第106回(R2) 保健師国家試験 解説【午前51~55】

 

次の文を読み50、51の問いに答えよ。
 大規模災害が発生し、市内に避難所が開設された。
 被災後3日、A避難所には300人が避難しており、市保健師1人が配置されている。Bさん(85歳、男性)は、脳梗塞の既往があり、右片麻痺で杖歩行である。要介護1の認定を受けている。Bさんの妻が「夫はトイレが心配で、ほとんど眠れていないようです。そのせいか時々私のことが分からなくなります」と保健師に話した。

51 被災後7日、A避難所の避難者は200人となった。日中は自宅の片付けに出かける者もいるが、身体活動が少なく横になっている高齢者も多い。A避難所担当の保健師は、避難者名簿、避難所生活のスケジュール表を作成し、健康支援を行うこととした。
 この時の保健師の対応で優先されるのはどれか。

1.炊き出しメニューの工夫
2.避難者全員の睡眠状況の確認
3.整形外科医による健康教育の依頼
4.深部静脈血栓症(DVT)の予防体操の実施

解答

解説
1.× 炊き出しメニューの工夫は優先度が低い。なぜなら、A避難所の課題である身体活動が少ない高齢者に対する直接的な支援にはならないため。
2.× 避難者全員の睡眠状況の確認は優先度が低い。なぜなら、被災後は、心理的なストレス反応だけでなく、生活環境の変化によるストレスが加わり、精神的負担が大きく、震災直後に不眠が生じることも往々にして考えられるため。まずは、身体活動が低下している高齢者の活動量を増やすことが優先される。また、身体活動を増やすことで睡眠状況が改善する場合がある。
3.× 整形外科医による健康教育の依頼は優先度が低い。なぜなら、整形外科とは、人体の運動器官の病気や外傷(ケガ)を取り扱う医学の一部門であるため。つまり、「整形外科医 = 健康教室」というイメージが少ない。整形外科医による健康教育に、体操やストレッチが含まれるのであれば、A避難所の身体活動が少ない高齢者に対する健康支援として有効であるが、本選択肢は何を目的にしているのかが不明であるため、選択肢4.「深部静脈血栓症(DVT)の予防体操の実施」のほうが優先される。
4.〇 正しい。深部静脈血栓症(DVT:deep Vein Thrombosis)の予防体操の実施は最も優先度が高い。なぜなら、A避難所では身体活動が少ない高齢者がみられるおり、避難生活では、狭い避難所での寝泊りが続くことやストレスなどにより発症に至る可能性があるため。深部静脈血栓症は、四肢(通常は下肢)に血栓が生じ、静脈閉塞を起こす疾患である。深部静脈血栓症を予防するために、予防体操を行うことが最も優先される。

 

 

 

 

 

次の文を読み52、53の問いに答えよ。
 Aさん(79歳、女性)。夫(80 歳)と2人暮らし。腰痛があり2年前から整形外科に通院している。Aさんは、市役所の高齢福祉課の窓口に朝から2時間以上座っていた。高齢福祉課のB保健師がAさんに声をかけたところ、Aさんは「何をしに来たか忘れた。どうしようかしら」と話した。B保健師はAさんに了解を得て夫に迎えに来てもらい、夫から話を聞いた。夫はAさんについて「普段と変わった様子はなく、日々の生活で困っていることもない」と困惑した表情で話す。

52 Aさんの夫に対するB保健師の対応で最も適切なのはどれか。

1.かかりつけ医に相談するように促す。
2.認知症外来のある医療機関一覧表を渡す。
3.担当地区の民生委員に相談することを勧める。
4.地域包括支援センターの保健師に連絡することの了承を得る。

解答

解説

Aさんは市役所で2時間以上座ったまま過ごし、来所の目的もわからないことから、認知機能の低下が疑われる。しかし、Aさんの夫は「普段と変わった様子はない」と話しており、現時点ではAさんにもAさんの夫にも病識がないことがうかがえる。

1~2.× かかりつけ医に相談するように促す/認知症外来のある医療機関一覧表を渡すのは優先度は低い。なぜなら、現時点ではAさんにもAさんの夫にも病識がなく、受診行動につながるとは考えにくいため。
3.× 担当地区の民生委員に相談することを勧める必要はない。なぜなら、現時点ではAさんにもAさんの夫にも病識がなく、Aさん夫婦に民生委員への相談を勧めても、Aさん夫婦にはその必要性が理解できず、拒否的な反応を示す可能性もあるため。ちなみに、民生委員の役割は、認知症の高齢者の見守りや相談などを行うことがある。
4.〇 正しい。地域包括支援センターの保健師に連絡することの了承を得る。なぜなら、Aさんには認知機能の低下と思われる症状がみられており、今後、生活に困りごとが生じる可能性があるため。地域包括支援センターは、高齢者を保健・医療・福祉・介護などさまざまな面から総合的に支援するための拠点となる機関である。地域の身近な相談窓口である地域包括支援センターの保健師とAさんの情報を共有しておく必要がある。

 

 

 

 

 

次の文を読み52、53の問いに答えよ。
 Aさん(79歳、女性)。夫(80 歳)と2人暮らし。腰痛があり2年前から整形外科に通院している。Aさんは、市役所の高齢福祉課の窓口に朝から2時間以上座っていた。高齢福祉課のB保健師がAさんに声をかけたところ、Aさんは「何をしに来たか忘れた。どうしようかしら」と話した。B保健師はAさんに了解を得て夫に迎えに来てもらい、夫から話を聞いた。夫はAさんについて「普段と変わった様子はなく、日々の生活で困っていることもない」と困惑した表情で話す。

