第102回(H31) 助産師国家試験 解説【午前6~10】

 

6 子宮収縮薬を用いた分娩誘発で正しいのはどれか。

1.分娩監視装置は陣痛が発来したら装着する。
2.プロスタグランジンF2αの最大投与量は50μg/分である。
3.静脈内投与の輸液量の増量は前回増量時から30分以上経過後に行う。
4.オキシトシンは10単位を5%ブドウ糖液500mLに溶解して使用する。

解答

解説

(※図引用:「産婦人科 診療ガイドライン ―産科編 2020」日本産科婦人科学会より)

子宮収縮薬とは?

・使用目的:子宮の収縮またはより高い張性を誘発するために使用される。したがって、陣痛を誘発するためと分娩後出血を減らすための両方に使用される。
・副作用:「過強陣痛」である。 その結果、胎児機能不全や子宮破裂、頸管裂傷、弛緩出血などを起こす恐れがある。そのため陣痛促進剤を使用する際は、分娩監視装置によって陣痛の強さや間隔、胎児の様子を注意深く観察していく必要がある。

1.× 分娩監視装置は、「陣痛が発来したら」ではなく陣痛前に装着する。なぜなら、分娩監視装置により副作用を未然に防止できる可能性が高いため。分娩監視装置は、子宮収縮や胎児心拍、胎動の状態で調べられ、胎児の健康状態を判定することもできる。そのため、子宮収縮剤の投与開始前から分娩監視装置を装着して胎児心拍数陣痛図を記録し、胎児の様子を注意深く観察していく。
2.× プロスタグランジンF2αの最大投与量は、「50μg/分」ではなく25ug/分(250 mL/時間)である。プロスタグランジンF2αは、医学的には陣痛促進剤や人工妊娠中絶剤として使用されている。
3.〇 正しい。静脈内投与の輸液量の増量は、前回増量時から30分以上経過後に行う。これを増量法といい、1時間あたりの輸液量を15〜30ml増やす。ちなみに、これは、オキシトシンあるいはプロスタグランジン F2aである(上記図参照)。ちなみに、プロスタグランジンは、1時間以上あけなける必要がある。
4.× オキシトシンは10単位を5%ブドウ糖液500mLに、「溶解」ではなく「混和」して使用する。点滴静注法 :オキシトシンとして、通常5~10単位を5%ブドウ糖注射液(500mL)等に混和し、点滴速度を1~2ミリ単位/分 から開始し、陣痛発来状況及び胎児心拍等を観察しながら適宜増減する。なお、点滴速度は20ミリ単位/分を超えないようにすること。(※参考:「医療用医薬品 : オキシトシン」より)

 

 

 

 

 

7 体外受精・新鮮胚移植によって、妊娠した月経周期30日型の女性の分娩予定日の決定法で最も精度が高いのはどれか。

1.最終月経の第1日目に280日を加えた日
2.採卵日に266日を加えた日
3.初診時の胎囊の測定値からの推定日
4.50mm以上の頭殿長<CRL>を測定した日からの推定日

解答

解説

人工授精・体外受精の場合の出産予定日は?

人工授精や体外受精では、母体からの採卵日や胚移植日を2週目0日と考え、266日後を出産日として計算する。

1.× 最終月経の第1日目に280日を加えた日は、「月経後胎齢の数え方による妊娠期間」である。最終の生理開始日から28日を1ヶ月と数え、280日(10ヶ月)と考える。ちなみに、妊娠週数を計算する考え方には『①受精後胎齢』と『②月経後胎齢』という2つがある。①受精後胎齢とは、受精した日を妊娠期間1日目として計算、満日数・満週数で表す方法である。これに対し②月経後胎齢とは、妊娠期間を最終月経の開始日からカウントする。最後の生理が始まった日を0日と数え、満日数・満週数で表す。また、『受精後胎齢』は『月経後胎齢』から2週引くことで表せる。
2.〇 正しい。採卵日に266日を加えた日は、体外受精・新鮮胚移植によって、妊娠した月経周期30日型の女性の分娩予定日の決定法で最も精度が高い。人工授精や体外受精では、母体からの採卵日や胚移植日を2週目0日と考え、266日後を出産日として計算する。ちなみに、推定排卵日や受精日などからの予定日と最終月経からの予定日の差が、2〜3日以内であれば、変更しなくともよい。
3.× 初診時の胎囊の測定値からの推定日は、選択肢の中で最も正確とは言えない。なぜなら、妊娠5〜6週で胎嚢を抽出できるため。胎嚢とは、子宮内膜に受精卵が着床し、赤ちゃんや胎盤が作られていく過程でできる赤ちゃんを包むための部屋のことである。胎嚢を子宮内に確認することは、正常妊娠の確認つまり、子宮内妊娠の確定診断で用いられる方法である。ただし、妊娠反応が陽性、胎嚢を確認できても、約15%の人は流産と報告されている。
4.× 50mm以上の頭殿長<CRL>を測定した日からの推定日は、日本超音波医学会での推奨方法である。頭殿長<CRL>が 13〜41mm(8週0日~11週3日)において、分娩予定日(妊娠週数)決定を予想できる。これは最終月経からの正確な分娩予定日の決定には、胎児の頭臀長(CRL:crown rump length)が妊娠週数とよく相関するためとされている。最終月経からの予定日と CRL からの予定日との間に7日以上のずれがある場合には、CRL からの予定日を採用する。

