第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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問題156 第12胸神経から第2腰神経の皮膚分節領域に関連痛が現れる臓器はどれか。

1.心臓
2.肝臓
3.胆囊
4.腎臓

解答

解説

関連痛とは?

関連痛とは、神経線維の走行の関係で生じる痛みである。つまり、原因とは離れた部位に感じる痛みである。心筋梗塞では左肩・上腕部痛などとして自覚される。

(※引用:「イラスト素材:関連痛」illustAC様HPより)

1.× 心臓は、第3頸神経から第4頸神経、第2胸神経から第8胸神経(主に左)の皮膚分節領域に現れやすい。

2~3.× 肝臓/胆囊は、第3頸神経から第4頸神経、第7胸神経から第10胸神経(主に右)の皮膚分節領域に現れやすい。

4.〇 正しい。腎臓は、第12胸神経から第2腰神経の皮膚分節領域に関連痛が現れる臓器である。

 

 

 

 

 

問題157 温度覚について正しいのはどれか。

1.温受容器の形態は特定の受容器構造をもつ。
2.熱刺激による興奮はⅡ群線維によって伝達される。
3.2次求心性ニューロンの細胞体は延髄の後索核にある。
4.右下肢の熱刺激の興奮は左の大脳皮質の体性感覚野に伝わる。

解答

解説

1.× 温受容器の形態は特定の受容器構造を「持たない」。温受容器は、自由神経終末であり、特定の複雑な受容器構造を持たない。

2.× 熱刺激による興奮は、「Ⅱ群線維」ではなくⅢ群線維やⅣ群線維によって伝達される。熱刺激や温度覚は、主に細径のC線維(無髄神経線維)やAδ線維(有髄神経線維)によって伝達される。ちなみに、Ⅱ群線維は、主に触覚や圧覚などを伝達する線維である。

3.× 2次求心性ニューロンの細胞体は、「延髄の後索核」ではなく脊髄の後角にある。後索核は、主に触覚や振動覚などを伝える後索路である。
・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野の経路をたどる。
・深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路は、後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野をたどる。

4.〇 正しい。右下肢の熱刺激の興奮は、左の大脳皮質の体性感覚野に伝わる。なぜなら、交叉するため。
・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野の経路をたどる。

 

 

 

 

 

問題158 透熱灸によるヒスタミンの分泌に直接関与するのはどれか。

1.好中球
2.形質細胞
3.肥満細胞
4.マクロファージ

解答

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

発痛物質には、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、アセチルコリン、プロスタグランジンなどがある。

1.× 好中球とは、白血球の中で一番多く、細菌免疫の主役である。マクロファージが好中球に指令し、好中球は活性化・増殖する。末梢血白血球の40~70%を占め、生体内に細菌・真菌が侵入すると、まず好中球が感染部位に遊走し、菌を貧食する。

2.× 形質細胞とは、B細胞が成熟したもので、抗体を作って自然免疫の働きを助ける。つまり、体に侵入したウイルスや細菌などの異物を排除する作用を持つ蛋白質(抗体)を産生する。

3.〇 正しい。肥満細胞は、透熱灸によるヒスタミンの分泌に直接関与する。ヒスタミンは、透熱灸の施灸局所で発痛を増強する。ヒスタミンとは、酸素が不足すると細胞から放出される「発痛物質」の1つである。また、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

4.× マクロファージとは、単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

 

 

 

 

 

問題159 施灸によりアラキドン酸から産生される物質が引き起こす作用はどれか。

1.血管を収縮する。
2.心拍数を減少する。
3.血栓の発生を防止する。
4.発痛物質の作用を増強する。

解答1・3・4

解説

アラキドン酸から産生される物質

ロイコトリエン:白血球の活性化、気管支平滑筋収縮、血管拡張、血管透過性の亢進。
プロスタグランジン:ブラジキニンの発痛作用増強、血管拡張、子宮や気管支の平滑筋収縮、血小板の凝集。
トロンボキサン:血小板の凝集、血管や気管支の平滑筋収縮。

1.〇 正しい。血管を収縮することは、施灸によりアラキドン酸から産生される物質が引き起こす作用である。これは、トロンボキサンの作用である。

2.× 心拍数を「減少」ではなく増加する。なぜなら、ロイコトリエン、プロスタグランジンの作用により血管が拡張するため。血管が拡張すると、血圧が下がるため、血圧を一定に保つために心拍数が上昇する。

3.〇 正しい。血栓の発生を防止することは、施灸によりアラキドン酸から産生される物質が引き起こす作用である。これは、トロンボキサンの作用による。

4.〇 正しい。発痛物質の作用を増強することは、施灸によりアラキドン酸から産生される物質が引き起こす作用である。これは、プロスタグランジンの作用による。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

 

 

 

 

問題160 透熱灸刺激では起こらない鎮痛機序はどれか。

1.下行性痛覚抑制系
2.広汎性侵害抑制調節
3.ゲートコントロール説に基づく鎮痛系
4.血流改善による発痛物質の洗い流しに基づく鎮痛

解答

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

発痛物質には、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、アセチルコリン、プロスタグランジンなどがある。

1.× 下行性痛覚抑制系とは、脳幹部から神経線維が脊髄後角に下行し、そこで痛みの伝達を遮断するシステムである。下行性疼痛抑制線維は、主にノルアドレナリンやセロトニンなどである。

2.× 広汎性侵害抑制調節とは、侵害刺激が痛みを抑制する現象のことをいう。鎮痛効果は、刺激直後から全身に現れるが、刺激期間中に限られるという特徴をもっている。その発現には延髄の背側網様亜核が部分的に関与している。

3.〇 正しい。ゲートコントロール説に基づく鎮痛系は、透熱灸刺激では起こらない鎮痛機序である。なぜなら、透熱灸刺激は温熱(C線維)に基づかれて行われるものであるため。ゲートコントロール理論とは、高頻度刺激によって、脊髄の触・圧・振動覚などの低閾値感覚を伝える太い神経線維を刺激することで、脊髄後角の感覚神経を活性化させ、痛みの信号通路のゲートを閉ざし疼痛を抑制させる理論である。脳と脊髄は痛みやその他の接触刺激などを同時に感じ取らないように働いているため、このような理論が提唱されている。

4.× 血流改善による発痛物質の洗い流しに基づく鎮痛とは、温熱により血管が拡張し痛みを抑制する現象である。

脊髄分節性鎮痛とは?

脊髄分節性鎮痛とは、痛みを感じている部位またはその皮膚分節に触圧刺激を与えて、触圧受容器を興奮させることで、局所的な鎮痛効果をもたらす中枢性機序である。

 

 

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