第105回(R4) 助産師国家試験 解説【午前36~40】

 

36 妊娠前のBMIが18.5未満であった妊婦に出現しやすいのはどれか。2つ選べ。

1.貧血
2.切迫早産
3.妊娠糖尿病
4.羊水過多症
5.妊娠高血圧症候群

解答1・2

解説

妊娠前の体格や妊娠中の体重増加量については?

1.「妊娠前の体格と妊娠予後」について尋ねられたら,以下の情報を提供する.
やせ女性は切迫早産,早産,貧血および低出生体重児分娩のリスクが高い.
②肥満女性は妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,帝王切開分娩,巨大児などのリスクが高い.

2.「妊娠中の体重増加量」について尋ねられたら,以下の情報を提供する.
①妊娠前の体格によって推奨体重増加量が異なる.
②妊娠期に体重増加量が著しく少ない場合には,低出生体重児分娩や早産のリスクが高まり,体重増加量が著しく多い場合には,巨大児分娩,帝王切開分娩のリスクが高まる.

3.妊娠中の栄養指導では以下に留意する.
①バランスのとれた栄養素の摂取を勧める.
②妊娠前の体格(自己申告妊娠前体重を用いた BMI 値)に応じて指導する.
③増加量を厳格に指導する根拠は必ずしも十分ではないと認識し,個人差を考慮したゆるやかな指導を心がける.
④授乳期間中の必要カロリー量について問われた場合,「妊娠前より増加する」と説明する.

(一部引用:「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2020 P45 」日本産科婦人科学会より)

1~2.〇 正しい。貧血/切迫早産は、妊娠前のBMIが18.5未満であった妊婦に出現しやすい。やせ女性は切迫早産、早産、貧血および低出生体重児分娩のリスクが高い。一方で、肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
3.× 妊娠糖尿病とは、妊娠中にはじめて発見、または発症した糖尿病まではいかない糖代謝異常のことである。糖代謝異常とは、血液に含まれる糖の量を示す血糖値が上がった状態である。肥満女性は妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。
4.× 羊水過多症とは、生理的な羊水量の範囲を大きく超え、これにより子宮が大きくなって圧迫感や子宮収縮、子宮頸管長の短縮などの症状が出現している状態をいう。羊水過多は胎児奇形、多胎妊娠、母体糖尿病、および様々な胎児疾患により起こりうる。 羊水過多は早期子宮収縮、前期破水、母体の呼吸障害、胎位異常または胎児死亡、ならびに陣痛および分娩時の様々な問題のリスクの上昇と関連する。
5.× 妊娠高血圧症候群とは、妊娠時に高血圧を発症した場合をいう。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠という。妊娠20週以降に高血圧のみ発症する場合は妊娠高血圧症、高血圧と蛋白尿を認める場合は妊娠高血圧腎症と分類される。肥満女性妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開分娩、巨大児などのリスクが高い。

 

 

 

 

 

37 妊娠初期の経腟超音波検査に関する記述で正しいのはどれか。2つ選べ。(※不適切問題:4つ正しいものがある)

1.妊娠3週では胎囊が観察できない。
2.妊娠5週では胎児心拍動が観察できる。
3.妊娠8〜9週の頭殿長は妊娠週数確定に有用である。
4.妊娠9週で臍帯ヘルニアが観察できるのは正常範囲である。
5.妊娠10週の頭殿長は10mmである。

解答1・2・3・4(6通りの解答を正解とする)
理由:4つの選択肢が正解であるため。

解説

経腟超音波検査とは?