 

 

 

 

 

8 妊娠33週の初妊婦。合併症はなく妊娠経過は順調。妊婦健康診査時の腹部超音波検査中に「気分が悪い」と訴え、顔色不良となった。
 最初に行う対応はどれか。

1.体位を左側臥位にする。
2.頭部を挙上する。
3.血圧を測定する。
4.腹部を保温する。

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠33週の初妊婦。
・合併症はなく妊娠経過は順調。
・妊婦健康診査時:腹部超音波検査中に「気分が悪い」と訴え、顔色不良。
→本症例は、腹部超音波検査中に「気分が悪い」と訴えたことから「仰臥位低血圧症候群」が疑われる。仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦や下腹部腹腔内腫瘤の患者が仰臥位になった際、妊娠子宮や腫瘤が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫し、それにより右心房への静脈還流量が減少するため、心拍出量が減少し低血圧となるものである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。突然にショックとなり、頻脈、悪心・嘔吐、冷汗、顔面蒼白などの症状を呈する。対応としては、患者を仰臥位から左側臥位にし、右心系に血液が戻ってくるようにすることで、症状は速やかに回復する。(※参考:「仰臥位低血圧症候群」日本救急医学会HPより)

1.〇 正しい。体位を左側臥位にすることは最初に行う対応である。本症例は、本症例は、腹部超音波検査中に「気分が悪い」と訴えたことから「仰臥位低血圧症候群」が疑われる。仰臥位低血圧症候群とは、妊娠末期の妊婦や下腹部腹腔内腫瘤の患者が仰臥位になった際、妊娠子宮や腫瘤が脊柱の右側を上行する下大静脈を圧迫し、それにより右心房への静脈還流量が減少するため、心拍出量が減少し低血圧となるものである。多くの場合、妊娠末期の妊婦が帝王切開の準備のため腰椎麻酔をおこなった後に生じやすい。突然にショックとなり、頻脈、悪心・嘔吐、冷汗、顔面蒼白などの症状を呈する。対応としては、患者を仰臥位から左側臥位にし、右心系に血液が戻ってくるようにすることで、症状は速やかに回復する。(※参考:「仰臥位低血圧症候群」日本救急医学会HPより)
2.× 頭部を「挙上」ではなく低くする。なぜなら、脳内の虚血状態を回避するため。頭の枕を外すなどの対応を行う。
3~4.× 血圧を測定する/腹部を保温する優先度は低い。なぜなら、本症例はすでに「気分が悪い」と訴え、顔色不良となっており、この時点で「仰臥位低血圧症候群」が疑われるため。突然にショックとなり、頻脈、悪心・嘔吐、冷汗、顔面蒼白などの症状を呈することもあるため、速やかな対応が必要になってくる。

 

 

 

 

 

9 36歳の初妊婦。妊娠経過は順調であった。妊娠39週0日、3,280gの児を正常分娩で出産した。分娩所要時間は15時間で、総出血量は420 mLであった。Apgar<アプガー>スコアは1分後8点、5分後9点であった。バースプランに「産まれたら、赤ちゃんを胸の中で抱きしめたい」とあった。
 この母子の早期母子接触の実施方法で最も適切なのはどれか。

1.帰室まで継続して実施する。
2.母親の体位は水平臥床とする。
3.児の血糖値を確認後に開始する。
4.児に経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>モニターを装着して観察する。

