第21回(H25年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

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146.鍼施術に関する消毒・滅菌の記述で正しいのはどれか。

1.施術野の消毒には90%エタノールが用いられる。
2.単回使用毫鍼の滅菌にはEOGが用いられる。
3.梅花鍼は洗浄して使用する。
4.イソプロピルアルコールはB型肝炎ウイルスに有効である。

解答

解説
1.× 施術野の消毒には、「90%」ではなく約70%エタノール(70%イソプロピルアルコール)が用いられる。なぜなら、90%エタノールは揮発性が高く、水分が少ないため、微生物の細胞膜に浸透しにくく、消毒効果が低下するため。ちなみに、消毒用エタノールとは、皮膚や手術部位の消毒、医療器具の洗浄消毒などに用いられている。また、種々の添加物成分を混合した製剤(エタノール製剤またはアルコール製剤)として、新指定医薬部外品や食品添加物の用途でも使われている。

2.〇 正しい。単回使用毫鍼の滅菌には、EOGが用いられる。EOG(酸化エチレンガス)滅菌は、温度や湿度の繊細な医療器具に適した滅菌方法である。酸化エチレンガスとは、比較的低い温度でも極めて強い殺菌力を発揮し、金属・非金属の区別なく利用できるため理想的な滅菌法として普及している。適用:カテーテル類、プラスチック製品、不織布、ゴム製品など。適用外:液体、ガスが通りにくい形状のもの、直ぐに使用したいもの。欠点として、滅菌処理・エアレーション時間(ガスの残留毒性が強いため、これらを除去する処理)が長いことがあげられる。

3.× 梅花鍼は、「洗浄」ではなく滅菌して使用する。なぜなら、梅花鍼は皮膚に直接使用するため。感染防止の観点から滅菌が必要である。したがって、再使用する場合にはオートクレーブ(高圧蒸気滅菌)などの適切な滅菌処理を行う必要がある。

4.× イソプロピルアルコールは、B型肝炎ウイルスに有効とはいえない
・B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。
・イソプロピルアルコールとは、微生物のタンパク質を変形させ凝固させる作用や代謝障害、細菌の死滅・溶解による殺菌作用がある。そのため手や指、皮膚などの人体の消毒から医療機器などの消毒に幅広く使用されている。

各用語の説明

・無菌とは、すべての菌が存在しない状態である。
・滅菌とは、物体の表面または容器内のすべての生命形態(細菌、ウイルス、胞子、真菌など)を完全に除去または死滅させるプロセスを指す。
・消毒とは、病原性微生物を、害の無い程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせたりして、毒性を無力化させることである。
・殺菌とは、一部を殺しただけでも「殺菌した」と言える状態であるため、この用語を使う場合は、有効性を保証したものではないともいえる。
・静菌とは、菌をしずめている状態で、菌を殺さないがその増殖を止めている状態を指す。対象や程度を含まない概念である。
・除菌とは、菌をのぞいている状態で、対象物から菌を除いて減らしている状態である。
・抗菌とは、菌をふせぐことで、細菌の増殖を阻止する(抑制する)ことである。菌を殺したり減少させたりするのではなく、繁殖を阻止する(抑制する)対象や程度を含まない概念である。

 

 

 

 

 

147.鍼刺激によるポリモーダル受容器の興奮を伝える神経線維はどれか。

1.Aα
2.Aβ
3.B
4.C

解答

解説


1.× Aαは、筋・腱の感覚と運動を伝導する。

2.× Aβは、触圧覚を伝導する。

3.× Bは、交感神経の節前線維である。

4.〇 正しい。は、鍼刺激によるポリモーダル受容器の興奮を伝える神経線維である。
・ポリモーダル受容器は、侵害受容器のひとつである。特徴として、①皮膚のみならず骨格筋、関節、内臓諸器官と広く全身に分布している。②非侵害刺激から侵害刺激まで広い範囲で刺激強度に応じて反応する。③侵害刺激を繰り返し与えると反応性が増大し閾値の低下がみられる。

 

 

 

 

 

148.管散術の刺激を伝える神経線維はどれか。

1.Aα
2.Aβ
3.Aγ
4.Aδ

解答

解説

MEMO

管散術は、鍼の術式のうち鍼管のみを用い、弾入の要領で鍼管を叩打する。十七手技のうち、最も刺激が弱い。

1.× Aαは、筋・腱の感覚と運動を伝導する。

2.〇 正しい。Aβは、管散術の刺激を伝える神経線維である。なぜなら、Aβは、触圧覚を伝導するため。

3.× Aγは、触圧覚を伝導する。

4.× Aδは、痛みを伴う熱刺激を伝導する。

 

 

 

 

 

