第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前71~75】

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問題71 内分泌疾患と検査値の組合せで正しいのはどれか。

1.褐色細胞腫:血中カテコールアミン低値
2.アジソン病:血中ACTH低値
3.原発性アルドステロン症:血漿レニン活性低値
4.原発性甲状腺機能低下症:血中TSH低値

解答

解説
1.× 褐色細胞腫は、血中カテコールアミン「低値」ではなく高値(過剰分泌)となる。褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。

2.× アジソン病は、血中ACTH「低値」ではなく高値(過剰分泌)となる。アジソン病は、副腎皮質機能低下症ともいい、副腎皮質の機能が低下し、コルチゾールなどのホルモンが不足する。これに対して下垂体が反応し、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)の分泌が増加するため、血中ACTHは高値になる。ちなみに、アジソン病の特徴として、るいそう(やせ)と色素沈着などである。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

3.〇 正しい。原発性アルドステロン症は、血漿レニン活性低値となる。なぜなら、アルドステロンの作用で腎臓からナトリウムが再吸収され、血圧が上昇した結果、高血圧により腎臓からのレニン分泌が抑制されるため。ちなみに、原発性アルドステロン症とは、副腎皮質の自律的なアルドステロン産生(過形成、腺腫、または癌腫による)により引き起こされるアルドステロン症である。主な症状として、発作性の筋力低下、血圧上昇、および低カリウム血症がある。 健常状態において副腎からのアルドステロン分泌は、体液量の低下を感知して腎臓から分泌されるレニンの制御を受け、塩分を体内に保持し、血圧を維持するはたらきを持つ。 レニンが低値にもかかわらず副腎からアルドステロンが過剰分泌される状態を確認することで、この病気と診断される。

4.× 原発性甲状腺機能低下症は、血中TSH「低値」ではなく高値(過剰分泌)となる。なぜなら、原発性甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモン(T3、T4)の分泌が低下した結果、下垂体が代償的にTSH(甲状腺刺激ホルモン)を多く分泌するため。甲状腺機能低下症とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

下垂体前葉のホルモン

下垂体前葉は、成長ホルモン(GH)・プロラクチン・副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)などである。

 

 

 

 

 

問題72 慢性腎不全の検査所見で誤っているのはどれか。

1.糸球体ろ過値(GFR)の上昇
2.血清クレアチニン値の上昇
3.高カリウム血症
4.正球性正色素性貧血

解答

解説

慢性腎不全とは?

 慢性腎不全(慢性腎臓病とも)は、腎臓の濾過機能が数ヶ月〜数年をかけて徐々に低下していく病気である。その結果血液の酸性度が高くなり、貧血が起き、神経が傷つき、骨の組織が劣化し、動脈硬化のリスクが高くなる。その原因として最も多いのは糖尿病で、次に多いのは高血圧である。尿や血液、腹部超音波検査やCTなどの検査で腎臓機能に異常が見られ、その状態が3カ月以上続いている場合に診断される。

慢性腎不全(CKD)に対する治療は、①生活習慣の改善、②食事療法が重要である。
①生活習慣の改善:禁煙・大量飲酒の回避・定期的な運動・ワクチン接種による感染症の予防・癌スクリーニングなど。
②食事療法:十分なエネルギー摂取量を確保しつつ、蛋白質・塩分・リンの制限。

1.× 糸球体ろ過値(GFR)は、「上昇」ではなく低下する。なぜなら、慢性腎不全では、腎機能が低下するため。推算糸球体濾過量〈eGFR〉は、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示しており、この値が低いほど腎臓の働きが悪いということになる。推算糸球体濾過量〈eGFR〉は、①正常(G1:90以上)、②軽度低下(G2:60〜89)、③中等度低下(G3a:45〜59、G3b:30〜44)、④高度低下(G4:15〜29)、⑤末期腎不全(G5:15以下)に分類される。

2.〇 正しい。血清クレアチニン値の上昇は、慢性腎不全の検査所見である。血清クレアチニンは、筋量に影響を受け、筋肉に含まれているタンパク質の老廃物である。本来は、尿素窒素と同様に腎臓の糸球体で濾過され尿中に排泄されるが、腎臓の機能が低下すると尿中に排泄される量が減少し、血液中にクレアチニンが溜まる。

