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121.次の文で示す症例で最も疑うべき障害部位はどれか。
「68歳の女性。主訴は左殿部の痛み。ローゼル・ネラトン線を指標とした検査で左側に異常を認めた。ニュートンテスト陰性。」
1.股関節
2.恥骨結合
3.仙腸関節
4.腰椎椎間関節
解答1
解説
・ローゼル・ネラトン線とは、左右にある上前腸骨棘と坐骨結節を結ぶ線である。股関節の脱臼や骨折、また変形などを判断する際の指標となる。
・ニュートンテストは、仙腸関節炎を検査する。腹臥位で仙腸関節部を上から押して、仙腸関節の圧痛を確認する。
1.〇 正しい。股関節は、この症例で最も疑うべき障害部位である。なぜなら、本症例は、ローゼル・ネラトン線を指標とした検査で左側に異常を認めているため。
2.4.× 恥骨結合/腰椎椎間関節の異常は考えにくい。なぜなら、本症例の主訴は、左殿部の痛みであるため。痛みの部位が離れすぎている。
3.× 仙腸関節の異常は考えにくい。なぜなら、本症例のニュートンテストは陰性であるため。
122.シェーグレン症候群のドライマウスに対する低周波鍼通電療法の刺鍼部位で最も適切なのはどれか。
1.翳風と下関
2.陽白と瞳子髎
3.頷厭と率谷
4.完骨と天柱
解答1
解説
シェーグレン症候群(Sjögren症候群)は、涙腺・唾液腺などの外分泌腺炎を特徴とする自己免疫疾患である。男女比(1:9)で女性に多い(特に、40歳代の中年女性)。唾液腺・涙腺の慢性炎症が生じる膠原病で、乾性角結膜炎(ドライアイ)、口腔乾燥(ドライマウス)を主症状とする。皮膚症状は環状紅斑など多彩であるが、全身の紅斑・水庖は生じない。これらの乾燥症状に対し、人工涙液点眼や水分摂取といった対症療法を行う。
1.〇 正しい。翳風と下関は、シェーグレン症候群のドライマウスに対する低周波鍼通電療法の刺鍼部位である。
唾液の分泌を促すために、唾液腺を刺激することが望ましい。唾液腺は耳下腺・舌下腺・顎下腺の3つであり、いずれも副交感神経と交感神経の二重支配を受けている。
・翳風(※読み:えいふう)は、前頸部、耳垂後方、乳様突起下端前方の陥凹部に位置する。
・下関(※読み:げかん)は、顔面部、類骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部に位置する。
2.× 陽白と瞳子髎
・陽白(※読み:ようはく)は、頭部、眉の上方1寸、瞳孔線上に位置する。
・瞳子髎(※読み:どうしりょう)は、頭部、外眼角の外方5分、陥凹部に位置する。
3.× 頷厭と率谷
・頷厭(※読み:がんえん)は、頭部、頭維と曲鬢を結ぶ(側頭の髪際に沿った)曲線上、頭維から1/4に位置する。
・率谷(※読み:そっこく)は、頭部、耳尖の直上、髪際の上方1寸5分に位置する。
4.× 完骨と天柱
・完骨(※読み:かんこつ)は、前頸部、乳様突起の後下方、陥凹部に位置する。
・天柱(※読み:てんちゅう)は、後頸部、第2頸椎棘突起上縁と同じ高さ、僧帽筋外縁の陥凹部に位置する。
(※図引用:「illustAC様」)
123.次の文で示す症例について、障害部位と経脈流注を考慮して行う治療穴で適切なのはどれか。
「35歳の女性。左側の第1指から第3指の指腹にしびれを感じる。患者の両手背を合わせ手関節の掌屈を強制させると、数秒後に手指のしびれが増強した。」
1.通里
2.郄門
3.会宗
4.温溜
解答2
解説
・35歳の女性(左側の第1指から第3指の指腹にしびれ)。
・患者の両手背を合わせ手関節の掌屈を強制させると、数秒後に手指のしびれが増強した(ファレンテスト陽性)。
→本症例は、正中神経麻痺(手根管症候群)が疑われる。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。1分以内の症状出現で、正中神経麻痺を疑う。
1.× 通里は、手の少陰心経である。通里は、前腕前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋の上方1寸に位置する。
・手の少陰心経:吸願の乾燥、上腹部から前胸部にかけてが痛み、口渇が起こり、水分を取ろうとする。目の黄疽や充血、脇痛、経脈の流注部分が痛み、厥してくる。手掌に熱がこもり痛む。
2.〇 正しい。郄門は、この患者に対する障害部位と経脈流注を考慮して行う治療穴である。手の厥陰心包経である郄門は、前腕前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方5寸に位置する。
