第110回(R3) 看護師国家試験 解説【午前111~115】

 

次の文を読み109~111の問いに答えよ。
 Aさん(29歳、初産婦)は、妊娠37週0日で2.780gの男児を正常分娩で出産した。出生後5分の児の状態は、心拍数150/分、四肢を屈曲させて啼泣している。顔面を清拭されると激しく啼泣し、全身はピンク色である。

111 産裾4日。Aさんは、血圧112/80mmHg、脈拍76/分、Hb11.2g/dL、Ht37.0%。子宮底を臍下4横指に硬く触れる。悪露は赤褐色で少量。凝血の混入や悪臭はない。乳房は緊満しており移行乳が分泌している。Aさんは「夜中も3時間ごとくらいに授乳をするためほとんど眠れていません」と話している。表情は穏やかである。
 Aさんのアセスメントとして適切なのはどれか。

1.貧血である。
2.産後うつ病である。
3.子宮復古は順調である。
4.乳汁分泌が遅れている。

解答3

解説

1.× 貧血ではない。なぜなら、本症例はHb11.2g/dL、Ht37.0%と平均値(貧血の検査値はHb<11mg/dL、Ht<32%ほど)であるため。
2.× 産後うつ病ではない。産後うつでは、急に泣き出したり深い悲しみや気分の浮き沈みが激しいなどの症状が見られる。本症例は、睡眠がとれない訴えがあるものの表情は見穏やかで気分の浮き沈みなどもみられていないので産後うつの可能性は少ない。分娩数日後から2週程度の間に多くの褥婦が経験するのはマタニティーブルーズであり、内分泌バランスの変化や母体の体力低下、育児への精神的負担などから、涙もろさ、不安感などの症状や、集中力低下、頭痛などの身体的症状が表れやすい。それらの症状が2週間以上持続する場合には産後うつ病を疑う。
3.〇 正しい。子宮復古は順調である。本症例の子宮底は臍下4横指まで収縮して硬く触れており、悪露も少量である。子宮復古不全では子宮の収縮が悪いため、悪露の量が多く、子宮底が高く柔らかく触れる。
4.× 乳汁分泌は遅れておらず正常である。なぜなら、本症例は、乳房緊満および移行乳がみられているため。母乳は分娩後の2日目から6日目の間に出始め、母乳が分泌され始めると乳房が緊満する。ちなみに、移行乳とは、初乳と成乳の間に出る母乳で、産後5日目頃から2週間ほどの間に出る母乳である。通常、産後72時間以上経っても乳汁分泌が活性化しない場合、乳汁分泌遅延を疑う。

 

詳しくまとめました。参考にしてください。

【看護師国家試験対策】基準値を完璧に覚えよう。

 

 

 

 

 

 

 

次の文を読み112~114の問いに答えよ。
 Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉と診断された。

112 職場でAさんにみられる可能性が高い行動はどれか。

1.仕事中に突然意識を失って倒れる。
2.退勤時に戸締りの確認を繰り返す。
3.集中して仕事をすることができない。
4.状況にふさわしくない単語の発声を繰り返す。

解答3

解説

1.× 仕事中に突然意識を失って倒れることはない。意識を失う原因疾患は、迷走神経反射・急性心筋梗塞・脳血管障害・てんかんなどがあげられる。ADHDは年齢に見合わない不注意さや好きなこと以外に対する集中力がなくほとんど関心や興味を示さない多動性、衝動性などの特性であり、仕事中に突然意識を失って倒れることはない。
2.× 退勤時に戸締りの確認を繰り返すことはない。なぜなら、退勤時に戸締りの確認を繰り返すと言った行動は強迫性障害の1つで、強迫性障害に特徴的な行動である。自分の意思に反して不合理な考えやイメージが頭に繰り返し浮かんできたものを振り払おうと同じ行動を繰り返すような病気である。他の例として、手を何度も洗う、アルコール消毒を他人に強要するなどが挙げられる。
3.〇 正しい。集中して仕事をすることができないことは、職場でAさんにみられる可能性が高い行動である。注意欠如・多動性障害は、主に「不注意(うっかりミスが多い、約東を守れない)」、「多動(落ち着きがない、集中力が続かない)」、「衝動性(思いついたことをよく考えず行動に移してしまう)」などによって特徴づけられる疾患である。
4.× 状況にふさわしくない単語の発声を繰り返すことはない。チック症候群の症状のひとつである複雑性音声チックや、自閉症スペクトラム症(アスペルガー症候群)においてみられることがある症状である。複雑性音声チックではわいせつな言葉や中傷などを突然発する。アスペルガー症候群では、周囲の雰囲気や空気を読むことが苦手なため、場にそぐわない発言を繰り返すことがある。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み112~114の問いに答えよ。
 Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉と診断された。

