第104回(R3) 助産師国家試験 解説【午後6~10】

 

6 臓器移植では拒絶反応の主要な要因となる分子であり、妊娠では絨毛細胞における特殊な発現様式が胎児に対する母体の免疫学的受容に深くかかわっているのはどれか。

1.エストロゲン受容体
2.プロゲステロン受容体
3.ヒト白血球抗原〈HLA〉
4.ヒト絨毛性ゴナドトロピン

解答

解説

1.× エストロゲン受容体(ER:Estrogen Receptor、卵胞ホルモン受容体)とは、エストロゲン(卵胞ホルモン)が結びつくがん細胞の表面に発現する分子である。エストロゲン受容体陽性乳がんはエストロゲンを取り入れて増殖する性質がある。ホルモン療法ではエストロゲンの産生を抑制したり、エストロゲンとエストロゲン受容体の結合を阻止して、がん細胞の増殖を抑える。したがって、乳がんなどの一部のがん細胞に関係しているが、設問の「臓器移植」や「母体の免疫学的受容」には関与しているとはいえない。
2.× プロゲステロン受容体(PgR:progesterone receptor、黄体ホルモン受容体)とは、プロゲステロン(黄体ホルモン)が結びつくがん細胞の表面に発現する分子である。細胞の中でホルモンが作用する部分をレセプター(受容体)という。したがって、選択肢1.エストロゲン受容体と同様に、乳がんなどの一部のがん細胞に関係しているが、設問の「臓器移植」や「母体の免疫学的受容」には関与しているとはいえない。
3.〇 正しい。ヒト白血球抗原〈HLA:Human Leukocyte Antigen〉が、臓器移植では拒絶反応の主要な要因となる分子であり、妊娠では絨毛細胞における特殊な発現様式が胎児に対する母体の免疫学的受容に深くかかわっている。ヒト白血球抗原とは、ほぼすべての細胞と体液に分布しており、ヒトの免疫に関わる重要な分子である組織適合性抗原として働いている。造血幹細胞移植や臓器移植では、自分のヒト白血球抗原に合わないものをすべて攻撃してしまうため、ヒト白血球抗原の適合性が重要視される。胎盤絨毛細胞(トロホブラスト)ではヒト白血球抗原抗原を発現している。
4.× ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:human chorionic gonadotropin)は、主に絨毛組織において産生され、妊娠初期の卵巣黄体を刺激してプロゲステロン産生を高め、妊娠の維持に重要な働きをしている。また、胎児精巣に対する性分化作用や母体甲状腺刺激作用がある。絨毛性腫瘍の他に、子宮、卵巣、肺、消化管、膀胱の悪性腫瘍においても異所性発現している例もある。したがって、選択肢1.エストロゲン受容体と同様に、一部のがん細胞に関係しているが、設問の「臓器移植」や「母体の免疫学的受容」には関与しているとはいえない。

 

 

 

 

 

 

7 抗RhD抗体陰性の妊婦に対して抗D免疫グロブリンを投与すべき時期はどれか。

1.陣痛発来時点
2.羊水穿刺の直後
3.正期産の産褥5日
4.妊娠5週での自然流産直後

解答

解説

抗Rh(D)抗体陰性とは?

Rh不適合妊娠とは、お母さんのRh式血液型がおなかのなかの赤ちゃんと異なる場合に起こる。血液細胞(赤血球)の表面に、RhD抗原という物質を持っている人がRh陽性(プラス)、持たない人がRh陰性(マイナス)になる。赤ちゃんは、お母さんとお父さんの遺伝子を半分ずつ引継ぎますので、お母さんがRh陰性でも、お父さんがRh陽性であれば、Rh陽性の赤ちゃんが生まれてくる。日本人の場合、90%以上の赤ちゃんがRh陽性になる。Rh陽性の赤ちゃんを妊娠したRh陰性のお母さんは、妊娠中、特別な注意が必要となる。

