第20回(H24年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前66~70】

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66.潰瘍性大腸炎の合併症でないのはどれか。

1.口腔内アフタ
2.ブドウ膜炎
3.結節性紅斑
4.痔瘻

解答

解説

潰瘍性大腸炎とは?

潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。原因不明であるが、遺伝的因子と環境因子が複雑に絡み合って発症に関与していると考えられている。

1.〇 口腔内アフタは、潰瘍性大腸炎の合併症である。潰瘍性大腸炎では、全身の粘膜に炎症が波及することがあり、口腔内アフタ(アフタ性口内炎)がしばしば認められる。ほかにも、クローン病やベーチェット病にもみられる。

2.〇 ブドウ膜炎は、潰瘍性大腸炎の合併症である。なぜなら、炎症が腸にとどまらず、体全体に及ぶことがあるため。具体的には、血液を介して免疫系や炎症物質が全身に波及し、他の臓器(目、皮膚、関節など)にも炎症を引き起こしやすくなる。したがって、潰瘍性大腸炎では、腸外合併症として、眼疾患(ブドウ膜炎、虹彩炎、強膜炎など)が認められる。ちなみに、ブドウ膜炎とは、ぶどう膜に炎症をきたしている状態を指す。

3.〇 結節性紅斑は、潰瘍性大腸炎の合併症である。結節性紅斑とは、皮膚の下に圧痛を伴う赤色または紫色の膨らみ(結節)が生じる脂肪織炎(皮下脂肪組織の炎症)の一種で、最もよくみられる部位はすねの皮膚である。

4.× 痔瘻は、潰瘍性大腸炎の合併症でない。痔瘻(じろう)は、直腸や肛門周囲の感染によって瘻孔(ろうこう)が形成される病態で、クローン病などの慢性炎症性腸疾患でよく見られる合併症である。

 

 

 

 

 

67.閉塞性肥大型心筋症でみられるのはどれか。

1.大動脈圧上昇
2.突然死
3.胸部大動脈瘤
4.肺動脈弁狭窄症

解答

解説

閉塞性肥大型心筋症とは?

閉塞性肥大型心筋症とは、心臓の筋肉が厚く(肥大)なることで、血液の流れが一部妨げられ、心臓がうまくポンプとして機能しづらくなる病気である。肥大型心筋症の多くは、左心室と右心室を仕切る壁(心室中隔)が特に分厚くなり、左心室の出口付近が狭まり、血液が流れにくくなる。症状は、無症状な場合から、疲労、脚のむくみ、呼吸困難などさまざまである。また、胸痛や失神を起こす場合もある。合併症には、心不全、不整脈、心停止などがあげられる。

1.× 大動脈圧は、「上昇」ではなく低下しやすい。なぜなら、左室流出路(左心室から大動脈へ血液を送り出す部分)が狭くなることで、駆出される血液量(心拍出量)が低下しやすくなるため。したがって、大動脈圧上昇は、大動脈弁狭窄症や高血圧などで認められる所見である。

2.〇 正しい。突然死は、閉塞性肥大型心筋症でみられる。なぜなら、若年者を含めて致死性不整脈(心室細動など)が起こりやすいため。ほかにも、左心室流出路閉塞に伴う血行動態の不安定化があげられる。

3.× 胸部大動脈瘤は、大動脈の動脈硬化、結合組織疾患(例:マルファン症候群)、高血圧などが原因であることが多い。

4.× 肺動脈弁狭窄症は、右心系の問題であり、閉塞性肥大型心筋症(左心系の疾患)とは無関係である。ちなみに、肺動脈弁狭窄症とは、肺動脈流出路が狭小化することによって、収縮期の右室から肺動脈への血流が妨げられる病態である。ほとんどの症例が先天性であり、多くは成人期まで無症状である。徴候としては漸増漸減性の駆出性雑音(例:II音の分裂開大およびP2の遅延、粗い)などがある。診断は心エコー検査による。症状がみられる患者と圧較差が大きい患者には、バルーン弁形成術が必要である。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

 

 

 

 

68.原発性アルドステロン症で正しいのはどれか。

1.低血圧
2.アルカローシス
3.高マグネシウム血症
4.血漿レニン活性高値

解答

解説

原発性アルドステロン症とは?