113 診察後、Aさんの両親は「親としてどうしたら良かったのでしょうか、私たちの育て方に問題があったのでしょうか」と外来看護師に話した。
 このときのAさんの両親への対応として適切なのはどれか。

1.「Aさんは育てにくいお子さんでしたね」
2.「職場の環境が悪かったことが原因です」
3.「ご両親の育て方が原因ではないと思いますよ」
4.「もっと早くAさんの問題に気が付けばよかったですね」

解答3

解説

1.× 「Aさんは育てにくいお子さんでしたね」:両親の質問は育て方に問題があったかということであり、育てやすさに関して言及するのは直接的な回答になっていない。両親は子どもに対して何ができたかという思いである。また、育てにくいかどうかというのは主観的な要素も入るため、特に初診時の対応としては今後の治療に影響する可能性もある。
2.× 「職場の環境が悪かったことが原因です」:注意欠如・多動性障害(ADHD)の原因は環境要因や脳の神経系など様々であり、職場の環境だけが悪かったことが原因とはいえない。
3.〇 正しい。「ご両親の育て方が原因ではないと思いますよ」と伝えることは、Aさんの両親への対応として適切である。ADHDの原因は両親の育て方ではなく様々なため、自分たちを責めないためにも育て方が注意欠如・多動性障害(ADHD)の原因ではないことを伝える。疾患の理解を深める意味や医療者との関係性構築の観点からも重要である。
4.× 「もっと早くAさんの問題に気が付けばよかったですね」:両親がより自分たちを責めるような思いになる対応でありふさわしくない。また、注意欠如・多動性障害(ADHD)では、患者のみならず家族、職場、医療機関が継続的に治療に向かう姿勢を保つことが大切である。良好な関係性を保つことの重要性を念頭に、これまでの対応を非難するのではなく、ポジティブに支持する反応を示すのが大切である。

 

 

 

 

 

 

次の文を読み112~114の問いに答えよ。
 Aさん(19歳、男性)は、幼い頃から忘れ物や遅刻が多く、落ち着いて授業を受けることが難しかった。学校からは精神科の受診を勧められていたが、受診することなく高校まで卒業した。卒業後は事務職として働きはじめたが、仕事上のトラブルで上司や同僚から叱責を受けたことをきっかけに、仕事を無断で休むことが多くなった。産業医から精神科外来を紹介され、両親とともに受診した。本人の診察と両親からの生育歴の聴取が行われ、注意欠如・多動性障害〈ADHD〉と診断された。

114 Aさんは予約した受診日を忘れてしまい、受診できないことが度々あった。Aさんは、これまで忘れないための工夫を何もしてこなかったと外来看護師に話した。
 Aさんへの対応で最も適切なのはどれか。

1.「ご家族に予定を管理してもらいましょう」
2.「忘れてしまった理由を考えてみましょう」
3.「予定を忘れたことで生じる不利益を整理してみましょう」
4.「今予約した次回の受診日をこの場で予定表に書き込みましょう」

