第30回(H29) 介護福祉士国家試験 解説【問題111~115】

 

問題111 喀痰吸引を必要とする利用者に対する生活支援として,適切なものを1つ選びなさい。

1 口腔内の乾燥を保つ。
2 室内の空気を清浄に保つ。
3 室内の湿度を30%以下に保つ。
4 水分摂取を控える。
5 仰臥位から側臥位への体位変換を控える。

解答2

解説

 痰を出しやすくするケアのポイントは、①重力 (体位変換・体位ドレナージ)、②痰の粘性(加湿・水分補給)、③空気の量と速さ (咳・ハッフィング)である。これらを考慮した支援を行うことで、呼吸器内に貯留した痰を排出しやすくし、利用者の負担を最小限にした喀痰吸引を行うことができる。
1.× 口腔内の乾燥ではなく、ある程度の加湿を保つ。乾燥することで自浄作用が低下し、細菌の感染や繁殖が起こりやすい状態になるためもある。
2.〇 正しい。抵抗カや免疫力が低下していることから、感染症を起こす可能性もある。そのため、室内は室温や湿度のほか、換気など空気を清浄に保つ配慮が必要となる。
3.× スムーズな喀痰吸引を行うために、40~60%の適度な湿度が必要となる。
4.× 水分量が低下すると痰は粘性を増し、気道に停滞し痰の移動が困難となる。そのため、適度な水分補給を行い、体内の水分量のバランスをとることが大切である。
5.× 仰臥位では、重力により背側に痰がたまり、排出しにくい状態となる。体位を変えることで痰を移動させ、出しやすくする。また、痰がたまっているほうを上にした体位に変えることで重力を利用して疲を出しやすくする体位ドレナージを行うこともある。

 

 

 

 

問題112 介護福祉士が喀痰吸引を指示に従って実施したが,1回の吸引で痰が取り切れなかった。再度,吸引を行うときの対応として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 呼吸が落ち着いたことを確認する。
2 吸引時間を延長する。
3 吸引圧を高くする。
4 太い吸引チューブに変更する。
5 痰がたまっていそうな部位にしばらく吸引チューブをとどめる。

解答1

解説

 痰が取り切れず再度吸引を行うときは、医師の指示に基づいた落ち着いた判断と行動が必要となる。喀痰吸引は常に医師の指示の下に行うものであり、自己判断で指示に反する行為を行うことは禁じられている。
1.〇 正しい。喀痰吸引は、吸引の刺激からむせたり自発的に呼吸を止めてしまったりなど、利用者への負担が大きい。そのため、呼吸が落ち着いたことを確認してから、再度行うことが大切である。
2.× 医師の指示どおりの吸引時間で行う。吸引時間を延長することは、呼吸がしにくく、 低酸素状態を起こす危険性があるため、医師の指示以外の行動を自己判断で指示に反する行為を行うことは禁じられている。
3.× 医師の指示どおりの吸引圧で行う。吸引圧を高くすることは、粘膜の損傷や出血、刺激が強くなるため嘔吐の原因ともなる。医師の指示以外の行動を自己判断で指示に反する行為を行うことは禁じられている。
4.× チューブを太くすることで、呼吸状態の悪化や粘膜の損傷をまねく可能性も高くなる。医師の指示以外の行動を自己判断で指示に反する行為を行うことは禁じられている。
5.× 吸引チューブをとどめておくと、粘膜への吸い付きが起こり、粘膜の損傷や出血の原因となる。吸引圧が1か所にかからないよう、吸引チューブを回したりずらしたりしながらまんべんなく痰を吸引する。

 

 

 

問題113 Aさん(85歳)は,胃ろうを造設している。介護福祉士は,栄養剤を注入する前にAさんの排尿を促して,排尿があったのを確認した後に注入を開始した。注入する栄養剤は体温に近い温度で用意して,注入中の体位は角度10度の仰臥位で行った。栄養剤の量と注入の速度は,指示のとおりに行った。注入中に,Aさんが嘔吐した。
 嘔吐の原因として,最も可能性の高いものを1つ選びなさい。

1 注入前の排尿
2 栄養剤の温度
3 注入中の体位
4 栄養剤の量
5 注入の速度

解答3

解説

 経管栄養の注入中の嘔吐について原因を推察する問題である。嘔吐の原因として仰臥位に近い状態で注入する場合、注入する栄養剤の温度による刺激がある場合、注入速度が速く消化吸収が追いつかない場合、量が多すぎて逆流する場合が考えられる。
1.× 注入中は安静が必要であり、注入前に排尿をすませることが勧められる。Aさんは注入前に排尿をすませており、嘔吐の原因としての可能性は低い。
2.× 栄養剤は常温から体温に近い温度のものを使用する。
3.〇 正しい。Aさんの場合、注入した栄養剤は体温に近い温度で用意されており、嘔吐との関係性は低い。
4.× 注入は上半身を挙げた半座位(30度~45度挙上)や座位で行うことが望ましい。Aさんの注入中の体位は、角度 10度の仰臥位であり、これが嘔吐の原因と考えられる。
5.× 注入速度が速いと消化速度も速くなり、幅吐や下痢が誘発されやすい。Aさんの場合、医師の指示どおりの注入速度で行っており、嘔吐の原因となる可能性は低い。

