘルペス感染症とは、5類感染症の定点把握対象疾患である。ヘルペスウィルスの感染により性器に水泡(水ぶくれ)、腫れ、痛み、かゆみなどの症状が起こる。初めての感染のときに症状が強く出て、全身倦怠感やリンパ節の腫れを起こす。発病後たいてい1~2週間で症状は治まる。
4.× 性器クラミジア感染症とは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって性器やその周辺に水疱や潰瘍等の病変が形成される疾患である。感染症法下では4類感染症定点把握疾患に分類されている。感染機会があってから2〜21 日後に外陰部の不快感、掻痒感等の前駆症状ののち、発熱、全身倦怠感、所属リンパ節の腫脹、強い疼痛等を伴って、多発性の浅い潰瘍や小水疱が急激に出現する。
5.〇 正しい。A群溶血性レンサ球菌感染症は、妊娠中から産褥期に、母体敗血症からトキシックショック症候群、全身性炎症反応症候群<SIRS>、播種性血管内凝固<DIC>などを起こし、周産期の母児の死亡原因となる。敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。A群溶血性レンサ球菌とは、上気道炎や化膿性皮膚感染症などの原因菌としてよくみられるグラム陽性菌で、菌の侵入部位や組織によって多彩な臨床症状 を引き起こす。日常よくみられる疾患として、急性咽頭炎の他、膿痂疹、蜂巣織炎、あるいは特殊な病型として猩紅熱がある。これら以外にも中耳炎、肺炎、化 膿性関節炎、骨髄炎、髄膜炎などを起こす。また、菌の直接の作用でなく、免疫学的機序を介して、リウマチ熱や急性糸球体腎炎を起こすことが知られている。 さらに、発症機序、病態生理は不明であるが、軟部組織壊死を伴い、敗血症性ショックを来たす劇症型溶血性レンサ球菌感染症(レンサ球菌性毒素性ショック症 候群)は重篤な病態として問題である。

 

 

 

 

 

27 人工栄養よりも母乳栄養の新生児に起こりやすいのはどれか。

1.便秘
2.遷延性黄疸
3.一過性多呼吸
4.帽状腱膜下血腫
5.甲状腺機能低下症

解答

解説

1.× 便秘の原因は、水分不足(おっぱい・ミルク不足)、離乳食の食物繊維不足のほか、踏ん張る力が弱くて出にくいことなどが考えられる。正常な新生児の排便は2~5回/日で個人差が大きい。母乳栄養の場合は基本的に軟便となる。
2.〇 正しい。遷延性黄疸は、人工栄養よりも母乳栄養の新生児に起こりやすい。遷延性黄疸とは、生まれて2週間以上経過した乳児が発症する黄疸のこという。非閉塞性黄疸の原因は、母乳性黄疸、溶血性疾患にともなう黄疸、体質性(遺伝性)黄疸などで、閉塞性黄疸の原因は、胆道系疾患、胎内感染、敗血症などである。日本人の母乳栄養中の児では、生後4週目の時点で 10~15%の兄に肉眼的に黄疸が見られる。
3.× 一過性多呼吸とは、出生後、肺の中に過剰な液体がある(肺水の排出・吸収の過程がうまくいかない)ために一時的な呼吸困難が起こって、しばしば血液中の酸素レベルが低くなる病気である。早産児と特定の危険因子がある満期産児で発生する可能性があり、頻呼吸、肋間および肋骨下の陥凹、呻吟、鼻翼呼吸などのほか、チアノーゼがみられる場合もある。
4.× 帽状腱膜下血腫とは、吸引分娩や鉗子分娩の際に大きな外力が頭皮にかかり、帽状腱膜(読み:ぼうじょうけんまく)と骨膜の間に出血がおこることである。出産直後は観察されないが、生後数時間から1日のうちに出血がすすみ、頭の皮下が腫れていく。血液がにじむため、皮膚の色は暗赤色にみえ、ときに大出血を起こし、貧血やショック状態になることがあるため注意する必要がある。
5.× (先天性)甲状腺機能低下症とは、生まれつき甲状腺のはたらきが弱く甲状腺ホルモンが不足する疾患で、発生頻度は3000~5000人に1人程度と推定されている。出生後の早期には、元気がない・哺乳不良・体重増加がよくない・黄疸の遷延・便秘・手足がつめたい・泣き声がかすれているなどの症状が現れる。長期的には身体の成長や知的な発達が遅れてしまう。原因は、①胎生期の発生の過程の問題で甲状腺がなかったり(無形成)、小さかったりするもの(低形成)、②甲状腺が首の前面(正所)になく舌のねもと(舌根部)などの別の場所に存在するもの(異所性甲状腺)、③甲状腺ホルモンの合成に問題のあるもの、④甲状腺に対して指令をだす脳の下垂体や視床下部に障害のあるもの(中枢性)など、多岐にわたる。