経腟超音波検査とは、婦人科で行う超音波検査の一つで、子宮や卵巣などを観察するための検査である。小さな異常も確認することができる、婦人科では、内診と合わせて基本的な検査の一つである。経腟エコー検査では、子宮や卵巣の中の状態まで詳しく観察することができる。

1.〇 正しい。妊娠3週では胎囊が観察できない。一般的に、胎嚢は妊娠4週後半~5週頃にかけて確認できる。胎嚢とは、子宮内膜に受精卵が着床すると作られる、赤ちゃんを包む袋のことである。胎嚢は羊膜、尿膜、漿膜で包まれており、中は羊水で満たされている。通常は、胎嚢・胎芽・心拍の三つを確認できた時点で、正常妊娠であると診断される。
2.〇 正しい。妊娠5週では胎児心拍動が観察できる。選択肢1~4はいずれも正解であるが、胎児の発育には個人差があるため観察できる時期は限定的ではない。
3.〇 正しい。妊娠8〜9週(~10週)の頭殿長は妊娠週数確定に有用である。例えば、今日大きさを測定してCRL(頭殿長)が妊娠9週0日相当だったとしたら、今日を妊娠9週0日と確定して、そこから数えて40周0日の日を「出産予定日」と確定する。
4.〇 正しい。妊娠9週で(生理的)臍帯ヘルニアが観察できるのは正常範囲である。正常胎児では、妊娠8週初めごろより、胎児の腸管が臍帯の胎児の起始部に入り込む現象があり、これを生理的臍帯ヘルニアと呼ぶ。妊娠10週にかけて、超音波検査では生理的臍帯ヘルニアが、隆起や塊のように描出されるため、胎児側の臍帯付着部が太く見える場合もある。これは、発生過程でみられるもので正常所見である。正常であれば7mm以上に大きくなることはなく、妊娠11週の終わりには腹腔内に還納されるといわれている。逆に、頭殿長が45mmより大きい胎児で生理的臍帯ヘルニアは観察されないため、それ以上の児で臍帯付着が大きい場合は精査が必要となる。

 

 

 

 

 

38 日本で行われている新生児の先天性代謝異常等マススクリーニング検査の対象はどれか。2つ選べ。

1.ケトン性低血糖
2.先天性副腎過形成
3.アセトン血性嘔吐症
4.フェニルケトン尿症
5.Wilson<ウイルソン>病

解答2・4

解説

新生児マススクリーニング検査とは?

新生児マススクリーニングとは、赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけるための検査である。先天性代謝異常等は、①先天性代謝異常、②先天性甲状腺機能低下症、③先天性副腎過形成症をあわせてよぶ。

先天性代謝異常:生まれつき特定の酵素に異常があって起こる病気である。例えば、フェニルケトン尿症は特定のアミノ酸が体の中で正常に代謝されずに蓄積してしまうため、発育や知能の障害が現れる。しかし、新生児期に発見し治療用のミルクなどの食事療法を続ければ健康な生活を送ることができる。
先天性甲状腺機能低下症:神経の発達や新陳代謝をつかさどる甲状腺ホルモンが正常に分泌されないため心身の発育不良を起こす。早期にホルモン補充などの適切な治療を開始すれば正常に発育する。
先天性副腎過形成症:副腎からのホルモンが不足して体のなかのカリウムやナトリウムなどのバランスが崩れ、死にいたることもある病気である。早期に発見することで必要なホルモンを補うなどの治療で発症を抑えることができる。

1.× ケトン性低血糖とは、インスリンが高い結果おこる低血糖症の場合以外の原因でおこる低血糖症である。低血糖症とは、一般に乳児、幼児では血糖値が40mg/dl以下のものである。早朝空腹時、または感冒などの発熱がきっかけになりやすく、また、夕食を食べずに寝た次の日の朝、発症することが多い。
2.〇 正しい。先天性副腎過形成は、新生児の先天性代謝異常等マススクリーニング検査の対象である。新生児マススクリーニングとは、赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけるための検査である。先天性代謝異常等は、①先天性代謝異常、②先天性甲状腺機能低下症、③先天性副腎過形成症をあわせてよぶ。フェニルケトン尿症は特定のアミノ酸が体の中で正常に代謝されずに蓄積してしまうため、発育や知能の障害が現れる先天性代謝異常である。
3.× アセトン血性嘔吐症とは、過労、精神的緊張、感染などによって誘引される嘔吐症で、血中にケトン体が多い状態になる。自家中毒、周期性嘔吐症などとも言われる。小児に多い疾患で、2~10歳に好発する。
4.〇 正しい。フェニルケトン尿症は、新生児の先天性代謝異常等マススクリーニング検査の対象である。新生児マススクリーニングとは、赤ちゃんの先天性代謝異常等の病気をみつけるための検査である。先天性代謝異常等は、①先天性代謝異常、②先天性甲状腺機能低下症、③先天性副腎過形成症をあわせてよぶ。③先天性副腎過形成症とは、副腎からのホルモンが不足して体のなかのカリウムやナトリウムなどのバランスが崩れ、死にいたることもある病気である。早期に発見することで必要なホルモンを補うなどの治療で発症を抑えることができる。
5.× Wilson<ウイルソン>病とは、常染色体劣性遺伝で遺伝する胆汁中への銅排泄障害による先天性銅過剰症である。症状として、銅の組織沈着により肝機能障害、様々な神経症状、精神症状、腎障害等全身の臓器障害を来しうる。治療法は、D-ペニシラミン、トリエンチンや酢酸亜鉛の内服を生涯続ける必要がある。肝不全となった場合は肝移植の対象となる。予後として、早期に診断され、適切な治療を続けた場合は予後良好なことが多い。治療の中断は致死的である。

