第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後116~120】

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問題116 次の文で示す患者の病証に対する治療穴で最も適切なのはどれか。
「65歳の男性。1週間前に食べ過ぎて胃のもたれ感の後、右上の奥の歯茎が腫れて痛むようになってきた。腹診では上腹部に緊張と熱感がみられ、右関上の脈は滑数。舌質はやや紅、中央に黄厚賦苔。」

1.腎経の栄火穴
2.胃経の栄水穴
3.大腸経の栄水穴
4.脾経の栄火穴

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・1週間前:食べ過ぎて胃のもたれ感
・その後:右上の奥の歯茎が腫れて痛む。
・腹診では上腹部に緊張と熱感がみられ、右関上の脈は滑数。
・舌質はやや紅、中央に黄厚賦苔
→本症例は、食滞(足の陽明胃経の不調)が疑われる。足の陽明胃経は、顔面神経麻痺、喉や膝の皿が腫れたり痛んだりする。胃腸が張る。気衝~髀関、足の甲と流注上に痛みや熱感が出る。食べても食べてもお腹が空き、濃黄色の小便が出る。びっくりして不安な状態になる。独り塞ぎこんで窓を閉め家の中に閉じこもっている。高い所に登って歌を歌いだす。羞恥心を無くしたように裸になって走り出す。また、六部定位脈診によると、脈が右関上に浮滑である場合、胃である。

1.× 腎経の栄火穴は、然谷である。足の少陰腎経である然谷(※読み:ねんこく)は、足内側、舟状骨粗面の下方、赤白肉際に位置する。

2.〇 正しい。胃経の栄水穴は、本症例の病証に対する治療穴である。胃経の栄水穴は、内庭である。足の陽明胃経である内庭(※読み:ないてい)は、足背、第2~3足指間、みずかきの後縁、赤白肉際に位置する。

3.× 大腸経の栄水穴は、二間である。手の陽明大腸経である二間(※読み:じかん)は、示指、第2中手指節関節橈側の遠位陥凹部、赤白肉際に位置する。

4.× 脾経の栄火穴は、大都である。足の太陰脾経である大都(※読み:だいと)は、足の第1指、第1中足指節関節の遠位陥凹部、赤白肉際に位置する。

 

 

 

 

 

問題117 次の文で示す患者の病証に対する治療方針で最も適切なのはどれか。
「40歳の男性。主訴は肩こり。人間関係のトラブルから徐々に自覚。頸肩部の動作時痛や牽引感はないが、肩の張りが持続する。ひどくなると咽に何かがつかえた感じがする。」

1.肝気を疏通し気滞を除く。
2.腎気を補益する。
3.陽明経を疏通する。
4.肝腎経を補う。

解答

解説

本症例のポイント

・40歳の男性(主訴:肩こり)。
・人間関係のトラブルから徐々に自覚。
・頸肩部の動作時痛や牽引感はないが、肩の張りが持続する。
・ひどくなると咽に何かがつかえた感じがする。
→本症例は、肝の不調(肝鬱気滞)が疑われる。肝鬱気滞は、精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、脈弦、梅核気などがあらわれる。

1.〇 正しい。肝気を疏通し気滞を除くことが、本症例の病証に対する治療方針である。なぜなら、本症例は、肩こりや咽喉のつかえ感があるため、肝鬱気滞が疑われるため。肝気を疏通させ、気滞を除く必要がある。

2.× 腎気を補益するより優先されるものが他にある。腎気は、主に体力や精力の減退、老化に関連する。腎気虚は、①腎気不固(遺尿、頻尿、流産・早産、倦怠感、脈沈弱など)、②腎不納気(呼吸困難、息切れ、呼多吸少、倦怠感、脈沈弱など)がある。

3.× 陽明経を疏通するより優先されるものが他にある。陽明病の症状として、裏実熱証、発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈などがあげられる。足の陽明胃経:顔面神経麻痺、喉や膝の皿が腫れたり痛んだりする。胃腸が張る。気衝~髀関、足の甲と流注上に痛みや熱感が出る。食べても食べてもお腹が空き、濃黄色の小便が出る。びっくりして不安な状態になる。独り塞ぎこんで窓を閉め家の中に閉じこもっている。高い所に登って歌を歌いだす。羞恥心を無くしたように裸になって走り出す。

4.× 肝腎経を補うより優先されるものが他にある。肝腎陰虚とは、肝・腎が陰虚状態であることをさす。陰虚(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)などである。

 

 

 

 

 

問題118 経脈病証で先に手の陽明経が病み、次に手の太陰経が病んだ場合、原絡配穴法の原則に従った選穴で正しい組合せはどれか。

1.太淵:偏歴
2.偏歴:合谷
3.合谷:列欠
4.列欠:太淵

解答

解説

原絡配穴法とは?

