第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前31~35】

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問題31 糖新生の材料になるのはどれか。

1.アミノ酸
2.マルトース
3.ガラクトース
4.グリコーゲン

解答

解説
1.〇 正しい。アミノ酸は、糖新生の材料になる。糖新生とは、肝臓などで血中のブドウ糖が低下した場合に、ブドウ糖以外の物質からブドウ糖を産生する過程である。乳酸やアミノ酸、グリセロールなどの栄養素からグルコースを合成する反応で、解糖系の逆反応とも呼ばれる。

2.× マルトース(麦芽糖)は、二糖類で、消化されるとグルコースに分解される。つまり、直接グルコースとして利用される。

3.× ガラクトースは、グルコースの異性体であり、肝臓でグルコースに変換される。

4.× グリコーゲンとは、多糖類の一種で、エネルギーを貯蔵し人間の活動に欠かせないものである。普段は、肝臓や骨格筋等に蓄えられており、急激な運動を行う際のエネルギー源として、あるいは空腹時の血糖維持に利用される。

”クエン酸回路とは?”

クエン酸回路(TCA回路、クレブス回路、トリカルボン酸回路)とは、ミトコンドリアでアセチルCoAが二酸化炭素と水へと酸化されATPを生成する。

グルコース→ピルビン酸→アセチルCoA→【クエン酸回路】(オキサロ酢酸)+クエン酸→イソクエン酸→α-ケトグルタル酸→サクシニルCoA→コハク酸→フマル酸→リンゴ酸→オキサロ酢酸となる。

 

 

 

 

 

問題32 コルチゾールの働きでないのはどれか。

1.抗ストレス作用をもつ。
2.免疫機能を高める。
3.胃酸の分泌を促す。
4.血糖値を高める。

解答

解説

コルチゾールとは?

コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

1.〇 抗ストレス作用をもつ。
3.〇 胃酸の分泌を促す。
4.〇 血糖値を高める。
これらは、コルチゾールの働きである。

2.× 免疫機能を「高める」のではなく抑制する。特に、抗炎症作用や免疫抑制作用を持ち、過剰な免疫反応を抑えるために使われる。このため、コルチゾールやその合成されたステロイドホルモンは、炎症性疾患や自己免疫疾患の治療に利用される。

ステロイドの副作用

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

 

 

問題33 加齢に伴い低下するのはどれか。

1.血圧
2.肺活量
3.副甲状腺ホルモン分泌
4.血糖値

解答

解説

加齢に伴う循環器の変化

・心臓は左室肥大傾向があり、臓器重量は増加する。
・運動負荷時の心拍出量は、加齢に伴い低下する。
・収縮期血圧が上昇する(拡張期血圧は減少する)。
・動脈硬化が起こりやすくなり、虚血性心疾患が増加する。

1.× 血圧は、加齢に伴い上昇する。なぜなら、動脈硬化や血管の弾力性の低下により、心臓が血液を送り出す際の抵抗が増すため。

2.〇 肺活量は、加齢に伴い低下する。なぜなら、加齢によって肺の弾力性が減少し、呼吸筋の力が弱まることなどが原因である。結果として、最大呼吸時に吸い込んだり吐き出したりできる空気の量が減少する。ちなみに、肺活量とは、[最大吸気量 + 予備呼気量]のことをいう。つまり、限界まで吸い、限界まで吐いたときの空気の量である。

3.× 副甲状腺ホルモン分泌は、加齢に伴い上昇する。なぜなら、腸管からのカルシウム吸収の低下や、カルシウム摂取量の低下などにより、血漿カルシウム濃度が低下するため。副甲状腺ホルモンとは、副甲状腺から分泌され、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。つまり、副甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、血中カルシウム濃度が低下する。それに伴い、しびれ感、テタニー(手指の不随意な筋収縮)、けいれんなどの症状が起こる。別名:パラトルモンである。

4.× 血糖値は、加齢に伴い上昇する。なぜなら、加齢によりインスリン分泌量が低下したり、インスリン抵抗性が増大するため。加齢に伴い、体の細胞組織が変化することによって筋肉量は減り、脂肪組織の割合が増加する。したがって、高齢者では糖尿病のリスクが高くなる。

加齢に伴う呼吸器の変化

・肺残気量は増大し、肺活量、1秒率、拡散能は低下する。
・咳嗽反射、気道粘膜の線毛運動が低下する。
・喀痰排出が不十分になる。

(図引用:「加齢による身体機能の変化」著:瀬尾 芳輝)

