第22回(H26年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後86~90】

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86.ADL評価のFIMにおいて正しいのはどれか。

1.書字の項目がある。
2.認知項目がある。
3.各項目の点数は0点から10点である。
4.総点は100点である。

解答

解説

FIMとは?

FIMとは、日常生活動作(ADL)を評価する尺度で、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。

1.× 書字の項目は「ない」。

2.〇 正しい。認知項目がある
【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)。

3.× 各項目の点数は、「0点から10点」ではなく1点から7点である。各項目の評価は、1点(完全介助)~7点(完全自立)で採点される。

4.× 総点は、「100点」ではなく126点(18項目 × 7点)である。

 

 

 

 

 

87.片麻痺患者が使う自走式車いすで両手駆動から変更すべき構造はどれか。

1.駆動輪の直径を小さくする。
2.座面の高さを低くする。
3.背もたれの高さを低くする。
4.麻痺側のブレーキレバーを短くする。

解答

解説
1.× 駆動輪の直径を小さくする必要はない。なぜなら、駆動輪の直径を小さくすると、一回転で進む距離が短くなり、より腕の過労しやすいため。車いすの駆動輪は適切なサイズを維持する。

2.〇 正しい。座面の高さを低くする。なぜなら、座面を低くすることで足が地面に届き、健側の足で床を蹴ることができ、効率よく車いす操作することができるため。片麻痺患者は、健側の手と足を使って駆動する「片手・片足駆動方式」となる。

3.× 背もたれの高さを低くする必要はない。なぜなら、背もたれの高さを低くすることで、姿勢の安定性が低下する可能性があるため。背もたれの高さを低くするときは、アスリートが使う車いすの場合である。

4.× 麻痺側のブレーキレバーを「短く」ではなく長くする。なぜなら、麻痺側のブレーキレバーを長くすることで、てこの力で麻痺側の弱い力でも操作が可能となるため。また、麻痺側で操作ができない場合でも、麻痺側のブレーキレバーが長いと、健側上肢が麻痺側のブレーキレバーにリーチでき操作が可能となるため。

 

 

 

 

 

88.強制呼気に作用する筋で正しいのはどれか。

1.胸鎖乳突筋
2.大胸筋
3.横隔膜
4.内肋間筋

解答

解説

呼吸運動について

①安静吸気:横隔膜・外肋間筋。
②安静呼気:呼気筋は関与しない。
③努力吸気(強制吸気):呼吸補助筋(僧帽筋、胸鎖乳突筋・斜角筋・大胸筋・小胸筋・肋骨挙筋など)が関与。
④努力呼気(強制呼気):内肋間筋・腹横筋・腹直筋が関与。

1.× 胸鎖乳突筋は、努力吸気(強制吸気)に関与する。
・胸鎖乳突筋の【起始】胸骨部:胸骨柄前面、鎖骨部:鎖骨の胸骨端、【停止】乳様突起、後頭骨の上項線の外側部、【作用】両側が同時に作用すると首をすくめて顎を突き出す。片側が働けば顔面を対側に回す。吸息の補助である。

2.× 大胸筋は、努力吸気(強制吸気)に関与する。
・大胸筋の【起始】鎖骨部:鎖骨内側1/2~2/3、胸肋部:胸骨前面と上5~7個の肋軟骨、腹部:腹直筋鞘前葉の表面、【停止】上腕骨の大結節稜、【作用】肩関節内転・内旋、鎖骨部:肩甲骨屈曲、腹部:肩関節下制である。

3.× 横隔膜は、安静吸気に関与する。
・横隔膜の【起始】胸郭下口の全周で、腰椎部、肋骨部、胸骨部の3部からなる。①腰椎部は、内側脚:第1~4腰椎体、外側脚:内側弓状靭帯と外側弓状靭帯、②肋骨部は、第7~12肋軟骨(肋骨弓部)の内面、③胸骨部は、剣状突起。一部は腹横筋腱膜の内面、【停止】腱中心、【作用】その収縮によって円蓋を下げ、胸腔を広げる(吸息)である。

4.〇 正しい。内肋間筋は、努力呼気(強制呼気)に作用する筋である。
・内肋間筋の【起始】下位肋骨上縁、【停止】上位肋骨の下縁および内面、【作用】外肋間筋と反対に肋骨を引き下げて胸郭を狭める(呼息)である。

