第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前36~40】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題36 痛覚について正しいのはどれか。

1.侵害受容器は特定の受容器構造をもつ。
2.表在性痛覚はⅡ群線維が伝える。
3.深部痛覚はⅣ群線維が伝える。
4.ヒスタミンは内因性鎮痛物質である。

解答

解説


1.× 侵害受容器は、特定の受容器構造を「もたない」。侵害受容器は、組織の損傷や有害な刺激を感知する自由神経終末であり、特定の受容器構造(例えば、触覚や圧覚を感知するような特別な構造)は持っていない。

2.× 表在性痛覚は、「Ⅱ群線維」ではなくⅢ群線維が伝える。なぜなら、表在性痛覚は、皮膚の鋭い痛みの要素が強いため。Ⅲ群線維は髄鞘を持ち、比較的速く信号を伝える神経線維である。一方、Ⅱ群線維は主に触覚や圧覚の伝達に関与する。

3.〇 正しい。深部痛覚は、Ⅳ群線維が伝える。なぜなら、深部痛覚は、筋肉や関節、内臓からの鈍い痛みを伝えるものの要素が強いため。Ⅳ群線維は、無髄の神経線維で、信号伝達が遅く、長く持続する痛み(鈍痛)を伝える。

4.× ヒスタミンは、「内因性鎮痛物質」ではなく痛みを引き起こす炎症メディエーターである。ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。ちなみに、内因性鎮痛物質とは、体内で作られる痛みをコントロールする物質でβ─エンドルフィン、エンケファリン、 ダイノルフィンなどがあげられる。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

 

 

 

 

問題37 塩分を多く摂取したときに血中濃度が高くなるのはどれか。

1.アルドステロン
2.コルチコステロン
3.パラソルモン
4.バソプレシン

解答

解説

副腎とは?

副腎皮質から、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などが分泌される。コルチゾールは、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

①球状帯:電解質コルチコイド(アルドステロン)を産生する。皮膜直下の薄い層で、皮質細胞が球状の塊を形成する。
②束状帯:糖質コルチコイド(コルチゾール)を産生する。最も厚い層で、細胞は縦に並び、細胞索を形成する。その間を洞様毛細血管が髄質に向かって走行する。
③網状帯:アンドロゲンを産生する。皮質の最深部で、網状をなす細胞索からなる。

1.× アルドステロンとは、腎臓に作用してナトリウムと水の再吸収を促進し、循環血漿量増加を促し血圧を上昇させる。アルドステロンが過剰に分泌されると、高血圧や低カリウム血症、筋力低下などがみられる。

2.× コルチコステロン(糖質コルチコイド)とは、糖質代謝、電解質代謝に影響を及ぼし、また免疫抑制作用、抗炎症作用などを示すホルモンである。

3.× パラソルモン(副甲状腺ホルモン)とは、副甲状腺から分泌され、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。

4.〇 正しい。バソプレシンは、塩分を多く摂取したときに血中濃度が高くなる。なぜなら、塩分(ナトリウム)を多く摂取すると、血液中のナトリウム濃度が上昇し、それを調整するためにバソプレシンの分泌(抗利尿作用)が促進されるため。バソプレシンは腎臓での水分の再吸収を増やし、ナトリウム濃度を薄めることで水分バランスを保つ。ちなみに、バソプレシンとは、下垂体後葉から分泌され、水の再吸収を促進する抗利尿作用・血圧上昇が起きる。尿を濃くし尿量を減らす作用がある。

 

 

 

 

 

問題38 疾患の分類と疾患名の組合せで正しいのはどれか。

1.遺伝性疾患:先天性梅毒
2.局所性疾患:敗血症
3.急性疾患:肺結核
4.小児疾患:ポリオ

解答

解説
1.× 先天性梅毒は、「遺伝性疾患」ではなく感染症である。梅毒とは、性感染症の一種で、梅毒トレポネーマという細菌が粘膜から感染することによって起こる。感染後3~6週間前後の潜伏期間後に性器、肛門、口などの感染部位にしこり、びらん、潰瘍などが現れるが、治療をしなくても一定期間が過ぎると最初の症状は消える。感染後数ヶ月すると手のひらや足の裏を含めた全身に赤い斑点(バラ疹)が広がる。

