第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午前36~40】

 

36 妊娠初期の母体の生理的特徴で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.糸球体濾過率<GFR>が増加する。
2.インスリンの感受性が亢進する。
3.全身の循環血液量が最大となる。
4.肺の1回換気量は低下する。
5.体温が上昇する。

解答1・5

解説

「妊娠の生理」

【泌尿器系】
腎臓は、妊娠中わずかに拡大する。糸球体濾過率、腎血漿流量は妊娠初期から増加し、妊娠中期の初めには非妊娠時の50%まで増加する。糸球体濾過率は妊娠末期まで高値を保つが、腎血漿流量は妊娠後期に減少する。妊娠末期には体位により腎機能検査値が変化する。正常妊婦の血清クレアチニン、尿素窒素の値は非妊娠時より低値を示す。クレアチニンクリアランスは30%増加する。妊娠中の腎の特徴として,各種の栄養素の尿中排泄が挙げられる。アミノ酸や水溶性ビタミンは非妊娠時と比較し多量に排泄される。尿糖は必ずしも異常ではなく、多くは糸球体濾過の増加と尿細管での再吸収能の低下に起因する。生理的変化であるが、妊娠糖尿病の可能性を見逃してはならない。尿蛋白は通常認めない。
(※一部引用:「産科疾患の診断・治療・管理」より)

1.〇 正しい。糸球体濾過率<GFR>が増加する。糸球体濾過率<GFR>とは、腎臓の機能を示しており、フィルターの役目を果たす糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿をつくれるかを表す。腎機能が悪くなると球体濾過率<GFR>は低くなる。妊娠中は、体内の血液量が約1.5倍になるものの腎臓の再吸収できる量は妊娠前と変わらないため吸収しきれなかった糖が尿糖として出やすくなる。
2.× インスリンの「感受性」ではなく、抵抗性が亢進する。正常妊娠では軽度の空腹時の血糖低下と食後の血糖上昇および高インスリン血症が認められるが、これはグルコースを取り込みやすくする反応であろうと考えられている。また、同時にグルカゴン濃度の抑制も認められる。胎児へのグルコース供給を円滑にするため、末梢のインスリン抵抗性は上昇し、妊娠後期にはインスリン活性は非妊時の50~70%に低下する。このインスリン抵抗性の原因として、プロゲステロン、エストロゲンが推定されている。(※参考:「産科疾患の診断・治療・管理」より)
3.× 全身の循環血液量が最大となるのは、「妊娠初期」ではなく妊娠末期である。循環血液量は妊娠初期から増加し、妊娠28〜32週で最大となる。循環血液量において、妊娠中の母体の循環血液量は著しく増加する。妊娠末期には平均で非妊時の40~45%増となるが、個人差が大きい。循環血液量は妊娠初期から増加し、中期には増加速度は急速となり、妊娠28~32週で最大となり妊娠末期まで持続する。循環血液量の増加で前負荷が増加する。分娩後は4~6週で非妊娠時のレベルに戻る。(※参考:「産科疾患の診断・治療・管理」より)
4.× 肺の1回換気量は、「低下」ではなく増加する。妊娠末期では増大した子宮で横隔膜が挙上し、胸郭が横に広がり、予備呼気量が減少し、1回換気量は増加する。また腹式呼吸から胸式呼吸になりやすい。「妊娠子宮の増大で横隔膜は挙上され、胸郭は横に拡大する。そのため、機能的残気量、残気量は減少する。呼吸数はほとんど変化しないが、妊娠が進行するにつれ、一回換気量、分時換気量は増加する。一回換気量の増加、循環ヘモグロビン量の増加、心拍出量の増加で、妊娠によって増大した必要酸素量に見合う酸素を摂取する。妊婦では呼吸が増加し、血中Pco2濃度は低下するが、これはプロゲステロンが呼吸中枢のPco2反応閾値に作用する結果と考えられている(※参考:「産科疾患の診断・治療・管理」より)」。
5.〇 正しい。体温が上昇する。妊娠初期には妊娠維持のために黄体からプロゲステロンが分泌され続けて高温期が継続する。プロゲステロンには子宮収縮抑制による妊娠の維持や基礎代謝亢進による体温上昇などの働きがある。妊娠14週頃には胎盤が完成してからは胎盤からされる。

