第22回(H26年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前46~50】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

46.左心不全によって肺に最も生じやすいのはどれか。

1.充血
2.うっ血
3.塞栓
4.梗塞

解答

解説

心不全とは?

心不全は心臓のポンプ機能低下のため末梢組織の酸素需要に見合った血液量を供給できない状態である。肺循環系にうっ血が著明なものを左心不全、体循環系にうっ血が著明なものを右心不全という。体液の著明やうっ血を生じ、主な症状として呼吸困難、咳嗽、チアノーゼ、血性・泡沫状喀痰(ピンクの痰)などがある。

心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(呼吸困難、起座呼吸、尿量減少など)
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(頸静脈怒張、胸水・腹水、下腿浮腫、肝腫大など)
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

1.× 充血とは、動脈血が過剰に流れ込む状態である。例えば、炎症が発生すると、まず血管が拡張して血流が増加し、その結果、炎症部位に血液が集まる状態が生じる。これが充血である。組織が赤くなる(発赤)のは、この作用によるものである。

2.〇 正しい。うっ血は、左心不全によって肺に最も生じやすい。うっ血は、血液が静脈系や毛細血管に停滞し、うまく流れなくなった状態である。左心不全では、左心室が血液を送り出せないため、肺静脈や肺毛細血管に血液がうっ滞する。ちなみに、肺うっ血とは、心不全などの循環不全(心臓のポンプ機能の低下)により、肺に血流がうっ滞する状態を示す。このため、呼吸困難や倦怠感、むくみなどが生じる。

3.× 塞栓とは、血流内に外部から入った異物または血管内に生じた血栓が遊離して他臓器に運ばれ、末梢血管または臓器血管を閉塞する現象のことをいう。主に血栓形成や異物によって起こる。

4.× 梗塞とは、血流が途絶えることで組織が壊死する状態である。肺梗塞は通常、肺動脈が閉塞することで生じる(例:肺塞栓症)。左心不全では、静脈系のうっ滞が主であり、肺動脈の閉塞による梗塞は起こる。

 

 

 

 

 

47.臓器の移植に関する法律における脳死判定で誤っているのはどれか。

1.移植医が判定する。
2.急性薬物中毒による深昏睡は除外される。
3.自発呼吸は停止している。
4.判定は2回行う。

解答

解説

脳死の判定基準

脳死とは、体温や血圧、心拍などの生命徴候が確認できるにもかかわらず、脳の機能が停止している状態である。

①深い昏睡にあること
②瞳孔が固定し一定以上開いていること(4mm以上)
③刺激に対する脳幹の反射がないこと
④脳波が平坦であること
⑤自分の力で呼吸ができないこと

の5項目を行い、6時間以上経過した後に同じ一連の検査(2回目)をすることで、状態が変化せず、不可逆的であることの確認できた場合。

1.× 移植医が判定することは、脳死判定に該当しない。脳死判定を行う医師は、移植医(臓器移植を担当する医師)に限らず、一般的な医師が行うことができる。また、臓器移植に関わる医師が判定を行うと利害関係が生じる可能性があるため、判定は厳正かつ中立的に行うことが求められる。

2.〇 正しい。急性薬物中毒による深昏睡は除外される。なぜなら、可逆的な場合があるため。ほかにも、急性薬物中毒や代謝性疾患、低体温などが原因で深昏睡状態にある場合は除外されることが多い。

3.〇 正しい。自発呼吸は停止している。脳死の基準には自発呼吸の停止が含まれる。

4.〇 正しい。判定は2回行う。5つの評価項目を6時間以上経過した後に同じ一連の検査(2回目)をすることで、状態が変化せず、不可逆的であることの確認できた場合、脳死と判断する。

 

 

 

 

 

48.クラインフェルター症候群の性染色体はどれか。

1.X
2.XXX
3.XXY
4.XYY

解答

解説
1.× X
X染色体が1本のみの場合は、ターナー症候群である。ターナー症候群とは、典型的には身長が低く、首の後ろに皮膚のたるみ(翼状頸)があり、学習障害がみられ、思春期が始まらないのが特徴である。2本のX染色体のうち1本の部分的または完全な欠失によって引き起こされる性染色体異常である。女性特有の染色体異常である。

2.× XXX
X染色体が3本の場合は、トリプルX症候群である。トリプルX症候群とは、女性に見られる性染色体異常で、通常、特別な身体的特徴はなく、知的障害も軽度である。

3.〇 正しい。XXYは、クラインフェルター症候群の性染色体である。クラインフェルター症候群とは、性染色体異常により生じる先天異常で、高身長・精子形成不全・無精子症などの性腺機能不全、言語発達遅延、女性化乳房が特徴である。X染色体がXXYであり、Y染色体をもつため性腺は精巣へと分化し、内性器・外性器とも男性型に分化するが、精巣は正常な機能は示さない。

4.× XYY
XYYの場合は、XYY症候群(ヤコブ症候群)である。男性にのみ起こる性染色体異常で、一般的に身長が高くなることが多い。ただし、明確な症状は少ないとされている。

 

 

 

 

 

49.扁平上皮癌が好発するのはどれか。

1.食道
2.胃
3.小腸
4.大腸

解答

解説

扁平上皮癌とは?