・手の厥陰心包経:手掌全体が熱くなる。前腕から肘にかけて引きつったり強ばったりする。胸や脇腹が突っ張ったり、支えた感じや膨満感が起こってくる。心臓や胸中が憺憺として動悸を打ってくる。顔が赤黒くなり、目が黄ばむ、一旦笑い出すと止まらなくなる。胸中や心臓がモヤモヤし、心膜が痛んでくる。
3.× 会宗は、手の少陽三焦経である。会宗は、前腕後面、尺骨の橈側縁、手関節背側横紋の上方3寸に位置する。
・手の少陽三焦経:耳が聞こえにくく、耳が燃え上がるような感じがしたり、耳鳴りがする。咽頭が腫れ、喉を起こす。汗が出て、経絡の流注上に沿って病症が現れる。
4.× 温溜は、手の陽明大腸経である。温溜は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、手関節背側横紋の上方5寸に位置する。
124.絞扼性神経障害について罹患神経と筋の組合せで正しいのはどれか。
1.腕神経叢:肩甲挙筋
2.正中神経:円回内筋
3.橈骨神経:長掌筋
4.尺骨神経:母指対立筋
解答2
解説
(※図引用:日本整形外科学会様HPより)
1.× 肩甲挙筋は、「腕神経叢」ではなく頸神経叢の枝と肩甲背神経が支配する。腕神経叢は、複数の神経(正中神経、尺骨神経、橈骨神経など)を構成する神経の束である。
・肩甲挙筋の【起始】第1~(3)4頸椎の横突起後結節、【停止】肩甲骨の上角と内側縁の上部、【作用】肩甲骨を内上方に引く、【支配神経】頸神経叢の枝と肩甲背神経:C2~C5である。
2.〇 正しい。円回内筋は、正中神経が支配する。円回内筋症候群とは、円回内筋の支配神経で上肢腹側の真ん中を通っている正中神経が、肘関節周辺で圧迫されて痛みや痺れ、筋肉の衰えなどの症状を起こす疾患である。
・円回内筋の【起始】上腕頭:上腕骨内側上顆と内側上腕筋間中隔、尺骨頭:尺骨鈎状突起内側、【停止】橈骨外側面の中央部、【作用】肘関節回内、屈曲、【支配神経】正中神経:C6~7である。
3.× 長掌筋は、「橈骨神経」ではなく正中神経が支配する。
・長掌筋の【起始】上腕骨の内側上顆、前腕筋膜内面、【停止】手掌で手掌腱膜、【作用】手関節の掌屈、手掌腱膜を張る、【神経】正中神経:(C6),C7~T1である。
4.× 母指対立筋は、「尺骨神経」ではなく正中神経が支配する。
・母指対立筋の【起始】大菱形骨結節と屈筋支帯、【停止】第1中手骨の橈側縁、【作用】母指対立、【支配神経】正中神経:C8,T1である。
125.次の文で示す患者への初期対応で適切でないのはどれか。
「86歳の女性。8月の日中に開かれたゲートボール大会でめまい感、悪心、軽い頭痛を訴えた。発汗量は少ない。バイタルサインに異常は認めない。」
1.木陰に寝かせる。
2.鼠径部に氷のうを当てる。
3.自動体外式除細動器(AED)を使う。
4.スポーツドリンクを飲ませる。
解答3
解説
・86歳の女性。
・8月の日中:めまい感、悪心、軽い頭痛を訴えた。
・発汗量は少ない。
・バイタルサインに異常は認めない。
→本症例は、熱中症が疑われる。したがって、熱中症患者の初期対応を実施する。熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指す。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、 救急搬送されたり、場合によっては死亡することもある。主な初期症状として、めまい(目眩、眩暈)や立ちくらみ、一時的な失神などがあげられる。
1.〇 正しい。木陰に寝かせる。なぜなら、熱中症が疑われる患者には、まず涼しい場所に移動させて体温を下げることが重要であるため。木陰は日陰となり、涼しい環境を提供できる。
2.〇 正しい。鼠径部に氷のうを当てる。なぜなら、鼠径部は太い血管(大腿動・静脈)が通っており、冷却することで効率的に体温を下げることができるため。
3.× 自動体外式除細動器を使う必要はない。なぜなら、心電図異常(心室細動や心停止など)は考えにくいため。ちなみに、自動体外式除細動器とは、心臓がけいれんし血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して、電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器である。AEDの除細動の適応は、①心室細動(VF)、②無脈性心室頻拍(VT)である。
4.〇 正しい。スポーツドリンクを飲ませる。なぜなら、経口補水が可能であると考えられるため。経口補水が可能である場合、水分と電解質を補給することが重要である。