 

 

 

 

 

39 世界保健機関<WHO>と国際連合児童基金<UNICEF>によって、適切な人工乳が準備できる状況下では母乳を与えないことが推奨されているのはどれか。2つ選べ。

1.化学療法中の乳癌
2.HIV感染
3.B型肝炎
4.C型肝炎
5.結核

解答1・2

解説
1.〇 正しい。化学療法中の乳癌は、適切な人工乳が準備できる状況下では母乳を与えないことが推奨されている。なぜなら、授乳期に化学療法(薬物療法)を受けると、乳汁中に薬剤が分泌されることもあるため。ちなみに、がんの化学療法とは、化学療法剤(抗がん剤、化学物質)を使ってがん細胞の増殖を抑えたり、破壊したりする事による治療法で、薬物療法とも呼ばれる。 
2.〇 正しい。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染は、適切な人工乳が準備できる状況下では母乳を与えないことが推奨されている。なぜなら、母乳中にもHIV(ヒト免疫不全ウイルス)が存在しており、授乳によっても感染する可能性があるため。日本では、あらかじめ母親にHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に対する薬を内服してもらい、母乳を与えないなどの対策をとることで、子供へのHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染を約0.4%以下まで抑えることができている。
3~4.× B型肝炎/C型肝炎とは、主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染することがある。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。ちなみに、感染している母親の乳首や周辺の乳輪が裂けて出血しているならば、一時的に授乳を止めるべきである。 乳首の亀裂と出血がなくなれば授乳を再開してもよい。 授乳しないときには、乳汁分泌を維持するために、乳首が治癒するまで、搾乳して、母乳を廃棄する。
5.× 結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。また、結核の薬は母乳への移行は少量であり、これまで乳児への影響は指摘されていない。 

 

 

 

 

 

40 Aさん(32歳、初産婦)は妊娠40週6日、自然陣痛発来後に入院した。分娩は順調に進行し児頭が娩出されたが、第4回旋の後に助産師が前在肩甲の娩出を試みたところ娩出が困難な状況となった。
 このときの助産師の対応で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.児頭を腟内に押し戻す。
2.恥骨直上の腹壁を圧迫する。
3.児頭の下方への牽引を強める。
4.努責を強めるようAさんに言う。
5.Aさんの両側股関節を強く屈曲する。

解答2・5

解説

本症例のポイント

・Aさん(32歳、初産婦、妊娠40週6日)
自然陣痛発来後に入院した。
・分娩は順調に進行し児頭が娩出された。
第4回旋の後に助産師が「前在肩甲の娩出を試みたところ娩出が困難な状況」となった。
→第4回旋は縦軸回旋(外回旋)である。 児頭の娩出に続き肩甲が回旋し、下降する。これは、胎児の方は横に長いため体を90°回転して出てくる必要がある。児頭娩出直後、胎児の顔面は母体の後方を向いているが、肩甲の回旋に伴って母体大腿の内面を向く。 これは児頭娩出後、母体の股間で行われる外回旋である。本症例は、「前在肩甲の娩出を試みたところ娩出が困難な状況」であることから、肩甲難産であると考えられる。肩甲難産の対応としては、①産道を広げること、②胎児の肩を狭めることがあげられる。①産道を広げる方法としては、McRoberts位(マックロバーツ位:いわゆるうんこ座り)、導尿、会陰切開を広げることがあげられる。②胎児の肩を狭める方法としては、片方の肩から出す、肩をすくめる、体をひねるなどである。