【Rh陰性妊婦の取り扱い】
1. 妊娠28週前後および分娩後に抗Rh抗体価の有無を確認する。
2. 妊婦が抗Rh抗体価陰性の場合、以下の検査・処置を行う。
 1)妊掻28週前後に母体感作予防目的で抗D免疲グロプリンを投与する。
 2)児がRh陽性であることを確認し、分娩後72時間以内に感作予防のため母体に抗D免疫グロブリンを投与する
 3)感作予防のために抗D免疫グロプリンを以下の場合に投与する。
   妊娠7週以降まで児生存が確認できた自然流産後、妊娠7週以降の人工流産・異所性妊娠後、腹部打撲後、妊娠中の検査・処置後(羊水穿刺、胎位外回転術等)
3. 抗Rh抗体陽性の場合、妊娠後半期は4週ごとに抗Rh抗体価を測定する。
4. 抗Rh抗体価が高値の場合、妊娠後半期に1~2週ごとに超音波検査で胎児水腫および胎児貧血について評価する。
(一部引用:「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」より)

1.× 陣痛発来時点は、抗D免疫グロブリンを投与すべき時期ではない。なぜなら、Rh陰性妊婦の取り扱いとして妊娠28週前後および分娩後に抗Rh抗体価の有無を確認するため。したがって、陣痛発来時点での投与は遅すぎる。ちなみに、妊娠28週以降は感作のリスクが上昇するといわれ、妊娠28週前後で抗Rh(D)抗体の有無を確認した後に抗D免疫グロブリンを投与して以降の感作を予防する。
2.〇 正しい。羊水穿刺の直後が抗RhD抗体陰性の妊婦に対して抗D免疫グロブリンを投与すべき時期である。羊水穿刺を行う際には抗体価測定を行って事前の感作の有無を確認した上で検査を行い、抗D免疫グロブリンを投与するのが望ましい。
3.× 正期産の産褥5日は、抗D免疫グロブリンを投与すべき時期ではない。なぜなら、児がRh陽性であることを確認し、分娩後72時間以内に感作予防のため母体に抗D免疫グロブリンを投与するため。
4.× 妊娠5週での自然流産直後は、抗D免疫グロブリンを投与すべき時期ではない。感作予防のために抗D免疫グロプリンを投与する場合は、①妊娠7週以降まで児の生存が確認できた自然流産後、②妊娠7週以降の人工流産・異所性妊娠後、③腹部打撲後、④妊娠中の検査・処置後(羊水穿刺、胎位外回転術等)が挙げられている。

 

 




 

 

8 在胎22週の胎児の状態はどれか。

1.音に対する明らかな反応がある。
2.全身に胎脂の付着を認める。
3.覚醒期が認められる。
4.呼吸様運動を認める。

解答

解説

1.× 音に対する明らかな反応があるのは、早くて妊娠24週頃である。ちなみに、胎児の耳は妊娠5ヶ月(16~19週)頃に外見上の形ができあがる。
2.△ 全身に胎脂の付着を認めるのは、妊娠20~24週頃である。ただし、胎脂が作られ始めるのは妊娠16〜19週であるが量には個人差がある。在胎22週のすべての胎児が全身に胎脂の付着を認めるとはいえず、選択肢の中により優先度が高いものが他にあるため今回は△としている。詳しくわかる方はコメントください。
3.× 覚醒期が認められるのは、妊娠28週以降である。妊娠後期とは、妊娠8か月(28週)〜10か月(39週)の約3か月間である。胎児は約20~30分おきに睡眠と活動を交互に行い、寝たり起きたりを繰り返すようになる。また、胎児の心拍数が二相性となる。胎動により一過性頻脈も認めるようになる。
4.〇 正しい。呼吸様運動を認めるのは、在胎22週の胎児の状態である。妊娠16〜17週頃から羊水を飲んでは肺の中でためてふくらませ、また吐き出すという呼吸様運動を認める。妊娠16〜17週には、超音波検査で嚥下運動や外性器の性差がわかるようになる。

妊娠週数

妊娠初期:妊娠1か月~4か月(妊娠0~15週)

妊娠中期:妊娠5か月~7か月(妊娠16~27週)

妊娠後期:妊娠8か月~10か月(妊娠28週~)

 

 

 

 

 

 

9 出生直後の新生児の哺乳前行動で適切なのはどれか。

1.自分の手を吸啜する。
2.生後2時間以降に認める。
3.覚醒レベルのState6で認める。
4.分娩中の麻酔薬による影響は少ない。

解答

解説

新生児の哺乳前行動とは?

