第21回(H25年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前76~80】

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76.フローマン徴候がみられるのはどれか。

1.正中神経麻痺
2.腋窩神経麻痺
3.橈骨神経麻痺
4.尺骨神経麻痺

解答

解説

フローマン徴候とは?

Froment徴候とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

1.× 正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。特徴的な症状として、①猿手変形(母指対立障害による)、②母指球筋の萎縮、手指の感覚障害(母指~環指橈側)がみられる。ちなみに、ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

2.× 腋窩神経麻痺とは、上腕の上外側の感覚低下と、小円筋と三角筋の筋肉低下がみられる。腋窩神経は、腕神経叢から出る上腕部に走行する末梢神経で、上肢の背側を走行し、上腕部で、停止する。後神経束から分岐する。上腕の上外側の感覚と、小円筋と三角筋の筋肉を支配する。腋窩神経麻痺は、肩関節周辺の骨折や脱臼、肩関節の打撲、局所の神経圧迫、不良肢位、手術侵襲などで伴いやすい。

3.× 橈骨神経麻痺とは、母指背側の感覚障害と上腕三頭筋・腕橈骨筋・長、短橈側手根伸筋、総指伸筋などの伸筋群の麻痺(下垂手)を認める。

4.〇 正しい。尺骨神経麻痺は、フローマン徴候がみられる。尺骨神経とは、上腕の内側から前腕の内側を通る。小指側の感覚と手指・手首の運動を支配する。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。ちなみに、鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。

 

 

 

 

 

77.「55歳の女性。夕食にてんぷらを摂取後、悪心、嘔吐、右季肋部痛が出現し、救急外来を受診した。血液検査データで白血球数19,500/μl、CRP高値、赤沈亢進を認めた。」
 本患者で予測される所見はどれか。

1.視診で皮膚線条がみられる。
2.聴診で血管雑音が聴取される。
3.打診で肋骨脊柱角に叩打痛がある。
4.触診で筋性防御がみられる。

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の女性。
・夕食にてんぷらを摂取後、悪心、嘔吐、右季肋部痛が出現。
・血液検査データ:白血球数19,500/μl、CRP高値、赤沈亢進を認めた。
→本症例は、急性胆嚢炎が疑われる。白血球増加(19,500/μl)、CRP高値、赤沈亢進がみられ、炎症反応が強く疑われるため。(急性)胆嚢炎とは、胆のうに炎症が生じた状態である。 胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していく。 症状は、初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になる。原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることである。胆石は、脂質の多い食生活でみられやすい。

1.× 視診で皮膚線条がみられるのは、「クッシング症候群」である。クッシング症候群は、副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰によって起こる症候群である。原因の多くは副腎皮質腺腫である。コルチゾール過剰によってみられる症候は、ステロイド剤の副作用と共通する。コルチゾール過剰に伴う特徴的な症候として、満月様顔貌、赤ら顔、中心性肥満、水牛様脂肪沈着(水牛様肩)、皮膚の非薄化、皮下溢血、四肢近位筋萎縮・筋力低下、赤色皮膚線条がある。

2.× 聴診で血管雑音が聴取されるのは、「血管疾患(腹部大動脈瘤や腎動脈狭窄など)」である。

3.× 打診で肋骨脊柱角に叩打痛があるのは、「尿路感染(急性腎盂腎炎など)」である。

4.〇 正しい。触診で筋性防御がみられる。筋性防御とは、腹部を触診した際、腹壁の筋肉が緊張して硬くなる内臓体性反射である。壁側腹膜の炎症を示唆し、腹膜炎や腹腔内出血などで見られる。筋性防御が起こる範囲によって、炎症部位を判断する。

尿路感染症とは?

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し
薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」総合南東北病院より)

 

 

 

 

 

78.「55歳の女性。夕食にてんぷらを摂取後、悪心、嘔吐、右季肋部痛が出現し、救急外来を受診した。血液検査データで白血球数19,500/μl、CRP高値、赤沈亢進を認めた。」
 本患者でまず行う検査はどれか。

1.腹部超音波検査
2.消化管内視鏡検査
3.血管造影検査
4.PET(ポジトロンCT)検査

解答

解説

本症例のポイント

・55歳の女性。
・夕食にてんぷらを摂取後、悪心、嘔吐、右季肋部痛が出現。
・血液検査データ:白血球数19,500/μl、CRP高値、赤沈亢進を認めた。
→本症例は、急性胆嚢炎が疑われる。白血球増加(19,500/μl)、CRP高値、赤沈亢進がみられ、炎症反応が強く疑われるため。(急性)胆嚢炎とは、胆のうに炎症が生じた状態である。 胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していく。 症状は、初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になる。原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることである。胆石は、脂質の多い食生活でみられやすい。

1.〇 正しい。腹部超音波検査は、この本患者でまず行う検査である。なぜなら、腹部超音波検査は、胆嚢や胆管の病変を評価するための第一選択の検査であるため。急性胆嚢炎の場合、胆嚢壁の肥厚や胆嚢内の胆石、胆嚢周囲の液体貯留(炎症性変化)などがみられる。

2.× 消化管内視鏡検査の優先度は低い。なぜなら、消化管内視鏡検査は、食道、胃、十二指腸など消化管粘膜の病変(潰瘍、出血、腫瘍など)を評価するための検査であるため。したがって、主な適応疾患として①逆流性食道炎、②胃炎(ピロリ菌未感染、ピロリ菌現感染、ピロリ菌既感染・除菌後)、③胃ポリープ、④十二指腸潰瘍、⑤食道がんなどである。

