第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午前16~20】

 

16 Aさん(34歳、初産婦)。妊娠41週1日。予定日超過のため誘発分娩目的で入院した。入院後2日目に陣痛発来したが、回旋異常のため吸引分娩で出産した。分娩時出血量700mL、分娩所要時間は32時間であった。出生時体重3,560g、Apgar<アプガー>スコアは1分後7点、5分後10点であった。Aさんは分娩中、陣痛時は大声をあげ、分娩台の上での体動が大きく、分娩後は「こんなはずではなかった」と表情は暗かった。
 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.頻回授乳の促し
2.分娩体験の振り返り
3.母児同室の早期の開始
4.産後ケア事業の情報提供

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(34歳、初産婦、妊娠41週1日)
・予定日超過のため誘発分娩目的で入院した。
・入院後2日目:陣痛発来したが、回旋異常のため吸引分娩で出産。
・分娩時出血量700mL、分娩所要時間:32時間
・出生時体重3,560g、Apgarスコア:1分後7点、5分後10点。
・Aさんは分娩中、陣痛時は大声をあげ、分娩台の上での体動が大きく、分娩後は「こんなはずではなかった」と表情は暗かった。
→Aさんは分娩後に「こんなはずではなかった」と発言が見られ、表情は暗いことから自身のお産にネガティブなイメージを持っている可能性がある。分娩体験の振り返りを一緒に行うことはネガティブなイメージをポジティブなイメージへと変えることや今後の育児の力になる可能性がある。ちなみに、アプガースコアとは、出生直後の新生児の状態を評価するスコアであり、①皮膚色、②心拍数、③刺激による反射、④筋緊張、⑤呼吸状態の5項目に対し、0~2点のスコアをつける。本症例は、心拍数100回/分以上、皮膚色は全身ピンク、四肢を屈曲させていることから筋緊張は良好、啼泣が強いことから呼吸および刺激への反応良好と考えることができる。

1.× 頻回授乳の促しの優先度は低い。なぜなら、本症例の分娩は、①回旋異常のため吸引分娩で出産、②分娩時出血量700mL、③分娩所要時間:32時間といった体に負担がかかっていると考えられるため。ちなみに、正常分娩の出血量は500mL 未満とされており、それを超える量の出血を分娩時異常出血という。一般状態の回復を見ながら進めていく必要がある。
2.〇 正しい。分娩体験の振り返りが最も優先度が高い。Aさんは分娩後に「こんなはずではなかった」と発言が見られ、表情は暗いことから自身のお産にネガティブなイメージを持っている可能性がある。分娩体験の振り返りを一緒に行うことはネガティブなイメージをポジティブなイメージへと変えることや今後の育児の力になる可能性がある。また、自分がイメージしていた分娩であったか、妊娠中・分娩中の産婦の思いについて傾聴し、分娩体験の振り返りを行う。
3.× 母児同室の早期の開始の優先度は低い。なぜなら、本症例の分娩は、①回旋異常のため吸引分娩で出産、②分娩時出血量700mL、③分娩所要時間:32時間といった体に負担がかかっていると考えられるため。母児同室を開始する前に自身のお産に対するネガティブなイメージへのケアを優先的に行う必要がある。
4.× 産後ケア事業の情報提供の優先度は低い。なぜなら、産後ケア事業は分娩直後に行うサービスではなく、産褥期の経過を見ながら必要に応じて行っていくサービスであるため。ちなみに、産後ケア事業とは、分娩施設退院後から一定の期間、病院・診療所・助産所・対象者の居宅などにおいて、助産師などの看護職が中心となり、母親の身体的回復と心理的な安定を促進するとともに、母親自身がセルフケア能力を育み、母子とその家族が健やかな育児ができるよう支援することを目的としている。市町村が実施主体である。(※参考:「産後ケア事業ガイドライン 」厚生労働省HPより)

(※画像引用:ナース専科様HPより)

 

 




 

 

17 母乳栄養希望のあるヒトT細胞性白血病ウイルス-Ⅰ型<HTLV-1>キャリア妊婦に対して推奨される第一選択の授乳指導はどれか。

1.離乳の完了までの直接母乳栄養
2.生後90日までの直接母乳栄養
3.凍結母乳による栄養
4.完全人工栄養

解答

解説

ヒトT細胞性白血病ウイルスとは?

ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)というリンパ球の悪性腫瘍や、HTLV-1関連脊髄症(HAM)と呼ばれる慢性の神経疾患の原因ウイルスで、日本に現在約80万人の感染者が存在すると推定されている。約40年以上の潜伏期の後に年間1000人に1人の割合で発症するとされている。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の主な感染経路は、①性的接触、②血液感染、③母子感染である。母乳からウイルスが感染することが証明されている感染症は、①HIV(ヒト免疫不全ウイルス) 、②HTLV1(成人T 細胞白血病ウイルス )、③CMV(サ イトメガロウイルス)である。母子感染では、主に経母乳感染することから、母子感染率を減らすには人工栄養が最も確実な方法である。

【母乳における対応】
①人工栄養:もっとも確実で推奨される。感染源となるリンパ球を含んだ母乳を遮断できる。
②短期母乳:母体から移行抗体が存在するとされる生後90日以内の授乳のみ実施。
③加工母乳:搾乳して一定時間冷凍保存した母乳を与える。

1~3.離乳の完了までの直接母乳栄養/生後90日までの直接母乳栄養/凍結母乳による栄養は、母乳中にはHTLV-1感染細胞が含まれているためは感染を引き起こす
4.完全人工栄養は、母乳栄養希望のあるヒトT細胞性白血病ウイルス-Ⅰ型<HTLV-1>キャリア妊婦に対して推奨される第一選択の授乳指導である。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は母乳を介して母子感染するため①完全人工栄養(※もっとも推奨)、②短期母乳、③加工母乳で行う。ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は、主に血液Tリンパ球に感染し、ATL(成人T細胞白血病・リンパ腫)やHAM(HTLV-1関連脊髄症)を引き起こす。一度感染するとウイルスを持ち続けるが、感染しても発病する人はごく一部で発病までには長い潜伏期がある。HTLV-1キャリアとはウイルスを無症状で持続的に保有している人をいう。

 

 

 

 

 

 

18 生後1か月の健康診査時、母親から児のいちご状血管腫について相談を受けた。
 母親への助産師の説明で正しいのはどれか。

1.「日光には当てないでください」
2.「局所の感染に注意する必要があります」
3.「治療に関して小児科で相談してください」
4.「皮脂の分泌過多が原因で症状が悪化します」

解答

解説

いちご状血管腫とは?

いちご状血管腫とは、乳児血管腫ともいい、未熟な毛細血管が増殖してできる赤アザのことをさす。まれつきのあざではなく、赤ちゃんや乳幼児の生後数週以内に湿疹のような状態で現れ、表面がイチゴ状になり急速に範囲が広がったり盛り上がりを呈するようになる。体の表面、どこにでもできる赤あざである。多くは徐々に縮小し、ほとんどわからなくなるものの、稀に皮膚委縮や瘢痕を残す例もあり、7歳以降に存在するものは、手術となる場合もある。

