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専門基礎科目
問題81 筋萎縮性側索硬化症患者における人工呼吸器装着後のリハビリテーションで適切なのはどれか。
1.歩行訓練
2.更衣訓練
3.排痰訓練
4.起き上がり訓練
解答3
解説
1~2.4.× 歩行訓練/更衣訓練/起き上がり訓練は、運動強度が高すぎる。なぜなら、人工呼吸器装着時の、全身の筋力は失われている状態で、寝返りなどの動作や更衣動作は、練習によって改善する項目でもないため。むしろ、さらに呼吸が乱れ、状態が不安定となる恐れがある。
3.〇 正しい。排痰訓練は、筋萎縮性側索硬化症患者における人工呼吸器装着後のリハビリテーションである。なぜなら、人工呼吸器を装着した筋萎縮性側索硬化症患者では、呼吸筋の機能が低下しているため。これにより、痰が気道に溜まりやすく、呼吸器感染症のリスクが高まるため、排痰訓練が重要である。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。
(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)
問題82 ICFの「活動」に該当するのはどれか。
1.復学
2.家屋改修
3.障害年金受給
4.義足作製
解答4
解説
(※画像引用:Job Medley様HPより)
ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。
1.× 復学は、ICFの「参加」に該当する。参加とは、生活へのかかわりあいである。
2~3.× 家屋改修/障害年金受給は、ICFの「環境因子」に該当する。環境因子とは、人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境、人々の社会的な態度による環境を構成する因子である。
4.〇 正しい。義足作製は、ICFの「活動」に該当する。活動とは、課題や行為の個人による遂行のことを指す。
ICIDHとは、一方向に「疾病変調→機能障害→能力障害→社会的不利」とマイナス面のみを評価するものである。ICIDH(国際障害分類)に対する批判から、医療福祉の専門家と障害者団体が関わって、その結果を結集してICFの改訂へと至っている。
機能障害:病気やけがによる一次的な生物学的障害
能力低下:けがによって歩けないといった個人レベルの障害
社会的不利:けがによって就職できないといった社会レベルの障害
問題83 腰痛体操はどれか。
1.フレンケル体操
2.クラップ体操
3.マッケンジー体操
4.バージャー体操
解答3
解説
McKenzie体操(マッケンジー法):ニュージーランドの理学療法士「ロビン・マッケンジー氏」により考案された、腰部の伸展を主に行う運動である。脊柱の生理的前弯の減少に対し、関節可動域を改善することで脊柱前弯を獲得させ、椎間板内の髄核を前方に移動させることを目的に行う。
Williams体操(ウィリアムス体操):目的は、腰痛症に対して腰部の負担を軽減することである。方法として、腹筋・大殿筋・ハムストリングス・背筋群のストレッチングを行う。
1.× フレンケル体操(Frenkel体操)は、視覚で代償して運動制御を促通する運動療法であり、脊髄性運動失調などに対して行われる。
2.× クラップ体操(Klapp体操)は、側弯体操のひとつで、匍匐(ほふく)運動を行うものである。
3.〇 正しい。マッケンジー体操は、腰痛体操である。McKenzie体操(マッケンジー法)とは、ニュージーランドの理学療法士「ロビン・マッケンジー氏」により考案された、腰部の伸展を主に行う運動である。脊柱の生理的前弯の減少に対し、関節可動域を改善することで脊柱前弯を獲得させ、椎間板内の髄核を前方に移動させることを目的に行う。
4.× バージャー体操は、末梢循環障害に対する体操である。つまり足の血流を良くする体操である。下肢を上げた状態で2分、下げた状態で3分、水平にして5分行う。
閉塞性血栓血管炎(バージャー病)とは、脚や腕の細い動脈や中間サイズの動脈が、炎症を起こして閉塞する病気である。喫煙は病変の増悪因子であるが、原因不明である。症状は、腕や脚への血流減少による冷感、しびれ、チクチクする感覚、灼熱感などである。治療で最も重要なのは禁煙で、薬剤も有効なことがある。寒さにより血管が狭くなるため(収縮)、寒さへの曝露を回避することが助けになる。
問題84 脊髄損傷において、肘の伸展によるプッシュアップが可能となる脊髄節残存高位はどれか。
1.C4
2.C5
3.C6
4.C7
解答4
解説
1.× C4は、横隔膜の一部を支配しており、呼吸が容易となる。ちなみに、肩や上腕の動きはほとんど制限される。
2.× C5の主な動作筋は、三角筋、上腕二頭筋で、肩関節:屈伸・外転・内外旋、肘関節:屈曲、回外が可能となる。移動はハンドリムに工夫は必要だが、平地での車椅子駆動が可能となる。
3.× C6の主な動作筋は、大胸筋、橈側手根伸筋である。移動は、実用的な車椅子移動が可能である。
4.〇 正しい。C7は、脊髄損傷において、肘の伸展によるプッシュアップが可能となる脊髄節残存高位である。なぜなら、C7の主な動作筋は、上腕三頭筋、橈側手根屈筋であるため。車椅子駆動、移乗動作、自動車運転可能なレベルまで目指せる。
問題85 疾患と装具の組合せで誤っているのはどれか。
1.変形性膝関節症:足底装具
2.腰椎椎間板ヘルニア:軟性コルセット
3.脳梗塞:短下肢装具
4.総腓骨神経麻痺:長下肢装具
解答4
解説
変形性膝関節症は、①疼痛、②可動域制限、③腫脹、④関節変形などがみられる。進行度にかかわらず、保存療法が第一選択となる。減量や膝に負荷のかかる動作を回避するような日常生活動作指導、筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法、装具や足底板などの装具療法、鎮痛薬や関節内注射などの薬物療法が行われる。
1.〇 正しい。変形性膝関節症は、「足底装具」が用いられる。足底装具とは、膝のアライメントを調整し、痛みの軽減や歩行、姿勢の改善に役立つ。したがって、扁平足・外反母趾・変形性膝関節症など用いられることが多い。
2.〇 正しい。腰椎椎間板ヘルニアは、「軟性コルセット」が用いられる。軟性コルセットとは、腹部を圧迫して腹圧を高め、脊柱に対する負担を軽減するとともに、動きによる痛みを軽減する体幹装具である。
3.〇 正しい。脳梗塞は、「短下肢装具」が用いられる。短下肢装具とは、足首の関節の動きを制限し、固定・動揺・拘縮などの治療を目的とした装具である。脳卒中患者の歩行の際に足首の固定や安定性の向上のために使用される。
4.× 長下肢装具は、「総腓骨神経麻痺」ではなく重度の麻痺に用いられる。長下肢装具とは、立位訓練開始から装具をつけ、介助下での平行棒な歩行訓練が必要なレベルの重度の麻痺に適応となる。臨床では、重度弛緩性麻痺時には長下肢装具で立位練習を行い、股関節の収縮が得られてきた際に、短下肢装具へ移行しながら練習することが多い。ちなみに、腓骨神経麻痺は、「短下肢装具」が用いられる。総腓骨神経麻痺とは、腓骨頭部(膝外側)の外部からの圧迫などによって、腓骨神経の機能不全をきたしている状態である。腓骨神経は、感覚(下腿外側、足背)や運動(足関節および足趾の背屈)を支配しているため、下腿の外側から足背ならびに足趾背側にかけて感覚が障害され、しびれたり、触った感じが鈍くなる。また、足首と足の指が背屈(上に反る)できなくなり、下垂足となる。
椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。