第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後151~155】

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きゅう理論試験問題(問題151~160)
(きゅう師国家試験を受験する者が解答すること。)

問題151 強刺激を与える目的で行う灸法で正しいのはどれか。

1.夾雑物が多い艾を用いる。
2.軟らかくひねる。
3.壮数を少なくする。
4.小さな艾炷を用いる。

解答

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

良質艾とは、不純物が少なく、点火しやすく、熱感がやわらかい、香りがよい、煙や灰が少ない艾のことである。

1.〇 正しい。夾雑物(※読み:きょうざつぶつ、ざんさぶつ)が多い艾を用いることは、強刺激を与える目的で行う灸法である。なぜなら、夾雑物が多いと、燃焼時の熱感が強くなるため。ちなみに、夾雑物とは、その物の中に異質な物が入り混じることである。

2~4.× 軟らかくひねる/壮数を少なくする/小さな艾炷を用いる。
これらは、刺激量を小さくする効果がある。刺激量を決める要因として、灸の場合、①艾炷の大小、②ひねりの硬軟、③数、④施灸法(※刺激強:艾炷が大きい、ひねりが硬い、壮数が多い)などがあげられる。

艾の良否鑑別

良質艾:芳香、手触り良く柔らかい、線維が細かい、夾雑物が少ない、淡黄白色、煙と灰が少ない、熱感が緩和(燃焼温度が低い)、燃焼時間が短い、よく乾燥している、など

粗悪艾:青臭い、手触りが悪く固い、線維が粗い、夾雑物が多い、黒褐色、煙と灰が多い、熱感が強い(燃焼温度が高い)、燃焼時間が長い、湿気を帯びている、など

 

 

 

 

 

問題152 月経異常に対する灸療法で最も適応となるのはどれか。

1.40歳頃から月経量が多く、月経痛とともに月経血中に血塊が混ざる。
2.13歳で初経を迎え、2年後から月経痛に悩んでいる。
3.28歳で月経痛が発症し、月経ごとに数日間強い下腹部痛を伴う。
4.頻発月経で3周期以上無排卵月経が続いている。

解答

解説

論文報告としてはないものの,「教科書に記載されている」「すでに一般的に知られている」といった副作用や禁忌事項(=グッドプラクティスポイント:GPP)

・瞑眩(倦怠感の一つ)
・眠気など全身性
・刺鍼時痛
・皮下出血
禁忌事項:①腫瘍,潰瘍や浮腫などがある局所には治療を行わない。②胸部や背部など,気胸を来す可能性がある部位には行わない。③凝固異常のある患者は避ける。

(※引用:「針灸治療」)

1.× 40歳頃から月経量が多く、月経痛とともに月経血中に血塊が混ざる。
この場合、「鍼療法」ではなく病院への紹介案件である。なぜなら、子宮筋腫が疑われるため。子宮筋腫とは、子宮を構成している平滑筋という筋肉組織由来の良性腫瘍で、比較的若い方から閉経後の方まで高頻度に見られる疾患である。月経量が多い、月経痛、血塊が混ざるといった症状が見られる。

2.〇 正しい。13歳で初経を迎え、2年後から月経痛に悩んでいる
この場合、続発性無月経の可能性が高く、灸療法の適応となる。続発性無月経とは、これまであった月経が3か月以上停止したものをいう。主な原因として、妊娠、授乳、急激なダイエット、肥満、強いストレスや環境の変化などによるホルモンバランスの乱れといわれている。女性ホルモンをコントロールする脳下垂体の腫瘍や他の病気、早発閉経が原因の場合もある。