 

 

 

 

 

問題34 貧血の要因でないのはどれか。

1.胃の全切除
2.栄養不足
3.高地への移住
4.脾臓の機能亢進

解答

解説

貧血の定義

貧血とは、「単位容積の血液中に含まれているヘモグロビン(Hb)量が基準値より減少した状態」と定義している。基準値を、小児および妊婦では血液100mLあたり11g未満、思春期および成人女性では12g未満、成人男性では13g未満と定めている。

【貧血の要因】鉄分不足、ビタミンB12や葉酸などの造血因子の不足、腎臓の病気によるエリスロポエチンの産生抑制、内分泌器官の低下によるホルモン分泌のバランスの崩れ、過剰な出血(失血)、赤血球の過剰な破壊など。

1.〇 胃の全切除は、貧血の要因である。なぜなら、胃の切除により、ビタミンB12の吸収に必要な内因子が不足するため。したがって、悪性貧血を引き起こす。ちなみに、悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。

2.〇 栄養不足は、貧血の要因である。なぜなら、特に鉄分やビタミンB12、葉酸などの栄養素の欠乏によって貧血を呈すため。鉄分により鉄欠乏性貧血を引き起こす。また、ビタミンB12の不足により、悪性貧血を引き起こす。ちなみに、鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

3.× 高地への移住は、貧血の要因でない。むしろ、高地では酸素濃度が低いため、体は酸素不足を補うために赤血球を増加する傾向になる。これを、「高地順応」という。

4.〇 脾臓の機能亢進は、貧血の要因である。脾臓とは、①古くなった血球(白血球、赤血球、血小板)の処理や、②感染に対する防御など免疫に関係する働きを担う。したがって、溶血性貧血を引き起こす。溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

 

 

 

 

 

問題35 反射について正しいのはどれか。

1.腹壁反射の中枢は脊髄である。
2.咬筋反射の遠心路は脊髄神経である。
3.屈曲反射の求心路はIa群線維である。
4.アキレス腱反射は多シナプス反射である。

解答

解説
1.〇 正しい。腹壁反射の中枢は、脊髄である。腹壁反射(腹皮反射)の【中枢】肋間神経→①肋骨縁:T5~T6、②上:T6~T9、③中:T9~T11、④下:T11~T12→肋間神経、【検査法】検者を背臥位にして両膝を軽く屈曲し膝を立て、腹筋を弛緩させる。先の鈍い針で肋骨縁①にそって上から下に向けてこする。また、腹壁を上②、中③、下④の3つに分けて、腹壁皮膚を外側より内側に向けてこする。【判定】刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性。腹壁反射(腹皮反射)とは、表在反射のひとつである。表在反射とは、皮膚や粘膜を刺激することでみられる反射のことで、消失により錐体路障害を示す徴候である。

2.× 咬筋反射(下顎反射)の遠心路は、「脊髄神経」ではなく三叉神経である。下顎反射の【中枢】橋、【求心性神経】【遠心性神経】ともに三叉神経である。【方法】軽く口を開かせて、下顎のオトガイ部に検者の左母指あるいは示指を当て、その指の上を叩打する。下顎が上昇すれば亢進。

3.× 屈曲反射(逃避反射)の求心路は、「Ia群線維」ではなくⅢ群やⅣ群線維である。なぜなら、痛覚による反射であるため。ちなみに、逃避反射とは、屈曲反射ともいい、四肢の皮膚に強い刺激(痛み刺激)を加えると、その肢が屈曲する反射である。背臥位の新生児の足底を刺激すると下肢を屈曲させて足をひっこめる。胎児期後期から、生後1、2ヵ月までに消失する。

4.× アキレス腱反射は、「多シナプス反射」ではなく単シナプス反射である。多シナプス反射とは、筋を弛緩するため、抑制性ニューロンを介在しなければならない反射である。したがって、伸張反射以外のほとんどの反射は多シナプス反射である。

伸張反射とは?

伸張反射は、筋紡錘に存在する一次終末からのIa線維を介してα運動ニューロンにシナプスを形成するもので、単シナプス性の反射経路をとる。筋を伸張すると筋紡錘も引き伸ばされ、感覚神経の終末が変形する。この機械的刺激が感覚神経に求心性発射活動を引き起こす。

 

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