第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午後41~45】

 

次の文を読み39〜41の問いに答えよ。
 Aさん(36 歳、初産婦)。祖父と母親が2型糖尿病の治療を受けている。自然妊娠して妊娠初期に、妊娠中の明らかな糖尿病〈overt diabetes in pregnancy〉の診断を受けた。妊娠中は、自己血糖測定の値に応じてインスリン自己注射を行い、食事は6回の分割食で血糖コントロールは良好であった。3,400 gの児を正常分娩にて出産し母児同室中である。

41 出産後6か月、糖尿病の定期検査のため来院した。血糖コントロールは良好である。Aさんは「退院後は自分の糖尿病の治療と初めての育児で毎日が大変でした。でも、最近は自分なりの育児ができるようになり、自信がついてきました。近い将来、もう1人子どもが欲しいです」と言う。
 Aさんへの説明として適切なのはどれか。

1.「次回の妊娠に向けて、引き続き血糖をコントロールしていきましょう」
2.「糖尿病が治ってから妊娠をするようにしましょう」
3.「月経が再開したらインスリンは終了できます」
4.「お子さんは糖尿病になる心配はないでしょう」

解答

解説

本症例のポイント

・出産後6か月:糖尿病の定期検査のため来院。
・血糖コントロール:良好
・Aさん「退院後は自分の糖尿病の治療と初めての育児で毎日が大変でした。でも、最近は自分なりの育児ができるようになり、自信がついてきました。近い将来、もう1人子どもが欲しいです」と。
→本症例は、「1人子どもが欲しいです」と挙児希望である。挙児希望とは、医療現場では来院時に子どもを生むことを希望している場合を呼ぶ。ただし、施設や論文の中で、それぞれ厳密に異なるときがあり、すぐにではなくとも将来的に子どもを望んでいれば 「挙児希望」に含まれることもある。

2型糖尿病の原因は、生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

1.〇 正しい。「次回の妊娠に向けて、引き続き血糖をコントロールしていきましょう」と説明する。本症例の現在の血糖コントロールは良好であり、次回の妊娠も希望されているため前向きに今後も引き続き血糖コントロールをする声かけを行うべきである。
2.× 「糖尿病が治ってから妊娠をするようにしましょう」と伝える必要はない。なぜなら、1型・2型糖尿病にかかわらず、短期的に完治するものではないため。早い段階で発見し、治療を続けていくことが大切で、食事をコントロールし、脂肪の蓄積が減ると、膵臓でのインスリンの産生が改善する。妊娠も血糖をコントロールしながら計画的に医療関係者と相談しながら進めていく。
3.× 「月経が再開したらインスリンは終了できます」と伝える必要はない。なぜなら、インスリンの終了は、「月経再開の有無」ではなく主治医の判断(血糖値など)であるため。ちなみに、インスリンとは、膵臓のβ細胞で産生されるペプチドホルモンである。血中を流れるブドウ糖が、肝臓、脂肪細胞、骨格筋細胞に取り込まれるよう促し、炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝を調節する。月経が再開しても授乳量と血糖コントロールの状態によっては、インスリンは継続する必要がある。
4.× 「お子さんは糖尿病になる心配はないでしょう」と伝える必要はない。なぜなら、2型糖尿病の原因は、生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下であるため。生活習慣によっては、誰でも糖尿病を発症する可能性は考えられる。

2型糖尿病の知識

 1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

①末梢組織のインスリン感受性の改善(ぶどう糖の利用を増加させる)
②筋量増加、体脂肪・血中の中性脂肪の減少。(HDLは増加する)
③摂取エネルギーの抑制、消費エネルギーの増加。
④運動耐容能の増強。

【糖尿病患者に対する運動療法】
運動強度:一般的に最大酸素摂取量の40~60%(無酸素性代謝閾値前後)、ボルグスケールで『楽である』〜『ややきつい』
実施時間:食後1〜2時間
運動時間:1日20〜30分(週3回以上)
消費カロリー:1日80〜200kcal
運動の種類:有酸素運動、レジスタンス運動(※対象者にあったものを選択するのがよいが、歩行が最も簡便。)

【運動療法の絶対的禁忌】
・眼底出血あるいは出血の可能性の高い増殖網膜症・増殖前網膜症。
・レーザー光凝固後3~6カ月以内の網膜症。
・顕性腎症後期以降の腎症(血清クレアチニン:男性2.5mg/dL以上、女性2.0mg/dL以上)。
・心筋梗塞など重篤な心血管系障害がある場合。
・高度の糖尿病自律神経障害がある場合。
・1型糖尿病でケトーシスがある場合。
・代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値≧250mg/dLまたは尿ケトン体中等度以上陽性)。
・急性感染症を発症している場合。