2.× 敗血症は、「局所性疾患」ではなく全身性疾患である。敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。

3.× 肺結核は、「急性疾患」ではなく慢性疾患である。なぜなら、肺結核は長期間にわたって進行することが多いため。肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

4.〇 正しい。ポリオは、小児疾患である。ポリオ〈急性灰白髄炎〉は、ポリオウイルスによって引き起こされ、伝播は主に経口(飲食物)を通じて感染するものである。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。

 

 

 

 

 

問題39 病原体が最も大きいのはどれか。

1.梅毒
2.エボラ出血熱
3.アニサキス症
4.クリプトコッカス症

解答

解説
1.× 梅毒の病原体(スピロヘータ:細菌)は、直径が0.1~0.2μm、長さが6~20μmである。ちなみに、梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。性行為や胎盤を通じて感染する。梅毒に特徴的な症状として、陰茎・外陰部を中心に生じる無痛性の硬結(指で触れることのできる硬い丘疹)やバラ疹(全身にできる淡い紅斑)などがあり、進行すると神経系の病変を生じて死に至ることもある。

2.× エボラ出血熱の病原体(エボラウイルス)は、短径が80〜100nm 、長径が700〜1,500nmである。ちなみに、エボラ出血熱とは、エボラウイルスによる感染症であり、エボラウイルスに感染すると、2~21日(通常は7~10日)の潜伏期の後、突然の発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、咽頭痛等の症状を呈す。その後、嘔吐、下痢、胸部痛、出血(吐血、下血)等の症状が現れる。

3.〇 正しい。アニサキス症は、病原体が最も大きい。アニサキス症の病原体(アニサキス)は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmである。ちなみに、アニサキス症とは、アニサキスという寄生虫が海産魚介類に寄生しており、ヒトがその魚介類を生(不十分な冷凍や加熱をしたものも含む)で食べることで引き起こされる食品媒介寄生虫症である。アニサキスとは、寄生虫(線虫)の一種である。アニサキス幼虫は、長さ2~3cm、幅は0.5~1mmくらいで、白色の少し太い糸のように見える。生の魚介類を摂取した際に、消化器系に寄生することがあり、アニサキス症と呼ばれる感染症を引き起こすことがある。

4.× クリプトコッカス症の病原体(クリプトコッカス:真菌)は、大きさ5~20μmである。クリプトコッカス症とは、クリプトコッカス属に属する酵母様真菌の感染を原因とする人獣共通感染症である。吸入により感染が成立し、典型的には肺を侵す。多くは、無症状で自然に消退する原発性肺病変がみられる。免疫能正常の患者であれば、孤立性の肺病変は、たとえ抗真菌療法を行わずとも、通常は播種を起こすことなく自然に治癒する。

 

 

 

 

 

問題40 異物を処理する機転はどれか。

1.器質化
2.化生
3.変性
4.膿瘍

解答

解説

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

1.〇 正しい。器質化は、異物を処理する機転である。
【異物の処理】
①排除とは、例えば咳やくしゃみのことで、気道内のゴミを気管支上皮の線毛運動などのことをさす。
②器質化とは、異物に対して周囲に肉芽組織が形成され、異物を吸収し、結合組織に置換すること。主にマクロファージ、好中球によって貪食され、酵素により分解される。しばしば、異物肉芽腫が形成される。
③異物肉芽腫とは、異物を取り囲んで形成される肉芽組織の一種で、マクロファージや異物型多核巨細胞が多数出現することをさす。
④被包とは、異物が肉芽組織から変化した線維組織によって取り囲まれることで、例えば陳旧性結核病変をさす。(※参考:「病理学総論4.組織の修復、再生と線維化」)

2.× 化生とは、分化・成熟した細胞が異なる形態や機能をもつ他の細胞に変化する現象である。したがって、扁平上皮化生とは、正常状態では線毛円柱上皮で覆われている気管支上皮が、扁平上皮で置き換えられる現象である。

3.× 変性とは、細胞や組織が病的な刺激を受けて、正常な機能を失った状態である。例えば、脂肪肝における脂肪変性などがある。

4.× 膿瘍とは、組織のなかに膿がたまった状態のことをいう。う蝕や歯周病など歯が原因で感染し炎症をおこしてできる場合がほとんどである。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)