第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午前41~45】

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 Aさん(64歳、女性)は夫が昨年に他界し、3人の子どもと別居しており現在1人暮らしである。婦人科外来を受診し「昨年から軟らかいかたまりが腟のところに触れられる。押すと戻るがまた出てきて困っている。下着とこすれて、おりものが多い」と訴えた。診察の結果、Aさんは膀胱下垂を中心とした骨盤臓器脱と診断された。Aさんはペッサリーによる矯正を行うことになり、助産師が保健指導を実施することとなった。

41 助産師が「骨盤内の臓器を支える力が弱くなると、一部が腟内に垂れたり、腟口から脱出して、触れることがあります」と説明すると、A さんから「私の場合は何が触れているのか知りたい」と質問があった。
 Aさんへの回答として、適切な部位はどれか。

1.膀胱
2.子宮頸部
3.腟前壁
4.後腟円蓋
5.直腸筋膜

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(64歳、女性、1人暮らし)
・「昨年から軟らかいかたまりが腟のところに触れられる。押すと戻るがまた出てきて困っている。下着とこすれて、おりものが多い」と訴えた。
・診察結果:膀胱下垂を中心とした骨盤臓器脱
・Aさんはペッサリーによる矯正を行うことになった。
・助産師が「骨盤内の臓器を支える力が弱くなると、一部が腟内に垂れたり、腟口から脱出して、触れることがあります」と説明すると、A さんから「私の場合は何が触れているのか知りたい」と質問があった。
→骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。ペッサリー療法とは 、骨盤臓器脱により子宮や膀胱、腸など膣から出てきた臓器を人工的に膣内に納める方法で、臓器の下垂に伴う不快な症状を軽減・緩和する目的で行う。Aさんの場合は「膀胱下垂を中心とした骨盤臓器脱」である。膀胱は子宮の前面に位置し、膀胱が下垂すると、膣前壁が一緒に下垂して触れることができる。したがって、腟前壁が触れる腟前壁脱が考えられる。

(※画像引用:「イラスト素材:女性の尿道」illustAC様より)

1.× 膀胱より優先度が高いものが他にある。膀胱は子宮の前面に位置し、膀胱が下垂すると、膣前壁が一緒に下垂して触れることができる。つまり、膣前壁を介して、間接的に膀胱を触れることができる。ちなみに、膀胱脱(膀胱瘤)とは、女性の膀胱と腟壁の間の支持組織が脆弱になって伸びることにより膀胱が腟壁より飛び出てくる状態である。
2.× 子宮頸部は、子宮の下から3分の1である腟につながる部分である。
3.〇 正しい。腟前壁が最も考えられる。骨盤臓器脱とは、子宮や膀胱、直腸といった骨盤臓器が下垂し腟から脱出した状態である。ペッサリー療法とは 、骨盤臓器脱により子宮や膀胱、腸など膣から出てきた臓器を人工的に膣内に納める方法で、臓器の下垂に伴う不快な症状を軽減・緩和する目的で行う。Aさんの場合は「膀胱下垂を中心とした骨盤臓器脱」である。膀胱は子宮の前面に位置し、膀胱が下垂すると、膣前壁が一緒に下垂して触れることができる。したがって、腟前壁が触れる腟前壁脱が考えられる。腟前壁脱は一般的に膀胱または尿道が突出する膀胱脱(膀胱瘤)または尿道脱(尿道瘤)などで生じる。
4.× 後腟円蓋とは、腟の最も奥にある膨らみである。子宮腟部の盛り上がりの周囲を取り巻く場所が腟円蓋であり、 腟円蓋は特に後部で広がっている(後腟円蓋)。
5.× 直腸筋膜とは、直腸を包んでいる直腸間膜を覆っている膜である。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 A さん(64歳、女性)は夫が昨年に他界し、3人の子どもと別居しており現在1人暮らしである。婦人科外来を受診し「昨年から軟らかいかたまりが腟のところに触れられる。押すと戻るがまた出てきて困っている。下着とこすれて、おりものが多い」と訴えた。診察の結果、Aさんは膀胱下垂を中心とした骨盤臓器脱と診断された。Aさんはペッサリーによる矯正を行うことになり、助産師が保健指導を実施することとなった。

42 Aさんは「ペッサリーを使うようになってから、臓器が降りてくる感じがなくなりました。でも、尿漏れが少し気になっています。自分でできることがあれば教えてほしい」と話した。助産師はKegel<キーゲル>体操の実施を提案することにした。
 説明として正しいのはどれか。2つ選べ。