(※参考:「糖尿病患者さんの運動指導の実際」糖尿病ネットワーク様HPより)

 

 




 

 

次の文を読み42〜44の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、初産婦、未婚)。高校卒業後、友人を頼りに上京したが、定職がなく不定期のアルバイトで収入を得て生活をしている。元来、月経周期が不規則であり、最近は長期間無月経であったが気にせず過ごしていた。3日ほど前から下腹部に時々痛みを感じ、腫れた感じがするため、産婦人科医院を受診した。
 診察前の尿検査で妊娠反応陽性、超音波検査で子宮内に胎児が確認され、児頭大横径55mm。子宮底長20cm、腹囲66cm。最終月経の開始日は6か月前である。現在交際中のパートナーはなく、3か月前までは複数の男性との交際歴があり胎児の父親は不明であるという。

42 妊娠週数の正確な推定のために最も有用な情報はどれか。

1.腹囲
2.子宮底長
3.児頭大横径
4.最終月経の開始日
5.尿中ヒト絨毛性ゴナドトロピン値

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(21歳、初産婦、未婚)
・不定期のアルバイトで収入を得て生活。
・元来:月経周期が不規則
・最近:長期間無月経
・3日ほど前:下腹部に時々痛みを感じ、腫れた感じ。
・診察前の尿検査:妊娠反応陽性
・超音波検査:子宮内に胎児(児頭大横径55mm、子宮底長20cm、腹囲66cm)
・最終月経の開始日:6か月前
・現在交際中のパートナーはなく、3か月前までは複数の男性との交際歴があり胎児の父親は不明であるという。
→本症例は、「最終月経の開始日:6か月前」であることから、妊娠6~7か月と推定できる。頭殿長<CRL>が 13〜41mm(8週0日~11週3日)において、分娩予定日(妊娠週数)決定を予想できる。これは最終月経からの正確な分娩予定日の決定には、胎児の頭臀長(CRL:crown rump length)が妊娠週数とよく相関するためとされている。最終月経からの予定日と CRL からの予定日との間に7日以上のずれがある場合には、CRL からの予定日を採用する。妊娠12週以降では、胎動などの影響により頭殿長<CRL>の誤差が大きくなるため、児頭大横径を測定して予定日を決定する。

(※図引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P43」公益社団法人 日本産科婦人科学会より)

1.× 腹囲は、胎児の発育状況や羊水量を推定する目的で測定することが多い。
2.× 子宮底長とは、恥骨の中央から子宮の上の端までの直線距離を計測した数値のことで、子宮がどれくらい大きくなっているかを表したものである。超音波検査がなかったころは、「妊娠何か月だと子宮底長は何cmくらい」という基準値と照らし合わせて、胎児の大きさや羊水の量などが妊娠週数相応に育っているかどうか、ひとつの目安にしていた。
3.〇 正しい。児頭大横径が、妊娠週数の正確な推定のために最も有用な情報である。本症例は、「最終月経の開始日:6か月前」であることから、妊娠6~7か月と推定できる。頭殿長<CRL>が 13〜41mm(8週0日~11週3日)において、分娩予定日(妊娠週数)決定を予想できる。これは最終月経からの正確な分娩予定日の決定には、胎児の頭臀長(CRL:crown rump length)が妊娠週数とよく相関するためとされている。最終月経からの予定日と CRL からの予定日との間に7日以上のずれがある場合には、CRL からの予定日を採用する。妊娠12週以降では、胎動などの影響により頭殿長<CRL>の誤差が大きくなるため、児頭大横径を測定して予定日を決定する。
4.× 最終月経の開始日から妊娠週数を予測することは可能であるが、Aさんは月経周期が不規則で、最近は長期間無月経であったことから最終月経からの正確な推定は難しい。
5.× 尿中ヒト絨毛性ゴナドトロピン値(hCG)は、妊娠の診断とその経過観察、流産や子宮外妊娠の補助診断、絨毛性疾患の診断や術後管理などに用いられる。ちなみに、hCG<ヒト絨毛性ゴナドトロピン>は、主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしているほか、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用も報告されている。

子宮底長とは?

