第103回(H29) 保健師国家試験 解説【午前21~25】

 

21 平成25年度(2013年度)の「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」における養護者による高齢者虐待に関する説明として適切なのはどれか。

1.経済的虐待が全体の6割を占めている。
2.虐待者の続柄は息子の割合が最も高い。
3.虐待の種別にかかわらず、要介護度が高いほど虐待の発生割合が高い。
4.被虐待者の9割が認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランクⅡ以上である。

解答

解説

高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査とは?

「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査」は、平成18年に施行された『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(高齢者虐待防止法)』に基づいて、毎年度、全国の市町村および都道府県において行われた高齢者虐待への対応状況を調査しているものである。

1.× 全体の6割を占めているのは、経済的虐待ではなく身体的虐待である。虐待の種別(複数回答)では、身体的虐待が66.9%と最も多く、次いで心理的虐待42.1%、介護等放棄22.1%、経済的虐待20.9%である。
2.〇 正しい。虐待者の続柄は、息子の割合が最も高い。虐待者の続柄は、息子が40.3%と最も多く、次いで夫19.6%、娘17.1%となっている。
3.× 虐待の種別にかかわらず、要介護度が高いほど虐待の発生割合が、高いのではなく低い。要介護度と虐待種別との関係では、身体的虐待と心理的虐待では要介護度が高いほど割合が低く、介護等放棄ではその逆になる傾向がみられる。
4.× 被虐待者のうち、認知症高齢者の日常生活自立度判定基準のランクⅡ以上は、69.9%(被虐待高齢者全体の46.9%)である。被虐待者の9割に及ばない。

(※データ引用:平成26年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果」より)

 

 

 

 

 

22 A市では特定健康診査の結果、生活習慣病の該当者が年々増加していることが分かった。
 A市の保健師が一次予防として行う活動はどれか。

1.夜間に受診できる健康診査を企画する。
2.精密検査が必要な人に受診勧奨を行う。
3.市民を対象に食習慣改善教室を企画する。
4.該当者の家族を対象に悪化予防の健康教室を開催する。

解答

解説

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。

  • 一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
  • 二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
  • 三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。
    (※健康日本21において)

1.× 夜間に受診できる健康診査を企画するのは、二次予防である。健康診査は、疾病の早期発見・早期治療・スクリーニング検査である。
2.× 精密検査が必要な人に受診勧奨を行うのは、二次予防である。精密検査は、疾病の早期発見・早期治療・スクリーニング検査である。
3.〇 正しい。市民を対象に食習慣改善教室を企画するのは、一次予防である。市民全体を対象に実施する食習慣改善教室は、健康増進・疾病予防である。
4.× 該当者の家族を対象に悪化予防の健康教室を開催するのは、二次予防である。生活習慣病該当者の悪化予防は、健康障害の進行・進展予防・合併症予防である。

 

 

 

 

 

23 介護予防ボランティアグループのリーダーから「一部のメンバーが自分たちの活動は自己満足ではないかと悩んでいるようだ」と保健師に相談があった。
 このグループのエンパワメントを支援するための対応として最も適切なのはどれか。

1.「住民の意見を聞いてみましょう」
2.「メンバー全員で話し合いましょう」
3.「市の保健事業の推進役として機能していますよ」
4.「介護予防事業の参加者の生活機能の改善状況を調査しましょう」
5.「介護予防担当の保健師からメンバーに活動の必要性を説明してもらいましょう」

解答

解説

エンパワメントとは?

エンパワメントとは、対象者が主体的に現状を変えていく方法や自信を獲得できるように、対象者が本来持っている力を引き出すことである。保健師のグループ支援は、個々のメンバーの変容を促すだけでなく、個々の課題を解決するためにグループとして地域を変容していく力を育てる必要がある。対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階がある。過程には、傾聴→対話→行動アプローチがある。