1.「膀胱に尿をためて行いましょう」
2.「どんな姿勢で行ってもよいです」
3.「肩と腹に力を入れましょう」
4.「腟のあたりに力を入れて5秒間くらい維持しましょう」
5.「1回行ったら2〜3日間隔をあけましょう」

解答2・4

解説

本症例のポイント

・診察結果:膀胱下垂を中心とした骨盤臓器脱
・Aさん「ペッサリーを使うようになってから、臓器が降りてくる感じがなくなりました。でも、尿漏れが少し気になっています。自分でできることがあれば教えてほしい」と話した。
・助産師はKegel<キーゲル>体操の実施を提案することにした。
→Kegel体操とは、骨盤底筋体操のことである。骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。

1.× あえて膀胱に「尿をためておく」必要はなく、むしろ尿は空にしておいた方が良い。なぜなら、本症例は尿漏れを気にしており、骨盤底筋群が弱っていると考えられるため。尿失禁の予防やリラックスして尿道を締める動きを行うためにも膀胱は空にしてから行う。
2.4.〇 正しい。「どんな姿勢で行ってもよいです」「腟のあたりに力を入れて5秒間くらい維持しましょう」と説明する。キーゲル体操とは、骨盤底筋体操のことである。骨盤底筋は子宮、膀胱、直腸を含む骨盤臓器を支える筋肉で、骨盤底筋を強化することで尿漏れ対策となる。仰臥位が基本的な姿勢であるが、伏臥位や座位など日常生活の中でどんな姿勢で行ってもよい。尿道、肛門、腟を締める動きを行う。腟のあたりに力を入れて5秒間くらい維持する動きを2〜3回繰り返して維持する時間を少しずつ伸ばしていき、骨盤底筋群を鍛えていく。
3.× 「肩と腹」ではなく、尿道、肛門、腟を締めるように力を入れる。そうすることで骨盤底筋群を鍛えていく。
5.× 「1回行ったら2〜3日間隔をあける」必要はなく、毎日欠かさず行うことが大切である。効果がみられるまで3週間~8か月と言われる。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み41〜43の問いに答えよ。
 A さん(64歳、女性)は夫が昨年に他界し、3人の子どもと別居しており現在1人暮らしである。婦人科外来を受診し「昨年から軟らかいかたまりが腟のところに触れられる。押すと戻るがまた出てきて困っている。下着とこすれて、おりものが多い」と訴えた。診察の結果、Aさんは膀胱下垂を中心とした骨盤臓器脱と診断された。Aさんはペッサリーによる矯正を行うことになり、助産師が保健指導を実施することとなった。

43 その後の半年間、Aさんは毎月受診し経過は順調であった。A さんは「昨年から悩んでいたけど、いまはスッキリしました。治療してよかったです」と話した。今後もペッサリーの自己着脱は継続し、受診頻度は減らす方針である。
 今回の受診時に助産師が確認すべきAさんの状態はどれか。2つ選べ。

1.骨量
2.腟内pH
3.排尿の状態
4.排便の状態
5.腟出血の有無

解答3・5

解説

本症例のポイント

・骨盤臓器脱→ペッサリー、キーゲル体操を実施。
・半年間:経過順調
・A さん「昨年から悩んでいたけど、いまはスッキリしました。治療してよかったです」と話した。
・今後もペッサリーの自己着脱は継続し、受診頻度は減らす方針である。
→ペッサリーの欠点として、①感染のリスクや②おりもの過多、③出血などが起こる可能性がある。また、腹圧がかかるなどで脱落しやすくなると、膣内に留置することが困難になる。また、前問題の設問文において「尿漏れが少し気になる」「下着とこすれて、おりものが多い」と訴えていることからも、受診時に助産師が確認すべきAさんの状態を選択する。

