第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後86~90】

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問題86 医学的リハビリテーションで、在宅復帰への対応として積極的に推し進めるべきことはどれか。

1.廃用症候群の予防
2.障害受容への援助
3.職業訓練
4.麻痺の改善

解答

解説

リハビリテーションの種類

①医学的リハビリテーション、②教育リハビリテーション、③職業リハビリテーション、④社会的リハビリテーション

医学的リハビリテーションとは、病院や診療所などの医療機関で行われる、障害がある人のリハビリテーションの過程において、保健・医療などの医学的なことに対応する領域である。

1.× 廃用症候群の予防は、医学的リハビリテーションで、維持期(在宅)での対応である。廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

2.〇 正しい。障害受容への援助は、医学的リハビリテーションで、在宅復帰への対応として積極的に推し進めるべきことである。なぜなら、在宅復帰にあたり、障害受容の過程は、リハビリテーションの内容だけでなく、目標にもかかわる重要な点であるため。

3.× 職業訓練は、「医学的」ではなく職業リハビリテーションである。職業リハビリテーションとは、障害者が適当な雇用に就き、それを継続し、かつ、それにおいて向上することができるようにすること及びそれにより障害者の社会への統合又は再統合を促進することを目的とされているリハビリテーションである。

4.× 麻痺の改善は、医学的リハビリテーションで、急性期(入院初期)での対応である。在宅復帰への対応の時期として、麻痺が完全に回復しない場合は、代償する生活方法や手段を考慮することが多い。したがって、在宅復帰では、麻痺の改善よりも、現存する機能を最大限に活用し、ADLを維持することが重要である。

障害受容の過程とは?

障害受容の過程は、「ショック期→否認期→混乱期→解決への努力期(再起)→受容期」の順に現れる。5段階のプロセスは順序通りに進むわけはなく、また障害受容に至らない障害者も存在する。

①ショック期:感情が鈍磨した状態
②否認期:現実に起こった障害を否認する
③混乱期:攻撃的あるいは自責的な時期
④解決への努力期(再起):自己の努力を始める時期
⑤受容期:新しい価値観や生きがいを感じる時期

 

 

 

 

 

問題87 サルコペニアで必ず減少するのはどれか。

1.骨密度
2.骨格筋量
3.循環血流量
4.脂肪量

解答

解説
1.× 骨密度の減少は、骨粗鬆症にみられる。ちなみに、骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。

2.〇 正しい。骨格筋量は、サルコペニアで必ず減少する。サルコペニアとは、ギリシャ語で「サルコ(sarco)=筋肉」と喪失を意味する「ペニア(penia)=喪失」をあわせた造語である。加齢により全身の筋肉量と筋力が自然低下し、身体能力が低下した状態と定義されている。一次性サルコペニアと二次性サルコペニアに分類され、一次性(原発性)は加齢による筋肉量減少が原因とされるものである。一方で、二次性サルコペニアは、活動・栄養・疾患に関するもののことをいう。つまり、廃用症候群は、低活動が原因であるため二次性サルコペニアに分類される。

3.× 循環血流量の減少は、手術や外傷、消化管出血、脱水などが原因でみられる。十分な血圧が保てなくなるため、重度の場合は循環血液量減少性ショックを引き起こす。

4.× 脂肪量がサルコペニアで必ず減少するとはいえない。一概に、脂肪量の変化は、栄養の食事面や運動面など様々な要因でみられる。むしろ、サルコペニアは、筋肉が減少する一方で、脂肪量が増加することもある。

フレイルとは

フレイルとは、健常な状態と要介護状態(日常生活でサポートが必要な状態)の中間の状態のことをいう。多くは、「健康状態」→「フレイル」→「要介護状態」と経過する。定義:加齢とともに心身の活動(運動機能や認知機能など)が低下し、複数の慢性疾患の併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方で適切な介入・支援により、生活機能の維持向上が可能な状態。

【フレイルの基準】
①体重減少(6か月間で2~3㎏以上)
②易疲労感
③歩行速度の低下
④握力の低下
⑤身体活動量の低下
・3項目以上該当で「フレイル」
・1~2項目該当で「プレフレイル」

 

 

 

 

 

問題88 ステージⅠの関節リウマチの非活動期に行うリハビリテーションで最も適切なのはどれか。

1.関節の安静
2.軽い自動運動
3.コッドマン体操
4.筋力強化訓練

解答

解説

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

1.× 関節の安静より優先度が高いものが他にある。なぜなら、安静によりさらなる関節可動域制限や筋力低下を助長する可能性があるため。また、本症例は、ステージⅠ(X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態)の関節リウマチの非活動期であるため、安静よりも適度な運動が推奨される。

