第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前6~10】

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問題6 遺伝する疾患はどれか。

1.ハンセン病
2.アザラシ肢症
3.先天性風疹症候群
4.フェニルケトン尿症

解答

解説

先天性疾患とは?

先天性疾患とは、生まれたときの体の形や臓器の機能に異常がある疾患のことを指す。先天性疾患の原因としては、①染色体、②単一遺伝子、③多因子遺伝、④環境や催奇形性因子などがあげられる。その中でも、羊水検査で診断できるのは、先天性疾患のうち染色体・遺伝子異常に限られる。

1.× ハンセン病とは、らい病とも呼ばれ、らい菌が体内に入り(感染)、引き起こされる(発症)病気である。痒みや痛みなどの自覚症状のない治りにくい皮疹で、白斑、紅斑、環状紅斑、結節など多彩である。成人の場合、日常生活の中で感染することはない。また感染したとしても発症は非常にまれである。

2.× アザラシ肢症とは、アザラシのように見えることから名付けられた先天性疾患の1つである。特徴として、四肢の長骨がない、または短く、手または足が直接胴体についていることなどがあげられる。その他、内臓の配置異常等の広範囲の異常を引き起こしているものもある。原因としてはさまざまなものがあると考えられるが、1950年代後半(日本では1960年代前半)に大量発症した事例は、サリドマイドによる薬害が指摘されている。極端な場合は、無肢症とも呼ばれる。

3.× 先天性風疹症候群とは、風しんウイルスの胎内感染(垂直感染)によって先天異常を起こす感染症である。 臨床的特徴として、先天異常の発生は妊娠週齢と明らかに相関し、妊娠12週までの妊娠初期の初感染に最も多くみられ、20週を過ぎるとほとんどなくなる。

4.〇 正しい。フェニルケトン尿症は、遺伝する疾患である。フェニルケトン尿症とは、指定難病の一つの遺伝性疾患で、症状は、通常生後数か月から2歳頃までに脳の発達障害を来す。小頭症、てんかん、重度の精神発達遅滞、行動上の問題などの徴候と症状を示す。特有の尿臭(ネズミ尿臭、カビ臭)、赤毛、色白、湿疹がみられることがある。したがって、血液中にフェニルアラニンの高値が続くと、知的能力の発達が同年代の人に比べて低い水準となる知的障害の原因となる。

 

 

 

 

 

問題7 特定健康診査で必須の項目はどれか。

1.心電図
2.γ-GTP
3.眼所見
4.総コレステロール

解答

解説

特定健康診査とは?

特定健康診査とは、40~74歳までの医療保険加入者を対象に実施されるものである。特定健診で行う検査は、主に①身体計測(身長・体重・BMI・腹囲)、②血中脂質検査(中性脂肪・HDLコレステロール・LDLコレステロール)、③肝機能検査(GOT・GPT・γ-GTP)、④血糖検査(空腹時血糖・HbA1c)、⑤尿検査(尿糖・尿蛋白)などである。

1.× 心電図とは、心疾患の診断に使用される。心臓の動きを電気的な波形に現して記録し、それによって心臓の状況を把握できる。特に、心臓の活動の異常によってあらわれる不整脈の診断には不可欠の検査である。

2.〇 正しい。γ-GTPは、特定健康診査で必須の項目である。γ-GTPは、肝機能の評価に使われ、特に飲酒量が多い場合に数値が上昇しやすい指標である。したがって、γ-GTPは、特定健康診査(メタボリックシンドロームのリスク評価を目的とした健診)において、必須項目の一つです。

3.× 眼所見は、視力や眼底検査などであり、目の総合指標や糖尿病の合併症(糖尿病性網膜症)の評価として用いられる。ちなみに、糖尿病性網膜症とは、網膜の血管障害により生じ、進行すると視力低下をきたす。また、症状は不可逆性であり、進行した糖尿病網膜症は改善されない。わが国における失明原因の上位を占めている。

4.× 総コレステロールとは、脂質の一種でコレステロール骨格をもつ化合物である。血中脂質とは、血液中に含まれる脂肪分のことで、 LDL(悪玉)コレステロール、HDL(善玉)コレステロール、中性脂肪(トリグリセリド)などの総称となる。特定健診では、血中脂質検査として、総コレステロールでまとめるのではなく、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールと別々で検査結果を出す。

 

 

 

 

 

問題8 地球上から根絶された感染症はどれか。

1.コレラ
2.破傷風
3.痘そう
4.ポリオ

解答

解説
1.× コレラとは、コレラ菌に汚染された水や食物を摂取することにより感染する疾患である。潜伏期間は、12時間〜5日で、小腸で増殖し、腸毒素(コレラ毒素)を放出する。症状は、下痢・嘔吐、それらに伴う脱水症状を生じる。

2.× 破傷風とは、接触感染で、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

3.〇 正しい。痘そうは、地球上から根絶された感染症である。痘そうとは、天然痘とも呼ばれ、天然痘ウイルスによる感染症である。主に、人から人への接触(飛沫感染、接触感染)によって広がる。

