第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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131.承山への刺鍼が最も有効なスポーツ外傷で陽性となる徒手検査はどれか。

1.ラックマンテスト
2.トンプソンテスト
3.コーゼンテスト
4.グラスピングテスト

解答

解説

MEMO

・承山(※読み:しょうざん)は、下腿後面、腓腹筋筋腹とアキレス腱の移行部にある。腓腹筋の治療穴である。

・腓腹筋の【起始】外側頭:大腿骨外側上顆、内側頭:大腿骨内側上顆、【停止】踵骨腱(アキレス腱)となり踵骨隆起後面の中部、【作用】膝関節屈曲、足関節底屈、踵の挙上、【支配神経】脛骨神経:S1,S2である。

1.× ラックマンテストとは、膝関節前十字靱帯損傷の検査である。背臥位で膝関節を20~30度屈曲させて、下腿部近位端を斜め前方へ引き出す。陽性の場合、脛骨は止まることなく前方に出てくる。

2.〇 正しい。トンプソンテストは、承山への刺鍼が最も有効なスポーツ外傷で陽性となる徒手検査である。Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。

3.× コーゼンテスト(Cozen’s Test)は、外側上顆炎を評価する検査である。被検者は、肘関節屈曲90度で、座位になってもらう。検者は、手関節屈曲させるように力を加える。抵抗に逆らって手関節を伸展させたときに外側肘に痛みがあれば陽性である。

4.× グラスピングテストが陽性であることからも腸脛靱帯炎が疑われる。腸脛靱帯炎とは、ランナー膝ともいい、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生している状態を指す。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。ちなみに、Graspingテスト(グラスピングテスト)は、腸脛靭帯を圧迫してテンションをかけた状態で、膝の曲げ伸ばしで症状が再現されるかどうかで判断する。

 

 

 

 

 

132.次の文で示す患者の病証に対し、循経取穴で瀉法を行う経穴はどれか。「36歳の男性。1か月前に右足の内がえし捻挫を起こした。現在、腫脹は取れたが、前距腓靭帯部の熱感と動作時の疼痛が残っている。下腿外側部の自発痛を伴う。ストレスが増すと痛みは強くなり口苦を自覚する。舌質は紅、舌辺の舌苔は剥落。脈は滑。」

1.内庭
2.侠渓
3.行間
4.然谷

解答

解説

本症例のポイント

・36歳の男性。
・1か月前:右足の内がえし捻挫。
・現在:腫脹(-)、前距腓靭帯部の熱感と動作時の疼痛(+)。
・下腿外側部の自発痛を伴う。
・ストレスが増すと痛みは強くなり口苦を自覚する。
・舌質は紅、舌辺の舌苔は剥落。脈は滑。
→本症例は、足の少陽胆経の病証が疑われる。足の少陽胆経は、口苦が起こり、大きなため息をつく、寝返りが打てない。顔に少し垢が付いたように黒くなる。体の艶が無くなる。足外反しほてる。頭やエラの所が痛む。まなじりが痛む。首に結核性のリンパ節炎ができる。往来寒熱の状態になり、あらゆる関節が痛む。

1.× 内庭は、足の陽明胃経の榮水穴である。内庭(※読み:ないてい)は、足背、第2~3足指間、みずかきの後縁、赤白肉際に位置する。

2.〇 正しい。侠渓は、患者の病証に対し、循経取穴で瀉法を行う経穴である。侠渓は、足の少陽胆経の榮水穴である。侠渓(※読み:きょうけい)は、足背、第4~5指間、みずかきの近位、赤白肉際に位置する。

3.× 行間は、足の厥陰肝経の榮火穴である。行間(※読み:こうかん)は、足背、第1~2指間、みずかきの近位、赤白肉際に位置する。

4.× 然谷は、足の少陰腎経の榮火穴である。然谷(※読み:ねんこく)は、足内側、舟状骨粗面の下方、赤白肉際に位置する。

 

 

 

 

 

133.素問、霊枢、難経の「治未病」に関して誤っているのはどれか。

1.病気になる前に予防する。
2.病の兆候を早期に発見して早期に治療する。
3.治療すべきタイミングが重要である。
4.1つの臓を病めば治未病の概念からはずれる。

解答

解説

未病とは?