1.× 住民の意見を聞くことは、グループのエンパワメントを支援するための対応とはいえない。なぜなら、住民のボランティア活動に対する評価が低いとは書かれておらず、住民の意見を一方的に取り入れても根本的な解決とはなりにくいため。
2.〇 正しい。メンバー全員で話し合うことは、グループのエンパワメントを支援するための対応といえる。なぜなら、介護予防ボランティアグループのメンバー全員でそれぞれの悩みを話し、問題が共有されることでエンパワーされるため。問題点と解決策を当事者が考えることは、エンパワメントの原則のひとつである。
3.× 市の保健事業の推進役として機能していることを伝えることは、優先度が低い。なぜなら、対象は、個人、組織、コミユニテイの3段階があり、過程には、傾聴→対話→行動アプローチがあるため。市の保健事業の推進役として機能していることを伝え、活動を承認することは大切であるが、選択肢2の対話を重視して問題の解決を促す支援のほうがより適切である。
4~5.× 介護予防事業の参加者の生活機能の改善状況の調査・介護予防担当の保健師からメンバーに活動の必要性の説明は、グループのエンパワメントを支援するための対応とはいえない。なぜなら、エンパワメントを促す支援は、個人の成長する力自己決定する力を尊重することが大前提となるため。ボランテイアメンバーの話し合いの場で、保健師が積極的に解決方法を提案するのは適切ではない。

コミュニティ・エンパワメントの成果

① コミュニティ・メンバーは自身の問題解決に向かう意欲と自信がつく。
②コミュニティ・メンバーのコミュニティに対する関心が高まる。
③ コミュニティでの相互支援が高まる。
④ コミュニティでリーダーが育成される。
⑤コミュニティは政策改善の方向性を見いだす。

 

 

 

 

 

24 健康日本21(第二次)の目標項目の1つである「健康格差の縮小」において、都道府県格差の指標としているのはどれか。

1.平均寿命
2.糖尿病の有病者数
3.脳血管疾患の年齢調整死亡率
4.日常生活に制限のない期間の平均
5.メタボリックシンドロームの有病率

解答

解説

健康日本21(第二次)の目標項目として、①「健康寿命の延伸上」、②「健康格差の縮小」の2つが挙げられている。②「健康格差の縮小」では、「健康寿命が最も長い都道府県の数値」を目標として、各都道府県において健康寿命の延伸を図るよう取り組むものとしている。

1.× 平均寿命ではなく、健康寿命を指標としている。
2~3.× 糖尿病の有病者数/脳血管疾患の年齢調整死亡率(生活習慣病の発生予防と重症化予防)は、目標項目であるが、都道府県格差の指標ではない。
4.〇 正しい。日常生活に制限のない期間の平均は、「健康格差の縮小」において、都道府県格差の指標としている。健康格差とは、「地域や社会経済状況の違いによる集団間の健康状態の差」と定義している。
5.× メタボリックシンドロームの有病率は、主要な生活習慣病の発症予防の数値目標で記述されている。

 

 

 

 

 

25 災害対策とその根拠法令の組合せで正しいのはどれか。

1.災害拠点病院:医療法
2.地域防災計画:災害対策基本法
3.応急仮設住宅:被災者生活再建支援法
4.トリアージタグ:医師法
5.災害派遣医療チーム(DMAT): 災害救助法

解答

解説
1.× 災害拠点病院は、医療法ではなく、『災害対策基本法』の防災基本計画のなかに位置づけられている。ただ『災害対策基本法』の条文中に明文の規定があるわけではない。ちなみに、医療法は、病院、診療所、助産所の開設、管理、整備の方法などを定める日本の法律である。
2.〇 正しい。地域防災計画は、災害対策基本法に定められている。ちなみに、地域防災計画は、災害対策基本法第40条に基づき、各地方自治体の長が、それぞれの防災会議に諮り、防災のために処理すべき業務などを具体的に定めた計画である。
3.× 応急仮設住宅は、被災者生活再建支援法ではなく、『災害救助法』に定める9種類の救助のひとつである。被災者生活再建支援法は、自然災害の被災者への支援を目的とする日本の法律である。
4.× トリアージタグは、医師法など直接定める法律はない。平成8年に当時の厚生省の通知で標準化され統一している。
5.× 災害派遣医療チーム(DMAT)は、災害救助法ではなく、『災害対策基本法』の防災基本計画のなかに位置づけられている。ただ『災害対策基本法』の条文中に明文の規定があるわけではない。災害派遣医療チームは、災害拠点病院を中心に整備が進められている。

 

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