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81.細菌性食中毒で正しい記述はどれか。
1.サルモネラ属は潜伏期が1週間である。
2.腸炎ビブリオによる食中毒はボツリヌスより発症頻度が低い。
3.ボツリヌス菌毒素は高温加熱によっても不活性化されない。
4.腸管病原性大腸菌ではベロ毒素によって発症する。
解答4
解説
食中毒とは、食中毒を起こすもととなる細菌やウイルス、有毒な物質がついた食べ物を食べることによって、下痢や腹痛、発熱、吐き気などの症状が出る病気のことである。①微生物(細菌、ウイルス等)によるもの、②化学物質によるもの、③自然毒によるもの及びその他に大別される。なかでも、①微生物(細菌性)の食中毒は、感染型と毒素型に大きく分類される。加熱が有効なのは感染型であり、毒素型に加熱は無効である。
【毒素型】毒素型細菌性食中毒、セレウス、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス
1.× サルモネラ属は潜伏期が、「1週間」ではなく8~48時間である。ちなみに、サルモネラ属とは、鶏、豚、牛などの動物の腸管や河川、下水など自然界に広く分布している。したがって、サルモネラ菌の食中毒の原因として、弁当類、生乳、生卵・肉類があげられる。潜伏期間は8~48時間で、38~40℃の発熱が3~5日続く。他の症状として、嘔吐(軽度)、腹痛(軽度)、下痢(中等度:ときに血便)、神経症状(なし)があげられる。
2.× 腸炎ビブリオによる食中毒は、ボツリヌスより発症頻度が「高い」。
・ボツリヌス菌とは、土壌や水などの環境中に生息し、缶詰や瓶詰め真空パック食品で問題となることが多い。潜伏期間は12~36時間で、症状は眼症状、嚥下障害、四肢麻痺、呼吸筋麻痺・死亡などである。
・腸炎ビブリオとは、食中毒の原因となる細菌で、海水や海産の魚介類などに生息している。4℃以下ではほとんど繁殖しない。腸炎ビブリオの症状は、潜伏期間が12時間前後で、主症状としては耐え難い腹痛があり、水様性や粘液性の下痢がみられる。下痢は日に数回から多いとき十数回、しばしば発熱(37〜38℃)や嘔吐、吐き気がみられる。
3.× ボツリヌス菌毒素は、高温加熱(85℃で5分以上)によって不活性化される。(※参考:「バイオテロリズムに対する病院感染対策」ヨシダ製薬)
4.〇 正しい。腸管病原性大腸菌ではベロ毒素によって発症する。腸管出血性大腸菌とは、赤痢菌が産生する志賀毒素類似のベロ毒素を産生し、激しい腹痛、水様性の下痢、血便を特徴とする。特に、小児や老人では、溶血性尿毒症症候群や脳症(けいれんや意識障害など)を引き起こしやすいので注意が必要である。原因食品は、ハンバーグ、生肉、生レバー、井戸水などである。
82.感染症について正しい記述はどれか。
1.大量の抗菌薬を投与しないと日和見感染が起こる。
2.メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は院内感染の原因になる。
3.腸管病原性大腸菌で起こる感染症を菌交代症という。
4.生命に対する危険度が最も高いものは5類感染症に分類される。
解答2
解説
1.× 大量の抗菌薬を投与は、日和見感染のリスクを高める。なぜなら、抗菌薬は狙った病原菌だけではなく、身体に常在している善玉菌・共生菌などの正常な細菌叢にも影響を及ぼすため。これら常在細菌が減少・消失することで、通常は抑えられていた真菌(カンジダなど)や他の病原微生物が増殖しやすくなり、結果的に日和見感染が起こりやすくなる。ちなみに、日和見感染とは、健常者には病原性をもたない常在弱毒菌(グラム陽性菌など)による感染症である。ちなみに、抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。
2.〇 正しい。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は院内感染の原因になる。黄色ブドウ球菌は非常にありふれた常在菌で、健常者でも髪の毛や鼻の粘膜、口腔内、傷口などによく付着している。M R S Aの場合は感染経路が「接触感染(直接患者に接触する)」と「間接感染(介護用品や環境表面に触れることで感染)」の2つであり、「標準予防策」で対応する。特に、手術部位感染、カテーテル関連血流感染、肺炎などを引き起こす。
3.× 腸管病原性大腸菌で起こる感染症は、「菌交代症」ではなく食中毒や感染症として分類される。ちなみに、菌交代症とは、抗菌薬治療により腸内細菌叢が破壊され、耐性菌や真菌が増殖することを指す(例:偽膜性大腸炎)。ちなみに、偽膜性大腸炎とは、主に抗菌薬の使用によりクロストリジウム・ディフイシル菌(Clostridium difficile:CD)という菌が異常に増殖して起きる感染性大腸炎の1種である。内視鏡検査で大腸の壁に小さい円形の膜が見られる。薬剤服用後数日から2~3週間後に下痢、発熱、腹痛など の症状が出始める。
4.× 生命に対する危険度が最も高いものは、「5類感染症」ではなく1類感染症に分類される。
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。
【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)
②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置