3.× 28歳で月経痛が発症し、月経ごとに数日間強い下腹部痛を伴う。
この場合、「鍼療法」ではなく病院への紹介案件である。なぜなら、子宮内膜症が疑われるため。子宮内膜症とは、子宮の内側の壁を覆っている子宮内膜が、子宮の内側以外の部位に発生する病気である。腰痛や下腹痛、性交痛、排便痛などが出現する。経口避妊薬を内服することによりエストロゲンの総量が低く抑えられ、排卵を抑制し、子宮内膜症の症状を軽減し、子宮内膜症予防にもなる。なお、乳癌や子宮内膜癌などのエストロゲン依存性悪性腫瘍や子宮頸癌及びその疑いのある場合は腫瘍の悪化あるいは顕性化を促すことがあるため禁忌となっている。

4.× 頻発月経で3周期以上無排卵月経が続いている。
この場合、「鍼療法」ではなく病院への紹介案件である。なぜなら、なぜなら、多嚢胞性卵巣症候群が疑われるため。多嚢胞性卵巣症候群とは、「両側の卵巣が腫大・肥厚・多嚢胞化し、月経異常や不妊に多毛・男性化・肥満などを伴う症候群」と定義され、卵子が入った卵胞の成長に時間がかかり、排卵が起こりにくくなる病気である。多嚢胞性卵巣症候群は男性ホルモンが多く作られてしまうことで発症しやすい。この具体的な原因はよく分かっていないが、血糖値を下げるホルモンのインスリンが影響していると考えられている。【診断基準】①月経異常(月経不順や無月経)、②超音波検査で卵巣に卵胞がたくさん連なってみえること(多嚢胞性卵巣)、③血中男性ホルモン高値または黄体形成ホルモンが高値で、卵胞刺激ホルモンが正常。

月経の種類

無月経(月経がない状態)には①原発性、②続発性、③その他のものがある。

①原発性無月経:正常な成長と第二次性徴が認められる患者において15歳までに月経が起こらないことである。しかし、13歳までに月経が開始せず、思春期の徴候(例、何らかのタイプの乳房の発達)がみられない場合は、原発性無月経の評価を行うべきである。

②続発性無月経:規則的な月経周期の確立後に6カ月以上または月経周期で3周期以上の期間、月経がない状態である。しかし、以前の周期が規則的であった患者では月経が3カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われ、以前の周期が不規則であった患者では月経が6カ月以上なければ続発性無月経の評価が行われる。

③その他:解剖学的原因(妊娠を含む)、慢性無排卵、卵巣不全など

(※参考:「無月経」MSDマニュアルプロフェッショナル版様より)

 

 

 

 

 

問題153 温筒灸を行った際に、第Ⅱ度熱傷予防のため、艾炷を取り除く目安はどれか。

1.フレアが出始めた時点
2.温かさを感じ始めた時点
3.ヒリヒリとした熱さを感じ始めた時点
4.我慢することができなくなった時点

解答

解説
1.× フレアが出始めた時点は明確に判断できない。なぜなら、フレア現象は、目視や自覚症状で判断できないため。フレア現象とは、お灸の熱刺激によって細胞レベルで微細な火傷が起こり、神経から脳に「ここにケガがあるから治すために血液を送ってください」と連絡が入ることで起こる軸索反射のこと。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

2.× 温かさを感じ始めた時点は、艾炷を取り除く目安として早すぎる。艾炷を取り除く目安として早すぎると、温筒灸を行った際の効果が不十分である。

3.〇 正しい。ヒリヒリとした熱さを感じ始めた時点は、温筒灸を行った際に、第Ⅱ度熱傷予防のため、艾炷を取り除く目安である。なぜなら、Ⅰ度熱傷の目安として、「ヒリヒリとした痛みや赤みが現れ、表皮層までのやけど」であるため。