3.〇 正しい。高カリウム血症は、慢性腎不全の検査所見である。高カリウム血症とは、血清カリウム濃度が5.5mEq/Lを上回ることである。通常は腎臓からのカリウム排泄の低下またはカリウムの細胞外への異常な移動によって発生する。原因としては、①カリウム摂取の増加、②腎臓からのカリウム排泄を障害する薬剤、③急性腎障害または慢性腎臓病などで起こりえる。症状として、悪心、嘔吐などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などが現れる。

4.〇 正しい。正球性正色素性貧血は、慢性腎不全の検査所見である。なぜなら、慢性腎不全では、エリスロポエチン(赤血球産生を促すホルモン)の分泌が低下するため。腎臓の機能低下によって赤血球の産生が減り、正球性正色素性の貧血(腎性貧血)を引き起こす。

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

 

 

 

 

 

問題73 社会的リハビリテーションに含まれる内容はどれか。

1.廃用症候群の予防
2.療育
3.公共施設のバリアフリー
4.保護雇用

解答

解説

リハビリテーションの種類

①医学的リハビリテーション、②教育リハビリテーション、③職業リハビリテーション、④社会的リハビリテーション

1.× 廃用症候群の予防は、医学的リハビリテーションに該当する。医学的リハビリテーションとは、病院や診療所などの医療機関で行われるリハビリテーションの一種で、身体機能を改善することを目的として行われる。

2.× 療育は、教育リハビリテーションに該当する。教育リハビリテーションとは、障害のある児童や人の能力を向上させ、潜在能力を開発し、自己実現を図れるように支援することを目的にした支援活動である。

3.〇 正しい。公共施設のバリアフリーは、社会的リハビリテーションに該当する。社会リハビリテーションとは、社会生活力を高めることを目的としたプロセスである。 社会生活力とは、様々な社会的な状況の中で、自分のニーズを満たし、一人ひとりにとって可能な最も豊かな社会参加を実現する権利を行使する力を意味する。

4.× 保護雇用は、職業リハビリテーションに該当する。職業リハビリテーションとは、障害者が適当な雇用に就き、それを継続し、かつ、それにおいて向上することができるようにすること及びそれにより障害者の社会への統合又は再統合を促進することを目的とされているリハビリテーションである。

廃用症候群とは?

 廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

 

 

 

 

 

問題74 リハビリテーションチームを構成するメンバーで義肢装具の処方を行う職種はどれか。

1.医師
2.看護師
3.理学療法士
4.義肢装具士

解答

解説
1.〇 正しい。医師は、リハビリテーションチームを構成するメンバーで義肢装具の処方を行う職種である。装具は、病院で診察を受け、医師より製作所に処方が出され、義肢装具士が義肢・装具を製作する。

2.× 看護師とは、医師の診察にもとづき、診療や治療の補助を行い、病気やケガなどで不自由な生活を送る患者さんに対して、看護を提供する職業である。また、医師の補助、患者さんと医療スタッフ間のコミュニケーションの円滑、患者さんの相談や指導などといった心のケアを行う。

3.× 理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。つまり、関節可動域や筋力の向上などが役割である。

4.× 義肢装具士とは、法律上、「医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする者」と定められ、医師の処方に従い患者さんの採型や採寸を行い、これを元に義肢装具を製作して、病院などで適合を行う。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題75、問題76の問いに答えよ。
「7歳の女児。主訴は歩行異常。トレンデレンブルグ徴候がみられた。」

問題75 罹患関節の種類はどれか。

1.鞍関節
2.ラセン関節
3.臼状関節
4.楕円関節

解答

解説

トレンデレンブルグ徴候とは?

トレンデレンブルグ徴候とは、患肢で片脚立ちをしたとき、健肢側の骨盤が下がる現象である。中殿筋が麻痺や筋力低下などの機能不全が生じているときに、患側での立脚期において健側の骨盤が下がる現象である。

1.× 鞍関節は、母指手根中手(CM)関節、胸鎖関節である。

2.× ラセン関節は、腕尺関節、距腿関節、膝関節である。ただし、膝関節は、顆状関節という文献もある。

3.〇 正しい。臼状関節は、罹患関節の種類である。トレンデレンブルグ徴候がみられていることから、股関節が罹患関節と考えられる。ちなみに、臼状関節は、股関節のみである。

4.× 楕円関節(顆状関節)は、橈骨手根関節、手根中央(尺側)関節、顎関節、中手指節関節(MP関節)である。

 

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