1.× 児頭を腟内に押し戻す優先度は低い。児頭を腟内に押し戻すことは、娩出が難しく帝王切開術へと切り替える際に用いられる。
2.〇 正しい。恥骨直上の腹壁を圧迫する。そうすることで、胎児の肩を狭めることができ、恥骨側の引っかかっている肩を恥骨の下へくぐらせることができる。それでも分娩困難な場合は、Rubin法(ルビン法:直接肩をすくめるような動きになるように手を入れて児背側から恥骨側の肩を押す方法)を用いる。
3.× 児頭の下方への牽引を強める優先度は低い。なぜなら、首の周りの神経が傷ついて腕に麻痺(腕神経叢麻痺)が生じたり、骨折などの危険性もあるため。構造を把握して負担がかかりにくいように分娩の支援を行う。
4.× 努責を強めるようAさんに言う優先度は低い。肩甲娩出時には産婦に努責を促さない。努責は発露まで行い、その後は短息呼吸へと切り替える。児頭や肩甲部が通過する際は怒責をかけてしまうと会陰裂傷を生じる可能性がある。母体の背側である後在肩甲は前在肩甲娩出後に児頭を前方に引いて娩出させる。児頭でできた裂傷や会陰切開創をさらに広げる危険性があるため、会陰保護が必要である。
5.〇 正しい。Aさんの両側股関節を強く屈曲する。肩甲難産の対応としては、①産道を広げること、②胎児の肩を狭めることがあげられる。①産道を広げる方法としては、McRoberts位(マックロバーツ位:いわゆるうんこ座り)、導尿、会陰切開を広げることがあげられる。②胎児の肩を狭める方法としては、片方の肩から出す、肩をすくめる、体をひねるなどである。McRoberts位(マックロバーツ位:いわゆるうんこ座り)が産道が最も広がり分娩にもっとも適した姿勢であり、それに伴い、①しっかりと妊婦さんに産道を見てもらうこと、②痛くても仰け反らない、つまり背中を丸くしてもらうことを指導する。

肩甲難産とは?

肩甲難産とは、「児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につかえ、肩甲娩出が困難状況なために、児の娩出が不可能な状態」と定義されている。つまり、お産のときに赤ちゃんの頭だけ出てきたものの、肩がひっかかって出てこられない状態を指す。肩甲難産の頻度は経膣分娩例のおよそ200~500人に一例程度であるが、生まれてくる赤ちゃんの体重が大きくなればなるほど頻度が高くなると考えられている。肩甲難産の危険因子としては胎児の大きさが最も重要であるが、他にも母体の糖尿病や、母体の妊娠中の過剰な体重増加、過期妊娠、母体の高年齢、骨盤の変形、過去に肩甲難産の分娩歴のある場合などがある。肩甲難産はひとたび発生すると母体にも赤ちゃんにも悪い影響を及ぼす。母体では、膣や頚管裂傷などの産道裂傷や、産後の弛緩出血(子宮の戻りが悪くて出血すること)、膀胱麻痺や尿道損傷などの危険性がある。また、赤ちゃんは肩がひっかかるためしんどくなったり、最悪の場合には命にかかわるようなケースもある。また、生まれてくる途中で首の周りの神経が傷ついて腕に麻痺が生じたり、骨折などの危険性もある。このような恐ろしい分娩合併症である肩甲難産であるが、発症を正確に予知するのは非常に難しいのが現状である。万一発生した場合にはさまざまな処置が必要であるため、産婦人科医は妊婦さんのハイリスク因子を十分考慮して分娩に対応し、異常の早期発見に努めていく必要がある。

 

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