149.「足三里穴に鍼刺激を行ったら胃の運動が亢進した。」作用機序について正しい記述はどれか。

1.アドレナリン作動性神経β受容体を介する。
2.上脊髄性反射である。
3.骨盤神経を介した反射である。
4.求心路には伏在神経が含まれる。

解答

解説

ポイント

・【足部への鍼刺激】迷走神経活動が亢進、胃内圧が上昇(内臓神経活動は変化なし)。
・【腹部への鍼刺激】内臓神経活動が亢進、胃内圧が低下(迷走神経活動は変化なし)。
→圧自律神経反射とは、自律神経反射の一種である迷走神経反射のひとつで、身体の一部が圧迫されると、その刺激の信号が脊髄内の側索を上行して中枢に達し、中枢から興奮というかたちで末梢の器官へ及ぶ、一種の反射現象である。

1.× アドレナリン作動性神経β受容体は介さない。なぜなら、β受容体は、血管や心臓に作用するため。
【α作用とβ作用について】
・α1作用:主に血管収縮
・α2作用:ノルアドレナリン放出抑制によるネガティブフィードバック
・β1作用:心臓の陽性変性作用
・β2作用:血管、気管支の弛緩

2.〇 正しい。上脊髄性反射である。四肢への鍼刺激は、主に頸髄や腰髄などの脊髄分節に入力される。これらの分節には自律神経の節前ニューロンが比較的少ないため、脊髄レベルでの自律神経反応(局所反射)が起こりにくく、代わりに脳幹や視床下部などの上位中枢を介した上脊髄性の自律神経反応が起こりやすくなる。上脊髄反射は、脳幹で統合され、自律神経を介して内臓に作用する。

3.× 「骨盤神経」ではなく迷走神経を介した反射である。
・骨盤神経とは、仙骨から出る副交感神経であり、膀胱や尿道に分布し、排尿を促す働きがある。
・迷走神経とは、感覚神経・運動神経の一つである。嚥下運動や声帯の運動、耳介後方の感覚などに作用する。内臓(胃、小腸、大腸や心臓、血管など)に多く分布し、体内の環境をコントロールしている。刺激すると徐脈、咳、嘔吐などを生じる。強い痛みや精神的ショックなどが原因で、迷走神経が過剰に反応すると、心拍数や血圧の低下、失神などを引き起こす(迷走神経反射)。

4.× 求心路には、「伏在神経」ではなく脛骨神経が含まれる。なぜなら、足三里は、脛骨神経が支配する領域であるため。足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。
・伏在神経は、大腿の内側を通り、膝とふくらはぎの内側を走行する。下肢の皮膚の感覚を司る神経である。

自律神経反射の一覧

内臟・内臟反射:圧受容器反射、排便・排尿の反射など
内臟・体性知覚反射:関連痛、知覚過敏帯(ヘッド帯・マッケンジー帯)など
内臟・体性運動反射:筋性防御など
内臟・体性自律反射:汗腺反射、皮脂腺反射、立毛筋反射、皮膚血管反射など
体性・内臟反射:対光反射、鍼灸による内臓機能の調整など

 

 

 

 

 

150.鍼鎮痛に関与するのはどれか。

1.ヒスタミン
2.アンジオテンシン
3.オピオイドペプチド
4.プロスタグランジン

解答

解説
1.× ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

2.× アンジオテンシン(II)は、血圧上昇作用を持つ。腎臓の輸入細動脈の壁にある傍糸球体細胞からレニンが分泌され、血液中のアンジオテンシノーゲンからアンジオテンシンⅠという物質をつくる。アンジオテンシンⅠとは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によりアンジオテンシンⅡに変換される。アンジオテンシンⅡとは、全身の動脈を収縮させるとともに、副腎皮質からアルドステロンを分泌させる。アルドステロンは、Naを体内に溜める働きがあり、これにより循環血液量が増加して心拍出量と末梢血管抵抗が増加する。これをレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(Renin-Angiotensin-Aldosterone System:RAAS)といい、血圧上昇後にはレニンの分泌は抑制され、この系の働きが低下する。

3.〇 正しい。オピオイドペプチドは、鍼鎮痛に関与する。オピオイドは、主に痛みを感じる中枢神経に存在するオピオイド受容体に作用することで、痛みの信号を抑制し、鎮痛効果を発揮する。

4.× プロスタグランジンとは、子宮の内膜がはがれ落ちるときに増え、子宮を収縮させて、血液(経血)を押し出すはたらきがある。プロスタグランジンが過剰につくられると、子宮が激しく収縮するので、月経痛がひどくなる。また、一般的に、プロスタグランジンとは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。

血圧を上昇させるホルモン

・セロトニン
・カテコールアミン
・アンジオテンシンⅡ
・アルドステロン
・バソプレシン
・トロンボキサン
・エンドセリン

 

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