第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前31~35】

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問題31 蛋白質について正しいのはどれか。

1.細胞膜には含まれない。
2.β酸化により代謝される。
3.4種類のアミノ酸からなる。
4.細胞の主要な構成成分である。

解答

解説

1.× 細胞膜には含まれる
細胞は、核と細胞質からなり、細胞膜で覆われている。細胞膜は、リン脂質2重層から構成されており、この中に特殊なタンパク質(受容体、酵素、担体、チャネルなど)がはめ込まれている。脂溶性物質やガス(酸素や二酸化炭素)は、細胞膜を自由に通過できるが、水溶性物質(電解質や栄養素)は、通過できない。

2.× β酸化により代謝されるのは脂肪酸である。
脂肪酸は、脂肪の分解(β酸化)や合成(脂肪酸合成)の過程で関与する。脂肪酸とは、脂肪を構成している要素である。分子の構造的な違いから①飽和脂肪酸と②不飽和脂肪酸に分類される。①飽和脂肪酸は主に動物性の脂肪に含まれる。②不飽和脂肪酸は、植物や魚の脂に多く含まれる。不飽和脂肪酸はさらに、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられる。一価不飽和脂肪酸でよく知られているオレイン酸はオリーブ油に多く含まれ、血液中のLDLコレステロールを下げる効果がある。

3.× 生体の蛋白質を構成するアミノ酸は、「4種類」ではなく20種類のアミノ酸からなる。
必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分けられる。必須アミノ酸は、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン(スレオニン)、トリプトファン、バリン、ヒスチジンである。非必須アミノ酸は、チロシン、システイン、アスパラギン酸、アスパラギン、セリン、グルタミン酸、グルタミン、プロリン、グリシン、アラニン、アルギニンである。

4.〇 正しい。細胞の主要な構成成分である
細胞の主要な構成成分は、水、タンパク質、脂質、炭水化物(糖質)、核酸などの有機物、無機塩類である。細胞の構成成分のうち、最も多いのは水で、全体の約70%を占める。次に多いのがタンパク質で、約15%を占めている。このほか、脂質、糖質、核酸が続く。

DNAの構造

DNA(デオキシリボ核酸)は、「ヌクレオチド」が連続した鎖状の構造をもつ。ヌクレオチドは、①リン酸、② デオキシリボース(五炭糖)、③塩基(グアニン、 アデニン、チミン、 シトシンの中のいずれか1つ)より構成される。その際に、アデニンはチミンと、グアニンはシトシンと結合し互いにねじれて二重らせん構造をとる。

 

 

 

 

 

問題32 体温について正しいのはどれか。

1.口腔温は直腸温より高い。
2.体幹の皮膚温は四肢の皮膚温より低い。
3.摂食により体温は上昇する。
4.基礎代謝亢進により体温は低下する。

解答

解説
1.× 逆である。「直腸温」は「口腔温」より高い。
直腸温が深部体温(核心温度)に最も近く、深部体温とは、環境の変動によっても温度が変化しない生態の核心部(中心部)の温度である。外殻温度と異なり体温調節により一定に調節されている。実際に、核心温度を常時測定するのは不可能であるが、最も核心温度に近いのは、直腸の温度であり37℃を超える。直腸温と腋窩温は1℃近くの差がある。

2.× 体幹の皮膚温は、四肢の皮膚温より「高い」。
なぜなら、体幹の皮膚温は、四肢の皮膚温より、深部体温に近いため。

3.〇 正しい。摂食により体温は上昇する
食事誘発性熱産生とは、ご飯を食べた時や食後に体が熱くなる、体温が上がる状態のことをいう。食事をすると吸収された栄養素が分解され、その時に一部が体熱となり、代謝があがり、体が熱く感じる。

4.× 基礎代謝亢進により、体温は「上昇」する。
基礎代謝とは、体温維持、心臓や呼吸など、人が生きていくために最低限必要なエネルギーのことである。基礎代謝量は、体重・体表面積・性と年齢などの要因に依存する。安静・空腹時のエネルギー消費量で、一般に女性より男性の方が高い。

 

 

 

 

 

問題33 腎糸球体でろ過されるのはどれか。

1.グルコース
2.アルブミン
3.赤血球
4.白血球

解答

解説

糸球体とは?

