第103回(H29) 保健師国家試験 解説【午前26~30】

 

26 人口3万人の町において、先行文献が十分に存在し、要因が明らかになっている健康課題について、町民の状況を全数把握する方法として適切なのはどれか。

1.フォーカス・グループインタビュー
2.半構造化面接法
3.エスノグラフィ
4.質問紙調査
5.事例分析

解答

解説
1.× フォーカス・グループインタビューは、町民の状況を全数把握することは難しい。フォーカス・グループインタビューは、少人数(5~6名程度)のグループを対象として座談会形式でインタビューを行い、幅広い情報を引き出そうとするグループ・ダイナミクスを利用した質的な情報把握の方法である。
2.× 半構造化面接法は、町民の状況を全数把握することは難しい。半構造化面接法は、調査的面接手法のひとつで、通常は1対1で行う面接である。あらかじめ作成した質問内容に従い面接を進めるが、対象者の状況や回答に応じて、追加の質問をしさり、説明を求めたり、面接中に浮かんできた新たな疑問などを投げかけたりする方法である。
3.× エスノグラフィは、町民の状況を全数把握することは難しい。エスノグラフィは、文化人類学、社会学、心理学などの分野で使われている研究手法のひとつである。集団や社会の行動様式をフィールドワークによって調査・記録する。「エスノ」は民族を、「グラフィ」は記述を意味し、「民族誌」と訳される場合もある。
4.〇 正しい。質問紙調査は、町民の状況を全数把握する方法として適切である。質問紙調査は、調査目的に応じて一定の質問項目を作成し、それを対象者に示して回答を求め、必要な情報を収集する方法である。数多くの対象者に質問紙を配布し、回答を求めることができる。
5.× 事例分析は、町民の状況を全数把握することは難しい。事例分析は、さまざまな社会現象の個別事象を事実に即して記述し、その内容を分析的に検討し、事例のなかの特徴や法則性を見いだそうとする手法である。

 

 

 

 

 

27 人口10万人の市において、ある一定期間の結核患者の発生頻度を表現する指標として適切なのはどれか。

1.罹患率
2.有病率
3.被患率
4.受療率
5.相対頻度

解答

解説

1.〇 正しい。罹患率は、発生頻度を表現する指標として適切である。羅患率とは、ある一定の観察期間に新規発生した患者数を、危険曝露人口一人ひとりの観察期間の総和(観察人年)で除したものである。疾病や死亡が生じることを事象の発生という。事象の発生は、ある一定期間を設定し、その期間内で新規に発生した頻度により把握できる。また、発生頻度の表現は、率(rate)の形で示される。
2.× 有病率とは、ある一時点で集団全体のなかに疾病・障害を有する者がどれだけいるかを示す指標である。
3.× 被患率とは、ある疾病・異常の被患者が集団全体に占める割合を示すものである。
4.× 受療率とは、ある特定の日に疾病治療のため、すべての医療施設で入院・通院・往診を受けた患者数と人口10万人との比率を指すものである。
5.× 相対頻度とは、いくつかのカテゴリーにおけるそれぞれの度数が全体に占める割合の大きさを示すものである。

 

 

 

 

 

28 生態学的研究によって、世界各国の人当たりの食塩摂取量と高血圧症有病率との関連の程度を評価するために計算するのはどれか。

1.寄与危険
2.変動係数
3.相対危険
4.相対頻度
5.相関係数

解答

解説

1.× 寄与危険(リスク差)は、コホート研究法で用いる指標である。コホート研究とは、分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察研究の一種である。
2.× 変動係数は、標準偏差を平均値で割って求める指標である。平均に対するデータのばらつきの関係を相対的に評価するのに用いる。
3.× 相対危険(リスク比)は、コホート研究法で用いる指標である。コホート研究とは、分析疫学における手法の1つであり、特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察研究の一種である。
4.× 相対頻度は、観察した変量の頻度が全体に占める割合である。全体を「100」としたときは「」で示す。
5.〇 正しい。相関係数は、2つの変数の直線的(線形)関係を示す指標である。1人あたりの食塩摂取量が大きい国は高血圧症有病率が高い(小さい国は低い)というような関連の強弱を評価できる。

 

 

 

 

 

29 ある集団の特定健康診査で得られたヘモグロビンA1c値の頻度の分布を確認するのに最も優れているのはどれか。

1.散布図
2.円グラフ
3.帯グラフ
4.ヒストグラム
5.折れ線グラフ

解答

解説

1.× 散布図は、量的な2つの変量間の関係をみるため、各変量を横座標と縦座標にとり図示したものである。
2.× 円グラフは、分布の全体を100%とした場合のカテゴリーごとの割合(面積)について、円を分割する形で示したものである。
3.× 帯グラフは、分布の全体を100%とした場合のカテゴリーごとの割合(面積)について、四角形(帯)に示したものである。
4.〇 正しい。ヒストグラムは、頻度の分布を確認するのに最も優れている。ヒストグラムは、量的な変量の範囲を適当な区間(階級)に分けて横軸にとり、各区間(階級)に含まれる相対度数を長方形の面積により表し縦軸にとったものである。
5.× 折れ線グラフは、量的な変量の分布の時間的経過などを視覚的に把握するのに用いる図である。

 

 

 

 

 

30 Aさん(30歳、主婦)。夫(28歳、会社員)と長男(5歳)との3人暮らし。町の保健センターに長男を連れて来所した。Aさんは「幼稚園に息子を迎えに行ったところ、パパが怖いと言って帰りたがらなかった。息子を守るには、どうしたらいいでしょうか」と話した。Aさんの話から、Aさんの夫は日頃から大声で怒鳴ることが多いこと、昨夜は長男のいたずらに対して激しく怒り、おもちゃ箱をひっくり返して物を投げつけAさんも恐怖を感じたこと、今までAさんと長男に怪我はなかったことが分かった。
 このときの保健師の対応として最も適切なのはどれか。

1.主任児童委員に連絡をする。
2.母子を保護できる場所を確保する。
3.幼稚園に電話をして情報収集をする。
4.夫の在宅時に家庭訪問をすることを伝える。
5.A さんの友人に泊まりに来てもらうよう勧める。

解答

解説

1.× 主任児童委員に連絡をする優先度は低い。なぜなら、まずは、子どもの状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となるため。また、主任児童委員からの連絡よりも先にAさん本人から相談があったものとされる。
2.〇 正しい。母子を保護できる場所を確保する。児童虐待には4つの種類がある。①身体的虐待、②性的虐待、③保護の怠慢‘拒否(ネグレクト)、④心理的虐待である。どの種類に当てはまるかということよりも、子どもに対する養育者の不適切な対応は虐待ととらえ早期に対応することが必要である。まずは、子どもの状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となる。
3.× 幼稚園に電話をして情報収集をする優先度は低い。なぜなら、まずは、子どもの状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となるため。また、Aさん本人から状況について把握できている。
4.× 夫の在宅時に家庭訪問をすることを伝える優先度は低い。なぜなら、まずは、子どもの状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となるため。また、夫が状況をどのように把握しているかわからず、虐待の自覚がない場合には、家庭訪問を行うことで虐待がエスカレートする可能性がある。
5.× A さんの友人に泊まりに来てもらうよう勧める優先度は低い。なぜなら、まずは、子どもの状況を速やかに把握し、安全の確保が最優先となるため。選択肢4と同様、友人が来る目的を夫が察知した場合には、家庭訪問を行うことで虐待がエスカレートする可能性がある。

 

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