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6.高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定保健指導において、積極的支援の対象者の判定に用いない検査項目はどれか。
1.血圧
2.血糖
3.HDLコレステロール
4.肝機能
解答4
解説
特定保健指導とは、予備群や軽症でまだお薬を必要としない人に対してもしっかり働きかけ、生活習慣病にならないようなしくみである。個人の生活習慣病予防への評価項目は、効率的・効果的な事業が行われていたか判断できるものを選択する。
1.〇 血圧/血糖/HDLコレステロールは、積極的支援の対象者の判定に用いる検査項目である。「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」において、第8条(積極的支援) 積極的支援とは、積極的支援対象者が自らの健康状態を自覚し、生活習慣の改善に係る自主的な取組の継続的な実施に資することを目的として、次に掲げる要件のいずれも満たすものであって、厚生労働大臣が定める方法により行う保健指導をいう。
一 積極的支援対象者が、医師、保健師又は管理栄養士の面接による指導の下に行動計画を策定すること。
二 医師、保健師、管理栄養士又は食生活の改善指導若しくは運動指導に関する専門的知識及び技術を有すると認められる者として厚生労働大臣が定めるものが、積極的支援対象者に対し、生活習慣の改善のための取組に資する働きかけに関する支援を相当な期間継続して行うこと。
三 積極的支援対象者及び第1号の規定により面接による指導を行った者が、行動計画の進捗状況に関する評価を行うこと。
四 積極的支援対象者及び第1号の規定により面接による指導を行った者が、行動計画の策定の日から6月以上経過後において、当該行動計画の実績に関する評価を行うこと(※参考:「特定健康診査及び特定保健指導の実施に関する基準」厚生労働省様HPより)。
4.× 肝機能は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく特定保健指導において、積極的支援の対象者の判定に用いない検査項目である。なぜなら、メタボリックシンドロームの検査項目に該当しないため。ちなみに、メタボリックシンドロームとは、内臓脂肪の蓄積を基盤とし、動脈硬化の危険因子を複数合併した状態のことである。
【診断基準】
①腹部肥満(ウエストサイズ 男性85cm以上 女性90cm以上)
②中性脂肪値(HDLコレステロール値 中性脂肪値 150mg/dl以上、HDLコレステロール値 40mg/dl未満のいずれか、または両方)
③血圧(収縮期血圧130mmHg以上、拡張期血圧85mmHg以上のいずれか、または両方)
④血糖値(空腹時血糖値110mg/dl以上)
特定健康診査とは、40~74歳までの医療保険加入者を対象に実施されるものである。特定健診で行う検査は、主に①身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、②血中脂質検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、③肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)、④血糖検査(空腹時血糖・HbA1c)、⑤尿検査(尿糖・尿蛋白)などである。
7.食中毒の対策として加熱処理が無効なのはどれか。
1.サルモネラ属
2.ブドウ球菌
3.カンピロバクター
4.ボツリヌス菌
解答2
解説
1.× サルモネラ属は、食中毒の対策として加熱処理が「有効」である。サルモネラ属とは、鶏、豚、牛などの動物の腸管や河川、下水など自然界に広く分布している。したがって、サルモネラ菌の食中毒の原因として、弁当類、生乳、生卵・肉類があげられる。潜伏期間は8~48時間で、38~40℃の発熱が3~5日続く。他の症状として、嘔吐(軽度)、腹痛(軽度)、下痢(中等度:ときに血便)、神経症状(なし)があげられる。
2.〇 ブドウ球菌は、食中毒の対策として加熱処理が無効である。ブドウ球菌自体は加熱で死滅しますが、産生する毒素(エンテロトキシン)は熱に強く、100℃で30分加熱しても分解されない(※参考:「黄色ブドウ球菌」東京都保健医療局様HPより)。ちなみに、黄色ブドウ球菌とは、食中毒の原因となるだけでなく、おでき、にきびや、水虫等に存在する化膿性疾患の代表的起因菌である。健康な人でものどや鼻の中などに高率で検出され、動物の皮膚、腸管、ホコリの中など身近にも存在している。5類感染症のひとつである。
3.× カンピロバクターは、食中毒の対策として加熱処理が「有効」である。カンピロバクターとは、生肉・生乳が主な原因食品であり、鶏、牛、野鳥など多くの動物が保有する細菌である。潜伏期間は、2~7日である。症状は、腹痛を伴う下痢、発熱などである。
4.× ボツリヌス菌は、食中毒の対策として加熱処理が「有効」である。ボツリヌス菌とは、土壌や水などの環境中に生息し、缶詰や瓶詰め真空パック食品で問題となることが多い。潜伏期間は12~36時間で、症状は眼症状、嚥下障害、四肢麻痺、呼吸筋麻痺・死亡などである。
8.五類感染症はどれか。
1.急性灰白髄炎
2.後天性免疫不全症候群
3.ジフテリア
4.腸管出血性大腸菌感染症
解答2
解説
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症予防法、感染症法、感染症新法)は、感染症の予防および感染症患者に対する医療に関する措置について定めた日本の法律である。平成10年(1998年)に制定された。主な内容は、①1~5類感染症の分類と定義、②情報の収集・公表、③感染症(結核を含む)への対応や処置。
【「感染症法」の対象となる感染症】
①1類感染症(7疾患:エボラ出血熱 ・クリミア・コンゴ出血熱・痘そう(天然痘) ・南米出血熱・ペスト・マールブルグ病・ラッサ熱)
対応:原則入院・消毒等の対物措置(例外的に建物への措置,通行制限の措置も適用対象とする)
②2類感染症(6疾患:・急性灰白髄炎(ポリオ)・結核 ・ジフテリア ・重症急性呼吸器症候群(SARS)・特定鳥インフルエンザ(H5N1, H7N9) ・中東呼吸器症候群(MERS))
対応:状況に応じて入院・消毒等の対物措置
