第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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問題156 ポリモーダル受容器が受容した熱痛を主に伝導するのはどれか。

1.Aα線維
2.Aβ線維
3.Aγ線維
4.C線維

解答

解説


1.× Aα線維は、筋・腱の感覚と運動を伝導する。

2.× Aβ線維は、触圧覚を伝導する。

3.× Aγ線維は、触圧覚を伝導する。

4.〇 正しい。C線維は、ポリモーダル受容器が受容した熱痛を主に伝導する。
C線維やAδ線維は、痛みを伴う熱刺激を伝導する。

 

 

 

 

 

問題157 透熱灸施灸により生成されるアラキドン酸代謝産物はどれか。

1.プロスタグランジン
2.サブスタンスP
3.CGRP
4.ヒスタミン

解答

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

発痛物質には、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、アセチルコリン、プロスタグランジンなどがある。

1.〇 正しい。プロスタグランジンは、透熱灸施灸により生成されるアラキドン酸代謝産物である。
プロスタグランジンとは、子宮の内膜がはがれ落ちるときに増え、子宮を収縮させて、血液(経血)を押し出すはたらきがある。プロスタグランジンが過剰につくられると、子宮が激しく収縮するので、月経痛がひどくなる。また、一般的に、プロスタグランジンとは、細菌感染による急性炎症反応で増加する。プロスタグランジンは、①血管拡張、②気管支平滑筋収縮、③急性炎症時の起炎物質で発痛作用がある。非ステロイド性抗炎症薬<NSAIDs>は、炎症などを引き起こすプロスタグランジンの生成を抑え、抗炎症作用や解熱、鎮痛に働く。副作用として、消化器症状(腹痛、吐き気、食欲不振、消化性潰瘍)、ぜんそく発作、腎機能障害が認められる。したがって、非ステロイド性抗炎症薬が効果的であるのは、侵害受容性疼痛である。

2.× サブスタンスP
サブスタンスPとは、ポリモーダル受容器の興奮で生じる軸索反射により、受容器末端から放出される。軸索反射(フレア現象)の神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。CGRPとは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、片頭痛の痛みの直接の原因とされているタンパク質である。脊髄後根神経節で産生され、中枢および末梢の両側性に作用する。末梢血管を著しく拡張させ、血管透過性を亢進させる働きを持つ。

3.× CGRP
CGRPとは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、片頭痛の痛みの直接の原因とされているタンパク質である。脊髄後根神経節で産生され、中枢および末梢の両側性に作用する。末梢血管を著しく拡張させ、血管透過性を亢進させる働きを持つ。

4.× ヒスタミン
ヒスタミンとは、酸素が不足すると細胞から放出される「発痛物質」の1つである。また、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

フレア現象とは?

フレア現象とは、お灸の熱刺激によって細胞レベルで微細な火傷が起こり、神経から脳に「ここにケガがあるから治すために血液を送ってください」と連絡が入ることで起こる軸索反射のこと。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

 

 

 

 

 

問題158 透熱灸による局所炎症反応で正しいのはどれか。

1.皮膚血流量減少
2.血管透過性抑制
3.血小板凝集能亢進
4.マスト細胞活性抑制

解答

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

発痛物質には、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、アセチルコリン、プロスタグランジンなどがある。

1.× 皮膚血流量は、「減少」ではなく増加する。

2.× 血管透過性は、「抑制」ではなく上昇する。
血管透過性とは、血管とその周りの組織との間で起こる水分や栄養分などの移動のことである。

3.〇 正しい。血小板凝集能亢進は、透熱灸による局所炎症反応である。
局所炎症反応として、①血管拡張、②血流増加、③血管透過性の亢進に伴う血漿成分の血管外への漏出、④白血球(赤血球)の血管外へ遊走などが主に生じる。

4.× マスト細胞活性は、「抑制」ではなく上昇する。
肥満細胞とは、マスト細胞ともいい、骨髄系細胞由来の細胞であり、末梢血の顆粒球の一種である好塩基球に類似した性質を持つ、免疫細胞の一種である。 肥満細胞の顆粒内には、ヒスタミン、ロイコトリエン、血症板活性化因子、セロトニン、ヘパリンなどのケミカルメディエーターと呼ばれる物質が含まれている。

 

 

 

 

 

問題159 手足の冷えを改善する灸の治療的作用はどれか。

1.鎮静作用
2.防衛作用
3.誘導作用
4.矯正作用

解答

解説
1.× 鎮静作用
鎮静作用(調整作用)は、異常な機能の興奮(疼痛、痙攣など)に対して鎮静させる。

2.× 防衛作用
防衛作用は、白血球や大食細胞などを増加させ、生体の防衛力を高める。

3.〇 正しい。誘導作用は、手足の冷えを改善する灸の治療的作用である。
誘導作用は、血管に影響を及ぼして充血させ、患部の血量を調節する。※患部誘導法(局所血行障害)、健部誘導法(充血、炎症など)

4.× 矯正作用は、灸の治療的作用にはない。

 

 

 

 

 

問題160 足三里へ多壮灸をした後、患者がすぐに全身倦怠感を訴えた。この原因を説明するのに適切なのはどれか。

1.サイバネティックス
2.ストレス学説
3.レイリー現象
4.圧自律神経反射

解答

解説
1.× サイバネティックス
サイバネティックスとは、ノーバート・ウィナーが唱えたフィードバック機構によって自動調整されてる回路のことである。

2.× ストレス学説
ストレス学説とは、ストレスに対する適応症候群(防御反応)である。発生機序として、ストレスが人体に加わると適応ホルモンとして脳の下垂体から副腎に副腎皮質刺激ホルモンが分泌され、さらに副腎は副腎皮質ホルモンを分泌して人体を保護する。人体にストレス刺激が加わりストレス状態が続くと、副腎皮質が肥大する。第1期(警告反応期)→第2期(抵抗期)→第3期(疲憊期)という過程をたどる。

3.〇 正しい。レイリー現象が最も考えられる。
レイリー現象とは、過剰刺激症候群ともいい、自律神経系に直接くわえられる過剰刺激が反射性に障害を起こすことである。 自律神経に直接的・局所的な過剰刺激が加わると血管運動障害が起こり、次第に内分泌機能も影響を受けて全身的な各種徴候をきたす。二次的にその栄養臓器、あるいは遠隔臓器に種々の程度の障害が生じる。その病変は様々だが、充血・浮腫・白血球の遊走・出血・壊死などの血管運動障害が起こる。

4.× 圧自律神経反射
圧自律神経反射とは、皮膚の圧迫によって、交感神経に作用する反射である。圧迫側が抑制に働き、反対側では、逆に亢進する。例えば、発汗している時に、側臥位で寝ると、上側の発汗が増え、下側の発汗は減る、というような反射である。

 

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