1~2.× 骨量/腟内pHは優先度が低い。主に骨量(低下)や腟内pH(上昇)が問題となるのは更年期障害である。更年期障害とは、更年期に出現する器質的な変化に起因しない多彩な症状によって、日常生活に支障をきたす病態と定義される。更年期症状は大きく、①自律神経失調症状、②精神神経症状、③その他に分けられるが、各症状は重複して生じることが多い。治療の一つに、ホルモン補充療法(HRT)があげられる。ホルモン補充療法とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)を補うことで、更年期障害を改善する治療法である。ほてり、のぼせ、発汗などといった代表的な症状に高い効果を示す。禁忌として、エストロゲン依存性悪性腫瘍(子宮内膜癌、乳癌)またその疑いのあるもの、重症肝機能障害、血栓性疾患などがあげられる。
3.〇 正しい。排尿の状態は優先度が高い。なぜなら、骨盤臓器脱における症状であるため。骨盤臓器脱では頻尿・残尿感・尿が出しづらい急にトイレに行きたくなるなどの症状があり、骨盤臓器脱の症状が悪化していないか排尿の状態を確認する必要がある。
4.× 排便の状態より優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例には排便の状態の訴えが聞かれておらず、また骨盤臓器脱やペッサリーとも関連性も薄いため。
5.〇 正しい。腟出血の有無は優先度が高い。なぜなら、ペッサリーの欠点としてあげられるため。ペッサリーの欠点として、①感染のリスクや②おりもの過多、③出血などが起こる可能性がある。また、腹圧がかかるなどで脱落しやすくなると、膣内に留置することが困難になる。また、前問題の設問文において「尿漏れが少し気になる」「下着とこすれて、おりものが多い」と訴えていることからも、受診時に助産師が確認すべきAさんの状態を選択する。ペッサリーは挿入する期間が長いと子宮頚部付近に負担がかかり、びらんなどが生じると出血しやすくなるため腟出血の有無を確認する。またペッサリーは異物であるので、炎症や感染を起こしていないか悪臭おりものにも注意する必要がある。自己着脱を行い1日のうちペッサリーを装着していない時間を作ることが大切である。

 

 




 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、1回経産婦)。20歳から喫煙している。今回、妊娠を機に禁煙を試みたが、現在も5本/日喫煙している。妊娠36週0日、妊婦健康診査のため産婦人科病院を定期受診した。身長158cm、体重62kg(非妊時体重55kg)、血圧135/80mmHg。尿蛋白(+) 、尿糖(±)。子宮底長28cm。空腹時血糖85mg/dL。胎児推定体重1,950g、AFI8。胎児心拍数陣痛図で子宮収縮2回/40分、胎児心拍数基線120bpm、基線細変動正常、一過性頻脈3回/40分。子宮口1指開大、展退度30%、頸管長30mm。

44 現時点でのアセスメントで正しいのはどれか。

1.切迫早産
2.羊水過多
3.妊娠糖尿病
4.胎児発育不全
5.妊娠高血圧症候群<HDP>

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(40歳、1回経産婦)
・20歳から喫煙5本/日
・妊娠36週0日:身長158cm、体重62kg(非妊時体重55kg)
・血圧135/80mmHg、尿蛋白(+) 、尿糖(±)。
・子宮底長28cm。空腹時血糖85mg/dL。胎児推定体重1,950g、AFI8。
・胎児心拍数陣痛図:子宮収縮2回/40分、胎児心拍数基線120bpm、基線細変動正常、一過性頻脈3回/40分。
・子宮口1指開大、展退度30%、頸管長30mm。
→本症例は胎児発育不全(FGR)が疑われる。胎児発育不全(FGR)と診断されるのは胎児推定体重が「-1.5SD以下」のときである。これを言い換えると「同じ週数の赤ちゃんを体重の小さい順に並べたとき、100人中で7番目以下」が胎児発育不全(FGR)の診断を受けることになる。胎児発育不全(FGR)とは、何らかの理由で子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために、在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態である。

