第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前66~70】

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問題66 心不全について正しいのはどれか。

1.左心不全では下肢の浮腫は顕著である。
2.左心不全では臥位で症状が軽快する。
3.心拍出量が低下する。
4.血中ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が低下する。

解答

解説

心不全とは?

心不全とは、組織が必要とする循環血液量を心臓が拍出できない病態である。
心拍出量の低下を起こす原因として、
・左心不全:肺循環系にうっ血が著明なもの(肺のうっ血による症状と全身の血圧低下が主体)。
・右心不全:体循環系にうっ血が著明なもの(上下大静脈のうっ血が主体。右心不全の代表的な症状として、①頚静脈怒張、②下腿浮腫、③肝腫・黄疸、④肝頚静脈逆流、⑤Kussmaul徴候)。
右室拡張末期圧の上昇(体循環の静脈系のうっ血)により右心不全は引き起こされる。

1.× 「左心不全」ではなく右心不全では下肢の浮腫は顕著である。なぜなら、右心不全では、右心室が体静脈からの血液を十分に送り出せないため。したがって、全身の静脈圧が上昇し、下肢や腹部に浮腫が生じる。

2.× 左心不全では、「臥位」ではなく座位(起坐呼吸)で症状が軽快する。むしろ、左心不全では臥位(寝た姿勢)になると症状が悪化する。なぜなら、臥位になると血液が肺に戻りやすくなるため。したがって、肺うっ血が悪化し、呼吸困難が増強される。ちなみに、起坐呼吸とは、呼吸困難が臥位で増強し、起坐位(または半坐位)で軽減することをいう。起坐呼吸は、臥位をとると静脈還流が増え血液が肺にたまりやすくなり呼吸困難が増強するためみられる。

3.〇 正しい。心拍出量が低下する。心不全とは、組織が必要とする循環血液量を心臓が拍出できない病態である。全身に十分な血液を送り出せなくなることで、倦怠感や活動耐性の低下、冷感などが引き起こされる。

4.× 血中ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値が、「低下」ではなく上昇する。なぜなら、心不全が進行すると、心臓にかかる負荷が増加し、心筋からヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が分泌されるため。したがって、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、心不全の診断・予後や治療効果の判定に有用である。

 

 

 

 

 

問題67 2型糖尿病について正しいのはどれか。

1.若年者に多い。
2.肥満者に多い。
3.インスリン療法が必須である。
4.1型糖尿病より罹患者数が少ない。

解答

解説

MEMO

・2型糖尿病とは、遺伝的な体質(インスリン分泌低下、インスリン抵抗性)に過食、運動不足、肥満が加わることにより起こる糖尿病を指す。
・1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。

1.× 「若年者」ではなく中高年以降(40歳以降)に多い。なぜなら、生活習慣や加齢が原因となることが多いため。

2.〇 正しい。肥満者に多い。なぜなら、肥満によりインスリン抵抗性が高まり、血糖値が上昇しやすくなるため。

3.× インスリン療法が「必須とはいえない」。なぜなら、2型糖尿病の治療は、食事療法や運動療法、経口血糖降下薬が中心であるため。国立国際医療研究センター糖尿病情報センターがまとめた「糖尿病標準診療マニュアル」によると、いくつかの経口薬を併用しても血糖コントロールが改善せず、HbA1c 8.5%以上が持続するなら、インスリン療法を積極的に始める必要がある。

4.× 1型糖尿病より罹患者数が「少ない」のではなく多い。1型糖尿病の患者数は10~14万人、2型糖尿病の患者数は、約370万人である。2型糖尿病は、日本人の糖尿病患者の約95%を占めている。

 

 

 

 

 

問題68 ビタミンB12欠乏による疾患はどれか。

1.骨軟化症
2.ウェルニッケ脳症
3.巨赤芽球性貧血
4.脂漏性皮膚炎

解答

解説
1.× 骨軟化症とは、主にビタミンD欠乏が原因で骨化の過程における石灰化障害が生じた結果、石灰化していない骨基質が増加し、骨強度が減弱することにより生じる。骨端線閉鎖前の小児期に発症したものをくる病という。

2.× ウェルニッケ脳症とは、ビタミンB1の欠乏によって引き起こされる疾患で、昏迷・運動失調・眼筋運動障害を3徴とする病態である。慢性的なアルコール依存症の患者に多く見られる。

3.〇 正しい。巨赤芽球性貧血は、ビタミンB12欠乏による疾患である。巨赤芽球性貧血とは、ビタミンB12あるいは葉酸の不足が原因の、骨髄に巨赤芽球が出現する貧血の総称である。偏食や過度の飲酒などを背景にビタミン欠乏症の患者がみられる。貧血の症状(動悸や息切れ、疲労感)の他に、萎縮性胃炎やハンター舌炎(味覚障害や舌の痛みを伴う炎症)など消化器系に異常をきたす。また、ビタミンB12欠乏症において、手足のしびれ、思考力の低下、性格変化などの神経症状もみられる。