解答

解説

本症例のポイント

・36歳の初妊婦(妊娠経過:順調)
・妊娠39週0日、3,280gの児を正常分娩で出産。
・分娩所要時間:15時間、総出血量420 mL。
・Apgar<アプガー>スコア:1分後8点、5分後9点。
・バースプラン「産まれたら、赤ちゃんを胸の中で抱きしめたい」。
→バースプランとは、直訳すると「出産計画」である。 どのようなお産を望んでいるか、出産後や入院中はどのように過ごしたいのかなど、妊婦さん自身やパパの希望をまとめたものである。本症例の場合、「産まれたら、赤ちゃんを胸の中で抱きしめたい(早期母子接触)」の希望がある。早期母子接触の①適応基準、②中止基準、③実施方法は以下にまとめたので参考にしてほしい。

1.× 帰室まで継続して実施することはしない。なぜなら、安全性の確保が十分保証できないため。出生後できるだけ早期に開始し、30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい。また、継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する。母子の分娩経過や状態などを注意深く観察し、個別的に経過を観察し判断する。
2.× 母親の体位は、「水平臥床」ではなく上体挙上(30 度前後)とする。なるべく母親も楽な姿勢で赤ちゃんを抱っこできるよう支援する。
3.× 児の「血糖値」ではなく「新生児仮死がないこと」を確認後に開始する。新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが8点以上)が適応基準としてあげられる。ちなみに、Apgarスコアとは、出生直後の新生児の状態を評価するスコアであり、①皮膚色、②心拍数、③刺激による反射、④筋緊張、⑤呼吸状態の5項目に対し、0~2点のスコアをつける。(※下図参照)
4.〇 正しい。児に経皮的動脈血酸素飽和度<SpO2>モニターを装着して観察する。なぜなら、児の中止基準には、①呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある。②SpO2:90%未満となる。③ぐったりし活気に乏しい。④睡眠状態となる。⑤医師、助産師、看護師が不適切と判断するなどがあげられるため。母子の分娩経過や状態などだけでなく、児も注意深く観察し、個別的に経過を観察し判断する。

早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法

【早期母子接触の適応基準、中止基準、実施方法】
 施設の物理的、人的条件等により、ここに推奨する基本的な実施方法を一部変更せざるを得ない場合がある。そのような場合にも、早期母子接触の効果と安全性について十分に吟味し、母子の最大の利益となるように実施方法を決定する。また、早期母子接触を実施しない選択肢も考慮すべきである。以下に経腟分娩を対象とした各基準を示す。
<適応基準>
①母親の基準
・本人が「早期母子接触」を実施する意思がある
・バイタルサインが安定している
・疲労困憊していない
・医師、助産師が不適切と認めていない
②児の基準
・胎児機能不全がなかった
新生児仮死がない(1 分・5 分 Apgar スコアが 8 点以上)
・正期産新生児
・低出生体重児でない
・医師、助産師、看護師が不適切と認めていない

<中止基準>
①母親の基準
・傾眠傾向
・医師、助産師が不適切と判断する
②児の基準
・呼吸障害(無呼吸、あえぎ呼吸を含む)がある
・SpO2:90%未満となる
・ぐったりし活気に乏しい
・睡眠状態となる
・医師、助産師、看護師が不適切と判断する

<実施方法>
 早期母子接触は母子に対して種々の利点がある。したがって、早期母子接触を実施できない特別な医学的理由が存在しない場合は、周産期医療従事者として、その機会を設けることを考える必要がある。早期母子接触は医療ではなく、ケアであることから、母親とスタッフ間のコミュニケーションがスムーズに行われている必要があり、出産後の母子を孤立させない配慮が大切である。特に、早期母子接触を実施する時は、母親に児のケアを任せてしまうのではなく、スタッフも児の観察を怠らないように注意する必要がある。
・バースプラン作成時に「早期母子接触」についての説明を行う。
出生後できるだけ早期に開始する。30 分以上、もしくは、児の吸啜まで継続することが望ましい
継続時間は上限を 2 時間以内とし、児が睡眠したり、母親が傾眠状態となった時点で終了する
・分娩施設は早期母子接触を行わなかった場合の母子のデメリットを克服するために、産褥期およびその後の育児に対する何らかのサポートを講じることが求められる。
母親:①「早期母子接触」希望の意思を確認する。②上体挙上する(30 度前後が望ましい)。③胸腹部の汗を拭う。④裸の赤ちゃんを抱っこする。⑤母子の胸と胸を合わせ両手でしっかり児を支える。
児:①ドライアップする。②児の顔を横に向け鼻腔閉塞を起こさず、呼吸が楽にできるようにする。③温めたバスタオルで児を覆う。④パルスオキシメータのプローブを下肢に装着するか、担当者が実施中付き添い、母子だけにはしない。⑤以下の事項を観察、チェックし記録する(呼吸状態:努力呼吸、陥没呼吸、多呼吸、呻吟、無呼吸に注意する。冷感、チアノーゼ、バイタルサイン(心拍数、呼吸数、体温など)、実施中の母子行動)