1.× 切迫早産とは、子宮収縮が規則的かつ頻回に起こることにより子宮口が開き、早産となる危険性が高い状態である。頸管長が妊娠28週未満で30mm未満は切迫早産と診断とされる場合が多いが、Aさんの頸管長は30 mmあり、出血や頻回な子宮収縮の症状もなく切迫早産とはいえない。なお喫煙は切迫早産のリスクが高まる。
2.× 羊水過多とは、羊水量が800 mLを超える場合であり、母体の糖尿病や児が羊水をうまく飲めない消化管閉鎖などが原因となることが多い。診断方法は超音波検査によるamniotic fluid index(AFI)の計測であり、AFIの正常範囲は5~24cmであり、24cm以上は羊水過多を意味する。AさんのAFIは8cmであり、正常である。
3.× 妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見された糖代謝異常である。診断基準は糖負荷試験をした際に、空腹時血糖92mg/dL以上、1時間値180mg/dL以上、2時間値153mg/dL以上のいずれか1点以上を満たした場合であるが、Aさんは空腹時血糖85 mg/dLであり、血糖値は問題ない。
4.〇 正しい。胎児発育不全(FGR)とは、何らかの理由で子宮内での胎児の発育が遅延あるいは停止したために在胎週数に相当した胎児の発育が見られない状態をいう。胎児発育不全(FGR)の診断基準は胎児体重基準値を用いて、基準範囲からのずれの程度(-1.5SD値以下)が目安となる。母体の要因として母体疾患や喫煙によるものがある。36週ごろには胎児推定体重は2500〜3000gほどであるが、Aさんは妊娠36週0日で胎児推定体重1950 gと少なめであり、胎児発育不全である。
5.× 妊娠高血圧症候群<HDP>とは、妊娠時に収縮期血圧が140mmHg以上(重症では160 mmHg以上)、あるいは拡張期血圧が90mmHg以上(重症では110 mmHg以上)の高血圧を発症した場合をいう。Aさんの血圧は135/80mmHgであり、妊娠高血圧症候群ではない。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 Aさん(40歳、1回経産婦)。20歳から喫煙している。今回、妊娠を機に禁煙を試みたが、現在も5本/日喫煙している。妊娠36週0日、妊婦健康診査のため産婦人科病院を定期受診した。身長158cm、体重62kg(非妊時体重55kg)、血圧135/80mmHg。尿蛋白(+) 、尿糖(±)。子宮底長28cm。空腹時血糖85mg/dL。胎児推定体重1,950g、AFI8。胎児心拍数陣痛図で子宮収縮2回/40分、胎児心拍数基線120bpm、基線細変動正常、一過性頻脈3回/40分。子宮口1指開大、展退度30%、頸管長30mm。

45 妊娠37週3日、午前1時にAさんから病院に電話があり「30分位前から時々下腹部の痛みを感じています。茶色いおりものが少量でています」と言う。
 助産師がAさんから聴取する情報で最も重要なのはどれか。

1.次回の受診予約
2.食事摂取の時間
3.胎動の有無
4.便秘の有無

解答

解説

本症例のポイント

・妊娠37週3日
・Aさん「30分位前から時々下腹部の痛みを感じています。茶色いおりものが少量でています」と。
→本症例の発言だけでは、正常か?異常か?の判断がつきにくい。正常の場合は、陣痛の再来と判断できるが、異常の場合は常位胎盤早期剥離が考えられる。ちなみに、常位胎盤早期剥離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、通常は妊娠20週以降に剥がれてしまうことである。性器出血や激しい腹痛が起こり、ショック状態を起こすこともある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。治療の原則は、可能な限り速やかに分娩を行うこととされている。短時間のうちに経腟分娩が可能と判断される場合は、経腟での分娩を試みることもあるが、多くの場合は緊急帝王切開術で分娩を行う。

1.× 次回の受診予約より優先度が高いものが他にある。なぜなら、異常の場合(常位胎盤早期剥離)は処置が必要であるため。治療の原則は、可能な限り速やかに分娩を行うこととされている。短時間のうちに経腟分娩が可能と判断される場合は、経腟での分娩を試みることもあるが、多くの場合は緊急帝王切開術で分娩を行う。
2.4.× 食事摂取の時間/便秘の有無より優先度が高いものが他にある。本症例の発言だけでは、正常か?異常か?の判断がつきにくい。正常の場合は、陣痛の再来と判断できるが、異常の場合は常位胎盤早期剥離が考えられる。ちなみに、常位胎盤早期剥離とは、子宮壁の正常な位置に付着している胎盤が、通常は妊娠20週以降に剥がれてしまうことである。性器出血や激しい腹痛が起こり、ショック状態を起こすこともある。胎盤が早い時期に剥がれると、在胎週数の割に成長しなかったり、死亡することさえある。治療の原則は、可能な限り速やかに分娩を行うこととされている。短時間のうちに経腟分娩が可能と判断される場合は、経腟での分娩を試みることもあるが、多くの場合は緊急帝王切開術で分娩を行う。
3.〇 正しい。胎動の有無が最も優先される。なぜなら、Aさん「30分位前から時々下腹部の痛みを感じています。茶色いおりものが少量でています」という発言が、正常か?異常か?の判断をつけやすくなるため。胎動の有無で胎児の健康状態を判断する一助となる。

 

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