子宮底長とは、恥骨の中央から子宮の上の端までの直線距離を計測した数値のことで、子宮がどれくらい大きくなっているかを表したものである。医師や助産師が恥骨結合(股関節付近の左右の恥骨をつなぐ部分)の上縁にメジャーの端をあて、子宮低の最高点のところまでの長さを測る。子宮底長の測定方法として、基本的に診察台に仰向け(膝軽度屈曲位)で、お腹を出して行う。子宮底長の基準値は、妊娠5ヶ月未満までは「妊娠月数 × 3cm」の計算式で求められる。胎児の成長も早くなり、羊水量も増える妊娠6ヶ月以降は「妊娠月数 × 3cm + 3cm」が基準値である。おなかのふくらみが分かる妊娠4ヶ月くらいから測り始める。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み42〜44の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、初産婦、未婚)。高校卒業後、友人を頼りに上京したが、定職がなく不定期のアルバイトで収入を得て生活をしている。元来、月経周期が不規則であり、最近は長期間無月経であったが気にせず過ごしていた。3日ほど前から下腹部に時々痛みを感じ、腫れた感じがするため、産婦人科医院を受診した。
 診察前の尿検査で妊娠反応陽性、超音波検査で子宮内に胎児が確認され、児頭大横径55mm。子宮底長20cm、腹囲66cm。最終月経の開始日は6か月前である。現在交際中のパートナーはなく、3か月前までは複数の男性との交際歴があり胎児の父親は不明であるという。

43 Aさんは、初診時には妊娠に困惑した様子で「お金もないし、相手も分からないので育てる自信がない。両親にも伝えていない」と話した。助産師はAさんにまず両親に連絡を取ることを勧めた。2回目の受診時、Aさんは「お父さんもお母さんも怒っていたけど、生まれたら実家で一緒に育てようと言ってくれた。産みたいと思う」と明るい表情で話した。Aさんは助産師と相談の上、現在の産婦人科医院で分娩してから、児とともに退院後すぐに実家に帰って生活することを予定した。
 助産師がAさんのサポートのために分娩前から連絡をとる関係機関で適切なのはどれか。

1.保育所
2.警察署
3.児童相談所
4.ハローワーク
5.市町村保健センター

解答

解説

本症例のポイント

・初診時のAさん:妊娠に困惑した様子。
・Aさん「お金もないし、相手も分からないので育てる自信がない。両親にも伝えていない」と。
・助産師:Aさんにまず両親に連絡を取ることを勧めた。
・2回目受診:Aさん「お父さんもお母さんも怒っていたけど、生まれたら実家で一緒に育てようと言ってくれた。産みたいと思う」と明るい表情で話した。
・予定:児とともに退院後すぐに実家に帰って生活する
→近年、子育てに困難を生じる事例も増えてきているが、様々な子育ての形が見受けられる。本症例のような実家で一緒に育てる形も珍しくない。福祉法第6条5項に「養育支援訪問事業とは、厚生労働省令で定めるところにより、乳児家庭全戸訪問事業の実施その他により把握した保護者の養育を支援することが特に必要と認められる児童(第八項に規定する要保護児童に該当するものを除く。以下「要支援児童」という。)若しくは保護者に監護させることが不適当であると認められる児童及びその保護者又は出産後の養育について出産前において支援を行うことが特に必要と認められる妊婦(以下「特定妊婦」という。)(以下「要支援児童等」という。)に対し、その養育が適切に行われるよう、当該要支援児童等の居宅において、養育に関する相談、指導、助言その他必要な支援を行う事業をいう」と規定されている(※一部引用「福祉法第6条5項」e-GOV法令検索様HPより)。特定妊婦とは、妊娠中から家庭環境におけるハイリスク要因を特定でき、出産前の支援が必要な妊婦のことである。ハイリスク要因には、収入基盤の不安定さ、親が知的・精神的障害者、若年の妊婦、妊婦健康診査未受診、妊娠届の未提出などがある。

1.× 保育所より優先度が高いものが他にある。保育所とは、保育を必要とする乳幼児を預かり、保育する施設である。
2.× 警察署より優先度が高いものが他にある。警察署とは、警察署は一定地域内の警察に関する事務を扱う役所である。
3.× 児童相談所より優先度が高いものが他にある。児童相談所とは、児童福祉の専門機関であり、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、共に考え、問題を解決していく専門の相談機関である。
4.× ハローワークより優先度が高いものが他にある。ハローワーク(公共職業安定所)とは、就職困難者の支援など地域の総合的雇用サービス機関であり主な業務として、①職業相談、②職業紹介、③求人確保、④事業主に対する助言・窓口業務、⑤就職後の障害者に対する助言・指導 などがあげられる。
5.〇 正しい。市町村保健センターが、助産師がAさんのサポートのために分娩前から連絡をとる関係機関である。市町村保健センターとは、健康相談、保健指導、健康診査など、地域保健に関する事業を地域住民に行うための施設である。地域保健法に基づいて多くの市町村に設置されている。産前・産後の事業も行われている。

児童相談所とは?