原絡配穴法は、主に病んでいる経脈の原穴と、それに関連する表裏の経脈の絡穴を組み合わせて治療する方法である。
原穴:経絡における気の流れを調整する穴、臓腑や経絡の病証に対して行う。
絡穴:表裏関係にある別の経絡に影響を与え、その経絡の病証を改善を図る。

【本症例の場合】
・主:手の陽明経(大腸経)が病み、
・客:次に手の太陰経(肺経)が病んだ。
→大腸経の原穴と肺経の絡穴を選ぶ。

1.× 太淵:偏歴
肺経の原穴である太淵は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部である。
大腸経の絡穴である偏歴は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、手関節背側横紋の上方3寸である。

2.× 偏歴:合谷
大腸経の絡穴である偏歴は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、手関節背側横紋の上方3寸である。
大腸経の原穴である合谷は、手背、第2中手骨中点の橈側である。

3.〇 正しい。合谷:列欠は、経脈病証で先に手の陽明経が病み、次に手の太陰経が病んだ場合、原絡配穴法の原則に従った選穴である。
大腸経の原穴である合谷は、手背、第2中手骨中点の橈側である。
肺経の絡穴である列欠は、前腕橈側、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間、手関節掌側横紋の上方1寸5分である。

4.× 列欠:太淵
肺経の絡穴である列欠は、前腕橈側、長母指外転筋腱と短母指伸筋腱の間、手関節掌側横紋の上方1寸5分である。
肺経の原穴である太淵は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部である。

 

 

 

 

 

問題119 次の文で示す患者の病証に対する治療方針で最も適切なのはどれか。
「24歳の男性。主訴は頭から上の痒み。以前からアトピー性皮膚炎による痒みがあったが、症状の変化が激しくなってきた。悪化すると滲出性になる。普段から甘いものを好み、過食すると悪化する。舌苔は白膩、脈は滑。」

1.風寒の邪を除く。
2.運化作用を高め、湿を化す。
3.血を養い、燥を潤す。
4.血熱を除く。

解答

解説

本症例のポイント

・24歳の男性(主訴:頭から上の痒み)。
・以前:アトピー性皮膚炎による痒み。
・症状の変化が激しくなってきた。
・悪化すると滲出性になる
・普段から甘いものを好み、過食すると悪化する。
・舌苔は白膩、脈は
→本症例は、アトピー性皮膚炎に伴う痒みと湿潤性の症状(滲出性)、甘いものの過食による悪化、舌苔が白膩(湿がある状態)で、脈が滑(湿や痰がある状態)などの症状から、体内の湿邪脾胃の運化障害が関与(風湿)している可能性が高い。

【脾の生理】
①運化(飲食物を水穀の精微に変化させ、心・肺に運ぶ)
②統血(血が脈中から漏れ出るのを防ぐ(気の固摂作用))
※脾は気血生成の源、生痰の源といわれる。

1.× 風寒の邪を除く。
風寒は、急性の風邪や寒さによる外感病(寒気、発熱など)に関連する。風寒の侵襲のことを風寒反肺という。悪寒、発熱、頭痛、咳嗽、無汗、鼻閉、鼻汁、脈浮緊など。

2.〇 正しい。運化作用を高め、湿を化すことは、本症例の病証に対する治療方針である。本症例は、アトピー性皮膚炎に伴う痒みと湿潤性の症状(滲出性)、甘いものの過食による悪化、舌苔が白膩(湿がある状態)で、脈が滑(湿や痰がある状態)などの症状から、体内の湿邪脾胃の運化障害が関与(風湿)している可能性が高い。

3.× 血を養い、燥を潤す。
これは、血虚や燥症に関連する治療方針である。ちなみに、燥邪とは、乾燥による身体への悪影響を指す。

4.× 血熱を除く。
これは、血熱に関連する治療方針である。血熱とは、発熱、出血、五心煩熱、盗汗、口渇、不眠、心煩、潮熱、皮膚症状(→発赤、発疹、痒み)、精神不安などを指す。

六淫とは?

風邪:陽性の邪気で軽揚性、開泄性、遊走性があり、他の外邪の先導役となる(百病の長)。
寒邪:陰性の邪気で寒冷性、凝滞性、収引性があり、陽気を損傷しやすい。
暑邪(熱邪):陽性の邪気で夏季のみに出現し、炎熱性、昇散性がある。気・津液を損傷しやすく、湿邪を伴う。
湿邪:陰性の邪気で重濁性、粘滞性、下注性がある。脾を損傷しやすい。気機を滞らせやすい。
燥邪:陽性の邪気で乾燥性があり、肺を損傷しやすい。秋に現れることが多い。
火邪(熱邪):陽性の邪気で炎上性があり、気・津液を損傷する。また、生風、動血という特徴も持つ。

 

 

 

 

 

問題120 季節に応ずる脈状で、8月下旬に鍼灸治療を行う場合、難経十五難に基づいて健康と判断するのはどれか。

1.やや弦
2.やや鈎
3.やや石
4.やや毛

解答

解説

MEMO

難経十五難に基づいて健康と判断できる正常な脈
①春:弦、②夏:鈎、③秋:毛、④冬:石

1.× やや弦は、春先である。

2.× やや鈎は、初夏である。

3.× やや石は、初冬である。

4.〇 正しい。やや毛は、季節に応ずる脈状で、8月下旬に鍼灸治療を行う場合、難経十五難に基づいて健康と判断する。8月下旬()であるため、が該当する。

 

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