第23回(H27年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後81~85】

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81.温熱療法はどれか。

1.紫外線療法
2.極低温法
3.低周波電気療法
4.極超短波療法

解答

解説
1.× 紫外線療法とは、皮膚疾患の治療法のひとつで、皮膚に紫外線を照射して免疫反応や細胞増殖を抑えることで、皮疹の改善や炎症の軽減、掻痒感の軽減などを目的としている。

2.× 極低温法とは、極端に低い温度を利用して組織の破壊や鎮痛効果を狙う治療法である。

3.× 低周波電気療法とは、低周波の電流を用いた治療法で、主に神経や筋肉に刺激を与えて鎮痛や筋緊張の緩和を行う。皮膚表面に周波数1,200Hz以下の微弱な電流を流す。

4.〇 正しい。極超短波療法は、温熱療法である。加温することで痛みの緩和や筋緊張の軽減、循環の改善などの効果が期待できる。2450MHzの電磁波を利用し、エネルギーの半価層(エネルギーが半減する深度)は、3~4cm、筋の加温に有効である。

極超短波療法(マイクロ波)の禁忌

①温熱療法一般の禁忌(急性炎症部位、悪性腫瘍、出血傾向、知覚麻痺)
②金属部位への照射(衣服、装飾品、体内金属含む)
③心臓ペースメーカー使用者
④眼球、男性生殖器、妊婦の腹部
⑤小児の骨端線

 

 

 

 

 

82.膝関節について正しいのはどれか。

1.最大屈曲位では固定される。
2.内側側副靭帯は伸展位でゆるむ。
3.前十字靭帯は脛骨の前方移動を制限する。
4.大腿二頭筋を内側ハムストリングスと呼ぶ。

解答

解説
1.× 最大「屈曲位」ではなく伸展位では固定される。なぜなら、膝関節伸展位にて、外・内側側副靭帯が緊張するため。むしろ、膝関節屈曲位にて、膝関節に寄与する靭帯は緩む傾向にある。

2.× 内側側副靭帯は、「伸展位」ではなく屈曲位でゆるむ。これにより、膝関節伸展位では膝の側方の安定性が高まる。

3.〇 正しい。前十字靭帯は脛骨の前方移動を制限する。前十字靭帯とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。前十字靭帯損傷とは、スポーツによる膝外傷の中でも頻度が高く、バスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換、急停止時に発生することが多い非接触損傷が特徴的な靭帯損傷である。Lachman test(ラックマンテスト)/軸移動テスト(pivot shift test:ピポットシフトテスト)/Jerkテスト(ジャークテスト)は、膝前十字靭帯損傷を検査する。

4.× 大腿二頭筋を「内側」ではなく外側ハムストリングスと呼ぶ。
ちなみに、内側ハムストリングスは、半腱様筋と半膜様筋である。

 

 

 

 

 

83.脳卒中の左大脳半球損傷でよくみられる障害はどれか。

1.球麻痺
2.失語症
3.左片麻痺
4.左半側空間無視

解答

解説


1.× 球麻痺とは、延髄にある神経核が障害された状態を指し、舌咽・迷走・舌下神経が障害される。したがって、嚥下・構音障害、舌萎縮、線維束攣縮などがみられる。

2.〇 正しい。失語症は、脳卒中の左大脳半球損傷でよくみられる障害である。失語症は、言語野(主に左脳)の障害で出現する。

3.× 左片麻痺は、「」大脳半球の損傷でよくみられる障害である。なぜなら、錐体路が延髄で交叉しているためである。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

4.× 左半側空間無視は、「」大脳半球の損傷でよくみられる障害である。劣位半球頭頂葉が障害されると、①対側の半側空無視、②着衣失行、③病態失認が起こる。半側空間無視とは、障害側の対側への注意力が低下し、その空間が存在しないかのように振る舞う状態のことである。半盲のように左半分が見えないわけではなく、注意力が低下している。したがって、①左側への注意喚起、②左側身体への触覚刺激、③左側方向への体軸回旋運動、④左側からの声かけなどが挙げられる。

 

 

 

 

 

84.第6頚髄節残存の頚髄損傷患者が行えるADLはどれか。

1.プッシュアップを用いた座位移動
2.両松葉杖使用での大振り歩行
3.機能的把持装具を用いたつまみ動作
4.スプリングバランサーを用いた食事動作

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.× プッシュアップを用いた座位移動は、第7頚髄節残存の患者が行える。なぜなら、第7頚髄節残存の頚髄損傷患者は、上腕三頭筋(肘関節伸展)の機能が十分あり、プッシュアップで体を持ち上げることができるため。