 

 

 

 

37 妊娠34週の胎児の発育について正しいのはどれか。2つ選べ。

1.身長は約35cmである。
2.成長速度は1日15gである。
3.羊水中のレシチンが急増する。
4.胎動に伴い一過性頻脈がみられる。
5.レム睡眠よりノンレム睡眠の時間が長い。

解答3・4

解説

妊娠34週の胎児の発育について

妊娠34週になると、肺の働きが成熟する。胎児の大きさは、個人差は大きいが体重1650~2663gとなる。妊娠34週になると、肺の中の肺胞をふくらませる「肺サーファクタント」という成分が十分に作られるようになる。肺サーファクタントとは、肺胞の空気が入る側へと分泌されている界面活性剤である。なお、肺サーファクタントは単一の成分ではなく、リン脂質を主成分とした混合物である。肺胞内の水分の表面張力を減少させることで、肺胞がつぶれてしまうのを防いでいる。

1.× 身長は「約35cm」ではなく約45cmである。自律神経が発達し、交感神経と副交感神経のバランスも整い、心拍や呼吸の働きも充実してする。ちなみに、約35cmは妊娠24〜27週頃である。
2.× 成長速度は1日「15g」ではなく、30gである。妊娠の月数単位の赤ちゃんの身長は、妊娠5か月までは(妊娠月数の2乗)㎝、妊娠6か月以降では(月数 × 5)㎝で求められる。同様に、体重に関して、妊娠前半期は(妊娠月数の3乗)× 2g、後半期は(妊娠月数の3乗)× 3gとなり、たとえば9か月では身長は「9 × 5 = 45㎝」となり、体重は「(9の3乗)×3=2187g」となる。
3.〇 正しい。羊水中のレシチンが急増する。レシチンとは、肺サーファクタントの主成分でもあり、妊娠週数の増加とともに上昇する。34週頃に急増し、36週頃にピークに達する。羊水や胎盤に含まれ、胎児の呼吸や栄養の吸収にも関わっている。レシチンが少ないと出生後に呼吸困難を起こして危険な状態に陥ることがある。
4.〇 正しい。胎動に伴い一過性頻脈がみられる。一過性頻脈とは、胎児が体を動かすとき(胎動があるとき)、一時的に心拍数が多くなることをいい、一定範囲で出るのが正常である。一過性の胎児心拍数変動で、多くは子宮収縮、胎動などに関連して出現する。心拍数が開始からピークまで30秒未満の急速な増加で開始から頂点までが15bpm以上、元に戻るまでの持続が15秒以上2分未満のものをいう。
5.× 逆である。「ノンレム睡眠」より「レム睡眠」の時間が長い。人間の眠りは、一生のうちでゆるやかに変化する。胎児期と新生児期にはレム睡眠が大半を占める。なぜなら、レム睡眠は、大脳の未発達な生物の眠りに似た古い型の眠りといわれており、脳の発達していない原始的な動物の場合、小さくてあまり使わない脳を休ませる必要が少ないため。レム睡眠は脳が活発に働いており、記憶の整理や定着が行われ、夢を見る浅い眠りである。目がぴくぴく活発に動く、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)があることからREM(レム)睡眠と呼ばれる。ノンレム睡眠では大脳は休息していると考えられ、脳や肉体の疲労回復のために重要とされる。レム睡眠が徐々に低下して覚醒に変わっていく。

 

 

 

 

 

 

38 38℃以上の発熱がある妊婦でLencki<レンキ>の臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準に当てはまるのはどれか。2つ選べ。

1.子宮の圧痛
2.羊水の混濁
3.腟分泌物の増加
4.母体脈拍110/分
5.白血球数12,000/μL

解答1・4

解説

Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準

絨毛膜羊膜炎とは、腟からの上行性感染により細菌が絨毛膜羊膜に至り、そこに止まっている状態を指す。この細菌が、破水などにより子宮腔内へ波及した状態が子宮内感染症である。したがって、子宮内感染症では、胎児感染も引き起こされている可能性がある。症状としては、発熱、子宮圧痛、悪臭のある羊水、膿性の頸管分泌物、母体または胎児の頻脈などがある。診断には母体の発熱、頻脈や白血球 15000/μL以上などがあげられる。

【Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準】
母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛膜羊膜炎と診断するものである。

(※参考:「子宮内感染について」より)

1.4.〇 正しい。子宮の圧痛/母体脈拍110/分は、38℃以上の発熱がある妊婦でLencki<レンキ>の臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準に当てはまる。Lenckiらによる臨床的絨毛膜羊膜炎の診断基準として、母体に38.0℃以上の発熱が認められ、 かつ ①母体頻脈≧100回/分、②子宮の圧痛、③腟分泌物・羊水の悪臭、④母体白血球数≧15,000/μLのうち、1項目以上を認めるか、母体体温が38.0℃未満あっても①から④すべてを認める場合、臨床的絨毛 膜羊膜炎と診断するものである。(※参考:「子宮内感染について」より)
2.× 羊水の「混濁」ではなく悪臭が診断基準に当てはまる。
3.× 腟分泌物の「増加」ではなく悪臭が診断基準に当てはまる。
5.× 白血球数「12,000/μL」ではなく15,000/μL以上が診断基準に当てはまる。

 

 

 

 

 

 

39 頭位分娩の分娩介助技術で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.肛門が哆開してきたら肛門保護を行う。
2.後頭結節が外れたら直ちに児頭娩出させる。
3.前在肩甲娩出時は肛門方向に軽く押す。
4.後在肩甲娩出時は産婦に努責を促す。
5.躯幹は骨盤誘導線に沿って大回りで通過させる。

解答1・3

解説

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」)

1.〇 正しい。肛門が哆開してきたら肛門保護を行う。哆開(読み:しかい)とは、離開もしくは手術後に縫合創が開いてしまった状態のことである。肛門保護は脱肛及び便による分娩野の汚染を防ぐ目的で行う。分娩第2期の排臨・発露が起こる頃に肛門が弛緩してくるため陣痛発作時には乾綿を肛門部にあてて押さえる。排臨とは、第2期に起こる陣痛発作時に陰裂間に児頭が見えて陣痛間欠期には見えなくなる現象である。
2.× 後頭結節が外れても「直ちに児頭娩出させる」必要はない。なぜなら、後頭結節が外れると児頭は急激に反屈位で飛び出してくるため。したがって、児頭の急激な娩出を防ぎながら第3回旋を助けるようにする。
3.〇 正しい。前在肩甲娩出時は肛門方向に軽く押す。母体の腹側である前在肩甲娩出時は会陰を圧しつつ児頭を母体の肛門の方向に押し下げ、恥骨弓下から前在肩甲を滑脱させる。児の前在側頭部から頸部あたりを介助しながら、児の頸部・肩甲に大きな負担をかけないように自然の娩出力を活かし、児の屈位を保ちながら児の前面内側を母体の後下方に軽く押し下げ、恥骨弓下から前在肩甲を前上腕1/2まで娩出させる。右手の会陰の保護位置を確認し、左手の手掌を児の後在側頭部から頸部にあて、骨盤誘導線方向(母体の前方向)に上げ、後在肩甲をゆっくりと娩出させる。
4.× 後在肩甲娩出時でも産婦に努責を促すことはしない。努責は発露まで行い、その後は短息呼吸へと切り替える。児頭や肩甲部が通過する際は怒責をかけてしまうと会陰裂傷を生じる可能性がある。母体の背側である後在肩甲は前在肩甲娩出後に児頭を前方に引いて娩出させる。児頭でできた裂傷や会陰切開創をさらに広げる危険性があるため、会陰保護が必要である。
5.× 躯幹は、「骨盤誘導線に沿って大回り」ではなく「骨盤誘導線の延長方向へ」通過させる。骨盤誘導線の方向に陰門から母体の腹部に向かって弧を描くようにゆっくり娩出する。

”児頭の産道通過機転”

