第105回(R4) 助産師国家試験 解説【午後26~30】

 

26 妊娠38週の初産婦の妊婦健康診査で、助産師外来の担当助産師が内診を行った。内診指を腟の後壁に沿って挿入したが子宮口になかなか届かず、奥まで入れてようやく子宮口に届いた。子宮口は鼻翼のように硬く1.5cm開大しており、展退度は40%であった。児頭の先進部は坐骨棘より1cm上方に触れた。羊水の流出は認めなかった。
 このときのBishop<ビショップ>スコアはどれか。

1.0点
2.2点
3.4点
4.7点
5.9点

解答

解説

本症例のポイント

①展退度:40%(1点
②児頭位置:先進部は坐骨棘より1cm上方(2点
③頸部の硬さ:子宮口は鼻翼のように硬い(0点
④頸管開大度:1.5cm開大(1点
⑤子宮口の位置:内診指を腟の後壁に沿って挿入したが子宮口になかなか届かず、奥まで入れてようやく子宮口に届いた(0点)。

→ビショップスコアとは、最も広く使用されている子宮頚管の熟化評価法である。以下の表を参考に、5項目のスコアを合計し、13点満点で評価する。通常、9点以上を「良好」、6点以下を「不良」、3点以下を「特に不良」と評価することが多い。

本症例は、①展退度:40%(1点)、②児頭位置:先進部は坐骨棘より1cm上方(2点)、③頸部の硬さ:子宮口は鼻翼のように硬い(0点)、④頸管開大度:1.5cm開大(1点)、⑤子宮口の位置:内診指を腟の後壁に沿って挿入したが子宮口になかなか届かず、奥まで入れてようやく子宮口に届いた(0点)であった。したがって、1点+2点+0点+1点+0点となり、合計4点である。つまり選択肢3.4点が正しい。

 

 

 

 

 

27 Aさん(35歳、1回経産婦)は陣痛発来後3時間の経過で4,200gの男児を経腟分娩した。会陰切開の必要はなく会陰裂傷もなかった。分娩後1時間のバイタルサインは脈拍70/分、整、血圧120/80mmHgであった。分娩後2時間の時点で脈拍100/分、整、血圧80/60mmHgで「少し前から肛門の奥あたりがとても痛くなってきた」と訴えた。子宮底部は臍下4横指、子宮収縮は良好であった。Aさんは苦悶様表情を浮かべ、額に冷汗が認められた。出血量は正常範囲内であった。
 助産師の対応で正しいのはどれか。

1.子宮底の輪状マッサージを実施する。
2.子宮収縮薬投与の準備をする。
3.末梢静脈路確保の準備をする。
4.トイレ歩行を促す。
5.左側臥位にする。

解答

解説

本症例のポイント

・Aさん(35歳、1回経産婦)
・陣痛発来後3時間、4,200gの男児(巨大児)
・会陰切開の必要はなく会陰裂傷もなし。
・分娩後1時間:脈拍70/分、整、血圧120/80mmHg。
・分娩後2時間:脈拍100/分、整、血圧80/60mmHgで「少し前から肛門の奥あたりがとても痛くなってきた」と訴えた。
・子宮底部は臍下4横指、子宮収縮は良好であった。
・Aさんは苦悶様表情を浮かべ、額に冷汗が認められた。
・出血量は正常範囲内であった。
→本症例は、分娩後1時間→分娩後2時間となった際に、脈拍・血圧が低下していることからも産科ショックが疑われる。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックであり,ほかにやや病態が異なるものとして子癇、羊水塞栓症、感染流産などがその基礎疾患となり得る。また仰臥位低血圧症候群、産科手術時の腰椎麻酔によるショックなどもこれに含まれる。

