第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後161~165】

 

問題161 古代九鍼で皮膚を切開するのはどれか。

1.円鍼
2.員利鍼
3.鈹鍼
4.鍉鍼

解答

解説
1.× 円鍼(員鍼)は、分肉の間をこすり、気を瀉す。

2.× 員利鍼は、急激な痹に深く刺して取る。

3.〇 正しい。鈹鍼は、古代九鍼で皮膚を切開する。癰や大膿を切り開く

4.× 鍉鍼は、手足末端近くの脈を按じて気を補い、邪を出させる。

 

 

 

 

 

問題162 基本17手技で鍼の刺入深度が最も深くなるのはどれか。

1.屋漏術
2.菅散術
3.細指術
4.鍼尖転移法

解答

解説
1.〇 正しい。屋漏術は、基本17手技で鍼の刺入深度が最も深くなる。
・屋漏術は、目的の深さまで3段階に分けて刺入・雀啄する(抜鍼時は逆に行う)。

2.× 管散術は、鍼の術式のうち鍼管のみを用い、弾入の要領で鍼管を叩打する。十七手技のうち、最も刺激が弱い。

3.× 細指術は、刺鍼する部位に対して弾入だけを繰り返す。

4.× 鍼尖転移法は、鍼尖を皮下に留め、押手・刺手と共に皮膚を縦横または輪状に動かす。

 

 

 

 

 

問題163 特殊鍼法で横刺するのはどれか。

1.灸頭鍼
2.小児鍼
3.皮内鍼
4.円皮鍼

解答

解説
1.× 灸頭鍼は、置鍼した鍼の鍼柄に艾を球状に付けて点火する方法である。鍼柄が金属でカシメ式のものを用いる。

2.× 小児鍼とは、主な対象は生後2週間後~小学生で、①摩擦鍼や②接触鍼のことを指す。

3.〇 正しい。皮内鍼は、特殊鍼法で横刺する。
・皮内鍼は、細く短い鍼を皮内へ水平に刺入し(筋層へは刺入しない)、長時間留置させて持続的に刺激を与える。赤羽幸兵衛発案。

4.× 円皮鍼は、画鋲状の短い鍼を垂直に刺入し、持続的な刺激を与える。スポーツ選手に多く用いられる。※中国では撳鍼(耳鍼に応用)

 

 

 

 

問題164 鍼療法の禁忌はどれか。

1.つわり
2.肉体作業後の筋疲労
3.脳血管障害後の回復期
4.手術を必要とする状態

解答

解説

鍼療法の禁忌

一般
①安静が必要な場合
②刺激により有害作用を起こす場合
③免疫能が低下し、感染の危険性が高い場合

WHO
①妊娠(陣痛や流産を誘発する可能性がある)
②救急事態や手術を必要とする場合(救急療法として用いない)
③悪性腫瘍(腫瘍への直接刺激を避ける)
④出血性・凝血性疾患、抗凝血治療中の患者

1.× つわりは、鍼療法を行わないほうが良いが禁忌ではない。WHOには、陣痛や流産を誘発する可能性があるため、妊娠が禁忌とされているが、鍼治療の部位や強度を考え、医師の指示をもらうとより安全である。つわりとは、妊娠によるホルモンバランスの変化によって生じる、悪心(吐き気)、嘔吐、食べ物の好みの変化などの総称である。妊娠12週~14週ころに軽減するが、個人差が大きいため、一概にこの時期とはいいきれない。つわりは妊娠8週目~10週目ごろに症状のピークを迎える場合が多いとされている。

2.× 肉体作業後の筋疲労は、禁忌ではない。むしろ、鍼療法の適応となる場合が多い症状である。なぜなら、肉体作業後の筋疲労は、筋肉への過度な負担によって生じる生理的な疲労状態であるため。鍼療法は筋肉の緊張緩和や血行促進効果により、疲労回復や痛みの緩和に効果があるとされている。

3.× 脳血管障害後の回復期は、禁忌ではない。なぜなら、脳血管障害(脳卒中など)後の回復期において、鍼療法は麻痺やしびれといった後遺症に対するリハビリテーションの一環として行われることがあるため。ただし、病状が安定している時期に行うこと、および患者さんの全身状態や病態を正確に把握した上で、安全に配慮しながら施術を行う。

4.〇 正しい。手術を必要とする状態は、鍼療法の禁忌である。なぜなら、手術が必要な状態は、鍼治療の根本的効果は期待できないため。例えば、急性腹症である虫垂炎や消化管穿孔、重度の骨折、生命を脅かす可能性のある悪性腫瘍などは、手術の処置が必要となる。このような状態に対して鍼灸治療を行うことは、適切な医療機関での診断や手術といった必要な治療を遅らせてしまい、患者さんの生命予後や病状に悪影響を及ぼす危険性があるため、鍼療法の絶対的禁忌とされている。

 

 

 

 

 

問題165 刺鍼によって心タンポナーデの危険性がある経穴はどれか。

1.中府
2.膻中
3.巨闕
4.殷門

解答

解説

MEMO

・心タンポナーデは、心臓を包む心嚢という袋の中に、血液などの液体が急速に溜まることで、心臓が拡張できなくなり、ポンプ機能が著しく低下する病態である。鍼による心タンポナーデの原因は、心臓や心嚢に鍼が誤って刺入されることによって生じる心嚢内出血である。したがって、心臓に解剖学的に近い位置にある経穴への刺鍼には、特に注意が必要である。

・心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。

1.× 中府は、前胸部、第1肋間と同じ高さ、鎖骨下高の外側、前正中線の外方6寸に位置する。

2.〇 正しい。膻中は、刺鍼によって心タンポナーデの危険性がある経穴である。
・膻中は、前胸部、前正中線上、第4肋間と同じ高さに位置する。

3.× 巨闕は、上腹部、前正中線上、臍中央の上方6寸に位置する。

4.× 殷門は、大腿部後面、大腿二頭筋と半腱様筋の間、殿溝の下方6寸に位置する。深部に坐骨神経が通る。

 

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