未病とは、2000年以上前の中国の書物『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』の中に「聖人は未病を治す」と書かれていて、予防の重要性が既に認識されていたことがわかります。「未病」とは、発病には至らないものの軽い症状がある状態です。五臓六腑がつながっているという考えが根本にあり、軽いうちに異常を見つけて病気を予防するという考え方です。最近では外来や検診でさまざまな検査ができるようになり、特に自覚症状がないにもかかわらず検査値異常を指摘されることがよくあります。 生活の質(QOL)は侵されていないが検査値に異常がある未病の場合、その時点で病気を発症させないための治療をしていく「治未病」(ちみびょう)の考え方が、今後、より重要になってきます。

(※引用:「未病とは?」日本医師会様HPより)

1.〇 正しい。病気になる前に予防する。未病とは、発病には至らないものの軽い症状がある状態で、軽いうちに異常を見つけて病気を予防するという考え方である。

2.〇 正しい。病の兆候を早期に発見して早期に治療する。生活の質は侵されていないが、検査値に異常がある未病の場合、その時点で病気を発症させないための治療をしていく「治未病」の考え方が重要である。

3.〇 正しい。治療すべきタイミングが重要である。なぜなら、治療が遅くなりすぎた場合、手遅れになる可能性もあるため。また、たとえ早期治療が大切とはいえ、自宅の私情が複雑になっている場合、精神的にも乱れやすく、ほかの精神疾患を呈する可能性もある。

4.× 1つの臓を病んでも、治未病の概念からはずれるわけではない。「治未病」は、陰陽の法則、五行の相生・相克や五臓の特性などを考え、予兆をとらえて病の発生を予防すること、発病したときは早いうちに治療すること、病が他の臓器へ波及しないように手当てすることである。 

 

 

 

 

 

134.頸椎の間欠牽引療法を座位で施行する場合、頸椎の牽引角度で最も適切なのはどれか。

1.屈曲15度
2.0度
3.伸展15度
4.伸展30度

解答

解説
1.〇 正しい。屈曲15度は、頸椎の間欠牽引療法を座位で施行する場合、頸椎の牽引角度である。頸椎の間欠牽引療法では、頸椎の治療部位に応じて、上位頸椎:0~15度、中位頸椎:15~30度、 下位頸椎:30~40度となっている。

2~4.× 0度/伸展15度/伸展30度より、優先されるものが他にある

 

 

 

 

 

135.「63歳の男性。手のふるえ、歩行困難、歯車様の筋強剛がみられる。」本患者の特徴的な手のふるえはどれか。

1.コップをつかもうとするときのふるえ
2.ゆっくりと踊るようなふるえ
3.丸薬を丸めるような手指のふるえ
4.細かい指先のふるえ

解答

解説

本症例のポイント

・63歳の男性。
・手のふるえ、歩行困難、歯車様の筋強剛。
→本症例は、パーキンソン病が疑われる。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

→矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

1.× コップをつかもうとするときのふるえは、企図振戦である。企図振戦とは、安静時にはほとんど生じないが、運動時、特に運動終了直前に生じる律動的な運動疾患である。したがって、小脳の障害が疑われる。

2.× ゆっくりと踊るようなふるえは、アテトーゼである。アテトーゼとは、ゆっくり流れるようにうねる連続的な不随意運動で、脳性麻痺などによる錐体外路障害でみられる。

3.〇 正しい。丸薬を丸めるような手指のふるえは、本患者の特徴的な手のふるえである。丸薬丸め運動とは、ふるえの症状が片方の手からはじまり、安静時に見られ指先で小さな玉を丸めるような運動のことをいう。

4.× 細かい指先のふるえは、生理的振戦や本態性振戦などが考えられる。生理的振戦は、寒いときや緊張したとき、ストレス時などに一時的に起こる良性のふるえである。本態性振戦は、明らかな原因がわからないふるえである。

 

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