③3類感染症(5疾患:・コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症(0157等)・腸チフス ・パラチフス)
対応:・特定職種への就業制限・消毒等の対物措置
④4類感染症(44疾患:※一部抜粋。・E型肝炎・A型肝炎 ・黄熱・Q熱・狂犬病・チクングニア熱・鳥インフルエンザ(特定鳥インフルエンザを除く)・炭疽 ・ボツリヌス症 ・マラリア ・野兎病・重症熱性血小板減少症候群(SFTS)・デング熱・ジカウイルス感染症・日本脳炎・その他感染症(政令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開,提供・媒介動物の輸入規制・消毒等の対物措置
⑤5類感染症(46疾患:※一部抜粋。・インフルエンザ(鳥インフルエンザ・新型インフルエンザ等感染症を除く)・ウイルス性肝炎(E型・A型を除く)・クリプトスポリジウム症・後天性免疫不全症候群(AIDS)・性器クラミジア感染症 ・梅毒・麻疹・百日咳・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症・その他感染症(省令で指定))
対応:・感染症発生状況の情報収集、分析とその結果の公開情報提供
1.× 急性灰白髄炎は、二類感染症である。急性灰白髄炎(ポリオ)は、ポリオウイルスによって引き起こされ、伝播は主に経口(飲食物)を通じて感染するものである。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。
2.〇 正しい。後天性免疫不全症候群は、五類感染症である。後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。
3.× ジフテリアは、二類感染症である。ジフテリアとは、ジフテリア菌により発生する疾病で、主に気道の分泌物によってうつり、喉などに感染して毒素を放出する。最後に報告されたのが1999年であるが、かつては年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた。ジフテリアは、予防接種にトキソイドが使用される。
4.× 腸管出血性大腸菌感染症は、三類感染症である。腸管出血性大腸菌とは、ベロ毒素 、または志賀毒素と呼ばれている毒素を産生することで病原性を持った大腸菌である「病原性大腸菌」の一種である。飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取したり、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染する。症状は、無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々である。
9.体液を介して感染する疾患はどれか。
1.腸チフス
2.B型肝炎
3.破傷風
4.コレラ
解答2
解説
1.× 腸チフスは、チフス菌を原因とし、生命を脅かす感染症である。通常、細菌を含んだ食べ物や水を介して拡がる。潜伏期間は7~14日で発熱を伴って発症する。患者、保菌者の便と尿が感染源となる。39℃を超える高熱が1週間以上も続き、比較的徐脈、バラ疹、脾腫、下痢などの症状を呈し、腸出血、腸穿孔を起こすこともある。
2.〇 正しい。B型肝炎は、体液を介して感染する疾患である。B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。
3.× 破傷風とは、接触感染で、土壌や動物の糞便中に存在する破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。
4.× コレラとは、コレラ菌に汚染された水や食物を摂取することにより感染する疾患(経口感染)である。潜伏期間は、12時間〜5日で、小腸で増殖し、腸毒素(コレラ毒素)を放出する。症状は、下痢・嘔吐、それらに伴う脱水症状を生じる。
10.我が国で予防接種が行われていないのはどれか。
1.後天性免疫不全症候群
2.水痘
3.麻疹
4.結核
解答1
解説
予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。
A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎
B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症
(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)
1.× 後天性免疫不全症候群は、我が国で予防接種が行われていない。そもそも予防するための予防接種(ワクチン)は存在していない。ちなみに、後天性免疫不全症候群とは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる感染症である。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は主に血液や性行為を通じて感染する。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することでエイズの発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。
2.〇 水痘とは、いわゆる「みずぼうそう」のことで、水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスによって引き起こされる発疹性の病気である。子供の頃にかかった水痘ウイルスが数十年の潜伏期間を経て、免疫力が低下した時などに再活性化(回帰感染)して起こる。
3.〇 麻疹とは、麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する病気のこと。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。麻疹の合併症として、①中耳炎、②肺炎、③脳炎があげられる。特に脳炎と肺炎は死亡例が多い。
4.〇 結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。
(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)