扁平上皮癌とは、最上層が薄くて平らな細胞よりなる上皮からなる癌をいう。特徴として、分化度の異なる不均一からなる細胞から構成され、欠陥分布も均一性を欠く。好発部位は、舌が最も多く、次いで歯肉、頬、口底、口蓋である。

1.〇 正しい。食道は、扁平上皮癌が好発する。なぜなら、食道は、粘膜上皮が重層扁平上皮で覆われているため。特に、飲酒や喫煙、熱い食べ物などの慢性的な刺激が原因となることが多い。食道癌の90%以上は扁平上皮癌である。残りは腺癌である。

2.× 胃は、腺癌(90%以上)が好発する。なぜなら、胃の粘膜は単層円柱上皮で構成されているため。

3.× 小腸癌は、稀であるが、発生する場合は腺癌が主体である。なぜなら、小腸の粘膜は単層円柱上皮で構成されているため。

4.× 大腸は、腺癌(約90%)が好発する。なぜなら、胃の粘膜は単層円柱上皮で構成されているため。

上皮組織の形態による分類

・単層扁平上皮:薄いので物質の交換などに向く。
(胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞など)

・単層立方上皮:甲状腺の濾胞細胞など。
(甲状腺の濾胞上皮、尿細管など)

・単層円柱上皮:吸収と分泌を行う場所に向く。
消化器系(胃、小腸、大腸)、卵管・子宮など

・重層扁平上皮:摩擦など機械的刺激に強い。
皮膚、口腔~食道、肛門、膣など。

・多列線毛上皮:表面に線毛があり、杯細胞が豊富。線毛と粘液で塵や異物をからめとる。
鼻腔~気管・気管支(気道)

・移行上皮:伸び縮みすることができる。
腎杯~尿管~膀胱(尿路)

 

 

 

 

 

50.出血性炎はどれか。

1.カタル性鼻炎
2.上気道ジフテリア
3.インフルエンザ肺炎
4.歯槽膿漏

解答

解説

出血性炎とは?

出血性炎症とは、炎症巣の滲出性炎症のことであり、著しい出血がみられる。多量の赤血球細胞を含んでいる炎症細胞なので、血管壁は傷害を受けている。 小児のインフルエンザ肺炎、劇症型肝炎、日本脳炎、肺出血で見られる。

1.× カタル性鼻炎は、呼吸器や消化管などの粘膜の炎症で粘液分泌の亢進が著しい。カタル性炎症とは、粘膜の滲出性炎症のことである。したがって、粘液の分泌が亢進する。この状態では、粘膜の保護と清浄化が目的で、炎症反応により粘膜が過剰に粘液を産生して防御しようとする特徴を持つ。例えば、気管支炎や胃炎などが典型的なカタル性炎である。

2.× 上気道ジフテリアは、偽膜性炎が特徴的である。偽膜性炎は、壊死組織やフィブリンが浸出して粘膜に偽膜を形成する炎症である。一般的に、ジフテリアとは、ジフテリア菌により発生する疾病で、主に気道の分泌物によってうつり、喉などに感染して毒素を放出する。最後に報告されたのが1999年であるが、かつては年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた。

3.〇 正しい。インフルエンザ肺炎は、出血性炎である。インフルエンザ肺炎は、ウイルス感染により肺の組織が著しく破壊され、血管の透過性が亢進することで出血性炎が引き起こされ、肺胞内や気管支周囲に出血が認められるのが特徴である。

4.× 歯槽膿漏(歯周病)は、化膿性炎に分類され、細菌感染による膿(白血球や細菌の死骸)が主体の炎症である。歯肉の腫れや膿の排出が主な特徴であり、出血は二次的なものである。ちなみに、化膿性炎とは、滲出物に多量の好中球を含む炎症で、漿液に混ざっているものを漿液化膿性炎、線維素が混ざっているものを線維素化膿性炎という。ほかにも、膿性カタルや蜂窩織炎があてはまる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)