・終了時にはバイタルサイン、児の状態を記録する。

(※一部引用:「早期母子接触」実施の留意点 日本周産期・新生児医学会HPより)

 

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 

 

 

 

10 Rubin<ルービン>の母親役割における達成の概念を示しているのはどれか。

1.母性の獲得は模倣、空想、脱分化というプロセスによって進められる。
2.母親役割獲得プロセスは予期的段階から始まるとしている。
3.産後12か月までの役割達成が含まれている。
4.対象は思春期の女性である。

解答

解説

Rubinの母親役割

ルービン,R.による母親役割獲得過程とは、①模倣、②ロールプレイ、③空想、④取り込みー投影ー拒絶、⑤悲嘆作業の5つの認識的操作を行いながら児との心理的絆形成が進むプロセスである。

①模倣:先輩母親や専門家の行動を母親役割のモデルとし、真似をすること。
②ロールプレイ:自分のお腹にいる子どもや他者の子どもを通して、母親たちが一般的に体験していることを自分も同じように体験すること。
③空想:自分の子どもや自分自身の状況を思い描くこと。
④取り込みー投影ー拒絶:空想した行動や態度などを母親役割のモデルとして自分に投影し、それを受け入れるか拒絶するかを吟味すること。
⑤悲嘆作業:母親としての自分とは立場が異なる過去の自分について思い起こし、妊娠によってできなくなったことや今度変化すると思われることについて考え、嫌だと思ったりあきらめたりすること。

母親として適応するための褥婦の心理的過程を3つの時期に分ける。
・受容期:産褥1~2日目
・保持期:産褥3~10日間
・解放期:産褥10日~1か月
これらの3つの段階を通して、母親役割を獲得する。

1.〇 正しい。母性の獲得は模倣、空想、脱分化というプロセスによって進められる。ルービン,R.による母親役割獲得過程とは、①模倣、②ロールプレイ、③空想、④取り込みー投影ー拒絶、⑤悲嘆作業の5つの認識的操作を行いながら児との心理的絆形成が進むプロセスである。母親役割獲得過程とは、女性が妊娠・出産をとおして母親としての自己を形成し、母親役割についての知識を得たり、技術を習得したりすることによって、母親としての準備を整えるまでの心理体験のことである。妊娠期に達成すべき母親役割を遂行していく自分像をイメージ化できるようにするなど課題を提示すると共に、出産後には実際の子育てをしていくなかで、模倣ではなく、自己の判断によって自分なりのやり方を獲得していき、役割モデルから自己を脱分化し、母親としての自己同一性を確立し、子どもに対する愛着の絆を深めていく。
2.× 母親役割獲得プロセスは、「予期的段階から始まる」としていることを提唱したのは、「マーサー(Mercer R.T.)」である。マーサー(Mercer R.T.)は、自分なりの母親像を獲得する母親獲得過程は、①妊娠期の予期的段階に始まり、②出産後に形式的段階、③非形式的段階と順次経過し、④最終地点である個人的段階に移する。
3.× 産後12か月までの役割達成が含まれていると提唱したのは、「マーサー(Mercer R.T.)」である。➀妊娠期に妊娠に専念し、胎児へ関心や愛着をはぐくみ母親となる準備をする段階(予期的段階)。②産後2~6週間に身体の回復をしつつ、児の合図と世話を学ぶ段階(形式的段階)。➂産後最初の4ヶ月間、正常な経過の中で児の世話への自信を高める段階(非形式的段階)。➃産後4ヶ月以降に母親としての自己を確立する段階(個人的段階)。産後約1年かかるとされている。ちなみに、Rubin<ルービン>の母親役割における達成の概念の役割達成には、1か月(解放期)とされている。
4.× 対象は、「思春期の女性」ではなく育児期の女性である。ルービンは母になるという主観的な体験について、妊娠・出産・産後6週目までの育児期にある女性を対象として聞き取り調査を行っている。

 

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