1.× 子宮底の輪状マッサージを実施する優先度は低い。なぜなら、子宮底輪状マッサージは分娩直後の子宮収縮不全の防止に有効であるため。子宮底部の輪状マッサージとは、子宮筋を刺激して、子宮収縮を促進させるマッサージである。  排尿・排便を定期的に促し、膀胱・直腸充満からの圧迫による子宮収縮不全を防止する。 早期離床を促し、悪露の貯留による子宮収縮不全を防止する。
2.× 子宮収縮薬投与の準備をする優先度は低い。子宮収縮薬とは、子宮の収縮またはより高い張性を誘発するために使用される。したがって、陣痛を誘発するためと分娩後出血を減らすための両方に使用される。副作用は、「過強陣痛」である。 その結果、胎児機能不全や子宮破裂、頸管裂傷、弛緩出血などを起こす恐れがある。そのため陣痛促進剤を使用する際は、分娩監視装置によって陣痛の強さや間隔、胎児の様子を注意深く観察していく必要がある。
3.〇 正しい。末梢静脈路確保の準備をする。初期対応として、静脈路確保、母体モニター装着などすぐに対応できる処置を行う。ちなみに、末梢静脈路確保とは、皮膚に針を刺し、静脈内にプラスチック製のチューブ(くだ)を入れる方法である。短時間の場合には金属の針を入れる場合もある。採血の時のように静脈内に針を刺す。
4.× トイレ歩行を促す優先度は低い。むしろ起立性低血圧などを誘発する可能性があるため控えるべきである。起立性低血圧とは、寝た姿勢や座った姿勢から急に起き上がったり、立ち上がった際に血圧が低下し、めまいが起こる症状である。症例は運動時に症状が生じている。起立性低血圧は、原因として①自律神経障害、②薬剤性、③加齢、④飲酒、⑤出血や脱水などの循環血漿量の低下が挙げられる。
5.× 左側臥位にする優先度は低い。左側臥位は食後の逆流や褥瘡予防などに有効である。なぜなら、食後30分から1時間程度、左側臥位をとると、胃と食道・気管がほぼ同じ高さとなるため。 ただし、逆流は起こりにくいが坐位には劣る。体位ドレナージや褥瘡予防のためにとる。

 

 

 

 

 

28 出生後に新生児への特異的ガンマグロブリン及びワクチンの投与による母子感染予防が実施される感染症の原因となる病原体はどれか。

1.クラミジア
2.B型肝炎ウイルス
3.C型肝炎ウイルス
4.サイトメガロウイルス
5.ヒト免疫不全ウイルス<HIV>

解答

解説

母子感染とは?

 何らかの微生物(細菌、ウイルスなど)がお母さんから赤ちゃんに感染することを「母子感染」と言います。妊娠前から元々その微生物を持っているお母さん(キャリアと言います)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。「母子感染」には、赤ちゃんがお腹の中で感染する胎内感染、分娩が始まって産道を通る時に感染する産道感染、母乳感染の3つがあります。
 赤ちゃんへの感染を防ぐとともにお母さん自身の健康管理に役立てるために、妊娠中に感染の有無を知るための感染症検査(抗体検査という場合もあります。)をします。妊婦健診を受診して、感染症検査を受けましょう。もし、検査で感染症が見つかった場合には、赤ちゃんへの感染や将来の発症を防ぐための治療や保健指導が行われます。(※引用:「母子感染を知っていますか?」厚生労働省HPより)