1~2.「日光には当てないでください」「局所の感染に注意する必要があります」と伝える必要はない。いちご状血管腫とは、乳児血管腫のことで、皮膚の表面や内部にできる赤あざの一種で未熟な毛細血管が増殖してあらわれる良性の腫瘍である。見た目が赤くいちごのような外観からいちご状血管腫と呼ばれる。耳、鼻、口唇に生じたいちご状血管腫は潰瘍や皮膚欠損となることがあるが、毛細血管の増殖によるあざの一種であるため、日光に当たらないように注意したり、局所の感染に注意したりする必要はない。治療に関しては小児科で相談するようにアドバイスする。
3.「治療に関して小児科で相談してください」と説明する。なぜなら、多くは徐々に縮小し、ほとんどわからなくなるものの、稀に皮膚委縮や瘢痕を残す例もあり、7歳以降に存在するものは、手術となる場合もあるため。ちなみに、いちご状血管腫は、生後2~3週間、遅くとも3ヶ月以内に発生し、1~2週間で急速に大きく盛り上がり、6ヶ月から1年で最大に達する。その後徐々に縮小し、ほとんどわからなくなる。一部は小さくなっても皮膚の表面に細かい血管が浮き出たり、皮膚萎縮や瘢痕を残したりする。部位や大きさによっては視力障害や気道閉塞などを起こす可能性もあり、治療に関しては小児科で薬剤や手術療法などの相談してもらう。
4.「皮脂の分泌過多が原因で症状が悪化します」と伝える必要はない。なぜなら、皮脂の分泌過多が原因ではないため。いちご状血管腫(乳児血管腫)は、毛細血管が異常に増殖してしまうことが原因である。発生場所は顔や手、頭などさまざまである。

 

 

 

 

 

 

19 戦後の母子保健施策を年代順に古いものから表に示す。
 ( )に入るのはどれか。

1.育成医療の開始
2.未熟児養育医療の開始
3.B型肝炎母子感染防止事業の開始
4.妊産婦健康診査の公費負担制度の制定

解答

解説
1.× 育成医療は2006年(旧制度は1954年:昭和29年創設)に開始された。「育成医療とは、児童福祉法第4条第2項に規定する障害児(障害に係る医療を行わないときは将来障害を残すと認められる疾患がある児童を含む。) で、その身体障害を除去、軽減する手術等の治療によって確実に効果が期待できる者に対して提供される、生活の能力を得るために必要な自立支援医療費の支給を行うものである(※一部引用:「自立支援医療(育成医療)の概要」厚生労働省HPより)
2.× 未熟児養育医療の開始は1974年:昭和49年である。未熟児養育医療とは、体重が2000g以下、または身体の発育が未熟なまま生まれた乳児が、指定養育医療機関において入院や医療を受ける場合に給付が受けられる制度である。
3.× B型肝炎母子感染防止事業は1985年:昭和60年から開始された。B型肝炎母子感染防止事業とは、母子感染を起こすおそれがある妊婦を発見し適切な指導を行うことにより、キャリア及び急性肝炎等の発生をなくし、B型肝炎の撲滅を図ることを目的としたものである。
4.〇 正しい。妊産婦健康診査の公費負担制度の制定は1969年:昭和44年である。妊産婦健康診査の公費負担制度とは、妊婦の健康管理の充実及び経済的負担の軽減を図るため、妊婦健康診査に必要な経費を交付することにより、安心して妊娠・出産ができる体制を確保することを目的としている。

 

 




 

 

20 平成30年(2018年)の母子保健統計で正しいのはどれか。

1.合計特殊出生率は約1.8 である。
2.周産期死亡数は約3,000 人である。
3.人工妊娠中絶実施率(女子人口千対)は約1.0 である。
4.女性の労働力率を年齢階級別にみると逆U字型曲線を描く。

解答

解説
1.× 平成30年の合計特殊出生率は、「約1.8」ではなく、1.42である。(データ引用:「平成 30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
2.〇 正しい。周産期死亡数は約3,000人である。ちなみに、平成30年の周産期死亡数は2999人である。(データ引用:「平成 30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
3.× 平成30年の人工妊娠中絶実施率(女子人口千対)は「約1.0 」ではなく、6.4である。(データ引用:「平成 30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」厚生労働省HPより)
4.× 女性の労働力率を年齢階級別にみると「逆U字型曲線」ではなくM字カーブを描く。平成30年の女性の労働力率を年齢階級別にみたものは、平成30年はM字の底が上昇し台形に近づいている。

(データ引用:「Ⅰ 働く女性の状況」厚生労働省HPより)

 

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