第106回(R2) 保健師国家試験 解説【午前46~50】

 

次の文を読み44〜46の問いに答えよ。
 人口12万人のA市のB地区。1980 年代に開発された新興住宅地で、市全体の出生は緩やかに減少し、高齢化が進行している。B地区では月2回、民生委員3名と地区内のボランティア7名をスタッフとして、地区の乳幼児とその保護者を対象とした育児サロンが10 年ほど前から開催されている。地区担当保健師は2〜3か月ごとにサロンに参加し、参加者やスタッフの相談に応じている。

46 1年後、それまでA市役所の職員健康管理を担当していた3年目の保健師のDさんがこの保健センターに異動となり、初めて地区担当保健師としてB地区を担当することになった。Dさんの上司である保健師は、Dさんの地区活動に関する職場内研修(OJT)を計画した。
 職場内研修(OJT)に活用する業務で適切なのはどれか。2つ選べ。

1.育児サロンの事業評価
2.地区担当保健師の自主勉強会の企画
3.B 地区に関する人口統計指標の分析
4.地区の困難事例検討会に助言者として出席
5.県内の新任期の保健師を対象とした研修会の参加

解答1・3

解説

職場内研修(OJT:On-The-Job Training)とは、職場内で日常の仕事を通して行う研修のことである。部下が職務を遂行していく上で必要な知識やスキルを、上司や先輩社員などの指導担当者が随時与えていく人材育成方法のひとつである。

1.〇 正しい。育児サロンの事業評価は、職場内研修(OJT)に活用する業務で適切である。なぜなら、B地区で10年間継続して実施されている育児サロンの事業評価をすることで、B地区の特徴が理解できるため。
2.× 地区担当保健師の自主勉強会の企画は、Dさんに対する職場内研修(OJT)には該当しない。なぜなら、自主勉強会は有志による活動であり、職場内研修(OJT)として職場内の日常業務で行うものではないため。
3.〇 正しい。B地区に関する人口統計指標の分析は、職場内研修(OJT)に活用する業務で適切である。なぜなら、B地区に関する人口統計指標の分析は、地域診断の一環であり、B地区の特徴を理解することができるため。そのため、初めて地区担当保健師の活動を担う
4.× 地区の困難事例検討会に助言者として出席は、Dさんに対する職場内研修(OJT)には該当しない。なぜなら、Dさんは地区担当保健師の経験がない3年目の保健師であるため。
5.× 県内の新任期の保健師を対象とした研修会の参加は、Dさんに対する職場内研修(OJT)には該当しない。県内の新人保健師研修会への参加は、職場内研修(OJT)ではなく、職場外研修(off-JT)である。また、県全体の保健師を対象とした研修であり、B地区の特徴理解を促す研修ではない。

現任教育(人材育成)

自己啓発(SD:Self Development)
【内容】個人が自らの意思で行う自己研修。
例:セミナーの自主参加、関連書籍の朗読等。
【長所】個人のペースで個人のニーズにした学習ができる。
【短所】中断しやすく、継続性を保つための工夫が必要。

職場内研修(OJT:On The Job Training)
【内容】職場内で、日常の仕事を通して行う研修。
例:上司の指導、事例検討会等
【長所】①仕事内容に即した知識、技術が身につく。②コストが抑えられる。
【短所】①上司の力量によって内容や成果に偏りが生じる。②忙しいと研修時間が確保されない場合がある。

職場外研修(off-JT:Off The Job Training)
【内容】職場を離れて、日常の職場外研修業務外で行う研修。
例:集合研修、派遣研修、講習会等
【長所】①体系的で専門的な指導が受けられる。②多くの人数を同時に指導できる。
【短所】①コストがかかる。②一方的な知識の提供になりやすい。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。夫(25歳、会社員)と暮らしている。妊娠中に胎児の異常を認め、Fallot(ファロー)四徴症と診断された。Aさんは、総合周産期母子医療センターで帝王切開術にて2,500 gのBちゃんを出産した。Aさんは産後1週で退院した。