哺乳前行動とは、哺乳行動獲得の一つの段階である。哺乳行動は、全新生児において、①哺乳前行動、②Crawling・Rooting、③捕捉、④吸啜という4つの段階を経た。したがって、哺乳行動とは、新生児が母親の乳頭を求める際の①哺乳前行動、②Crawling・Rooting、③捕捉、④吸啜というで構成される一連の行動といえる。

・哺乳前行動:自分の手を吸啜すること。
・Crawling:頭を持ち上げたり、四肢を動かし、母親の胸腹部上で全身を動かすこと。
・Rooting:口の周囲に触れると、口を乳頭に近づけていくこと。
③捕捉:口唇に触れたりすると、口唇が突き出てきて丸め、舌を出して、指や乳頭をつかむようにして閉じること。 
④吸啜:捕捉した乳頭を連続的に吸うこと。

1.〇 正しい。自分の手を吸啜することは、出生直後の新生児の哺乳前行動である。原始反射の1つである自分の手を吸啜する吸啜行動がみられる。哺乳前行動とは、哺乳行動獲得の一つの段階であり、哺乳行動とは、新生児が母親の乳頭を求める際の①哺乳前行動、②Crawling・Rooting、③捕捉、④吸啜というで構成される一連の行動といえる。
2.× 吸啜行動は、「生後2時間以降」ではなく、胎児期の在胎32〜34週以降に認める。哺乳運動には、吸啜・嚥下・呼吸の協調運動が必要である。在胎16〜17週から胎児の嚥下運動が、在胎20週ごろより吸啜様運動が見られる。そして在胎32 〜 34週以降になると、吸啜運動と嚥下運動が協調できるようになり、経口哺乳が進むようになる(一部引用:「(11)哺乳力」ネオネイタルケア様より)。
3.× 覚醒レベルの「State6」のみで認めるわけでもなく、「State4」でも認められる。覚醒レベルのState6は、「泣いている(空腹や何かしらの不快な状態)」である。一方、State4は、「輝きのある目つきをした敏活な状態で、静かに起きている」ときをさす。ちなみに、哺乳前行動は、胎児期の在胎32〜34週以降に認められ出生直後でも覚醒レベルに応じてみられる。State3から見られにくくなる。
4.× 分娩中の麻酔薬による影響は「少ない」とはいえず、むしろ大きい。なぜなら、無痛分娩などで硬膜外麻酔を分娩中に使用した場合、薬を投与しなかった児よりも生後数日間、運動機能や刺激に対する反応が劣ることがあるという研究結果があるため。

硬膜外鎮痛を受けると赤ちゃんに影響はありませんか?

お母さんの硬膜外鎮痛に用いる医療用麻薬の量が通常より多いときには、生後24時間の赤ちゃんの音や光に対する反応や運動機能が、少ない量の医療用麻薬を投与された場合に比べて低くなったという研究結果もあります。 しかしこの差は問題にならない程小さいと考えられています(※3)。また、硬膜外に投与される医療用麻薬がとても多いと、産まれてきた赤ちゃんの呼吸が一時的に弱くなる危険性がありますが(※4)、そのような悪い影響のないよう、担当医は細心の注意を払っています。

「一部引用:「無痛分娩 Q&A」日本産科麻酔学会JSOAPより」

 

(図引用:「新生児集中ケア認定看護師 栗原通子」より)

 

 




 

 

