第20回(H24年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後91~95】

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91.第6頚髄レベルの脊髄損傷患者の合併症とその対応との組み合わせで正しいのはどれか。

1.うつ熱:解熱剤投与
2.殿部褥瘡:プッシュアップ
3.尿路感染:間欠導尿
4.自律神経過反射:下肢挙上

解答

解説
1.× うつ熱は、「解熱剤投与」ではなく体表冷却や環境温度の調整を提供する。うつ熱とは、暑い環境にいたり、体の放熱機能が低下していたりすることによって引き起こされる熱中症状のことである。夏場は外の気温が体温よりも高いため、体の表面から空気中に熱を逃がすことができず、体内に熱がこもってしまう。また、日本の夏は湿度も高いことから、汗が流れやすくなる。

2.× 殿部褥瘡は、「プッシュアップ」ではなく体位変換、クッションの使用などを提供する。なぜなら、プッシュアップは上腕三頭筋の機能が必要であるため。つまり、プッシュアップ動作は、第7頚髄レベルの機能残存で行える。

3.〇 正しい。尿路感染:間欠導尿
第6頚髄レベルの損傷では、排尿機能が障害され、尿路感染症のリスクが高まる。脊髄損傷では、神経因性膀胱により排尿障害が生じる。間欠導尿を行い、膀胱内の尿を定期的に排出することで感染リスクを低減する。

4.× 自律神経過反射は、「下肢挙上」ではなく上体挙上を提供する。なぜなら、上半身を起こし、血圧を低下させる必要があるため。下肢挙上は血圧をさらに上昇させる可能性がある。ちなみに、自律神経過反射とは、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。内臓神経の抑制が解除されるため、主に骨盤内臓器が緊張する促通刺激が原因となり誘発される。原因は①膀胱刺激、②直腸刺激、③内臓刺激、④皮膚刺激などが挙げられる。生命の危険を伴い合併症を伴う。自律神経過反射の症状は、高血圧、ガンガンする頭痛、顔面紅潮、損傷レベルより上部での発汗、鼻詰まり、吐き気、脈拍60以下の徐脈、損傷レベルより下部の鳥肌である。

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

 

 

 

 

 

92.五行色体で相剋関係にある組合せはどれか。

1.焦:臊
2.面:唇
3.憂:噦
4.汗:涕

解答

解説

五行相剋とは?

五行相剋とは、水・火・金・木・土の五つの根元要素が互いに力を減じ合い、水は火に、火は金に、金は木に、木は土に、土は水に勝つという考え方である。
木剋土、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木。

1.× 焦:臊
・焦は、火に属す。
・臊は、木に属す。

2.× 面:唇
・面は、火に属す。
・唇は、土に属す。

3.× 憂:噦
・憂は、火に属す。
・噦は、土に属す。

4.〇 正しい。汗:涕は、五行色体で相剋関係にある。
・汗は、に属す。
・涕は、に属す。

 

 

 

 

 

93.津液について正しい記述はどれか。

1.津液は腎と膀胱で生成される。
2.津液の代謝機構を三焦気化という。
3.津液は経脈を通じて全身に流れる。
4.津液が停滞する病理変化を津傷という。

解答

解説

MEMO

津液とは、身体を潤し栄養するための生理的な水分の総称である。これが何らかの原因(脾・腎・三焦の機能低下や気機の滞りなど)によって流れ(運行)が滞ると、体内の水分代謝が正常に行われなくなり、水分が腹部などに停滞しやすくなる。その結果として「鼓脹」と呼ばれるお腹の張り・膨満感が起こると考えられている。

1.× 津液は、「腎と膀胱」ではなくで生成される。血以外の体液すべてのことで、消化された食べ物の水分が小腸や大腸から「」へ運ばれ生成される。

2.〇 正しい。津液の代謝機構を三焦気化という。脾の生理として、①運化(飲食物を水穀の精微に変化させ、心・肺に運ぶ)、②統血(血が脈中から漏れ出るのを防ぐ(気の固摂作用))である。脾は気血生成の源、生痰の源といわれる。また、特性として、①昇清(生理物質の上昇、組織・器官を正常な位置に保つ)、②喜燥悪湿である。ちなみに、気化作用とは、清・気・血・津液の間で相互に化生する働きを指す。

3.× 経脈を通じて全身に流れるのは、「津液」ではなく気血である。気血とは、人体内の生気と血液のことである。気は、人間の体を動かす根源となるエネルギーで、血液や水、臓器を動かし、自律神経系や内分泌系をつかさどる働きをもつ。

4.× 津液が停滞する病理変化を「津傷」ではなく痰飲という。
・津傷とは、津液が損傷した状態を指す。津液は、気や血とともに生命活動を支える基礎物質で、潤いや栄養を与える働きがある。
・痰飲は、体内の水液運化が失調し、身体のある部位に停滞したことによって発生する病証である。

 

 

 

 

 

94.所見と病証との組み合わせで正しいのはどれか。

1.隠痛:陰実証
2.潮熱:陽実証
3.盗汗:陰虚証
4.拒按:陽虚証

解答

解説
1.× 隠痛:陰実証
・隠痛は、虚証にみられる痛みの性質である。気虚(倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒など)がみられる。
・陰実証とは、病状が陰証かつ実証である状態である。

2.× 潮熱:陽実証
・潮熱とは、潮の満ち引きのように、ある一定の時間になると熱を感じるもの。陰虚や陽明の熱などでみられる。
・陰実証とは、病状が陽証かつ実証である状態である。

3.〇 正しい。盗汗:陰虚証
・盗汗とは、睡眠中にかく汗のことである。
・陰虚証(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)など。したがって、治療方針は、陰を養う。

4.× 拒按:陽虚証
・拒按とは、痛みを伴う部位を押さえると痛みが強くなる、または押さえることを嫌がることを指す。実証でみられる。
・陽虚証(虚寒)は、寒証+気虚症状。寒がり、四肢の冷え、顔面蒼白、下痢、白色帯下、腹痛、自汗、倦怠感、息切れ、食欲不振、脈遅・弱などでみられる。

 

 

 

 

 

95.五志に含まれないのはどれか。

1.悲
2.恐
3.怒
4.喜

解答

解説
1.× 悲は、五志に含まれない。五志は、怒、喜、思、憂、恐である。

2.〇 恐は、五志の「水」である。

3.〇 怒は、五志の「木」である。

4.〇 喜は、五志の「火」である。

 

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