4.× 我慢することができなくなった時点は、明確に判断できない。なぜなら、我慢できる患者の程度によって、さらなる深達度のやけどになりかねないため。

熱傷の分類

Ⅰ度:【深さ】表皮【症状】発赤、熱感、軽度の腫脹と疼痛、水泡形成(ー)【治癒】数日間、瘢痕とはならない。
Ⅱ度:【深さ】真皮浅層(SDB)【症状】強い疼痛、腫脹、水泡形成(水泡底は赤色)【治癒】1~2週間、瘢痕再生する。
Ⅱ度:【深さ】真皮深層(DDB)【症状】水泡形成(水泡底は白色、もしくは破壊)、知覚は鈍麻【治癒】3~4週間、瘢痕残す、感染併発でⅢ度に移行。
Ⅲ度:【深さ】皮下組織【症状】疼痛(ー)、白く乾燥、炭化水泡形成はない【治癒】一か月以上、小さいものは瘢痕治癒、植皮が必要。

 

 

 

 

 

問題154 WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」で有痕灸を避けることとしている部位にある経穴はどれか。

1.巨髎
2.淵腋
3.環跳
4.丘墟

解答

解説

禁忌の部位

臓器や重要組織を損傷するあるいはその危険性が極めて高い部位、または病状を悪化させる可能性がある部位への施術は行ってはならない。
①新生児の大泉門・小泉門、外生殖器、乳頭、臍部、眼球、化膿部、急性炎症の患部、大血管、体腔内臓器、中枢神経、悪性腫瘍部に対して、刺鍼をしてはならない。
顔面部、外生殖器、乳頭、臍部、化膿部、悪性腫瘍部、急性炎症の患部、皮膚病の患部に対して、直接灸(有痕灸)をしてはならない。
③上記部位の近傍に施術する場合も、特段の注意を払うべきである。

(※引用:「鍼灸安全対策ガイドライン2020 年版」公益社団法人 全日本鍼灸学会より)

1.〇 正しい。巨髎は、WHOの「鍼の基礎教育と安全性に関するガイドライン(1999年)」で有痕灸を避けることとしている部位にある経穴である。巨髎(※読み:こりょう)は、顔面部、瞳孔線上、鼻翼下縁と同じ高さに位置する。

2.× 淵腋(※読み:えんえき):側胸部、第4肋間、中腋窩線上に位置する。

3.× 環跳(※読み:かんちょう):殿部、大転子の頂点と仙骨裂孔を結ぶ線上、大転子の頂点から1/3に位置する。別説:大腿部、大転子の頂点と上前腸骨練の間、大転子の頂点から1/3に位置する。

4.× 丘墟(※読み:きゅうきょ):足関節前外側、長指伸筋腱外側の陥凹部、外果尖の前下方に位置する。外果尖の前下方にあたる。

有痕灸の種類

透熱灸:良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

焦灼灸:イボ、ウオノメ、タコなどに用いる灸法。施灸部の皮膚、組織を破壊する。タール成分(カテコール)の作用がある。

打膿灸(弘法の灸):小指~母指頭大程度の艾炷を直接施灸して火傷を作り、膏薬を貼付して化膿を促す灸法。小児や虚弱者には不適である。

 

 

 

 

 

問題155 知熱灸を行う際に最も注意を要するのはどれか。

1.認知症
2.関節リウマチ
3.骨粗鬆症
4.過敏性腸症候群

解答

解説

知熱灸とは?

無痕灸のひとつである知熱灸とは、半米粒~米粒大の艾炷に点火し、患者の気持ちの良い所で消火もしくは取り除く方法である。8割燃焼による八分灸である。

1.〇 正しい。認知症は、知熱灸を行う際に最も注意を要する。なぜなら、知熱灸には、患者が気持ちいいところで取り除く工程があるため。したがって、認知症患者の場合、その工程を覚えられなかったり、思い出せなかったりするため、安全な実施が困難である。

2.× 関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。

3.× 骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい。

4.× 過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群である。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられている。それぞれタイプが存在し、①下痢型(ストレスや緊張などのわずかなきっかけによって腹痛と激しい便意とともに下痢を生じる)、②便秘型(便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こる)、③混合型(便秘と下痢が交互に繰り返すもの)がある。

 

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