 

 

 

<総合問題>

総合問題

次の事例を読んで,問題114 から問題116 までについて答えなさい。
〔事 例〕
Bさん(72 歳,女性)は1 か月前に脳出血(cerebral hemorrhage)で倒れて,不全麻痺は残ったが,自力でベッドから車いすに移乗できるまでに回復した。食事や排泄はベッドから離れて行えるようになり,在宅で生活することになった。Bさんは長女と同居しているが,長女は働いていて日中不在なので,介護保険の訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用することになった。
 Bさんは日中はベッド上での生活が主体である。車いすの左側のブレーキをかけ忘れることや,左側の物に気づかずに衝突してしまうことがある。また,食事の時にお膳の左側の食べ残しが目立ち,屋内の生活にも何らかの介助が必要である。

問題114 Bさんの症状として,正しいものを1つ選びなさい。

1 全般性注意障害
2 失行
3 見当識障害
4 実行機能障害
5 左半側空間無視

解答5

解説
1.× 全般性注意障害は、集中困難・注意散漫や、注意の持続・継続が困難な状態であり、高次脳機能障害の症状の1つである。日常生活での例として、火の消し忘れなどの危険な状況を招く場合がある。 Bさんの注意障害は左側の一方向に限定して出現していることから、 誤りである。
2.× 失行とは、身体機能上は可能なはずの動作ができないことをいう。衣服を正しく着られない着衣失行、鉛筆で字を書くなど道具を用いた動作ができない観念失行、指示された動作ができない観念運動失行、図形を正しく模写できないなど物を形づくることがうまくできない構成失行がある。いずれも、Bさんの現在の症状とは異なる。
3.× 見当識障害とは、時間や空間・場所・人などを把握することができないことをいう。例えば、日にちがわからない、季節が暖味になる、今いる場所も不確かになるなどである。進行すると、慣れ親しんだ家族などの顔もわからなくなる。いずれも、Bさんの現在の症状とは異なる。
4.× 実行機能障害とは、計画を立て、段取りや手に従って行動することができないことをいう。料理をつくる、計画を立てて出かける、趣味活動を自発的に楽しむことが困難になるなどがあるが、いずれもBさんの事例からは読み取れない。
5.〇 正しい。左半側空間無視は、本人から見て左側の空間を無視する障害である。Bさん本人に症状の自覚がないため、できる行為や見える範囲を確認しながら、安全に自立して生活できるような環境づくりをすることが援助のポイントとなる。コミュニケーションも、視野に入る右側から言葉かけをするなど配慮を要する。

 

 

 

問題115 Bさんの状態に該当する障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)の判定として,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 ランクA 1
2 ランクA 2
3 ランクB 1
4 ランクB 2
5 ランクC 1

解答3

解説

 厚生省(現:厚生労働省)は、1991(平成3)年に「障害高齢者の日常生活自立度 (寝たきり度)判定基準」を公表した (下表参照)。この内容を理解したうえで、Bさんの状態を照らし合わせる。

●障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

生活自立ランクJ何らかの障害寺を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する。
1 交通機関等を利用して外出する
2 隣近所へなら外出する
準寝たきりランクA屋内での生活は概ね自立しているが、介助なしには外出しない。
1 介助により外出し、日中はほとんどベッドから離れて生活する
2 外出の頻度が少なく、日中も寝たり起きたりの生活をしている
寝たきりランクB

屋内での生活は何らかの介助を要し、日中もベッド上での生活が主体であるが座位を保つ
1 車椅子に移乗し、食事、 排池はベッドから離れて行う
2 介助により車椅子に移乗する

ランクC1日中ベッド上で過ごし、排泄、食事、着替えにおいて介助を要する。
1 自力で寝返りをうつ
2 自力では寝返りもうたない

※判定にあたっては補装具や白助具等の器具を使用した状態であっても差し支えない。

 Bさんは問題文から、「日中はベッド上での生活が主体であること」が分かる。この時点で、ランクBと限定できる。また,「自力でベッドから車いすに移乗できるまでに回復した。食事や排泄はベッドから離れて行える」と書いてあることから、ランクB1と限定できる。よって、解答は3.ランクB 1である。

 

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