1.× クラミジアとは、日本国内で最も多い性感染症(STD)の一つで、クラミジア感染症とも呼ばれており、クラミジア・トラコマチスという病原体が、性行為などにより粘膜に感染する。 感染した場合、クラミジア性尿道炎(男性)、クラミジア性子宮頚管炎(女性)、咽頭クラミジア(男性・女性)などの病気を引き起こす。また、出産時に母子感染する場合、分娩時の産道感染を引き起こす。出生後1週間前後に発症する結膜炎(目が赤くなり「目やに」の増加)、出生後1カ月前後には肺炎( 咳、哺乳力が低下)する。陽性者には内服薬(抗菌薬)を投与して治療する。
2.〇 正しい。B型肝炎ウイルスは、出生後に新生児への「特異的ガンマグロブリン及びワクチンの投与」による母子感染予防が実施される。全妊婦の抗原検査を実施し、キャリア妊婦発見後、出産直後に抗HBsヒト免疫グロブリンを投与することによって産道感染を予防する。その後、HBワクチンを投与して免疫能を獲得し感染を予防する。
3.× C型肝炎ウイルスは、血液を介して感染するウイルスである。 最も一般的な感染様式は、安全性に欠ける注射手技、不十分な医療器具の殺菌処理、スクリーニング検査していない血液や血液製剤の輸血である。授乳でC型肝炎ウイルスが感染したとの報告はないが、C型肝炎ウイルス陽性の母親で乳首に傷があったり、出血している場合は、感染する可能性があるため傷などが治るまでは授乳を控えるべきである。
4.× サイトメガロウイルスは母乳感染、尿や唾液による水平感染が主経路であり、産道感染、輸血による感染、性行為による感染なども認められている。 初感染を受けた乳幼児はほとんどが不顕性感染の形で、その後数年にわたって尿あるいは唾液中にウイルスを排泄する。症状は、低出生体重、黄疸、出血斑、肝脾腫、小頭症、脳内(脳室周囲)石灰化、肝機能異常、血小板減少、難聴、脈絡網膜炎、DIC など多彩かつ重篤で、典型例は巨細胞封入体症と呼ばれている。 ただし、出生時には上記症状の一部のみの場合や、全く無症状で後に難聴や神経学的後遺症を発症する場合があり、早期発見が望まれる。ワクチンは実用化されていない。
5.× ヒト免疫不全ウイルス<HIV>の主な感染経路は、①性的接触、②血液感染、③母子感染である。母子感染防止の目的として、妊婦に抗HIV薬を投与する。児へも予防的に抗HIV薬の投与を行う。

(図引用:「B型肝炎ウイルス母子感染予防のための新しい指針」日本小児科学会)

 

 

 

 

 

29 排卵誘発薬の使用による卵巣過剰刺激症候群のリスク因子となるのはどれか。2つ選べ。

1.若年
2.肥満
3.流産の既往
4.薬剤アレルギーの既往
5.多囊胞性卵巣症候群の合併

解答1・5

解説

卵巣過剰刺激症候群とは?

卵巣過剰刺激症候群とは、女性の卵巣は親指大ほど(3~4 cm)の臓器であるが、その中の卵(卵胞)が不妊治療における排卵誘発剤に過剰に刺激されることによって、卵巣がふくれ上がり、お腹や胸に水がたまるなどの症状が起こることをさす。卵巣が腫大し、腹水が貯まることにより腹部膨満感、体重増加、腹囲増加が認められる。次いで腹部膨満に伴う腹膜刺激によって下腹部痛、悪心、嘔吐が起こる。また、毛細血管の透過性亢進により血管外への水分・血漿成分の流出が引き起こされるため、血管内で血液の濃縮が起こり、のどの渇きや尿量の減少をきたす。重症例では、腎不全や血栓症など様々な合併症を引き起こす。卵巣過剰刺激症候群は重症になると様々な合併症を来たし、とても危険な状態になる場合があるので、早期に発見して対応することが大切である。薬による卵巣過剰刺激症候群は原因となった薬を中止することにより改善することが多いため、不妊治療中に「おなかが張る」、「はき気がする」、「急に体重が増えた」、「尿量が少なくなる」などの症状に気がついた場合は、速やかに医師・薬剤師に連絡を促す。

【患者側のリスク因子 】
• 若年
• やせ
• 多囊胞性卵巣症候群
• ゴナドトロピン製剤投与量の増加
• 血中エストラジオール値の急速な増加
• 卵巣過剰刺激症候群の既往
• 発育卵胞数の増加と生殖補助医療における採卵数の増加
• hCG投与量の増加、hCGの反復投与
• 妊娠成立

