第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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問題156 温度刺激に関して正しいのはどれか。

1.20~40℃の間では皮膚温が高いほど閾値が高くなる。
2.感覚の順応は起きにくい。
3.熱刺激を受容するⅢ群線維がある。
4.皮膚温が45℃未満の熱刺激では神経性炎症は起こらない。

解答

解説

1.× 20~40℃の間では、皮膚温が高いほど、閾値が「高く」ではなく低くなる。つまり、感じやすくなる。これは、皮膚温との差がもたらされているためである。ちなみに、閾値とは、感覚や反応や興奮を起こさせるのに必要な、最小の強度や刺激などの(物理)量である。したがって閾値が高いと(上がると)、 感覚を感じにくくなることをさす。

2.× 感覚の順応は「起きにくい」とは一概に言えない。なぜなら、熱くも冷たくも感じない37℃前後の水温(不感温度)が存在するため。不感温度とは、心拍数、血圧、呼吸数、酸素消費量など最も影響が少ない。ただし、比べている対象があいまいで、何の感覚と比較して、「順応が起きにくい」と問いているのか不明である。触覚や圧覚などでは順応が比較的早く、温度や痛覚は順応は遅い傾向にある。

3.〇 正しい。熱刺激を受容するⅢ群線維がある(図参照)

4.× 皮膚温が45℃未満の熱刺激では、神経性炎症は「起こらない」と断言できない。なぜなら、フレアが生じる場合があるため。フレア現象とは、お灸の熱刺激によって細胞レベルで微細な火傷が起こり、神経から脳に「ここにケガがあるから治すために血液を送ってください」と連絡が入ることで起こる軸索反射のこと。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

 

 

 

 

 

問題157 過敏性腸症候群における下痢に対して、脊髄性の自律神経反射を考慮して灸治療を行う場合、最も効果が期待できるのはどれか。

1.合谷
2.帰来
3.足三里
4.内庭

解答

解説

過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群である。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられている。それぞれタイプが存在し、①下痢型(ストレスや緊張などのわずかなきっかけによって腹痛と激しい便意とともに下痢を生じる)、②便秘型(便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こる)、③混合型(便秘と下痢が交互に繰り返すもの)がある。

1.× 合谷(※読み:ごうこく)は、手背、第2中手骨中点の橈側に位置する。

2.〇 正しい。帰来は、過敏性腸症候群における下痢に対して、脊髄性の自律神経反射を考慮して灸治療を行う場合、最も効果が期待できる。なぜなら、腹部刺激による作用は、体性-内臓反射(脊髄性)で、交感神経活動の亢進させる効果が期待できるため(※詳しくは、第25回問題149を参考)。ちなみに、帰来(※読み:きらい)は、下腹部、臍中央の下方4寸、前正中線の外方2寸に位置する。

3.× 足三里(※読み:あしさんり)は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。

4.× 内庭(※読み:ないてい)は、足背、第2~3足指間、みずかきの後縁、赤白肉際に位置する。

自律神経反射の一覧

内臟・内臟反射:圧受容器反射、排便・排尿の反射など
内臟・体性知覚反射:関連痛、知覚過敏帯(ヘッド帯・マッケンジー帯)など
内臟・体性運動反射:筋性防御など
内臟・体性自律反射:汗腺反射、皮脂腺反射、立毛筋反射、皮膚血管反射など
体性・内臟反射:対光反射、鍼灸による内臓機能の調整など

 

 

 

 

 

問題158 施灸局所の血流増加に関与するのはどれか。

1.軸索反射
2.広汎性侵害抑制調節
3.交感神経-アドレナリン系
4.圧受容器反射

解答

解説
1.〇 正しい。軸索反射は、施灸局所の血流増加に関与する。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

2.× 広汎性侵害抑制調節とは、侵害刺激が痛みを抑制する現象のことをいう。鎮痛効果は、刺激直後から全身に現れるが、刺激期間中に限られるという特徴をもっている。その発現には延髄の背側網様亜核が部分的に関与している。

3.× 交感神経-アドレナリン系とは、キャノンが提唱した緊急反応のことをいい、身体がストレスや危機的状況に直面した際の反応のことである。副腎髄質からアドレナリンやノルアドレナリンが分泌され、交感神経系が活性化される。これらのホルモンは、体内の特定の受容体に作用して、心拍数や血圧の上昇、呼吸の促進など、身体を戦闘状態または逃走状態に適した準備に導く一連の反応を提唱した。

4.× 圧受容器反射は、中心血液量の増減をモニターして血圧を一定範囲内に保つように心臓血管系を調節する機構である。心肺圧受容器とは、心房、心室および肺血管に位置する伸展受容器である。つまり、水分調整(渇き)に関わる。

 

 

 

 

 

問題159 透熱灸の施灸局所に起こる反応で正しいのはどれか。

1.痛覚過敏はセロトニンにより起こる。
2.痒みはノルアドレナリンの作用による。
3.フレアは脊髄反射により起こる。
4.局所膨隆は血漿漏出により起こる。

解答1・4

解説

透熱灸とは?

透熱灸とは、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する方法である。糸状灸も含まれる。

1.〇 正しい。痛覚過敏は、セロトニンにより起こる。なぜなら、ケミカルメディエーターであるため。ちなみに、一般的に、セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。

2.× 痒みは、「ノルアドレナリン」ではなくヒスタミンの作用による。ノルアドレナリンは、下行性痛覚抑制系において、脊髄後角で痛覚を遮断する物質である。ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

3.× フレアは、「脊髄反射」ではなく軸索反射により起こる。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

4.〇 正しい。局所膨隆は、血漿漏出により起こる。なぜなら、軸索反射の作用が起こるため。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
セロトニン
・ヘパリンなど。

 

 

 

 

 

問題160 「生体の内部環境は適当な制御機構が働いて、ほぼ一定に維持されている」と定義されるのはどれか。

1.ホメオスタシス
2.圧自律神経反射
3.汎適応症候群
4.サイバネティックス

解答

解説
1.〇 正しい。ホメオスタシスは、「生体の内部環境は適当な制御機構が働いて、ほぼ一定に維持されている」と定義される。ホメオスタシスとは、外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できる能力のことある。 例えば、体温が下がると鳥肌になり体温の低下を防いだり、体を震えさせて強制的に運動を起こして体温を上げるなどをさす。

2.× 圧自律神経反射とは、皮膚の圧迫によって、交感神経に作用する反射である。圧迫側が抑制に働き、反対側では、逆に亢進する。例えば、発汗している時に、側臥位で寝ると、上側の発汗が増え、下側の発汗は減る、というような反射である。

3.× 汎適応症候群とは、ハンス・セリエが提唱したストレス学説のことである。ストレッサーの種類に関係なく、心身に同じ反応が起きること、また、その症状が全身に及ぶことから、「汎適応症候群」という。ちなみに、ストレス学説とは、ストレスに対する適応症候群(防御反応)である。発生機序として、ストレスが人体に加わると適応ホルモンとして脳の下垂体から副腎に副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、さらに副腎は副腎皮質ホルモンを分泌して人体を保護する。人体にストレス刺激が加わりストレス状態が続くと、副腎皮質が肥大する。第1期(警告反応期)→第2期(抵抗期)→第3期(疲憊期)という過程をたどる。

4.× サイバネティックスとは、ノーバート・ウィナーが唱えたフィードバック機構によって自動調整されている回路のことである。

 

 

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