第21回(H25年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後126~130】

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126.肩こりに対する頸肩部の鍼治療を行う場合、脳虚血を起こしやすい体位はどれか。

1.座位
2.背臥位
3.腹臥位
4.側臥位

解答

解説
1.〇 正しい。座位は、肩こりに対する頸肩部の鍼治療を行う場合、脳虚血を起こしやすい体位である。脳貧血(脳虚血)の原因は、精神的緊張や不安状態がある患者への座位・立位での刺鍼、全身状態の良くない患者への粗暴な施術、などである。症状として、顔面蒼白、冷や汗、悪心・嘔吐、血圧低下、失神などがあげられる。処置として、仰臥位で頭を低くして安静にさせる、返し鍼(合谷、足三里などの四肢末端に近い部位への刺鍼)、などがあげられる。

2.× 背臥位/腹臥位/側臥位より脳虚血(脳貧血)を起こしやすい姿勢が他にある。なぜなら、これら臥位は、一般的に脳への血流量の減少が起きにくいため。

 

 

 

 

 

127.緊張型頭痛に対する局所治療について、罹患筋と治療穴との組合せで正しいのはどれか。

1.頭板状筋:脳空
2.側頭筋:率谷
3.後頭筋:風池
4.僧帽筋:玉枕

解答

解説

緊張型頭痛とは?

緊張型頭痛とは、一般的に頭痛のなかでもっとも頻度が高く、頭の周囲が締め付けられるように痛くなるタイプの頭痛である。一般的な頭痛といえる。原因はストレス、首や肩の筋肉の血行の悪さ、姿勢の悪さ、睡眠不足などさまざまである。したがって、生活指導は、血流の改善のため「温める」ことが有効である。具体的には、①お風呂に浸かって体を温める、②肩や首に蒸しタオルなどを当てて温める、③体を動かす、④ストレッチで首や肩を動かす、⑤適度な有酸素運動をする、⑥マッサージやツボ押しをするなどである。入浴、飲酒、運動やマッサージは血管を拡張させ、凝った部位の血流を改善すると共に精神的ストレスを解消して、この痛みの悪循環を断ち切る軽快因子となる。

1.× 頭板状筋:脳空
・頭板状筋の治療穴は、天牖(三焦)、完骨、風池(胆)である。ちなみに、板状筋(頭板状筋、頸板状筋)の【起始】頭板状筋:項靭帯、第3頸椎~第3胸椎の棘突起、頸板状筋:第3~6胸椎の棘突起、【停止】頭板状筋:乳様突起と上項線外側部、頸板状筋:第1~3頸椎の横突起後結節、【作用】片側が働けば頭と頚をその側に回転し、かつその方向に傾ける。両側が同時に働けば頭と頚を後ろに反らせる(背屈)。【神経】脊髄神経後枝の外側枝である。
・脳空は、頭部、外後頭隆起上縁と同じ高さ、風池の直上に位置する。脳戸(督脈)と同じ高さにあたる。

2.〇 正しい。側頭筋:率谷
・側頭筋の治療穴は、角孫(三焦)、上関、頷厭、懸顱、懸釐、曲鬢、率谷、天衝、浮白(胆)である。ちなみに、側頭筋の【起始】側頭鱗外面と側頭筋膜の深葉の内面、【停止】下顎骨の筋突起、【作用】下顎を上げて、歯をかみ合させる(閉口)ほか、後部は下顎骨を後ろへ引く。【神経】下顎神経の深側頭神経である。
・率谷は、頭部、耳尖の直上、髪際の上方1寸5分に位置する。

3.× 後頭筋:風池
・後頭筋の治療穴は、浮白、頭竅陰、脳空(胆)、脳戸(督脈)である。後頭筋とは、人間の頭部の浅頭筋のうち、頭蓋周囲の頭蓋表筋(後頭前頭筋)に含まれる筋肉である。 皮筋である。頸椎前屈に後頭筋が伸張され、痛みが誘発される。
・風池は、前頸部、後頭骨の下方、胸鎖乳突筋と僧帽筋の起始部の間、陥凹部に位置する。深部に椎骨動脈が通る。

4.× 僧帽筋:玉枕
・僧帽筋の治療穴は、巨骨(大陽)、秉風、曲垣、肩外兪、肩中兪(小陽)、天柱~肝兪、附分~神堂(膀胱)、天髎(三焦)、肩井(胆)である。ちなみに、僧帽筋の【起始】後頭骨上項線、外後頭隆起、項靭帯、第7頸椎以下全胸椎の棘突起および棘上靭帯、【停止】肩甲骨の肩甲棘と肩峰の上縁および鎖骨外側1/3(三角筋の起始範囲とほぼ同じ)、【作用】上部:肩甲骨と鎖骨の肩峰端を内上方にあげる。中部:肩甲骨を内側に引く。下部:肩甲骨を内下方に引き下げると同時にその下角を外側に回旋する、【神経】副神経(外枝)と頸神経叢の筋枝である。
・玉枕は、頭部、外後頭隆起上縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸3分に位置する。