2.× 両松葉杖使用での大振り歩行は、第2腰髄節残存の患者が行える。なぜなら、腸腰筋が残存しているため。ただし、両松葉杖に長下肢装具を装着する必要がある。第3腰髄節残存の患者の場合、短下肢装具+松葉杖によって大振り歩行が行える。第4腰髄節残存の患者の場合、短下肢装具で実用歩行が可能である。

3.〇 正しい。機能的把持装具を用いたつまみ動作は、第6頚髄節残存の頚髄損傷患者が行えるADLである。第6頚髄節残存レベル(Zancolliの分類ではC6BⅠ~Ⅱ)は、実用的な車椅子駆動が可能である。

4.× スプリングバランサーを用いた食事動作は、第5頚髄節残存の患者が適応となる。第5頸髄節の運動機能は、肩関節:屈曲・伸展、外転、内外旋、肘関節:屈曲・回外が行える。そのため、ハンドリムに工夫を行うことによって平地自走は可能である。自助具を用いた食事動作は、C5機能残存レベル(装具やスプリングバランサーの装着、自助具の使用など)で食事動作の獲得が可能である。

 

 

 

 

 

85.小児疾患と障害の組合せで正しいのはどれか。

1.ポリオ:球麻痺
2.進行性筋ジストロフイー症:両麻痺
3.二分脊椎:対麻痺
4.ダウン症:片麻痺

解答

解説

ポリオとは?

ポリオ〈急性灰白髄炎〉は、ポリオウイルスによって引き起こされ、伝播は主に経口(飲食物)を通じて感染するものである。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。

1.× ポリオは、「球麻痺」ではなく筋力低下がみられる。球麻痺とは、延髄にある神経核(Ⅸ:舌咽神経、Ⅹ:迷走神経、Ⅺ:副神経、Ⅻ:舌下神経)が障害された状態を指し、舌咽・迷走・舌下神経が障害される。したがって、嚥下・構音障害、舌萎縮、線維束攣縮などがみられる。

2.× 進行性筋ジストロフイー症は、「両麻痺」ではなく筋力低下がみられる。筋ジストロフィーとは、骨格筋の変性・壊死と筋力低下を主徴とする遺伝性の疾患総称である。そのうちのDuchenne型筋ジストロフィーは、X連鎖劣性遺伝で①幼児期から始まる筋力低下、②動揺性歩行、③登攀性起立(Gowers徴候:ガワーズ徴候)、④腓腹筋などの仮性肥大を特徴とする。筋ジストロフィー症の中でもっとも頻度が高い。3歳頃に歩行や粗大運動の異常で気がつかれることが多い。
・両麻痺とは、両下肢に重度の麻痺がある状態のことである。痙直型両麻痺児にみられやすい。

3.〇 正しい。二分脊椎:対麻痺
・二分脊椎とは、脊椎の先天的な形成不全によるもので、脊髄が癒着や損傷しているために、様々な神経障害を呈する。下肢の運動障害・感覚障害のほか、膀胱直腸障害が出現する。また、合併症として水頭症がある。知的障害がある場合には, 自立生活を考える時期にかかわることが出てくる。
・対麻痺とは、手や足の両側とも同時に麻痺を来した状態である。 脊髄障害が原因のことが多い。

4.× ダウン症は、「片麻痺」ではなく筋緊張低下(低緊張)がみられる。
・ダウン症とは、染色体異常が原因で知的障害が起こる病気である。常染色体異常疾患の中で最多である。Down症候群になりうる異常核型は、3種に大別される。①標準トリソミー型:21トリソミー(93%)、②転座型(5%)、③モザイク型(2%)である。発症率は、平均1/1000人である。しかし、35歳女性で1/300人、40歳女性1/100人、45歳女性1/30人と、出産年齢が上がるにつれて確率が高くなる。症状として、①特異な顔貌、②多発奇形、③筋緊張の低下、④成長障害、⑤発達遅滞を特徴とする。また、約半数は、先天性心疾患や消化管疾患などを合併する。特異顔貌として、眼瞼裂斜上・鼻根部平坦・内眼角贅皮・舌の突出などがみられる。
・片麻痺とは、左右どちらか一側の上・下肢の麻痺が起きている状態である。錐体路の障害で起きやすい。錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

 

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