4.× 脂漏性皮膚炎とは、皮脂の分泌が多い部位に炎症が起き、脂ぎったフケや鱗屑が生じる慢性的な皮膚炎である。原因として、皮膚に常在するカビ(真菌)の一種であるマラセチアの増殖と、その増殖によって生成される物質に対する皮膚の過敏反応と考えられている。また、ビタミンB2やビタミンB6の不足が関与することもある。

 

 

 

 

 

問題69 痔瘻を合併しやすいのはどれか。

1.過敏性腸症候群
2.急性細菌性腸炎
3.潰瘍性大腸炎
4.クローン病

解答

解説

痔瘻とは?

痔瘻(じろう)は、直腸や肛門周囲の感染によって瘻孔(ろうこう)が形成される病態で、クローン病などの慢性炎症性腸疾患でよく見られる合併症である。

1.× 過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群である。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられている。それぞれタイプが存在し、①下痢型(ストレスや緊張などのわずかなきっかけによって腹痛と激しい便意とともに下痢を生じる)、②便秘型(便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こる)、③混合型(便秘と下痢が交互に繰り返すもの)がある。

2.× 急性細菌性腸炎とは、細菌感染によって胃腸の粘膜に炎症(食中毒など)を起こし、発熱、下痢、腹痛、血便などの症状を引き起こす病気である。急性で短期間に治癒するため、腸の深部まで病変が及んで瘻孔が形成されることはほとんどない。

3.× 潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。

4.〇 正しい。クローン病は、痔瘻(肛門の中から外側の皮膚につながるトンネルのような管ができた状態)を合併しやすい。クローン病とは、小腸や大腸などの粘膜に、慢性的な炎症を引き起こす病気のことで、クローン病は10~20歳代で発症するケースが多く、主に小腸や大腸に炎症が現れる。現在のところ、はっきりした発症原因はよく分かっていない。一般的な症状は腹痛と下痢である。しかし、口から肛門まで全ての消化器官に炎症を引き起こす可能性があるため、症状は人によって大きく異なる。栄養の消化吸収障害、炎症による消耗に伴う必要エネルギーの増加などが起こるため、食事・栄養管理は重要である。したがって、クローン病の食事療法は高カロリー・低脂肪食・低残渣食が基本とされている。低残渣食とは、胃腸に負担をかけないように調整した食事のことで、日常の食事で胃腸にもっとも負担をかける成分は食物繊維で、それを制限し負担をかけやすい脂肪の多い物・刺激の強い物・極端に冷たい物などを控えた食事のことである。必要エネルギーの補給のほか、腸管の安静と食事性アレルゲンの除去を目的として栄養療法を行う。治療では小腸や大腸などの炎症や、過剰な免疫作用を抑える薬物療法が中心に行われる。

 

 

 

 

 

問題70 全身性エリテマトーデスについて誤っているのはどれか。

1.女性に多い。
2.白血球が増加する。
3.抗核抗体が陽性である。
4.蝶形紅斑を認める。

解答

解説

全身性エリテマトーデスとは?

全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。診断基準として、顔面紅斑、円板状皮疹、光線過敏症、口腔内潰瘍、抗核抗体陽性など4項目以上満たすと全身性エリテマトーデス(SLE)を疑う。

1.〇 正しい。女性に多い。平均すると男女比は1:9ほどで、10~30歳代の女性に好発する。したがって、ホルモンが関与していると考えられている。

2.× 白血球が「増加」ではなく減少する。なぜなら、全身性エリテマトーデスは、自己免疫反応が白血球を攻撃するため。したがって、血液中の白血球数が減少する。このほか、赤血球や血小板の減少も見られることが多く、全血球減少症が生じることがある。

3.〇 正しい。抗核抗体が陽性である。抗核抗体とは、主に膠原病など自己免疫疾患のスクリーニング検査として利用される。抗核抗体の陽性率は、全身性エリテマトーデスでは100%近く、シェーグレン症候群では70〜90%である。なお、抗核抗体の数値と病状・病態は一致しないことが多く、病状が軽くなっても陽性のままの症例も複数である。

4.〇 正しい。蝶形紅斑を認める。蝶形紅斑とは、顔面で、鼻を中心に頬まで左右対称に生じる鮮紅色ないし暗紫紅色のわずかに隆起した丘疹のことで、蝶が羽を広げたような形にみえる。原因として、全身性エリテマトーデ(SLE)に特徴的な所見である。

 

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