第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

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61.骨疾患と病態の組合せで正しいのはどれか。

1.くる病:ビタミンC欠乏
2.骨軟化症:類骨の増加
3.骨粗鬆症:骨量の増加
4.多発性骨髄腫:骨硬化

解答

解説
1.× ビタミンC欠乏は、「くる病」ではなく壊血病である。
・壊血病とは、ビタミンC欠乏が原因で起こる結合組織の異常から毛細血管が脆弱化して出血しやすくなる病気である。
・くる病とは、小児期に見られる骨の石灰化不全であり、主に成長障害と骨の弯曲が起こる疾患である。ビタミンDの代謝あるいは感受性の障害により、骨に石灰化が起こらず、強度が不足する病気である。 成人期ではビタミンD依存性骨軟化症と呼ばれる。小児期には成長も障害され、骨X線検査で特徴的な所見を呈し、ビタミンD依存性くる病とも呼ばれる。

2.〇 正しい。骨軟化症:類骨の増加
・骨軟化症とは、主にビタミンD欠乏が原因で骨化の過程における石灰化障害が生じた結果、石灰化していない骨基質が増加し、骨強度が減弱することにより生じる。骨端線閉鎖前の小児期に発症したものをくる病という。
・類骨とは、 骨が形づくられる中で、石灰化する前の柔らかい状態の骨のことである。つまり、骨芽細胞により形成され、骨稜の表面にある石灰化していない骨基質のことである。類骨は、線維と基質により構成され、主な線維はコラーゲン1型である。コラーゲンが類骨の90%を構成する。 基質はコンドロイチン硫酸やオステオカルシンがほとんどである。

3.× 骨粗鬆症は、骨量が「増加」ではなく減少する。骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。

4.× 多発性骨髄腫は、「骨硬化」ではなく骨の破壊(骨融解病変)である。骨硬化するのは、大理石骨病である。ちなみに、大理石骨病とは、破骨細胞という骨を溶かす役割をする細胞の機能が障害され、全身の骨がびまん性に硬くなる病気である。臨床症状は重症なものから軽症まで極めて多彩で、重症型(新生児型・乳児型)、中間型、遅発型などに大別され、それぞれの治療や予後は大きく異なる。重症型では貧血、出血傾向、感染しやすいなどの骨髄機能不全症状や著しい成長障害、脳神経障害、水頭症、低カルシウム血症などが早期より発症し、長期生存できない場合もある。

多発性骨髄腫とは?

 多発性骨髄腫は形質細胞がクローン性に増殖するリンパ系腫瘍である。増殖した形質細胞やそこから分泌される単クローン性免疫グロブリンが骨病変、腎機能障害、M蛋白血症などさまざまな病態や症状を引き起こす。多発性骨髄腫の発症年齢は65~70歳がピークで男性が女性より多く約60%を占める。腫瘍の増大、感染症の合併、腎不全、出血、急性白血病化などで死に至る。

 主な症状として、頭痛、眼症状の他に①骨組織融解による症状(腰痛・背部痛・圧迫骨折・病的骨折・脊髄圧迫症状・高カルシウム血症など)や②造血抑制、M蛋白増加による症状(貧血・息切れ・動悸・腎機能障害)、易感染性(免疫グロブリン減少)、発熱(白血球減少)、出血傾向(血小板減少)などである。

 

 

 

 

 

62.筋・腱疾患と運動機能検査の組合せで正しいのはどれか。

1.胸郭出口症候群:ドロップアームサイン
2.腱板損傷:ヤーガソンテスト
3.進行性筋ジストロフイ:ガワーズサイン
4.上腕骨外側上顆炎:ファレンテスト

解答

解説
1.× ドロップアームサインは、「胸郭出口症候群」ではなく肩腱板断裂である。drop arm(ドロップアーム)テストの陽性は、肩腱板断裂を疑う。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離す。
・胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

2.× ヤーガソンテストは、「腱板損傷」ではなく上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)である。上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)は、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。

3.〇 正しい。進行性筋ジストロフイ:ガワーズサイン
Gowers(ガワーズ)徴候(登はん性起立)は、床から起立する時、まず床に手をついて、お尻を高くあげ、次にひざに手をあてて、手の力を借りて立ち上がる。デュシェンヌ型筋ジストロフィーでみられる。

4.× ファレンテストは、「上腕骨外側上顆炎」ではなく正中神経麻痺である。ファレンテスト(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

Duchenne型筋ジストロフィーとは?

Duchenne型筋ジストロフィーとは、幼児期から始まる筋力低下・動揺性歩行・登攀性歩行・仮性肥大を特徴とするX連鎖劣性遺伝病である。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。

 

 

 

 

 

63.脊椎・脊髄疾患と身体所見の組合せで正しいのはどれか。

1.脊髄ショック:痙性麻痺
2.頚椎捻挫:バレー・リュー症状
3.L3-L4椎間板ヘルニア:アキレス腱反射の低下
4.腰部脊柱管狭窄症:鶏歩

解答

解説

麻痺の種類

・痙性麻痺とは、中枢神経系の筋を支配する神経細胞より上位の障害によるもので、筋緊張の亢進を伴う麻痺のことである。

・弛緩性麻痺とは、筋あるいは筋を直接支配する末梢運動神経の障害によるもので、筋緊張の低下を認める麻痺のことである。

1.× 脊髄ショックは、「痙性麻痺」ではなく弛緩性麻痺である。脊髄ショックとは、重度の脊髄損傷受傷後1日から3週間程度まで出現する。運動・感覚機能および脊髄反射がすべて消失し、自律神経機能も停止する症状が出る。
【脊髄損傷のショック期にみられる症状】
①肛門括約筋反射の消失
②膀胱・尿道の弛緩による完全尿閉
③神経原性の血管拡張による血液分布異常性ショック
④弛緩性麻痺
⑤深部腱反射・表在反射消失

