第22回(H26年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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156.半米粒大の施灸で灸痕の化膿を防止する方法として正しいのはどれか。

1.痂疲を掻破する。
2.水疱を掻破する。
3.硬い艾炷を使用する。
4.同一点に施灸する。

解答

解説

灸痕の化膿

原因:水疱・痂皮の破壊、不完全な消毒、体質、免疫力低下など
予防:同一点への施灸、艾炷を大きくしない、灸痕を破壊しない、消毒の反復など

1.× 痂疲を掻破する。
2.× 水疱を掻破する。
3.× 硬い艾炷を使用する。
これらは、灸痕の化膿を助長する方法である。ちなみに、掻破(そうは)とは、皮膚をかき壊す、かきむしる行動を伴う皮膚の不快な感覚のことである。掻破は、皮膚から異物を物理的に除去し、痒みのない元の状態に戻そうとする反応である。

4.〇 正しい。同一点に施灸することは、灸痕の化膿を防止する方法である。化膿とは、傷口や炎症を起こした場所に菌が入り込み、膿が出るほどまでに炎症が悪化した状態のことである。

 

 

 

 

 

157.施灸に際して行う患者の皮膚消毒で正しいのはどれか。

1.ラビング法で行う。
2.施灸前後に行う。
3.薬剤は次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
4.施灸部位を往復しながら清拭する。

解答

解説
1.× 「ラビング法」ではなくスワブ法を行う。ラビング法とは、擦式法ともいい、アルコール擦式製剤を手掌にとり、乾燥するまで擦り込んで消毒する方法である。一方、スワブ法とは、拭き取り法ともいい、物体表面の付着微 生物を拭き取って捕捉する方法である。

2.〇 正しい。施灸前後に行う。感染を防ぐため、基本的に手洗い同様、一回の手技行う前に消毒する。

3.× 薬剤は、「次亜塩素酸ナトリウム」ではなく消毒用エタノールを用いる。次亜塩素酸ナトリウムとは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。

4.× 施灸部位を「往復」ではなく片方向に清拭する。なぜなら、往復で行うと感染部位を広めてしまう結果となるため。原則、清拭は①一方向性か、②遠心性渦巻き状に行う必要がある。

 

 

 

 

 

158.灸による温熱刺激の受容・伝導について正しいのはどれか。

1.熱刺激で開くイオンチャネルが関与する。
2.Ⅱ群線維により伝導される。
3.腹側脊髄視床路を上行する。
4.温度感覚は順応が起こりにくい。

解答

解説


1.〇 正しい。熱刺激で開くイオンチャネルが関与する。温熱刺激を感じるイオンチャネルは、TRPチャネル(Thermosensitive Transient Receptor Potential channel)と呼ばれている。TRPチャネルは、熱い・冷たいといった温度を感じる他、メントールで清涼感を感じるメカニズムや、化粧品が肌に合わない時のピリピリする感覚などに深く関わっている。

2.× 「Ⅱ群線維」ではなくⅢ・Ⅳ群線維により伝導される。なぜなら、Ⅲ・Ⅳ群線維の求心路は、温冷・痛覚であるため。

3.× 「腹側脊髄視床路」ではなく外側脊髄視床路を上行する。
・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。
・腹側脊髄視床路(前脊髄視床路:粗大な触覚・圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。

4.× 温度感覚は順応が起こりにくいと断言できない。なぜなら、痛覚に対し順応は起こらないため。また、順応は、温覚よりも冷覚のほうが遅く、感覚点の数も多いことから、生体にとって温刺激よりも冷刺激のほうが危険であることが分かる。ちなみに、順応とは、ある刺激に慣れることで、順応速度が速いということはその刺激にすぐ慣れて感じにくくなること、順応速度が遅いということはその刺激になかなか慣れずに敏感な状態が続くということである。生体にとって危険な刺激に対する感覚ほど順応は遅い(敏感な状態が続く)と考えてよい。

 

 

 

 

 

159.足三里穴に施灸して胃の機能が改善したとき、関与したと考えられる反射はどれか。

1.軸索反射
2.深部反射
3.内臓-体性反射
4.体性-自律神経反射

解答

解説

MEMO

足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。

1.× 軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

2.× 深部反射とは、腱や筋肉の伸展に対する反射的な筋収縮のことである。主に脊髄反射に分類され、運動神経系と感覚神経系が正常に機能しているかを確認するために臨床で用いられる。
刺激:腱を叩くことで、筋紡錘(筋肉内の感覚受容器)が伸展を感知する。
【反射弓】
①求心路(感覚神経):筋紡錘から脊髄へ信号を送る。
②中枢:脊髄前角で反射弓が形成される。
③遠心路(運動神経):脊髄から筋肉に信号を送る。
④筋収縮: 運動神経の刺激で筋肉が収縮する。

3.× 内臓-体性反射とは、内臓の刺激が体性の反応を引き起こす反射である。例えば、内臓の痛みが筋肉の緊張を引き起こすなどを指す。

4.〇 正しい。体性-自律神経反射は、関与したと考えられる反射である。圧自律神経反射とは、皮膚の圧迫によって、交感神経に作用する反射である。圧迫側が抑制に働き、反対側では、逆に亢進する。例えば、発汗している時に、側臥位で寝ると、上側の発汗が増え、下側の発汗は減る、というような反射である。

 

 

 

 

 

160.無痕灸による局所炎症反応でみられるのはどれか。

1.血管透過性低下
2.血流量増加
3.組織の変性
4.白血球数減少

解答

解説
1.× 血管透過性は、「低下」ではなく上昇する。血管透過性とは、血管とその周りの組織との間で起こる水分や栄養分などの移動のことである。

2.〇 正しい。血流量増加は、無痕灸による局所炎症反応でみられる。局所炎症反応として、①血管拡張、②血流増加、③血管透過性の亢進に伴う血漿成分の血管外への漏出、④白血球(赤血球)の血管外へ遊走などが主に生じる。

3.× 組織の変性は起こりにくい。なぜなら、無痕灸では、皮膚組織が直接的に大きく損傷したり変性しないため。つまり、局所の温熱刺激による軽度の炎症は起きるが、変性には至らない。

4.× 白血球数は、「減少」ではなく増加する。特に好中球の数が一時的に増加するのが一般的である。なぜなら、局所炎症反応が起こると、白血球が炎症部位に集まるため。

 

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