10 助産師は、中学1年生の女子生徒30名を対象とした45分間の健康教育の依頼を受けた。養護教諭と担任教諭との事前打ち合わせで、中学1年生で月経が発来した生徒が約半数であること、月経前にイライラ感、頭痛などを訴える生徒が多いことがわかった。
 今回の健康教育を行う内容で、優先度が高いのはどれか。

1.月経時の手当の仕方
2.月経前症候群の症状
3.基礎体温の測定
4.性感染症

解答

解説

本症例のポイント

・中学1年生の女子:45分間の健康教育
・①中学1年生で月経が発来した生徒が約半数であること。
・②月経前にイライラ感頭痛などを訴える生徒が多い。
→月経前症候群の症状を訴えている生徒が多いと考えられる。月経前症候群(PMS:premenstrual syndrome)とは、月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいう。原因は、はっきりとはわかっていないが、女性ホルモンの変動が関わっていると考えられている。排卵のリズムがある女性の場合、排卵から月経までの期間(黄体期)にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌される。この黄体期の後半に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、PMSの原因と考えられている。しかし、脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスなどの影響を受けるため、PMSは女性ホルモンの低下だけが原因ではなく多くの要因から起こるといわれている。精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがある。とくに精神状態が強い場合には、月経前不快気分障害(PMDD)の場合もある。治療法として、①日常生活の改善、②薬物療法(排卵抑制療法、症状に対する治療法、漢方療法)があげられる。

1.× 月経時の手当の仕方より優先度が高いものが他にある。なぜなら、月経時の手当の仕方はすでに習得している可能性が高いため。初経教育として、初経前の健康教育内容となっている。
2.〇 正しい。月経前症候群の症状が最も優先される。なぜなら、月経前にイライラ感頭痛などを訴える生徒が多いため。月経前症候群が疑われる。ちなみに、月経前症候群とは、月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいう。原因は、はっきりとはわかっていないが、女性ホルモンの変動が関わっていると考えられている。排卵のリズムがある女性の場合、排卵から月経までの期間(黄体期)にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が多く分泌される。この黄体期の後半に卵胞ホルモンと黄体ホルモンが急激に低下し、脳内のホルモンや神経伝達物質の異常を引き起こすことが、PMSの原因と考えられている。しかし、脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスなどの影響を受けるため、PMSは女性ホルモンの低下だけが原因ではなく多くの要因から起こるといわれている。精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがある。とくに精神状態が強い場合には、月経前不快気分障害(PMDD)の場合もある。治療法として、①日常生活の改善、②薬物療法(排卵抑制療法、症状に対する治療法、漢方療法)があげられる。
3.× 基礎体温の測定より優先度が高いものが他にある。なぜなら、基礎体温の測定は、排卵や月経、体調の変化の予測に役立つため必要な知識であるため。思春期の月経周期以上に対して行うことが多い。
4.× 性感染症より優先度が高いものが他にある。なぜなら、今回は女子のみに行うため。性感染症の予防については男性も教育することが重要である。また、今回は月経が発来した生徒が約半数であり、性感染症の知識よりも基本的な月経についての知識や悩んでいる生徒が多い。

低用量経口避妊薬

【方法】エストロゲンとプロゲステロンの2種類のホルモンからなる低用量経口避妊薬を毎日1錠ずつ服用する。

【利点】女性主体で避妊ができる。
正確に服用すれば、避妊効果は確実である。
以下のような避妊以外の利点がある。
・子宮体癌、卵巣癌の発生率低下。
・子宮内膜症の症状緩和。
・月経困難症、月経前症候群の改善

【欠点】
服用開始後1~2週間くらいまで、悪心や少量の不正性器出血を起こすことがある。
血栓症、心筋梗塞などのリスクを伴う場合がある。

【禁忌】
大手術の前後および長期間安静状態を要する患者。
35歳以上で1日15本以上の喫煙者。
血栓性素因のある者。
重症の高血圧症患者。
血管病変を伴う糖尿病患者。
産後4週以内の者。
授乳中(産後6か月未満)の者など。

 

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