糸球体とは、腎臓に血液を送る動脈が徐々に細くなった先にある毛細血管の球形の塊である。糸球体は、腎臓の機能単位であるネフロンの一部で、腎臓の外側部分である腎皮質に集まっている。腎髄質は腎臓の内側部分で、集合管などが存在する。腎臓には心臓から送りだされる血液の約4分の1が流れ込み、糸球体でろ過される。この濾過された液を原尿といい、1日に約150リットル作り出される。原尿には、不要な老廃物と、体に必要な物質(水分、糖分、ナトリウム、アミノ酸など)が含まれている。

1.〇 正しい。グルコースは、腎糸球体でろ過される。
グルコースとは、果物や穀類などに多く含まれ、自然界に最も多く存在する単糖類である。血液中の主要な糖分であり、脳のエネルギー源として関与する。小腸上皮でブドウ糖(グルコース)や果糖(フルクトース)などの単糖に分解され、吸収される。

2.× アルブミン
アルブミンとは、肝臓で作られるたんぱく質で、肝臓や栄養状態の指標となる。血清総蛋白の60%程度を占め肝臓で生成される。アルブミンが低値の場合は、低栄養状態、がん、 肝硬変など、一方で高値の場合は、脱水により血管内の水分が減少し、濃縮効果によることが考えられる。

3.× 赤血球
赤血球とは、細胞内にヘモグロビンを含み、主に酸素の運搬を行う。血液中の細胞成分である。ちなみに、ヘモグロビンのヘム鉄が、酸素分子と結合する性質を持ち、肺から全身へと酸素を運搬する役割を担っている。

4.× 白血球
白血球とは、血液中の細胞で、身体への異物の侵入から身体を守る働きがあり、病原菌や異物を取り込んで消化する免疫細胞である。好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球がある。

 

 

 

 

 

問題34 遠心路が自律神経の反射はどれか。

1.膝蓋腱反射
2.腹壁反射
3.対光反射
4.ヘーリング・ブロイエル反射

解答

解説
1.× 膝蓋腱反射
膝蓋腱反射は、単シナプス反射で大腿四頭筋の筋紡錘による伸張反射である。膝蓋腱反射の【中枢】L2~L4(大腿神経)、【検査法】背臥位検査:患者を背臥位にし両膝を軽く屈曲し立てる。検者は前腕をその膝の下に入れて下肢を支える。または、一側の下肢を膝立て位にして、その膝の上に他側の膝を乗せる。膝蓋腱部を触知してその腱部を叩打する。【判定】膝関節の伸展が起これば反射出現(+)

2.× 腹壁反射
腹壁反射(腹皮反射)とは、表在反射のひとつである。表在反射とは、皮膚や粘膜を刺激することでみられる反射のことで、消失により錐体路障害を示す徴候である。腹壁反射とは、検者を背臥位にして両膝を軽く屈曲し膝を立て、腹筋を弛緩させる。先の鈍い針で肋骨縁①にそって上から下に向けてこする。また、腹壁を上②、中③、下④の3つに分けて、腹壁皮膚を外側より内側に向けてこすり、刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。陽性の場合、錐体外路系の障害により消失する。【判定】刺激側の腹筋が収縮し、臍が刺激側へ動けば陽性である。

3.〇 正しい。対光反射は、遠心路が自律神経の反射である。
対光反射とは、強い光に対して瞳孔が収縮してまぶしさを防ぐ反射である。【求心路】視神経、【遠心路】動眼神経である。動眼神経とは、外側直筋と上斜筋以外の眼筋を支配する運動神経と、眼球内の瞳孔括約筋や毛様体筋を支配する副交感神経を含んでいる。

4.× ヘーリング・ブロイエル反射
ヘーリング・ブロイエル反射とは、肺の伸展・縮小により肺伸展受容器が刺激された場合に、その刺激が迷走神経を介して延髄に伝達され、呼吸が抑制されることである。 吸気を抑制する肺膨張反射、呼気を抑制する肺縮小反射に分類される。遠心路は運動神経である。

 

 

 

 

 

問題35 熟練した運動の学習に重要なのはどれか。

1.小脳
2.視床
3.一次運動野
4.補足運動野

解答

解説
1.〇 正しい。小脳は、熟練した運動の学習に重要である。
小脳とは、後頭部の下方に位置し、筋緊張や身体の平衡の情報を処理し運動や姿勢の制御(運動系の統合的な調節)、熟練した運動の学習を行っている。小脳は手続き記憶に関与する。手続き記憶とは、スポーツ技能の習得などの記憶である。特徴として、言語的表現が困難な記憶である。

2.× 視床
視床とは、嗅覚以外のあらゆる感覚情報(体性感覚、痛覚、視覚、聴覚、味覚など)を大脳皮質に送る一大中継基地を担う。視床出血の場合は、被殻出血と並んで頻度の高い脳出血で、脳出血全体の30%程度を占めている。麻痺に比べ、感覚障害が強くなる。

3.× 一次運動野
一次運動野とは、随意運動のプログラミングに関わる大脳皮質の高次運動野や頭頂連合野からの入力を統合して最終的な運動指令を形成し、これを下位中枢(脳幹や脊髄)へ出力する。

4.× 補足運動野
補足運動野は、自発的な運動の開始、異なる複数の運動を特定の順序に従って実行する、両手の協調動作などの役割を果たす。したがって、補足運動野が損傷すると、運動の開始や継続に困難が生じる。特に、自発的な運動や複雑な運動タスクを行う能力が低下することが報告されている。

 

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