47 産後2週、Aさんは保健所を訪れ「病院から言われて、Bの医療費が助成される制度の手続きに来ました」と話した。
 Bちゃんに適用されるのはどれか。

1.自立支援医療(更生医療)
2.小児慢性特定疾病医療費
3.未熟児養育医療
4.療育医療

解答

解説

1.× 自立支援医療(更生医療)は、18歳以上の身体障害者手帳の交付を受けた者を対象とした制度である。
2.〇 正しい。小児慢性特定疾病医療費は、Bちゃんに適用される。Fallot(ファロー)四徴症は、小児慢性特定疾病に指定されており、Bちゃんは医療費の一部助成を受けることができる。
3.× 未熟児養育医療は、出生時体重が2.000g以下、生活力が特に薄弱であるなどで入院が必要な乳児を対象に入院医療費の一部を助成する制度である。
4.× 療育医療は、結核のため指定療育医療機関にて入院治療する18歳未満の者が対象である。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。夫(25歳、会社員)と暮らしている。妊娠中に胎児の異常を認め、Fallot(ファロー)四徴症と診断された。Aさんは、総合周産期母子医療センターで帝王切開術にて2,500 gのBちゃんを出産した。Aさんは産後1週で退院した。

48 Aさんから保健所に「Bは2か月間の入院の後、先週退院した」と連絡があり、翌日保健師が家庭訪問した。主治医から、月に1回外来を受診するよう指導を受けている。Aさんは「体重が6kg以上に増えるのを目途に手術をするといわれていますが、まだ3kgを超えたところです。家に帰ってきてからあまりミルクを飲んでくれず、泣いてばかりいるので困っています」と話した。
 保健師の対応で適切なのはどれか。

1.「ミルクを濃くして飲ませましょう」
2.「1回の哺乳時間を長くとりましょう」
3.「授乳毎に体重を測って確認しましょう」
4.「泣いた時は早めに抱きかかえてあやしましょう」

解答

解説

ファロー四徴症とは?

ファロー四徴症は、4つの特徴(「心室中隔欠損」、「肺動脈狭窄」、「大動脈騎乗」、「右室肥大」)がある病気である。大動脈が太く、通常より前方に移動していることで肺動脈が細く狭くなり、「肺動脈狭窄」になる。ファロー四徴症は、先天性心疾患であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。

1.× ミルクを濃くして飲ませることはしない。なぜなら、ミルクは規定されている濃度で与えるのが基本であるため。まず、体重増加不良がみられる場合には、主治医に指示を仰ぐよう伝える。
2.× 1回の哺乳時間を長くとる必要はない。なぜなら、哺乳時間を延長しても哺乳量はほとんどかわらないことが多いため。
3.× 授乳毎に体重を測って確認する必要はない。なぜなら、頻繁に体重を測定することは保護者の不安をさらに引き起こすことになるため。体重の推移は月1回の外来時に確認する。保護者に不安がみられる場合には、外来受診より前に、1~2週間の間隔で、保健師の訪問や育児教室など、専門職による助言を受けられる場での体重測定を提案する。
4.〇 正しい。泣いた時は早めに抱きかかえてあやすことを提案する。ファロー四徴症は、先天性心疾患であり、症状としてチアノーゼ、頻脈、多呼吸、哺乳不良などの症状がみられる。泣いた後にチアノーゼと呼吸困難が強くなる発作(無酸素発作)を起こすことがあるため、泣いたらすぐに抱きかかえてあやし発作を防ぐよう伝える。

 

 

 

 

 

次の文を読み47〜49の問いに答えよ。
 Aさん(25歳、初妊婦)。夫(25歳、会社員)と暮らしている。妊娠中に胎児の異常を認め、Fallot(ファロー)四徴症と診断された。Aさんは、総合周産期母子医療センターで帝王切開術にて2,500 gのBちゃんを出産した。Aさんは産後1週で退院した。