3.× 血管造影検査の優先度は低い。なぜなら、血管造影検査は、主に動脈瘤、血管閉塞、腫瘍の血管支配などを評価するため。例えば、閉塞性動脈硬化症が疑われる場合に用いられる。閉塞性動脈硬化症とは、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

4.× PET(ポジトロンCT)検査の優先度は低い。なぜなら、PET検査は、腫瘍や転移巣、全身性疾患(リンパ腫など)の評価に用いられるため。PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影検査)とは、放射能を含む薬剤を用いる、核医学検査の一種である。放射性薬剤を体内に投与し、その分析を特殊なカメラでとらえて画像化する。PET検査は、通常がんや炎症の病巣を調べたり、腫瘍の大きさや場所の特定、良性・悪性の区別、転移状況や治療効果の判定、再発の診断などに利用されている。アルツハイマー病やてんかん、心筋梗塞を調べるのにも使われている。

 

 

 

 

 

79.「71歳の女性。1週間前から労作時の胸痛を自覚していたが、安静で症状は軽減したため放置していた。しかし、昨日より安静時でも胸痛が起こるようになり、救急受診した。」
 本疾患の危険因子として最も重要なのはどれか。

1.低血糖
2.低血圧
3.低HDL血症
4.低アルブミン血症

解答

解説

本症例のポイント

・71歳の女性。
・1週間前:労作時の胸痛を自覚。
・安静で症状は軽減したため放置。
・昨日:安静時でも胸痛が起こる。
→本症例は、急性冠症候群が疑われる。これは、労作時胸痛から安静時胸痛へ進展しており、不安定狭心症または心筋梗塞の可能性を示唆しているため。ちなみに、急性冠症候群(ACS)は、冠動脈の血管壁に蓄積した粥腫(プラーク)の破綻とそれに伴う血栓形成により冠動脈内腔が急速に狭窄、閉塞し、心筋が虚血、壊死に陥る状態である。

1.× 低血糖より危険因子が他にある。低血糖症状とは、血糖値が低下するとカテコラミン(インスリン拮抗ホルモン)の分泌が上昇し、交感神経刺激症状が出現した症状をさす。さらに血糖値が低下すると脳・神経細胞の代謝が低下し、中枢神経症状が出現する。頭痛や空腹感などの比較的軽度な症状から始まるが血糖値が低下し続けると昏睡に至る。低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

2.× 低血圧より危険因子が他にある。低血圧は、ショックに関連した症状の一つである。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。

3.〇 正しい。低HDL血症は、本疾患の危険因子として最も重要である。低HDLコレステロール血症とは、採血検査でHDLコレステロール値が40mg/dL以下の脂質異常症の一種で、動脈硬化性疾患や冠動脈疾患、脳卒中などの発症リスクが高まる病気である。ちなみに、HDL(高密度リポタンパク)は、血管内皮を保護し、動脈硬化を抑制する働きがある。

4.× 低アルブミン血症より危険因子が他にある。低アルブミン血症は、栄養状態不良や慢性疾患(肝疾患、腎疾患など)に関連する。アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。主に血液検査で測定する。

 

 

 

 

 

80.「71歳の女性。1週間前から労作時の胸痛を自覚していたが、安静で症状は軽減したため放置していた。しかし、昨日より安静時でも胸痛が起こるようになり、救急受診した。」
 本疾患の合併症としてよくみられるのはどれか。

1.僧帽弁狭窄症
2.心室性期外収縮
3.心房中隔欠損症
4.気胸

解答

解説

本症例のポイント

・71歳の女性。
・1週間前:労作時の胸痛を自覚。
・安静で症状は軽減したため放置。
・昨日:安静時でも胸痛が起こる。
→本症例は、急性冠症候群が疑われる。これは、労作時胸痛から安静時胸痛へ進展しており、不安定狭心症または心筋梗塞の可能性を示唆しているため。ちなみに、急性冠症候群(ACS)は、冠動脈の血管壁に蓄積した粥腫(プラーク)の破綻とそれに伴う血栓形成により冠動脈内腔が急速に狭窄、閉塞し、心筋が虚血、壊死に陥る状態である。

1.× 僧帽弁狭窄症は、リウマチ熱などによる慢性的な心弁膜症である。リウマチ熱とは、A群レンサ球菌と呼ばれる細菌に感染することによって起こる病気である。子どもの頃に感染・発症することが一般的で、中年期になってから僧帽弁狭窄症を引き起こすことがある。僧帽弁狭窄症とは、僧帽弁の開口部が狭くなり、左心房から左心室への血流が妨害(閉塞)されている状態である。

2.〇 正しい。心室性期外収縮は、本疾患の合併症としてよくみられる。なぜなら、急性冠症候群では、冠動脈の閉塞や狭窄による心筋虚血が起こり、心筋の虚血や損傷により、心室性期外収縮がよくみられるため。ちなみに、心室性期外収縮とは、本来の洞結節からの興奮より早く、心室で興奮が開始していることをいう。

3.× 心房中隔欠損症は、先天性心疾患の一つである。心房中隔欠損症とは、左心房と右心房を仕切る心房中隔に欠損孔と呼ばれる穴が開いている疾患である。この異常により、静脈系の血液が右心房から左心房に流れ込み、奇異塞栓が発生する可能性がある。血栓が右心系から左心系に移動し、動脈系に入る。

4.× 気胸とは、肺と胸壁の間の空間に空気が溜まる状態を指す。一般的に、肺の病変(肺気腫や外傷など)や交通事故による強い衝撃により、肺が損傷し、気胸が生じる。これを内開放性気胸といい、肺が外傷により損傷され起こる気胸のことである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ときにショックに至る。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

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