第1回旋(屈曲):児頭が骨盤入口部に進入する時、児頭は両耳結合線を軸とする横軸回旋をして強い前屈位をとる(後頭位)。この第1回旋により、先進部は小泉門となり、小斜径で産道に接するようになる。
第2回旋(内回旋):児頭は先進する小泉門が常に母体前方に向かうように、胎児長軸を軸とする縦軸回旋をしながら下降する(前方後頭位)。分娩所要時間のうち、この過程に最も時間を要する。
第3回旋(伸展):児頭後頭部が恥骨結合下を通過して、後部が恥骨下縁に接すると、そこを支点として頭部が反屈状に横軸回旋する。この運動によって、児頭は前頭、顔面、オトガイ部の順に会陰を滑って娩出される。第1回旋の逆の動きである。
第4回旋(外回旋):児頭娩出に引き続き、肩甲の下降が起こり、それに伴って児の顔面が母体大腿内側を向く縦軸回旋をする。第2回旋の逆の動きである。

第1・第3回旋:胎児の姿勢を変化させる回旋(胎勢回旋・横軸回旋)である。
第2・第4回旋:体幹の向きが移動する回旋(胎向回旋・縦軸回旋)である。

 

 

 

 

40 光線療法が適応となる新生児黄疸の原因疾患はどれか。2つ選べ。

1.新生児肝炎
2.胆道閉鎖症
3.先天性胆道拡張症
4.遺伝性球状赤血球症
5.ABO不適合溶血性疾患

解答4.5

解説

光線療法とは?

光線療法とは、主に新生児黄疸の際に用いられる。光線療法とは、新生児に特殊な光線を当てて治療する方法である。光源は450~470nm付近の波長の青色LEDで、その光の作用で毒性の高い間接型ビリルビンを直接型に変え、体外への排出を促す。早ければ治療開始後2~3日で血中ビリルビン値は正常値に戻り、治療が完了する。

1.× 新生児肝炎とは、肝内胆汁うっ滞によって直接型ビリルビンが高くなる肝障害である。生後2ヶ月以内に黄疸、肝腫大、灰白色便、死亡便、褐色尿、体重増加不良などがある。治療法は胆汁排泄促進剤などの投与、栄養管理、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の補充などがあり、光線療法は胆汁うっ滞が原因の黄疸に対しては行われない。胆汁うっ滞はビリルビンの排泄不全であり、肝臓で処理後の抱合型高ビリルビン血症(直接ビリルビン)による黄疸を引き起こす。光線療法では強い光を使用し肝臓で処理される前の非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)を体外に速やかに排泄される形に変える治療法である。
2.× 胆道閉鎖症とは、胆汁の通り道である胆管が生後間もなく完全に詰まってしまい、胆汁を腸管内へ排泄できない疾患である。症状は生後数か月以内の黄疸、灰白色便、肝腫大、ビタミンK不足による出血傾向などがある。治療には手術療法により詰まった胆管の一部を切除、もしくは肝移植が必要になることもある。胆道閉鎖症による黄疸は胆汁うっ滞によるものであり、光線療法は行われない。
3.× 先天性胆道拡張症とは、肝内胆管や肝外胆管もしくは両方が拡張する病態である。症状は胆汁うっ滞による腹痛、上腹部腫瘤、黄疸、便色異常、胆道系の細菌感染による発熱、膵炎による腹痛、発熱および嘔吐である。3徴として右上腹部腫瘤、黄疸、腹痛がある。治療は手術療法であり、胆汁うっ滞による黄疸のため光線療法は行われない。
4.〇 正しい。遺伝性球状赤血球症は、光線療法が適応となる新生児黄疸の原因疾患である。遺伝性球状赤血球症とは赤血球膜の遺伝的異常により赤血球が破壊される疾患である。貧血、黄疸、脾腫が主な症状であり、肝臓で処理される前の非抱合型ビリルビン(間接ビリルビン)による黄疸に対して光線療法を行う。
5.〇 正しい。ABO不適合溶血性疾患は、光線療法が適応となる新生児黄疸の原因疾患である。ABO不適合溶血性疾患では血液型不適合により溶血性疾患を引き起こした際に軽度の貧血と肝臓で処理される前の非抱合型高ビリルビン血症が起きることがある。非抱合型高ビリルビン血症に対して光線療法が行われる。

 

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