解答4

解説

1.× 「ご家族に予定を管理してもらいましょう」:ご家族に頼るだけでなく自分自身でできる対策を一緒に考える必要がある。日常生活で起こり得る問題を最小限にし、成功体験から本人の自尊心を高める。本人が疾患の特性理解をすすめ、今後生じうる問題にうまく対処する能力を身につけるという観点から大切である。ただし、スケジュールを忘れないようにするために、家族の助けを借りるのはひとつの方法であるため、状況や場合によっては活用する。
2.× 「忘れてしまった理由を考えてみましょう」:忘れてしまう理由を考えるのではなく、どうしたら忘れないで済むかという対処法を一緒に考える必要がある。注意欠如・多動性障害(ADHD)では、特別な理由がなくとも不注意さを基盤としてスケジュール管理ができないことはしばしば経験される。
3.× 「予定を忘れたことで生じる不利益を整理してみましょう」:予定を忘れたことで生じる不利益を整理しところで忘れやすいことに対する対策や解決には繋がらない。受診日を管理できないのは不注意さからくるものである。受診を忘れることでの不利益を明らかにするのではなく、具体的なスケジュール管理方法を工夫する。
4.〇 正しい。「今予約した次回の受診日をこの場で予定表に書き込みましょう」と伝えることは、Aさんへの対応で最も適切である。
4.〇 正しい。本症例は、設問から「これまで忘れないための工夫を何もしてこなかった」と情報が読み取れる。疾患の根本にある不注意さを理解して、それにすり合わせるかたちで対策を講じることが大切である。失敗や忘れないようにするための一緒に対策を考える必要がある。この場合、予定表に書き込むという具体的な対策をすることは、不注意で予定を忘れてしまっても情報を再度思い出すために有効な手段である。

 

 

 

 

 

 

 

次の文を読み115~117の問いに答えよ。
 Aさん(78歳、男性)は、妻(70歳)と2人暮らしである。脳血管障害後遺症による右片麻痺があり、車椅子への移乗は部分介助、要介護2である。排泄はポータブルトイレを利用している。Aさんと妻はなるべく家で過ごしたいと考え、自宅での介護はすべて妻が行っている。長女(会社員)が県内に在住しているがAさんの介護はしていない。訪問看護を週1回利用するのみで、他のサービスは利用していない。最近、妻の腰痛が悪化し、妻から訪問看護師に「主治医から介護の負担を軽減するように言われました。でも夫は家から出たくないし、私も夫をどこかに預けるのは不安です。どうしたらよいでしょうか」と相談があった。

115 このときの訪問看護師が提案するAさんへのサービスで最も適切なのはどれか。

1.通所介護
2.訪問介護
3.短期入所生活介護
4.訪問リハビリテーション

解答2

解説

 本問では「Aさんと妻はなるべく家で過ごしたい」と考えているうえに、「夫は家から出たくないし、私も夫をどこかに預けるのは不安」であることから、自宅での介護が必要と考えられる、さらに、妻の介護の負担を軽減することが目的である。したがって、選択肢2.訪問介護は訪問看護師が提案するAさんへのサービスで最も適切である。訪問介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)などが利用者の自宅を訪問して身体介護や調理、洗濯、掃除などの生活援助を行うサービスである。

 

1.通所介護(デイサービス)とは、要介護者が自宅での生活を続けていけるように、身体機能の維持・向上を目指し、機能訓練や他者との交流を通して社会的孤立感の解消、認知症予防を行う施設である。今回は妻もAさんも自宅を希望しているので適さない。
3.短期入所生活介護とは、要介護者が老人短期入所施設、特別養護老人ホームなどの施設に短期間入所して機能訓練や日常生活の世話を受けるサービスである。今回は妻もAさんも自宅を希望しているので適さない。
4.訪問リハビリテーションとは、理学療法士や作業療法士が要介護者の自宅に訪問し、機能訓練を行うサービスである。今回は妻の介護負担の軽減が目的なので適さない。介護保険のサービスを選択する際には、利用者の状況に合ったサービスであることとともに、利用者本人や家族の希望を尊重することが重要である。

 

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