 

 

 

 

 

28 Aちゃん(日齢10、女児)。在胎31週5日、体重1,570gで出生し、NICUに入院し経鼻的CPAP療法を行っている。ベッドサイドの呼吸心拍監視モニターのアラームが鳴ったため確認したところ、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>65 %、心拍数70/分、呼吸運動は停止していて体動はなく、顔面にチアノーゼが認められた。
 初期対応で正しいのはどれか。

1.胸骨圧迫
2.酸素投与
3.足底刺激
4.気管内挿管
5.ブドウ糖液の静脈内注射

解答

解説

本症例のポイント

・Aちゃん(日齢10、女児)。
・出生:在胎31週5日、体重1,570g
・NICUに入院し経鼻的CPAP療法を行っている。
・ベッドサイドの呼吸心拍監視モニターのアラームが鳴ったため確認したところ、経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>65%、心拍数70/分、呼吸運動は停止していて体動はなく、顔面にチアノーゼが認められた。

→本症例は未熟児無呼吸発作が疑われる。本症例は早産児、低出生体重児(在胎31週5日、体重1570g)である。一般的に、胎齢 26~36週(呼吸器系は嚢胞期)は、肺サーファクタント産生分泌が促進される時期である。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。肺胞内の水分の表面張力を減少させることで、肺胞がつぶれてしまうのを防いでいる。持続性気道陽圧法(Continuous Positive Airway Pressur:CPAP:シーパップ)とは、気道内圧を呼吸相全般にわたって常に一定の陽圧に(大気圧よりも高く)保ち、換気は機械的な換気補助なしに患者の自発呼吸にまかせて行う換気様式のことである。機械で圧力をかけた空気を鼻から気道(空気の通り道)に送り込み、気道を広げて睡眠中の無呼吸を防止できる。本症例の場合、呼吸中枢そのものは未熟であり、無呼吸発作が生じやすい。経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>65%、呼吸運動が停止しているが、生後10日目であり、一度呼吸は確立していたことから選択していく。

1~2.4~5.× 胸骨圧迫/酸素投与/気管内挿管/ブドウ糖液の静脈内注射は優先度が低い。なぜなら、赤ちゃんが5~10秒くらい呼吸を止めることは病気ではないが、呼吸が20秒以上止まったり、徐脈(心拍が急に遅くなる)やチアノーゼ(皮膚や唇の色が紫色になる)を伴ったりする場合は、「無呼吸発作」と呼び、呼吸中枢が未発達な早産児に多く見られるため。
3.〇 正しい。足底刺激を初期対応とする。早産児は出生直後から以下のような呼吸の管理を行う。①足の裏を刺激(足底刺激)したり、うつぶせ姿勢に変えたりするなど体位の交換、②体温を保つために室温を調節する、③アミノフィリン(注射・内服薬)や鼻から圧を加えるネーザルシーパップを使用する。

 

 

 

 

 

29 地域母子保健活動を行う事業と機関の組合せで正しいのはどれか。

1.療養の援護:市町村保健センター
2.養育医療の給付:児童相談所
3.育成医療の給付:助産所
4.助産施設への入所措置:福祉事務所
5.母子家庭等就業自立支援:配偶者暴力相談支援センター