児童相談所は、「児童福祉法」に基づいて設置される行政機関であり、都道府県、指定都市で必置となっている。原則18歳未満の子供に関する相談や通告について、子供本人・家族・学校の先生・地域の方々など、どなたからも受け付けている。児童相談所は、すべての子供が心身ともに健やかに育ち、その持てる力を最大限に発揮できるように家族等を援助し、ともに考え、問題を解決していく専門の相談機関である。

職員:児童福祉司、児童心理司、医師または保健師、弁護士 等。所長は、医師で一定の者、大学等で心理学を専修する学科を卒業した者、社会福祉士、児童福祉司で一定の者 等。

【業務内容】
①助言指導 
②児童の一時保護
③児童福祉施設等への入所措置
④児童の安全確保
⑤里親に関する業務
⑥養子縁組に関する相談・支援

(参考:「児童相談所とは」東京都児童相談センター・児童相談所様HPより)

 

 

 

 

 

 

 

次の文を読み42〜44の問いに答えよ。
 Aさん(21歳、初産婦、未婚)。高校卒業後、友人を頼りに上京したが、定職がなく不定期のアルバイトで収入を得て生活をしている。元来、月経周期が不規則であり、最近は長期間無月経であったが気にせず過ごしていた。3日ほど前から下腹部に時々痛みを感じ、腫れた感じがするため、産婦人科医院を受診した。
 診察前の尿検査で妊娠反応陽性、超音波検査で子宮内に胎児が確認され、児頭大横径55mm。子宮底長20cm、腹囲66cm。最終月経の開始日は6か月前である。現在交際中のパートナーはなく、3か月前までは複数の男性との交際歴があり胎児の父親は不明であるという。

44 その後、Aさんは定期的に妊婦健康診査を受診し、経過は順調であった。妊娠31週頃より左鼠径部に限局して痛みが強い水疱を伴う複数の皮疹が出現した。妊娠32週に血清抗体検査が行われ、検査結果では単純ヘルペス抗体検査はIgGとIgMいずれも陰性、水痘・帯状疱疹ウイルス抗体IgG陽性、IgM陰性であった。妊娠34週に受診の際には皮疹は痂皮化していた。
 この時点で助産師のAさんへの説明で正しいのはどれか。

1.「母乳での育児はできません」
2.「痛みが残ることはありません」
3.「胎児への感染の心配はありません」
4.「分娩後はワクチンを接種しましょう」
5.「原因ウイルスの初回の感染で生じた症状です」

解答

解説

本症例のポイント

・Aさんの経過:順調。
・妊娠31週頃:左鼠径部に限局して痛みが強い水疱を伴う複数の皮疹が出現。
・妊娠32週:①血清抗体検査(単純ヘルペス抗体検査:IgGとIgMいずれも陰性)、②単純ヘルペス抗体検査(IgGとIgMいずれも陰性)、③水痘・帯状疱疹ウイルス抗体:IgG陽性、IgM陰性であった。
妊娠34週:皮疹は痂皮化していた。
→本症例は、帯状疱疹が疑われる。なぜなら、水痘・帯状疱疹ウイルス抗がIgG陽性であるため。帯状疱疹は、子供の頃にかかった水痘ウイルスが数十年の潜伏期間を経て、免疫力が低下した時などに再活性化(回帰感染)して起こる。赤い斑点や水痘、激しい痛みを生じる。

1.× 「母乳での育児はできません」と説明する必要はない。なぜなら、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染力は、発疹出現1~2日前から水疱が痂皮化するまでであるため。なお、感染経路は飛沫・空気感染や、水疱や粘膜の排出物との接触感染であり、母乳から感染することはない。ちなみに、胎児には産道感染する。
2.× 「痛みが残ることはありません」と説明する必要はない。なぜなら、水痘・帯状疱疹ウイルスは、帯状疱疹の皮疹が消失し、帯状疱疹が治癒した後にも帯状疱疹後神経痛として痛みが残る場合があるため。代表的な症状は持続的に焼けるような痛みや一定の時間で刺すような痛みを繰り返すといったものである。
3.〇 正しい。「胎児への感染の心配はありません」と説明する。なぜなら、今回34週の時点で痂皮化しているため。水痘・帯状疱疹ウイルスは、分娩前後4日に水痘を発症した場合は新生児に重症水痘として感染する確率が高いとされる。また、妊娠20週までに感染すると胎児が0.4〜2.0%の確率で皮膚の瘢痕・眼球症状・四肢の異常・中枢神経症状・低出生体重などの先天性水痘症候群を生じるとされる。ちなみに、先天性水痘症候群は、水痘に対する免疫を持たない妊婦の初感染者で、胎児に産道感染する。
4.× 「分娩後はワクチンを接種しましょう」と説明する必要はない。なぜなら、「分娩後にワクチンを接種する」のではなく、妊娠前に予防接種を受けておくことが大切であるため。
5.× 「原因ウイルスの初回の感染で生じた症状です」と説明する必要はない。なぜなら、本症例の水痘・帯状疱疹ウイルス抗体は、IgG陽性、IgM陰性であったため。IgMが陽性でないことから、「水痘」ではなく帯状疱疹の可能性が高く、初回の感染ではないと判断できる。ちなみに、初回の発症は水疱瘡と呼ばれ、再発による症状は帯状疱疹と呼ばれる。ただし、どちらも症状は同様である。初期症状に疼痛と掻痒感が見られた後に紅斑と水疱が現れ、水疱は1週間ほどで自然に潰れ、さらに1週間ほどで痂皮化する。