(※参考:「卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」厚生労働省HPより)

1.5.〇 正しい。若年/多囊胞性卵巣症候群の合併は、排卵誘発薬の使用による卵巣過剰刺激症候群のリスク因子となる。多嚢胞性卵巣症候群とは、卵子が入った卵胞の成長に時間がかかり、排卵が起こりにくくなる病気である。多嚢胞性卵巣症候群は男性ホルモンが多く作られてしまうことで発症しやすい。この具体的な原因はよく分かっていないが、血糖値を下げるホルモンのインスリンが影響していると考えられている。
2.× 肥満のリスク因子として、糖尿病や高血圧症など生活習慣病に関与することが多い。生活習慣病は、「食習慣、運動習慣、休養の取り方、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・伸展に関与する疾患群」と定義されている。生活習慣病の背景因子として、①遺伝性因子、②環境因子、③生活習慣因子が考えらえているが、「生活習慣因子」は生活習慣病の積極的予防に最も重要な要素とされている。
3.× 流産の既往があっても今後特定の病気にかかりやすいといった報告は今のところない。ただし、流産後の女性に対して、その血液型(Rh型)によって免疫グロブリン注射が必要な場合がある。これは次回妊娠した際、赤ちゃんの赤血球への影響を予防するために行われる。また、流産から次回妊娠までの期間の長さと次回妊娠の成功率は関係ないと言われている。つまり、流産後に長期間避妊する必要はない。
4.× 薬剤アレルギーの既往がある場合、アナフィラキシー発現のリスクが高い。アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。アナフィラキシーショックは、主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。

 

 

 

 

 

30 妊娠に伴う変化で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.心拍出量が増加する。
2.機能的残気量が減少する。
3.血中中性脂肪濃度が減少する。
4.末梢血中白血球数が減少する。
5.血清アルブミン濃度が増加する。

解答1・2

解説
1.〇 正しい。心拍出量が増加する。心拍出量は妊娠10週で増加し始め、25~30週の間に妊娠前の心拍出量を30~50%上回るピークに達する。一回拍出量は妊娠5週から20〜35%増加して約32週で最大に達し、以後わずかに減少していく。心拍数も心拍出量の増加に影響する。分娩時には拍出量はさらに増加する。
2.〇 正しい。機能的残気量が減少する。機能的残気量とは、安静時呼気位の後に残っている空気量のことをいう。機能的残気量は、胸郭の弾性収縮力の障害が大きい疾患(肺線維症、胸郭変形、胸膜肥厚)で減少する。
3.× 血中中性脂肪濃度が「減少」ではなく増加する。妊娠中の中性脂肪やHDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の基準値は設定されていないが、妊娠初期から末期にかけて値は徐々に増え、例えば妊娠末期の総コレステロール値は非妊娠時に比べると1.6倍ほど高くなり、中性脂肪にいたっては3倍以上にもなる。その理由として、胎盤から出る性ホルモンや酵素による影響だと考えられている。正常な妊娠では、妊娠初期(~15週)から中期(16週~28週)にかけて脂肪の合成が、末期(29週~出産)は脂肪の分解が促進される。
4.× 末梢血中白血球数が「減少」ではなく増加する。白血球数は5,000/μLから12,000/μLに上昇し、分娩時および産褥期には20,000/μLから30,000/μLの値に達する。ちなみに、赤血球量も約30%増加する。血小板数は、初期の希釈効果により減少するが、その消費量も増加する。
5.× 血清アルブミン濃度が「増加」ではなく減少する。膠質浸透圧は血中アルブミン濃度に大きく依存し、妊婦の血中アルブミン濃度は減少するが、妊娠高血圧腎症ではさらに減少している。 

(※図引用:「妊娠期の生理学的変化」より)

 

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