解答

解説

1.× 療養の援護は、「市町村保健センター」ではなく都道府県及び政令市が実施する。これは「妊娠高血圧症候群等にり患している妊産婦の療養援護費支給規則」に記載されている。ちなみに、保健センターとは、市町村が設置・運営している。地域住民に対して直接的な保健サービスを提供することを目的としている。保健センターは設置することが義務ではないため、市町村に保健センターがない場合もある。名称についても「保健福祉センター」、「健康センター」などと称する場合がある。
2.× 養育医療の給付は、「児童相談所」ではなく市区町村が実施する。これは「母子保健法」に記載されている。ちなみに、児童相談所とは、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。
3.× 育成医療の給付は、「助産所」ではなく市区町村が実施する。ちなみに、助産所とは、助産師が公衆又は特定多数人のためその業務(病院又は診療所において行うものを除く)を行う場所をいう。助産師が助産を行う場所、又は妊婦・褥婦もしくは新生児の保健指導などを行う場所として適法に設置された施設をいう。
4.〇 正しい。助産施設への入所措置は、福祉事務所が行う。これは「児童福祉法」に記載されている。福祉事務所とは、『社会福祉法』に定める「福祉に関する事務所」のことをいう。保健上必要があるにもかかわらず、経済的理由により入院助産を受けることができない妊産婦を入所させて助産を受けさせることを目的とする施設である。
5.× 母子家庭等就業自立支援は、「配偶者暴力相談支援センター」ではなく都道府県・指定都市・中核市が実施主体である。ちなみに、配偶者暴力相談支援センターとは、都道府県が設置する婦人相談所がその機能を果たすことが多い。配偶者暴力相談支援センターの設置の根拠法は『配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)』である。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①助言指導 
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

30 周産期医療体制において総合周産期母子医療センターに求められる施設条件はどれか。

1.一般産科病床と母体胎児集中治療室<MFICU>は同数の病床数を有する。
2.関係する診療科と連携して母児の異常に対応できる。
3.NICUとGCUは同数の病床数を有する。
4.無痛分娩に対応できる。
5.移植手術に対応できる。

解答

解説

周産期母子医療センターの整備とは?

周産期母子医療センターには、①総合周産期母子医療センターと②地域周産期母子医療センターがある。
①総合周産期母子医療センターとは、母体・胎児集中治療管理室(M-FICU)を含む産科病棟及び新生児集中治療管理室(NICU)を備えた医療機関である。常時、母体・新生児搬送受入体制を有し、母体の救命救急への対応、ハイリスク妊娠に対する医療、高度な新生児医療等を担っている。
②地域周産期母子医療センターとは、産科・小児科(新生児)を備え、周産期に係る比較的高度な医療行為を常時担う医療機関である。

1.× 一般産科病床と母体胎児集中治療室<MFICU>は、「同数」ではなく2倍の病床数を有するのことが望ましいと「総合周産期母子医療センターの指定基準 3病床数」に記載されている(※一部引用:「総合周産期母子医療センターの指定基準」東京都様HPより)。
2.〇 正しい。関係する診療科と連携して母児の異常に対応できるのは、周産期医療体制において総合周産期母子医療センターに求められる施設条件である。「総合周産期母子医療センターは、産科及び小児科(母体・胎児集中治療管理室及び新生児集中治療管理室を有する。)、麻酔科その他の関係診療科目を有するものとする。」と記され、また、「総合周産期センターは、原則として、救命救急センターを設置し、又は救命救急センターと同等の機能を有する(救急科、脳神経外科、心臓血管外科又は循環器内科、放射線科、内科、外科等を有することをいう。)ものとする。やむを得ず、救命救急センター又は同等の機能を有していない場合は、当該施設で対応できない母体及び新生児の疾患について連携して対応する協力医療施設を確保し、医療機能の向上を図ることが望ましい」と記載されている。(※一部引用:「総合周産期母子医療センターの指定基準」東京都様HPより)。
3.× NICUとGCUは「同数の病床数」ではなくGCUは、NICUの2倍以上の病床数を有することが望ましいと「総合周産期母子医療センターの指定基準 3病床数」に記載されている(※一部引用:「総合周産期母子医療センターの指定基準」東京都様HPより)。ちなみに、GCU(Growing Care Unit)とは、新生児回復室のことである。 新生児集中治療管理室より退出した児、及び点滴、酸素投与等の処置を必要とする児を収容する部屋のことである。NICUで治療を受け、状態が安定してきた赤ちゃんが、 引き続きケアを受けるお部屋である。
4~5.× 無痛分娩/移植手術に対応できることについては、施設条件にあげられていない。

 

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