第22回(H26年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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131.鶏歩を呈する患者に対する麻痺筋への低周波鍼通電療法を行う部位で適切なのはどれか。

1.足三里と豊隆
2.伏兎と梁丘
3.漏谷と三陰交
4.合陽と承山

解答

解説

MEMO

腓骨神経麻痺は、下垂足(鶏歩)となる。下垂足(鶏歩)は、腓骨神経麻痺などで足関節が背屈不能になり、下垂足が生じるためにみられる。鶏歩の特徴として、垂れ足 (drop foot)になっているために下肢を高く上げ、つま先から投げ出すように歩く。

1.〇 正しい。足三里と豊隆は、鶏歩を呈する患者に対する麻痺筋への低周波鍼通電療法を行う部位である。
・足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。前脛骨筋の治療穴である。
・豊隆は、下腿前外側、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸に位置する。前脛骨筋、長指伸筋の治療穴である。

2.× 伏兎と梁丘
・伏兎は、大腿前外側、膝蓋骨底外端と上前腸骨棘を結ぶ線上、膝蓋骨底の上方6寸に位置する。外側広筋、大腿直筋の治療穴である。
・梁丘は、大腿前外側、外側広筋と大腿直筋腱外縁の間、膝蓋骨底の上方2寸に位置する。外側広筋の治療穴である。

3.× 漏谷と三陰交
・漏谷は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、内果尖の上方6寸に位置する。後脛骨筋、長指伸筋の治療穴である。
・三陰交は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、内果尖の上方3寸に位置する。後脛骨筋、長指伸筋の治療穴である。

4.× 合陽と承山
・合陽は、下腿後面、腓腹筋外側頭と内側頭の間、膝窩横紋の下方2寸に位置する。腓腹筋の治療穴である。
・承山は、下腿後面、腓腹筋筋腹とアキレス腱の移行部に位置する。腓腹筋の治療穴である。

 

 

 

 

 

132.次の文で示す患者の頭痛発作時に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
 「27歳の女性。最近、仕事が忙しくなり残業が続いている。時々、拍動性の頭痛が数時間から1日続く。発作には前兆があり羞明を伴う。医療機関を受診したが、器質的病変はみられなかった。」

1.側頭筋の緊張を改善する。
2.頭蓋外血管を収縮させる。
3.頚椎のROMを広げる。
4.大後頭神経支配領域の疼痛閾値を上げる。

解答

解説

本症例のポイント

・27歳の女性。
・最近、仕事が忙しくなり残業が続いている。
・時々、拍動性の頭痛が数時間から1日続く。
・発作には前兆があり羞明を伴う。
器質的病変なし
→本症例は、片頭痛が疑われる。片頭痛とは、中等度から重度の、脈打つような痛みやズキズキする痛みで、頭の片側または両側に生じる。しばしば身体活動、光、音、匂いなどによって悪化し、吐き気や嘔吐を伴ったり、音、光、匂いに過敏になったりする。片頭痛は、睡眠不足、天候の変化、空腹、感覚への過度の刺激、ストレス、その他の要因が引き金となって発生する。

1.× 側頭筋の緊張を改善する。
これは、筋緊張性頭痛に対して行われる。筋緊張性頭痛とは、肩こりからくるような、首から頭までの痛みで、片頭痛とは異なり締め付けるような痛みを特徴とする。 首から頭までの筋肉が影響しており、筋肉に対しての末梢神経からの痛みと、中枢神経からの痛みとの二つの経路からの症状が原因と考えられている。

2.〇 正しい。頭蓋外血管を収縮させる
これは、片頭痛に対して行われる。なぜなら、片頭痛の1/3は頭蓋外、2/3は頭蓋内血管が関与しておこるため。その誘因としては疲れ、寝不足、ストレスなどが関係する。

3.× 頚椎のROM(関節可動域)を広げる。
これは、関節可動域訓練が必要なROM制限にかかわる関節拘縮や強直、変形などに対して行われる。医師の指示や医療的な対応が行える場で実施した方が良い。

4.× 大後頭神経支配領域の疼痛閾値を上げる。
大後頭神経は、深後頸部筋を支配する。したがって、この部位の疼痛閾値を上げる治療は後頭神経痛など特定の頭痛に適用される。

 

 

 

 

 

133.「53歳の男性。3か月前から右腰下肢の痛みを感じる。右膝蓋健反射の減弱と下腿内側に知覚鈍麻がみられる。整形外科にて腰椎椎間板ヘルニアと診断されている。」
 認められる徒手検査所見はどれか。

1.ニュートンテスト陽性
2.トーマステスト陽性
3.ブラガードテスト陽性
4.パトリックテスト陽性

解答

解説

本症例のポイント

・53歳の男性(腰椎椎間板ヘルニア)。
・3か月前から右腰下肢の痛みを感じる。
・右膝蓋健反射の減弱、下腿内側に知覚鈍麻。
→椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

・L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
・L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
・L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.× ニュートンテスト陽性
・ニュートンテストは、仙腸関節炎を検査する。腹臥位で仙腸関節部を上から押して、仙腸関節の圧痛を確認する。

2.× トーマステスト陽性
・トーマステスト(Thomas Test)は、股関節屈曲拘縮を検査する。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。

3.〇 正しい。ブラガードテスト陽性は、認められる徒手検査所見である。
・Bragardテスト(ブラガードテスト)は、椎間板ヘルニアの検査である。下肢伸展挙上テスト(SLR)で下肢痛を生じた位置より、角度を少し減じた位置で、足関節を背屈させ、同様の下肢痛を認めたときに陽性とする。

4.× パトリックテスト陽性
・Patrickテスト(パトリックテスト)は、股関節の炎症や痛みのテストである。背臥位で評価側の足背を反対側の膝蓋骨に載せ、評価側の膝を床へ押さえる。鼠径部に痛みが出れば陽性である。

 

 

 

 

 

134.「53歳の男性。3か月前から右腰下肢の痛みを感じる。右膝蓋健反射の減弱と下腿内側に知覚鈍麻がみられる。整形外科にて腰椎椎間板ヘルニアと診断されている。」
施術対象となる神経根で最も適切なのはどれか。

1.L3神経根
2.L4神経根
3.L5神経根
4.S1神経根

解答

解説

本症例のポイント

・53歳の男性(腰椎椎間板ヘルニア)。
・3か月前から右腰下肢の痛みを感じる。
右膝蓋健反射の減弱下腿内側に知覚鈍麻
→椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

・L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
・L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
・L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.× L3神経根
・L2‒L3間(支配神経根L3):大腿前面の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。

2.〇 正しい。L4神経根は、施術対象となる神経根である。
・L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。

3.× L5神経根
・L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。

4.× S1神経根
・L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

 

 

 

 

 

135.「35歳の女性。4年前からレイノー現象が出現し、最近では朝のこわばり、皮膚の硬化もみられるようになった。抗Scl-70抗体陽性。」
 本疾患でみられる所見はどれか。

1.ボタン穴変形
2.鷲手
3.ヘバーデン結節
4.ソーセージ様指

解答

解説

本症例のポイント

・35歳の女性(4年前:レイノー現象が出現)。
・最近では朝のこわばり、皮膚の硬化もみられる。
抗Scl-70抗体陽性。
→本症例は、強皮症が疑われる。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。

1.× ボタン穴変形は、関節リウマチでみられる。ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。

2.× 鷲手は、尺骨神経麻痺でみられる。尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

3.× ヘバーデン結節は、変形性関節症でみられる。手指の変形性関節症は、大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

4.〇 正しい。ソーセージ様指は、強皮症でみられる所見である。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は7:3前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

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