先天性水痘症候群とは?

先天性水痘症候群とは、妊娠初期(特に妊娠13~20週)において、水痘になってしまった場合、ウイルスが胎盤を経て胎児に感染することである。頻度は、1~2%以下で、症状は四肢皮膚瘢痕、四肢低形成、眼症状(小眼球症など)、神経症状(小頭症、水頭症など)などである。

 

 




 

 

次の文を読み45〜47の問いに答えよ。
 Aさん(32歳、初産婦)。妊娠36週0日、胎児機能不全のため緊急帝王切開を受け、男児を出産した。児は出生時、自発呼吸・体動を認めず、生後30秒で心拍数が30/分のためバッグ・マスク換気を開始し、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉モニターを装着した。その後のモニター値と児の状態を以下に示す。

45 バッグ・マスク換気の中止を検討すべきなのはいつか。

1.生後1分
2.生後1分30秒
3.生後2分
4.生後2分30秒
5.生後3分

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦)
・妊娠36週0日:男児を出産(胎児機能不全のため緊急帝王切開)
・児:出生時、自発呼吸・体動を認めず、生後30秒で心拍数が30/分。
・バッグ・マスク換気を開始。
→胎児機能不全(胎児仮死、胎児ジストレスとも)とは、お産の途中でさまざまな原因によって胎児が低酸素状態になることをいう。 原因としては母体の妊娠高血圧症候群、胎盤早期剥離、臍帯の圧迫などである。新生児蘇生法ガイドライン(NCPR)に従って蘇生初期処置を行い、蘇生終了後、新生児の健康に不安がある場合、新生児管理に関する十分な知識と経験がある医師に相談する。ちなみに、バッグバルブマスク(BVM)換気とは、呼吸停止または重度の換気不全の場合に人工換気を迅速に行う手段である。バッグ・マスク換気は、無呼吸あえぎ呼吸心拍数100回/分未満の場合が適応である。

1.× 生後1分では時期尚早である。なぜなら、生後1分では、SPO2:50%で体動も呼吸も見られていないため。ちなみに、バッグバルブマスク(BVM)換気とは、呼吸停止または重度の換気不全の場合に人工換気を迅速に行う手段である。
2〜3.× 生後1分30秒/生後2分では時期尚早である。なぜなら、あえぎ呼吸はみられ始めているが、換気不全状態であることは変わらないため。ちなみに、あえぎ呼吸とは、瀕死状態で認められるほぼ完全な呼吸中枢機能消失による異常な呼吸パターンで、開口しておこなう深い努力様呼吸である。毎分数回以下の徐呼吸となり、長い呼吸停止をともなう。 吸気時に呼吸補助筋の協働運動のため頭部を後ろへ反らす動きを認める。
4.〇 正しい。生後2分30秒でバッグ・マスク換気の中止を検討すべきである。バッグ・マスク換気は、無呼吸あえぎ呼吸心拍数100回/分未満の場合が適応である。生後2分30秒からはSPO2:95%まで上昇しており、自発呼吸も見られているためバッグ・マスク換気の中止を検討すべきである。
5.× 生後3分では検討するのが遅い。なぜなら、バッグ・マスク換気は、無呼吸あえぎ呼吸心拍数100回/分未満の場合が適応であるため。選択肢.4生後2分30秒の時点でバッグ・マスク換気の中止を検討である。

JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)

(※図引用:「JRC蘇生ガイドライン2015オンライン版‐第4章 新生児の蘇生(NCPR)」一般社団法人 日本蘇生協議会
より)

 

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