 

 

 

 

 

128.脳血管障害後遺症による顔面神経麻痺に対する局所治療穴として、適切でないのはどれか。

1.陽白
2.四白
3.顴髎
4.地倉

解答

解説

MEMO

(急性)顔面神経麻痺とは、ある日突然顔の半分、あるいは一部分が思うように動かせなくなる状態である。その中で最も多いのが、「ベル麻痺」、「ハント症候群」という呼ばれるウイルスが顔面神経管の中の顔面神経に感染して生じる。

1.× 陽白は、脳血管障害後遺症による顔面神経麻痺に対する局所治療穴ではない。陽白は、頭部、眉の上方1寸、瞳孔線上に位置する。

2.〇 正しい。四白は、顔面部、眼窩下孔部に位置する。眼窩下神経の出る部にあたる。また、眼輪筋の治療穴である。

3.〇 正しい。顴髎は、顔面部、外眼角の直下、頬骨下方の陥凹部に位置する。下関(胃経)の前方にあたる。

4.〇 正しい。地倉は、顔面部、口角の外方4分(指寸)に位置する。

 

 

 

 

 

129.棘上筋のこりに対して鍼通電療法を行う場合、刺鍼部位の組合せとして最も適切なのはどれか。

1.天柱:肩井
2.秉風:曲垣
3.臑兪:天宗
4.臂臑:肩貞

解答

解説
1.× 天柱:肩井
・天柱は、後頸部、第2頸椎棘突起上縁と同じ高さ、僧帽筋外縁の陥凹部に位置する。
・肩井は、後頸部、第7頸椎棘突起と肩峰外縁を結ぶ線上の中点に位置する。天髎(三焦経)の上方にあたる。

2.〇 正しい。秉風:曲垣
・秉風は、肩甲部、棘上窩、肩甲棘中点の上方に位置する。肩甲部、棘上窩、肩甲棘中点の上方に位置する。
・曲垣は、肩甲部、肩甲棘内端の上方陥凹部に位置する。

3.× 臑兪:天宗
・臑兪は、肩周囲部、腋窩横紋後端の上方、肩甲棘の下方陥凹部に位置する。
・天宗は、肩甲部、肩甲棘の中点と肩甲骨下角を結んだ線上、肩甲棘から1/3にある陥凹部に位置する。

4.× 臂臑:肩貞
・臂臑は、上腕外側、三角筋前縁、曲池の上方7寸に位置する。
・肩貞は、肩周囲部、肩関節の後下方、腋髙横紋後端の上方1寸に位置する。

鍼通電療法とは?

鍼通電療法とは、鍼に低周波通電する方法で、鍼麻酔が代表的である。鍼の腐食を考慮し、3~5番鍼(20~24号銅)以上の鍼を用いる。通電(電気療法)は妊婦、ペースメーカー、知覚脱失、循環障害、重篤な動脈疾患、原因不明の発熱、強い皮膚病変などの患者には禁忌とされる。また、通電装置の出力に影響を及ぼすため、通電装置と超短波治療器あるいはマイクロ波治療器を近接して使用すべきではない。20号鍼(3番鍼)以上の太さが推奨される。病的共同運動には高Hz(100HZ)で行うとよい。

 

 

 

 

 

130.野球選手の慢性期の肩インピンジメント症候群に対する局所治療穴で、最も適切なのはどれか。

1.肩貞
2.肩髃
3.肩井
4.肩外兪

解答

解説

肩峰下インピンジメント症候群とは?

肩峰下インピンジメント症候群とは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。

1.× 肩貞は、肩周囲部、肩関節の後下方、腋髙横紋後端の上方1寸に位置する。

2.〇 正しい。肩髃は、野球選手の慢性期の肩インピンジメント症候群に対する局所治療穴である。肩髃は、肩周囲部、肩峰外縁の前端と上腕骨大結節の間の陥凹部に位置する。

3.× 肩井は、後頸部、第7頸椎棘突起と肩峰外縁を結ぶ線上の中点に位置する。天髎(三焦経)の上方にあたる。

4.× 肩外兪は、上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方3寸に位置する。陶道(督脈)の外方3寸、肩甲骨上角の内方にあたる。

 

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