原発性アルドステロン症とは、副腎皮質の自律的なアルドステロン産生(過形成、腺腫、または癌腫による)により引き起こされるアルドステロン症である。主な症状として、発作性の筋力低下、血圧上昇、および低カリウム血症がある。 健常状態において副腎からのアルドステロン分泌は、体液量の低下を感知して腎臓から分泌されるレニンの制御を受け、塩分を体内に保持し、血圧を維持するはたらきを持つ。 レニンが低値にもかかわらず副腎からアルドステロンが過剰分泌される状態を確認することで、この病気と診断される。

1.× 「低」ではなく高血圧が起こる。なぜなら、原発性アルドステロン症では、アルドステロンの過剰分泌により、ナトリウム再吸収と水分貯留が増加するため。ちなみに、アルドステロンとは、腎臓に作用してナトリウムと水の再吸収を促進し、循環血漿量増加を促し血圧を上昇させる。アルドステロンが過剰に分泌されると、高血圧や低カリウム血症、筋力低下などがみられる。

2.〇 正しい。アルカローシスは、原発性アルドステロン症である。なぜなら、アルドステロン過剰により、水素イオンの排泄が促進されるため。アルカローシスとは、血液のpHが7.45以上となり、アルカリ性に傾いた状態を指す。血液中の重炭酸塩の過剰や酸の減少が原因で発生する。

3.× 「高」ではなく低マグネシウム血症が起こる。なぜなら、原発性アルドステロン症による低カリウム血症が重度の場合、腎尿細管からのマグネシウム排泄も増加するため。

4.× 血漿レニン活性は、「高」ではなく低値となる。なぜなら、アルドステロンの作用で腎臓からナトリウムが再吸収され、血圧が上昇した結果、高血圧により腎臓からのレニン分泌が抑制されるため。

 

 

 

 

 

69.特発性肺線維症について誤っている記述はどれか。

1.60歳代に多い。
2.細菌性肺炎に含まれる。
3.重篤な呼吸障害を生じる。
4.肺胞隔壁に炎症・線維化をきたす。

解答

解説

特発性肺線維症とは?

特発性肺線維症は、肺胞の損傷により間質が分厚く硬くなる病態である。原因不明とされているが、危険因子として喫煙が挙げられる。50歳以上の男性での発症頻度が高い。特発性間質性肺炎のうち最も頻度が高く、緩徐に進行する予後不良の疾患である。繰り返す肺胞上皮の損傷とそれに伴う修復の異常により、間質の線維化、肺胞構造の再構築が起こる。乾性咳嗽と徐々に増悪する労作性呼吸困難が主症状である。また、ばち指がみられることもある。肺癌や気胸の合併がみられる。特徴的な所見の確認に加え、詳細な病歴聴取や診察、各種検査による他疾患の除外が重要である。

1.〇 正しい。60歳代に多い。なぜなら、危険因子として喫煙が挙げられ、加齢とともに免疫や細胞の老化につながるため。

2.× 「細菌性肺炎」ではなく非感染性の間質性肺疾患に含まれる。なぜなら、特発性肺線維症は、原因不明とされているため。ちなみに、細菌性肺炎は、細菌感染による急性の炎症性疾患である。症状としては、発熱、咳、痰絡み、息切れ、食欲低下、倦怠感などである。原因となる主な細菌は、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌であり、治療は抗生物質を使用することが多い。

3.〇 正しい。重篤な呼吸障害を生じる。特発性肺線維症は、進行性の線維化によって肺機能が低下し、呼吸困難が顕著になりやすい。緩徐に進行する予後不良の疾患である。

4.〇 正しい。肺胞隔壁に炎症・線維化をきたす。特徴的な病理所見である。肺胞隔壁とは、肺胞と呼ばれる小さな部屋を囲んでいる壁である。肺胞隔壁や肺胞を取り囲む組織を間質という。

 

 

 

 

 

70.マイコプラズマ肺炎で正しい記述はどれか。

1.老年者に頻度が高い。
2.潜伏期は2~3日である。
3.消化器症状はみられない。
4.乾性咳が多い。

解答

解説

マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎とは、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症である。小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的多いものの1つである。例年、患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下であるが、成人の報告もみられる。

1.× 「老年者」ではなく若年者に頻度が高い。なぜなら、集団感染を引き起こしやすく、学校や家庭内などでの発症が一般的であるため。高齢者でも発症することはあるが、若年者ほど頻度は高くない。

2.× 潜伏期は、「2~3日」ではなく2~3週間である。潜伏期が2~3日であるのは、細菌性肺炎などである。

3.× 消化器症状は「みられやすい」。なぜなら、マイコプラズマが胃腸にも感染し、全身性の免疫反応を引き起こすため。マイコプラズマ肺炎では、呼吸器症状以外の症状(全身倦怠感、発熱、頭痛、消化器症状など)を伴う。消化器症状としては、下痢や腹痛がみられる。

4.〇 正しい。乾性咳が多い。乾性咳嗽(空咳)とは、痰を伴わない乾いた咳のことである。咳は、長引くことが多く、治癒後も数週間持続することがある。

 

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