第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前71~75】

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71.脱水を起こしやすいのはどれか。

1.腸閉塞
2.大腸ポリープ
3.胃下垂
4.食道憩室

解答

解説

腸閉塞とは?

 イレウス(腸閉塞)とは、何らかの原因により、腸管の通過が障害された状態である。主に、①機械的イレウス(腸閉塞とも呼び、腸内腔が機械的に閉塞されて起こる)、②機能的イレウス(腸管に分布する神経の障害により腸内容が停滞する)に大別される。

①機械的イレウスには、器質的異常を伴うものをいい、単純性イレウスと絞扼性(複雑性)イレウスに分類される。機械的イレウスは血流障害の有無によって、さらに単純性イレウスと複雑性イレウスに分類される。絞扼性(複雑性)イレウスは、腸間膜血行の停止により腸管壊死を伴うイレウスであり、急激に病状が悪化するため緊急に手術を要する。

②機能的イレウスとは、器質的な異常がなく、腸管の運動麻痺や痙攣により腸管の内容物が停滞することである。長期臥床、中枢神経疾患、腹膜炎、偽性腸閉塞が原因となることが多い。麻痺性イレウスと痙攣性イレウスに分けられる。

1.〇 正しい。腸閉塞は、脱水を起こしやすい。なぜなら、①腸内容物の停滞による嘔吐、②腸管内への大量の体液移動(腸管腔内に水分がたまり、血液中の水分が減少)、③食事や水分摂取ができないことなど起こるため。

2.× 大腸ポリープとは、正確には「大腸に発生する上皮性、良性、隆起性病変」のことをいう。広義には腺腫、粘膜下腫瘍、癌など胃の中に隆起した病変の総称として使用されることもある。通常、腸管の機能に影響を与えることは少ない。

3.× 胃下垂とは、胃が正常な位置より下に位置する状態である。通常、機能的に問題を引き起こすことは少ない。胃下垂の程度によっては、胃の機能が低下し、胃もたれやむかつき、膨満感、食欲不振などの症状が見られる場合もある。

4.× 食道憩室とは、食道壁の一部が外側に膨らんだ状態である。通常、機能的に問題を引き起こすことは少ない。憩室の程度によっては、食物の停滞による悪臭や誤嚥のリスクがある。

 

 

 

 

 

72.肺気腫について正しいのはどれか。

1.漏斗胸がみられる。
2.呼吸音が減弱する。
3.吸気が延長する。
4.残気量が減少する。

解答

解説

肺気腫とは?

肺気腫は、終末気管支より末梢の気腔が異常に拡大し、肺胞壁の破壊を伴うが、明らかな線維化は認められない状態のことである。慢性閉塞性換気障害を呈する。ちなみに、閉塞性換気障害では何らかの原因により気道が閉塞して気流が制限され、呼気が障害される。

1.× 漏斗胸がみられるのは、「マルファン症候群」である。Marfan症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形:漏斗胸など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。ほかにも、漏斗胸は、くる病の症状である。ちなみに、漏斗胸とは、前胸壁が陥没し、あたかも漏斗のような外観を示す変形である。骨強度の減弱により生じる。

2.〇 正しい。呼吸音が減弱する。なぜなら、肺気腫は、肺の弾性が低下し、換気が効率的でなくなるため。ちなみに、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

3.× 吸気が延長するのは、「気道閉塞」である。なぜなら、狭窄や閉塞があると、吸気時に空気の通過が妨げられるため。

4.× 残気量が「減少」ではなく増加する。残気量とは、最大に呼出させた後、なおも肺内に残っている空気量のことをいう。

(※図引用:「呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線」医學事始様HPより)

 

 

 

 

 

73.ICFの活動制限に対するアプローチで正しいのはどれか。

1.利き手交換
2.トイレ改造
3.上肢機能訓練
4.デイサービス利用

解答

解説

(※画像引用:Job Medley様HPより)

ICFとは?

ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。

1.〇 正しい。利き手交換は、ICFの活動制限に対するアプローチである。活動とは、課題や行為の個人による遂行のことである。

2.× トイレ改造は、ICFの環境に対するアプローチである。

3.× 上肢機能訓練は、ICFの心身機能・身体構造に対するアプローチである。

4.× デイサービス利用は、ICFの参加に対するアプローチである。参加とは、生活へのかかわりあいである。

 

 

 

 

 

74.急性期リハビリテーションの内容で正しいのはどれか。

1.排痰訓練
2.入浴動作訓練
3.職業前訓練
4.階段昇降訓練

解答

解説

急性期とは?

急性期とは、症状が急に現れる時期、病気になり始めの時期である。急性期は、全身の生体反応と機能低下が起こり、合併症が発現するおそれがある。このため、回復過程における経過を予測して系統的な観察を行い、正常範囲に経過しているのか、それとも逸脱して悪化していくおそれがあるのかを判断し、異常を察知すれば早期に対処する必要がある。

1.〇 正しい。排痰訓練は、急性期リハビリテーションの内容である。排痰訓練とは、誤嚥・肺炎の予防や呼吸をしやすいよう排痰練習のことである。例えば、体位ドレナージ、吸引、呼吸法指導(腹式呼吸、口すぼめ呼吸)などがあげられる。

2.× 入浴動作訓練/職業前訓練/階段昇降訓練は、回復期リハビリテーションの内容である。ちなみに、回復期とは、疲労感が軽減してこれから社会復帰の準備を始めようと、服薬や金銭の自己管理を支援し、学校や職場との連携を図る時期である。

リハビリテーションの種類

①医学的リハビリテーション、②教育リハビリテーション、③職業リハビリテーション、④社会的リハビリテーション

 

 

 

 

 

75.「48歳の女性。2年前、左手のこわばりがみられ、その後、近位指節間関節から始まる左指の関節痛と腫れが生じ、さらに右指の関節も痛みだした。現在では、両側の手・膝関節にも関節炎がみられる。光過敏や嚥下障害はない。」
 本疾患で陽性となるのはどれか。

1.リウマトイド因子
2.LE細胞
3.抗Jo-1抗体
4.抗トポイソメラーゼI抗体(抗Scl-70抗体)

解答

解説

本症例のポイント

・48歳の女性(2年前:左手のこわばり)。
・その後:近位指節間関節から始まる左指の関節痛と腫れが生じ、さらに右指の関節も痛みだした。
・現在:両側の手・膝関節にも関節炎がみられる。
・光過敏や嚥下障害はない。
→本症例は、関節リウマチが疑われる。

1.〇 正しい。リウマトイド因子は、本疾患で陽性となる。ただし、リウマトイド因子陽性ならば、「関節リウマチである」と断定することはできない。リウマトイド因子〈RF〉とは、関節リウマチのマーカーである。IgGに対する抗体の総称であり、そのほとんどがFc部分に反応するIgM型の抗体である。リウマトイド因子が陽性となる病態と陽性率との関係について、リウマトイド因子は、比較的感度の高い検査であるが、特異度は決して高くないのが特徴である。シェーグレン症候群やC型肝炎、クリオグロブリン血症などでも高値となる。つまり、リウマトイド因子陽性が、必ずしも関節リウマチや自己免疫疾患の存在を示すものではない。

2.× LE細胞(lupus erythematosus cell)は、全身性エリテマトーデス(SLE)で見られる所見である。全身性エリテマトーデスの患者血清に存在するLE因子が、細胞膜が障害された細胞に侵入して核成分と反応することで形成される細胞である。ちなみに、全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。

3.× 抗Jo-1抗体は、多発性筋炎・皮膚筋炎に関連する抗体です。多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

4.× 抗トポイソメラーゼⅠ抗体(抗Scl-70抗体)は、全身性強皮症に関連する抗体である。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。ちなみに、レイノー現象とは、四肢(特に手指)が蒼白化、チアノーゼを起こす現象である。手指の皮膚が寒冷刺激や精神的ストレスにより蒼白になり、それから紫色を経て赤色になり、元の色調に戻る一連の現象をいう。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

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