2.〇 正しい。頚椎捻挫:バレー・リュー症状
・頚椎捻挫とは、首に一定の力が生じて生じる怪我で、首から背中、後頭部、肩部など広い範囲に痛みや違和感を生じる。 追突事故などの交通事故や転倒などで、首が短時間に前後に振られることで生じることが多い。頸椎に付着する靭帯が急激に伸張されたときに生じる軟部組織の損傷である。
・バレー・リュー症状とは、事故のあと頚部交感神経が刺激されることによって、後頭部痛、めまい、耳鳴、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状のことをいう。バレー・リュー症候群、自律神経失調症、外傷性頚部症候群などと呼ぶことがある。

3.× アキレス腱反射の低下は、「L3-L4」ではなくL5‒S1間椎間板ヘルニアである。椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

4.× 腰部脊柱管狭窄症は、「鶏歩」ではなく間欠跛行である。腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。間欠性跛行とは、歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足を引きずるようになるが、休むと再び歩けるというものである。体幹前傾ではなく、休むと改善する。
・鶏歩は、足関節の背屈筋力低下(前脛骨筋の筋力低下:総腓骨神経麻痺)でみられる。鶏歩とは、垂れ足になり、踵を高く上げつま先から投げ出すように歩くこと。

 

 

 

 

 

64.過度の動作と傷害の組合せで正しいのはどれか。

1.腰部前屈:腰部脊椎分離症
2.ジャンプ着地:膝蓋靭帯炎
3.ボールキック:膝前十字靭帯損傷
4.バットの素振り:手の舟状骨骨折

解答

解説
1.× 腰部脊椎分離症は、「腰部前屈」ではなく腰部後屈(伸展)である。脊椎分離症とは、小児~思春期の男性に好発する疾患で椎弓の関節突起間の骨の連続性がたたれた状態である。腰椎の椎間関節突起間部に疲労骨折が生じることで起こる疾患で、スポーツなどによって腰椎に繰り返しストレスがかかることが原因で、腰を反る動作(腰部伸展)を行うと、腰痛の症状が強くなる。

2.〇 正しい。ジャンプ着地:膝蓋靭帯炎
膝蓋靭帯炎とは、ジャンパー膝ともいい、反復したジャンプ動作によって起こる。バレーボール・バスケットボールの選手などに多く発症し、膝蓋骨遠位部に圧痛を認める。

3.× 膝前十字靭帯損傷は、「ボールキック」ではなく急な方向転換やジャンプ後の着地で膝がひねられる際である。前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。Lachman test(ラックマンテスト)/軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト)/Jerkテスト(ジャークテスト)は、膝前十字靭帯損傷を検査する。

4.× 手の舟状骨骨折は、「バットの素振り」ではなく手首を伸ばした状態での転倒である。舟状骨骨折とは、サッカーなどの運動時に後ろ向きに転倒して、手関節背屈で手をついた時に受傷することが多い。10〜20代のスポーツ競技者によくみられる骨折である。急性期では、手首の母指側が腫れ、痛みがある。急性期を過ぎると一時軽快するが、放置して骨折部がつかずに偽関節になると、手首の関節の変形が進行し、手首に痛みが生じて、力が入らなくなり、また動きにくくなる。

 

 

 

 

 

65.頚椎症について正しいのはどれか。

1.脊髄症型では一側の肩甲背部の疼痛が起こる。
2.神経根型では深部反射亢進が起こる。
3.関連痛型では手術療法が第1選択である。
4.保存療法では頚椎牽引が有効である。

解答

解説

頚椎症とは?

頚椎症とは、頚椎の椎間板、ルシュカ関節、椎間関節などの適齢変性が原因で、脊柱管や椎間孔の狭窄をきたして症状が発現した疾患である。そのうち脊髄症状を発現した場合を頚椎症性脊髄症、神経根症が発現した場合は頚椎症性神経根症とよぶ。神経根症では主に一側性に痛みやしびれが生じる。

①神経根型:神経根が圧迫され、片側の上肢に痛みやしびれが生じる。
②脊髄症型:脊髄が圧迫され、四肢麻痺、痙性歩行、深部反射亢進などが見られる。
保存療法が基本であるが、症状が進行する場合には手術療法が検討される。

1.× 一側の肩甲背部の疼痛が起こるのは、「脊髄症型」ではなく神経根型である。なぜなら、一側の疼痛は、神経根が一側で圧迫されることによって発生するため。ちなみに、脊髄症型では、両側性の運動障害や感覚障害が特徴である。

2.× 深部反射亢進が起こるのは、「神経根型(下位運動ニューロン障害)」ではなく脊髄症型(上位運動ニューロン障害)である。

3.× 関連痛型でも、手術療法が第1選択とはならない。基本的に、保存療法(安静、薬物療法、理学療法)が基本である。ちなみに、関連痛とは、神経線維の走行の関係で生じる痛みである。つまり、原因とは離れた部位に感じる痛みである。心筋梗塞では左肩・上腕部痛などとして自覚される。

4.〇 正しい。保存療法では頚椎牽引が有効である。なぜなら、牽引によって、神経根の圧迫の軽減ができるため。

 

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