第104回(H30) 保健師国家試験 解説【午後6~10】

 

6 保健師の家庭訪問の対象で最も優先度が高いのはどれか。

1.要介護2の独居高齢者
2.特定健康診査の未受診者
3.A群β 溶血性レンサ球菌感染症の罹患が疑われる幼児
4.治療中断していると病院から連絡があった統合失調症患者

解答

解説
1.× 要介護2の独居高齢者は優先度は低い。なぜなら、要介護2は、日常生活動作において部分的に介護が必要な状態であるため。独居であり支援が必要な状態ではあるが、緊急性が高いとは考えにくい。
2.× 特定健康診査の未受診者は優先度は低い。なぜなら、未受診者に対する受診勧奨などの支援は必要と考えられるが、生命の危険が切迫しているような緊急性が高い状態とはいえないため。
3.× A群β 溶血性レンサ球菌感染症の罹患が疑われる幼児は優先度は低い。なぜなら、まれに重症化することもあるが、罹患が疑われている状態において緊急に保健師の支援が必要とは考えにくいため。A群β溶血性レンサ球菌感染症は、『感染症法』の5類感染症(定点把握疾患)で、急性咽頭炎や膿痂疹(のうかしん)、蜂窩織炎を引き起こす。
4.〇 正しい。治療中断していると病院から連絡があった統合失調症患者は優先度は高い。なぜなら、統合失調症の治療中断例では、今後再発・増悪する可能性がきわめて高く、病状が悪化した際の本人や家族、近隣住民に及ぼす影響も大きいため。

 

 

 

 

 

7 A町では、がん検診の受診率向上対策に取り組んだ結果、受診率が向上した。しかし、毎年、がん検診の精密検査の対象者の中に精密検査を受診していない者がいる。
 精密検査の未受診者への受診勧奨として最も効果が高いのはどれか。

1.町の広報誌に精密検査の日時を掲載する。
2.保健師が精密検査の未受診者に家庭訪問を行う。
3.コミュニティ放送で精密検査の受診を呼びかける。
4.がん検診における集団指導で精密検査の必要性を伝える。

解答

解説

がん検診後の精密検査未受診者に、早急で確実な受診勧奨をする方法としては、ハイリスクアプローチが適している。ハイリスクアプローチとは、効率のよい予防医学的方法として、疾患を発症しやすい高いリスクを持った個人に対象を絞り込んだ戦略のことである。

1.× 町の広報誌に精密検査の日時を掲載するのは効果が低い。なぜなら、対象者が広報誌を必ず見るとは限らないため。
2.〇 正しい。保健師が精密検査の未受診者に家庭訪問を行う。保健師が直接、未受診者に対して家庭訪問をする個別指導は、精密検査の未受診者全員に確実に受診勧奨できるハイリスクアプローチであり、最も効果が高いと考えられる。
3.× コミュニティ放送で精密検査の受診を呼びかけるのは効果が低い。なぜなら、精密検査の対象者全員がコミュニティ放送を聞くとは限らないため。
4.× がん検診における集団指導で精密検査の必要性を伝えるのは効果が低い。なぜなら、がん検診における集団指導で精密検査の必要性を伝えることは、ポピュレーションアプローチであるため。

MEMO

・ポピュラーアプローチ(ポピュレーションストラテジー):対象を限定せず地域や職場など、集団全体に働きかけてリスクを下げる方法である。一次予防とされる。
・ハイリスクアプローチ(ハイリスクストラテジー):リスクの高いものに対象を絞り込んで働きかける方法である。2次予防とされる。

 

 

 

 

 

8 人口8,000人のA町では妊婦とそのパートナーを対象として、妊娠、出産および子育ての知識の習得を目的に両親学級を実施していたが、1回当たりの参加者が年々減少している。そこで、次年度は家族同士の交流を促進するプログラムを導入することにした。
 A町の保健師が次年度の両親学級の具体的な内容を検討するにあたり分析する項目で優先度が高いのはどれか。