49 Bちゃんは2歳までに3回の心臓手術を受け、それ以降は合併症もなく過ごしている。Bちゃんは4歳になり、年1回の経過観察となっている。半年後、Aさんは保健所に来所し「Bを来年から幼稚園に入れようと思い、主治医にも問題ないと言われたので近くの幼稚園に見学に行った。でも、みんな元気いっぱいで、Bが入園してやっていけるのか不安になった」と話した。
 この時のAさんへの保健師の助言で適切なのはどれか。

1.心疾患の児を持つ親の会に参加することを勧める。
2.病児・病後児保育事業ができる保育所を紹介する。
3.セカンドオピニオンを受けることを勧める。
4.入園時期を遅らせることを提案する。

解答

解説
1.〇 正しい。心疾患の児を持つ親の会に参加することを勧める。なぜなら、Aさんが親の会に参加することで、Bちゃんの入園後の生活について、情報交換や気持ちの共有ができるため。ちなみに、親の会はセルフヘルプグループと呼ばれ、共通の課題をもつ当事者や家族によって形成されたグループである。
2.× 病児・病後児保育事業ができる保育所を紹介する必要はない。なぜなら、Bちゃんの保育園での生活を心配しているため。病児保育事業(病児・病後児保育事業)は、急な発熱などの病児を、病院や保育所に付設された専用スペースにおいて、看護師などが一時的に保育する事業である。
3.× セカンドオピニオンを受けることを勧める必要はない。なぜなら、Bちゃんの保育園での生活を心配しているため。セカンドオピニオンとは、診断や治療について、主治医以外の医師の意見を求めることを指す。主治医の意見に不安や悩みを抱えている患者に提案することが多い。
4.× 入園時期を遅らせることを提案する必要はない。なぜなら、主治医から「入園について問題ない」と言われているため。

 

 

 

 

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 大規模災害が発生し、市内に避難所が開設された。
 被災後3日、A避難所には300人が避難しており、市保健師1人が配置されている。Bさん(85歳、男性)は、脳梗塞の既往があり、右片麻痺で杖歩行である。要介護1の認定を受けている。Bさんの妻が「夫はトイレが心配で、ほとんど眠れていないようです。そのせいか時々私のことが分からなくなります」と保健師に話した。

50  Bさん夫婦に保健師が勧める内容で適切なのはどれか。

1.福祉避難所への移動
2.パンツ型おむつの利用
3.特別養護老人ホームへの入所
4.A避難所内のトイレに近い場所への移動

解答

解説
1.〇 正しい。福祉避難所への移動は、Bさん夫婦に保健師が勧める内容で適切である。なぜなら、Bさん夫婦は、現在のA避難所では日常生活に支障があり、健康状態が悪化する可能性が高いため。福祉避難所の対象者は、一般的な避難所では生活に支障が出ることが想定され、何らかの特別な配慮を必要とする要配慮者で、具体的には、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者などとその家族である。
2.× パンツ型おむつの利用は必要ない。なぜなら、Bさんは右片麻痺ではあるが杖歩行可能であるため。安易にパンツ型おむつの使用を勧めるのではなく、不眠と認知機能の低下が疑われるBさんにとって適切な環境を整える必要がある
3.× 特別養護老人ホームへの入所は行うことができない。なぜなら、特別養護老人ホームの入所要件は、原則、要介護3以上であるため。
4.× 保健師は、A避難所内のトイレに近い場所への移動をする前に、「Bさんが現在のA避難所で生活を継続できるか」という視点でアセスメントをする必要がある。なぜなら、一般的な避難所では居住空間と仮設トイレまでの距離が長く、段差があることも想定されるため。

福祉避難所とは?

避難所生活において、何らかの特別な配慮を必要とする要配慮者(具体的には、高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、病弱者など)のための施設である。老人福祉施設や養護学校などを利用するが、不足する場合は公的な宿泊施設などに福祉避難所として機能するための物資・器材、人材を整備し活用する。

 

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