③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・品管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置
④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置
⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供
83.難聴を初発症状とすることが多いのはどれか。
1.神経膠腫
2.髄膜腫
3.神経鞘腫
4.下垂体腺腫
解答3
解説
1.× 神経膠腫とは、グリオーマともいい、中枢神経系(脳や脊髄)に発生する腫瘍で、主に頭痛、てんかん、運動障害、精神症状などが初発症状として現れる。悪性腫瘍であり予後が最も悪い。
2.× 髄膜腫とは、最も多い原発性脳腫瘍で全脳腫瘍の27%を占める。脳や脊髄を覆う髄膜に発生する腫瘍である。皮膜をもつ良性の充実性腫瘍である。ちなみに、充実性腫瘍とは、充実成分(固形成分)でできた腫瘍のことである。液体がたまった「のう胞性腫瘍」が、触るとぶよぶよした感じであるのに対し、「充実性腫瘍」はしこりのような硬さがある。
3.〇 正しい。神経鞘腫は、難聴を初発症状とすることが多い。神経鞘腫は、小脳橋角部に最も多い脳腫瘍である。内耳神経に生じる聴神経鞘腫が多く、ほとんど良性腫瘍である。女性にやや多く、初期症状は難聴・耳鳴であり、腫瘍の増大により症状が進行すると、運動失調や歩行障害などの小脳症状や、水頭症による頭蓋内圧亢進症状を呈する。ちなみに、聴覚の伝導路は、【蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回】である。
4.× 下垂体腺腫とは、下垂体前葉由来の良性腫瘍である。トルコ鞍近傍で好発する。下垂体腺腫では、視交叉が圧迫されると視神経の一部が障害され両耳側半盲となる。視力・視野障害の他にも、下垂体前葉機能障害(成長ホルモン低下症状や卵胞刺激ホルモンや黄体形成ホルモンの低下症状など)や視床下部障害(尿崩症)が起こる。
84.身体障害者手帳の交付対象でないのはどれか。
1.じん臓機能障害
2.そしゃく・嚥下機能障害
3.平衡機能障害
4.高次脳機能障害
解答4
解説
身体障害者手帳とは、身体障害者がそれを対象とする各種制度を利用する際に提示する手帳で、身体障害者が健常者と同等の生活を送るために最低限必要な援助を受けるための証明書にあたる。障害者手帳を提示することで、障害者雇用枠での就労が可能になるほか、医療費の負担減や税金の控除、割引等のサービスが受けることができる。
【認定対象になる障害】
・視覚障害
・聴覚障害
・平衡機能、音声機能・言語機能又はそしゃく機能障害
・肢体不自由
・心臓機能障害
・じん臓機能障害
・呼吸器機能障害
・ぼうこう又は直腸機能障害
・小腸機能障害
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害
・肝臓機能障害
1.〇 じん臓機能障害は、交付対象である。慢性腎不全などで腎機能が著しく低下し、日常生活に支障がある場合(透析療法を受けている患者)、身体障害者手帳の交付対象となる。
2.〇 そしゃく・嚥下機能障害は、交付対象である。【平衡機能、音声機能・言語機能又はそしゃく機能障害】という分類に含まれる。
3.〇 平衡機能障害は、交付対象である。内耳や前庭系の機能異常による平衡機能障害(例:難治性めまい症状)は、身体障害者手帳の交付対象となる。
4.× 高次脳機能障害は、身体障害者手帳の交付対象でない。高次脳機能障害とは、脳損傷に起因する認知障害全般を指し、 この中にはいわゆる巣症状としての失語・失行・失認のほか記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが含まれる。
85.回復期リハビリテーション病棟における評価会議について適切でない記述はどれか。
1.病棟看護師は参加する。
2.評価が完了してから治療を開始する。
3.治療経過によりゴール設定を変更する。
4.すべての症例に行う。
解答2
解説
回復期リハビリテーションとは、急性期を脱したが、まだ自宅に戻れない段階でのリハビリテーションを担当することが多い。近年、急性期治療から早期のリハビリテーションを、複数の医療機関が連携と役割分担をしながら一連の流れで行う地域連携クリテイカルパスが促進されている。急性期病院で入院や手術をされた場合でも、回復期病院でその情報が共有され、加えて回復期リハビリテーション病棟では、【訓練→目標を随時達成→機能の回復→退院】を目指す。
1.〇 病棟看護師は参加する。なぜなら、患者の病棟内の日常生活動作を報告することで、ほかの専門職だけでなく、家族に必要な情報を提供できるため。
2.× 必ずしも、評価が完了してから治療を開始する必要はない。むしろ、回復期リハビリテーションでは、評価と治療は並行して行われる。初期評価の結果をもとに治療を開始し、治療の進行中に追加評価を行いながらゴール設定を調整することが多い。
3.〇 治療経過によりゴール設定を変更する。なぜなら、患者の可能性を最大限に引き出すことであり、患者がリハビリテーションの取り組みが熱心で、最初のゴール設定より進行した場合、柔軟な対応が必要であるため。
4.〇 すべての症例に行う。なぜなら、個別性の高いリハビリテーションを提供するため。