2.× 軽い自動運動より優先度が高いものが他にある。なぜなら、「軽い自動運動」が、本症例に有効とは断言できないため。「軽い」をどの程度のことを指しているのか不明である。「適切な運動強度」よりも「軽い自動運動」と読み取るならば、負荷量は少なすぎると判断できる。ちなみに、自動運動とは、自分の力で動かす運動のことをいう。重力に抗して行う運動のことは抵抗運動である。

3.× コッドマン体操より優先度が高いものが他にある。Codman体操(コッドマン体操)は、肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。肩甲骨と上腕骨の間に関節の遊びを作ることで、痛みや障害を予防する。

4.〇 正しい。筋力強化訓練は、ステージⅠの関節リウマチの非活動期に行うリハビリテーションである。なぜなら、非活動期では、炎症が落ち着いているため。関節に負担をかけないよう、等尺性運動など関節の動きに考慮しながら筋力強化訓練が可能である。ちなみに、等尺性運動とは、関節を動かさない筋肉の収縮で、筋の長さは一定である特徴を持つ。ギプス固定している間の筋の廃用予防のための筋力トレーニングとして重要である。

Steinbrockerの病気分類

Steinbrockerのステージ分類とは、関節リウマチ患者の関節破壊の程度を病期に合わせて分類する方法である。一方、クラス分類とは、関節リウマチの機能障害度をクラス別に分類する方法である。ステージ(クラス)ⅠからⅣの4段階に分類し、進行度を評価する。

【ステージ分類:リウマチの病期】
ステージⅠ:X線検査で骨・軟骨の破壊がない状態。
ステージⅡ:軟骨が薄くなり、関節の隙間が狭くなっているが骨の破壊はない状態。
ステージⅢ:骨・軟骨に破壊が生じた状態。
ステージⅣ:関節が破壊され、動かなくなってしまった状態。

【クラス分類:機能障害度】
クラスⅠ:健康な方とほぼ同様に不自由なく生活や仕事ができる状態。
クラスⅡ:多少の障害はあるが普通の生活ができる状態。
クラスⅢ:身の回りのことは何とかできるが、外出時などには介助が必要な状態。
クラスⅣ:ほとんど寝たきりあるいは車椅子生活で、身の回りのことが自分ではほとんどできない状態。

 

 

 

 

 

専門科目

問題89 五行色体で相生関係にある組合せはどれか。

1.鈎:毛
2.蔵:生
3.志:神
4.語:吞

解答

解説

MEMO

相生関係とは、ある物事が他の物事を促進したり、育てたりする関係のことである。

1.× 鈎()、毛()である。五脈に該当する。

2.〇 正しい。蔵()、生()は、五行色体で相生関係にある組合せである。五能に該当する。

3.× 志()、神()である。五神に該当する。

4.× 語()、吞()である。五病に該当する。

 

 

 

 

 

問題90 次の文で示す傷寒論の六経病証はどれか。
「胸中の灼熱様の痛み、激しい口渇、空腹だが飲食ができない、四肢厥冷、嘔吐、下痢。」

1.陽明病
2.太陽病
3.少陰病
4.厥陰病

解答

解説

本症例のポイント

・胸中の灼熱様の痛み、激しい口渇
・空腹だが飲食ができない。
・四肢厥冷、嘔吐、下痢。
→本症例は、厥陰病が疑われる。厥陰病は、外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢などがみられる。

1.× 陽明病は、裏実熱証で、発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈などが起こる。

2.× 太陽病は、外感病初期、表寒証。悪寒、発熱、頭痛、項強痛、脈浮などがが起こる。

3.× 少陰病は、外感病の極期~後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠などが起こる。

4.〇 正しい。厥陰病が傷寒論の六経病証である。厥陰病は、外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢などがみられる。

六経弁証

太陽病:外感病初期、表寒証。悪寒、発熱、頭痛、項強痛、脈浮など。
少陽病:半表半裹証。発汗、寒熱往来、胸脇苦満、口苦、眩暈、脈弦など。
陽明病:裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。
太陰病:裏虚寒証(初期)。食欲不振、腹部膨満感、水様便など。
少陰病:外感病の極期~後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠など。
厥陰病:外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢など。

 

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