53 2か月後、Aさんの夫が市役所に来所し「親戚の家に行くと言っていた妻が隣町の図書館で発見されたこともあり、受診をしたら認知症と診断された。これからが不安だ」とB保健師に話した。
 後日、地域ケア会議に出席したB保健師は、Aさんのケースを報告した。会議では、市内の認知症高齢者が増加しており、今後さらに、市民の認知症についての正しい知識の啓発と理解を促進し、地域で認知症高齢者や家族を支える必要性が共有された。
 市民の認知症への理解を深めるために保健師が実施することで適切なのはどれか。

1.認知症専門の医療機関の誘致
2.認知症対応型通所介護の拡充
3.認知症サポーター養成講座の講師養成
4.介護予防事業対象者の把握のための基本チェックリストの普及

解答

解説
1.× 認知症専門の医療機関の誘致は必要ない。なぜなら、認知症専門の医療機関を誘致しても、市民の認知症への理解を深めることはできないため。認知症専門の医療機関の誘致は、認知症の医療資源の確保を目的とした対策である。
2.× 認知症対応型通所介護の拡充は必要ない。なぜなら、認知症の人が対象のサービスであり、認知症対応型通所介護の拡充をしても、市民の認知症への理解を深めることはできないため。認知症対応型通所介護は、認知症の要介護者などが施設に通い、入浴、排せつ、食事などの介護や日常生活上の世話、機能訓練を受けるサービスである。
3.〇 正しい。認知症サポーター養成講座の講師養成は、市民の認知症への理解を深めるために保健師が実施することで適切である。認知症サポーターは認知症を正しく理解し、認知症の人や、その人を取り巻く家族の良き理解者となり、地域の高齢者や認知症(予備群を含む)の人々を見守るボランティア活動である。
4.× 介護予防事業対象者の把握のための基本チェックリストの普及は必要ない。なぜなら、介護予防事業対象者の把握のために基本チェックリストを普及させても、市民の認知症への理解を深めることはできないため。基本チェックリストは、高齢者の生活機能の状態を評価するための質問票である。

 

 

 

 

 

次の文を読み54、55の問いに答えよ。
 人口約15万人のA市。大都市郊外のベッドタウンであり、人口は10年前をピークに微減している。現在の高齢化率は26%であり、独居高齢者の増加が課題である。市では「健康でイキイキとした暮らしを地域で支えるまち」を目指し、健康増進計画を策定した。

54 目標とする項目の一部に関して、A市に在住する男性のデータを表に示す。
 5年前と現在のデータを比較して評価した。
 目標を達成した項目はどれか。

1.大腸がん検診受診率
2.収縮期血圧の平均値
3.足腰に痛みのある高齢者の割合
4.就業又は何らかの地域活動をしている高齢者の割合

解答

解説
1.× 大腸がん検診受診率は、目標を達成していない。大腸がん検診受診率は、目標の40%に対し、現在:38%である。
2.× 収縮期血圧の平均値は、目標を達成していない。収縮期血圧の平均値は、目標の134mmHgに対し、現在:137mrnHgである。
3.〇 正しい。足腰に痛みのある高齢者の割合は、目標を達成している。足腰に痛みのある高齢者の割合(1.000人当たり)は、目標の「減少」に対し5年前の210人から現在は205人に減少している。
4.× 就業又は何らかの地域活動をしている高齢者の割合は、目標を達成していない。就業または何らかの地域活動をしている高齢者の割合は、目標の「増加」に対し、5年前の61%から現在は57%に減少している。

 

 

 

 

 

次の文を読み54、55の問いに答えよ。
 人口約15万人のA市。大都市郊外のベッドタウンであり、人口は10年前をピークに微減している。現在の高齢化率は26%であり、独居高齢者の増加が課題である。市では「健康でイキイキとした暮らしを地域で支えるまち」を目指し、健康増進計画を策定した。

55 A市の健康増進計画の評価結果を受け、市の目標達成に向けたまちづくりを推進していくために、住民と協働した特別プロジェクトの立ち上げが決定した。
 このプロジェクトの計画を立案するにあたり保健師が行うことで最も適切なのはどれか。

1.A市の健康課題を住民と話し合う。
2.独居高齢者の全戸家庭訪問を行う。
3.認知症予防の健康教育を実施する。
4.介護予防に関する講演会を開催する。

解答

解説
1.〇 正しい。A市の健康課題を住民と話し合う。住民と協働した特別プロジェクトの計画立案において、A市の健康課題を住民と話し合い、住民のニーズや意見を計画に反映させていくことが適切である。
2~4.× 独居高齢者の全戸家庭訪問を行う/認知症予防の健康教育を実施する/介護予防に関する講演会を開催することは、優先度が低い。住民との話し合いの結果、明らかになったA市の健康課題に応じて、独居高齢者の全戸家庭訪問や認知症予防の健康教育、介護予防に関する講演会などが必要であれば、それらを事業の計画に加える。

 

 

※注意:著者は看護師で、解説はすべてオリジナルのものとなっています。私的利用の個人研究・自己研鑽のため作成いたしました。間違いや分からない点があることをご了承ください。またコメントにて解き方等教えてくださると幸いです。

 

問題引用:第106回保健師国家試験、第103回助産師国家試験、第109回看護師国家試験の問題および正答について

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)