1.両親学級の講師からの意見
2.A町の合計特殊出生率の推移
3.近隣市町村の両親学級の実施状況
4.妊娠届出時の面接での聞き取り内容

解答

解説
1.× 両親学級の講師からの意見は優先度は低い。なぜなら、両親学級の参加者が年々減少している理由は講師にはわからないことが多いため。
2.× A町の合計特殊出生率の推移は優先度は低い。なぜなら、両親学級の参加者数の減少に合計特殊出生率が影響している可能性は高いが、次年度の両親学級の具体的な内容を検討するにあたり分析する項目としては具体性に欠けるため。
3.× 近隣市町村の両親学級の実施状況は優先度は低い。なぜなら、近隣市町村の状況を参照することは、今後の活動のヒントにはなるが、A町の次年度の両親学級の具体的な内容を検討するにあたり分析する項目としては具体性に欠けるため。
4.〇 正しい。妊娠届出時の面接での聞き取り内容は優先度は高い。なぜなら、対象者のニーズを把握するため、実際に妊婦から聞き取った内容を分析することができるため。

 

 

 

 

 

9 母子保健活動の見直しのために地域診断を行うことになった。
 地区担当保健師が最初に行うことで最も適切なのはどれか。

1.地区内の子どもがいる世帯にアンケート調査を実施する。
2.乳幼児健康診査の問診票から相談内容の集計を行う。
3.子育て広場に来ている母親に聞き取り調査を行う。
4.地区にある保育所の保育士と連絡会議を行う。

解答

解説
1.× 地区内の子どもがいる世帯にアンケート調査を実施するは優先度は低い。なぜなら、なぜなら、地域診断の方法としてアンケート調査は有効であるが、目的や調査項目を検討し、時間を要するため。
2.〇 正しい。乳幼児健康診査の問診票から相談内容の集計を行うは優先度は高い。なぜなら、乳幼児健康診査は、対象となるほとんどの親子が受診しており、問診票の相談内容は子どもや育児上の問題を含んでいるため。また、既存の資料としてすぐに活用が可能で、集計結果は母集団に近いデータとなる。
3.× 子育て広場に来ている母親に聞き取り調査を行うは優先度は低い。なぜなら、子育て広場に来ている母親の聞き取り調査は、対象の来所者が限定的であるため。母子保健活動の見直しのために行う地域診断の資料として限界がある。
4.× 地区にある保育所の保育士と連絡会議を行うは優先度は低い。なぜなら、地区にある保育所の保育士との連絡会議から得られたデータは、あくまでも保育所との連絡会議という限られた範囲での情報であるため。

 

 

 

 

 

10 市の各地域で認知症サポーター養成講座を実施した。
 地域におけるコミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態はどれか。

1.講座を受講した住民の数が増えた。
2.認知症サポーター同士の交流が深まった。
3.家庭内で認知症の話をすることが増えた。
4.認知症を有する住民を見守るボランティアグループができた。

解答

解説

コミュニティ・エンパワメント(当事者主体のシステムづくり)は、ある目標のために必要なプロセスとして定義されることが多い。

1.× 講座を受講した住民の数が増えたことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえない。コミュニティ・エンパワメントの到達点は、誰もが安心して暮らせる地域である。講座受講者が増えたことは個の領域でのエンパワメントである。
2.× 認知症サポーター同士の交流が深まったことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえない。なぜなら、認知症サポーター同士の交流が深まるのは、グループとしてのエンパワメントであるため。
3.× 家庭内で認知症の話をすることが増えたことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえない。なぜなら、家庭内で認知症の話をすることが増えるのは、家族のエンパワメントであるため。
4.〇 正しい。認知症を有する住民を見守るボランティアグループができたことは、コミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態とはいえる。認知症を有する住民を見守るボランティアグループができたことで、認知症を有する住民が地域で安心して暮らせるようになるため。地域におけるコミュニティ・エンパワメントが最も引き起こされた状態といえる。

コミュニティ・エンパワメントの成果

① コミュニティ・メンバーは自身の問題解決に向かう意欲と自信がつく。
②コミュニティ・メンバーのコミュニティに対する関心が高まる。
③ コミュニティでの相互支援が高まる。
④ コミュニティでリーダーが育成される。
⑤コミュニティは政策改善の方向性を見いだす。

 

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