4.× ポリオ〈急性灰白髄炎〉は、ポリオウイルスによって引き起こされ、伝播は主に経口(飲食物)を通じて感染するものである。ポストポリオ症候群は、ポリオの後遺症として60歳前後で筋力低下や手足のしびれ、疼痛などの症状が現れる障害である。ポリオウイルスによる急性灰白髄炎によって小児麻痺を生じた患者が、罹患後、数十年を経て新たに生じる疲労性疾患の総称であり、急性灰白髄炎後の症状には、筋力低下、筋萎縮、関節痛、呼吸機能障害、嚥下障害などの症状を呈する。筋力低下は急性期の小児麻痺で障害をみられなかった肢にも比較的高頻度で生じる。診断基準は、①ポリオの確実な既往があること、②機能的・神経学的にほぼ完全に回復し、15年以上も安定した期間を過ごせていたにも関わらずその後に疲労や関節痛、筋力低下などの症状が発現した場合である。

 

 

 

 

 

問題9 予防接種に生ワクチンを使用するのはどれか。

1.麻疹
2.百日咳
3.日本脳炎
4.肺炎球菌

解答

解説

(※図引用:「生ワクチンと不活化ワクチン」田辺三菱製薬様HPより)

MEMO

経口生ワクチン:ロタウイルス
注射生ワクチン:BCG、麻しん風しん、水痘(みずぼうそう)、ムンプス(おたふくかぜ)
注射不活化ワクチン:B型肝炎、小児用肺炎球菌、ヒブ、4種混合、日本脳炎、2種混合、子宮頚がん、インフルエンザ、髄膜炎菌

1.〇 正しい。麻疹は、予防接種に生ワクチンを使用する。風疹とは(三日ばしか)、風疹ウイルスに感染することで引き起こされる感染症である。感染から14〜21日(平均16〜18 日)の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節腫脹(ことに耳介後部、後頭部、頚部)が出現するが、発熱は風疹患者の約半数にみられる程度である。 また不顕性感染が15(~30)%程度存在する。

2.× 百日咳は、不活化ワクチンを使用する。百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。百日咳の原因菌は、百日咳菌である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6 カ月以下では死に至る危険性も高い。症状として①カタル期(1~2週間)、 ②痙咳期(4~6週間)、 ③回復期(2~3週間)に分類され、痙咳期には、新生児・乳幼児期では無呼吸発作を伴う。百日せきワクチンを含むDPT三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)あるいはDPT-IPV四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)接種はわが国を含めて世界各国で実施されており、その普及とともに各国で百日咳の発生数は激減している。しかし、ワクチン接種を行っていない人や接種後年数が経過し、免疫が減衰した人での発病はわが国でも見られており、世界各国でいまだ多くの流行が発生している。

3.× 日本脳炎は、不活化ワクチンを使用する。日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。

4.× 肺炎球菌は、不活化ワクチンを使用する。肺炎球菌とは、肺炎の原因となる細菌である。肺炎球菌の主な感染経路は、飛沫感染である。 肺炎球菌は、主に、子どもがもっているが、咳やくしゃみで広がり、抵抗力の低下した高齢者に感染した場合には、肺炎を起こし、肺炎球菌感染症は重症化しやすい。

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

 

 

 

 

問題10 我が国の人口統計について正しいのはどれか。

1.国勢調査は人口動態統計である。
2.死亡診断書は死因統計の基礎データとなる。
3.生後4週未満の死亡統計から乳児死亡率を算出できる。
4.死因統計はICFに従って分類される。

解答

解説

人口静態統計とは?

人口動態調査とは、厚生労働省が行う出生、死亡、婚姻、離婚および死産の全数を対象とした悉皆調査(しっかいちょうさ)、全数調査である。それらの事象(人口動態事象)を把握する調査である。ちなみに、悉皆調査とは、対象となるものを全て調べる調査の事である。 全数調査は、誤差なく正確な結果が得られる反面、膨大な費用や手間がかかるという欠点もある。

1.× 国勢調査は、「人口動態」ではなく人口静態統計である。国勢調査とは、日本に住んでいるすべての人を対象に5年に1回行う調査で、国内の人口や世帯の実態を把握するために行われる。男女の別、出生の年月、就業状態、従業地または通学地、世帯員の数、住居の種類、住宅の建て方などを調べる調査である。

2.〇 正しい。死亡診断書は死因統計の基礎データとなる。死亡診断書(死体検案書)は、 ①人間の死亡を医学的・法律的に証明する、厳粛かつ重要な文書であるだけでなく、②我が国の死因統計作成の基礎となっている。死因統計は基幹統計である人口動態統計として公表され、国民の保健・医療・福祉に関する行政の重要な基礎資料となっている。

3.× 「生後4週未満」ではなく生後1年未満の死亡統計から乳児死亡率を算出できる。
・乳児死亡率の求め方は、年間新生児死亡数(生後1年未満の死亡数)÷ 年間出生数である。ちなみに、生後4週未満のの死亡は、新生児死亡率である。

4.× 死因統計は、「ICF(国際生活機能分類)」ではなくICD(国際疾病分類)に従って分類される。国際疾病分類(ICD-10:疾病及び関連保健問題の国際統計分類)とは、異なる国や地域から、異なる時点で集計された死亡や疾病のデータの体系的な記録・分析・解釈および比較を行うため、世界保健機関憲章に基づき、世界保健機関(WHO)が作成した分類である。最新の分類は、10回目の改訂版として、1990年の第43回世界保健総会において採択されたものであり、ICD-10 (1990年版)と呼ばれている。

国際生活機能分類(ICF)

国際生活機能分類(ICF)は、障害者のみならず、すべての人を対象として、障害を「生活機能」というプラス面からみるように視点を転換した分類法である。この「生活機能」は、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3レベルに分類されたうえで、さらに「個人因子」「環境因子」の観点が加えられる。

 

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