 

 

 

 

 

89.脳卒中のリハビリテーション中に起こる骨折の特徴で正しいのはどれか。

1.健側下肢が多い。
2.抗血栓剤の内服で起こりやすい。
3.半側空間無視の合併で起こりやすい。
4.失語症の合併で起こりやすい。

解答

解説
1.× 「健側」ではなく麻痺側下肢が多い。なぜなら、麻痺側の筋力が弱いため、転倒時に麻痺側へ転倒しやすいため。また、麻痺側は、健側下肢より荷重を受けておらず、骨密度が低下しているため。

2.× 抗血栓剤の内服で起こりやすいとはいえない。抗血栓剤の副作用として、出血で、鼻血や皮下出血、歯肉出血、血尿、喀血などが生じやすい。

3.〇 正しい。半側空間無視の合併で起こりやすい。なぜなら、半側空間無視により、麻痺側を認識せずに無理な動作を行ったり、壁に衝突したりと、危険を伴うため。ちなみに、半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲とは性質が異なり、左半分が見えないわけではなく、左半分への注意力が低下している状態である。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左足方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどのアプローチが必要である。

4.× 失語症の合併で起こりやすいとはいえない。失語症は主にコミュニケーション能力に影響を与える症状であり、転倒や骨折との直接的な関連性は乏しい。

 

 

 

 

 

90.脊髄損傷患者に生じる自律神経過反射で正しいのはどれか。

1.腰髄損傷患者に生じる。
2.起立性低血圧を生じる。
3.尿の膀胱内貯留が誘因となる。
4.損傷部位以下の反射が消失する。

解答

解説

自律神経過反射とは?

 自律神経過反射は、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。内臓神経の抑制が解除されるため、主に骨盤内臓器が緊張する促通刺激が原因となり誘発される。原因は①膀胱刺激、②直腸刺激、③内臓刺激、④皮膚刺激などが挙げられる。生命の危険を伴い合併症を伴う。自律神経過反射の症状は、高血圧、ガンガンする頭痛、顔面紅潮、損傷レベルより上部での発汗、鼻詰まり、吐き気、脈拍60以下の徐脈、損傷レベルより下部の鳥肌である。

1.× 「腰髄」ではなく上位胸髄(T5~6以上)損傷患者に生じる。自律神経過反射は、T5~6以上の脊髄損傷患者において、損傷部以下の臓器からの刺激によって起こる自律神経の異常反射である。

2.× 「起立性低血圧」ではなく高血圧を生じる。自律神経過反射の症状は、高血圧、ガンガンする頭痛、顔面紅潮、損傷レベルより上部での発汗、鼻詰まり、吐き気、脈拍60以下の徐脈、損傷レベルより下部の鳥肌である。ちなみに、起立性低血圧とは、急に立ち上がったり、起き上がった時に血圧が低下し、軽い意識障害、いわゆる立ちくらみをおこすことである。機序として、血圧調節機能がうまく働かず血圧が低下し、脳血流が減少して、めまいや立ちくらみなどを起こす。仰臥位・坐位から立位への体位変換後3分以内に、以下のいずれかが認められるとき、起立性低血圧と診断する。①収縮期血圧が20mmHg以上低下、②収縮期血圧の絶対値が90mmHg未満に低下、③拡張期血圧が10mmHg以上低下。

3.〇 正しい。尿の膀胱内貯留が誘因となる。原因は①膀胱刺激、②直腸刺激、③内臓刺激、④皮膚刺激などが挙げられる。

4.× 損傷部位以下の反射が「消失」ではなく亢進する。反射の消失は、脊髄損傷急性期(脊髄ショック時)に一時的にみられることがある。

脊髄損傷のショック期にみられる症状

脊髄ショックとは、重度の脊髄損傷受傷後1日から3週間程度まで出現する。運動・感覚機能および脊髄反射がすべて消失し、自律神経機能も停止する症状が出る。

①肛門括約筋反射の消失
②膀胱・尿道の弛緩による完全尿閉
③神経原性の血管拡張による血液分布異常性ショック
④弛緩性麻痺
⑤深部腱反射・表在反射消失

 

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