問題171 透熱灸に用いる艾について正しいのはどれか。
1.夾雑物が多い。
2.灰分が多い。
3.精油成分が多い。
4.黒褐色である。
解答3
解説
良質艾:芳香、手触り良く柔らかい、線維が細かい、夾雑物が少ない、淡黄白色、煙と灰が少ない、熱感が緩和(燃焼温度が低い)、燃焼時間が短い、よく乾燥している、など
粗悪艾:青臭い、手触りが悪く固い、線維が粗い、夾雑物が多い、黒褐色、煙と灰が多い、熱感が強い(燃焼温度が高い)、燃焼時間が長い、湿気を帯びている、など
1~2.4.× 夾雑物が多い/灰分が多い/黒褐色である。
これは、粗悪艾の特徴である。
3.〇 正しい。精油成分が多い。
これは、良質艾であり、透熱灸に用いる艾である。
有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。
問題172 艾を使用しないのはどれか。
1.ビワの葉灸
2.ショウガ灸
3.押灸
4.紅灸
解答4
解説
1.× ビワの葉灸/ショウガ灸/押灸は、隔物灸で用いられる。
・隔物灸は、艾炷と皮膚の間に物を置いて施灸する方法である。塩灸、韮灸、墨灸、ニンニク灸、味噌灸、生姜灸、ビワの葉灸、押灸など。
4.〇 正しい。紅灸は、艾を使用しない。紅灸は、薬物灸に該当する。薬物灸は、艾を使用せず、薬物を塗布して刺激を皮膚に加える方法ある。紅灸、うるし灸、油灸、硫黄灸など。
問題173 透熱灸を行う上で最も注意が必要なのはどれか。
1.低血圧症
2.骨粗鬆症
3.糖尿病
4.月経困難症
解答3
解説
有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。
発痛物質には、ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン、アセチルコリン、プロスタグランジンなどがある。
1.× 低血圧症より優先されるものが他にある。ただし、灸刺激によって一時的に血圧が変動する可能性もあるため、体調をよく確認・観察し、無理のない体位で施術を行う配慮が必要である。
2.× 骨粗鬆症より優先されるものが他にある。なぜなら、直接的に骨に影響を与える治療ではないため。
・骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。
3.〇 正しい。糖尿病は、透熱灸を行う上で最も注意が必要である。なぜなら、糖尿病の合併症として「糖尿病性神経障害」による感覚鈍麻、高血糖による血管障害(血行不良)、免疫機能の低下による感染しやすさ、そして傷の治りが遅いといった問題があるため。
4.× 月経困難症より優先されるものが他にある。
・月経困難症とは、月経時に多くの女性は生理痛(月経痛)をはじめとする何らかの症状を伴うが、その症状が日常生活に支障をきたすほどの状態のことをさす。月経困難症には主に2種類あげられる。①器質性月経困難症:子宮内膜症、チョコレート嚢胞、子宮腺筋症、子宮筋腫などの器質的疾患を伴う。30歳以降の女性に多くみられる。②機能性月経困難症:器質的疾患を伴わないものをいう。思春期~20歳台前半の発症が多い。原因として、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因とされている。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多い。
問題174 透熱灸を最も避けるべき経穴はどれか。
1.陽白
2.陽谷
3.陽池
4.陽交
解答1
解説
鍼:新生児の大泉門、外生殖器、臍部、眼球、急性炎症の患部など
※肺、胸膜、心、腎、中枢神経系、大血管などへの刺鰄は注意が必要
灸:顔面、化膿を起こしやすい部位、浅層に大血管がある部位、皮膚病患部などへの直接灸など
1.〇 正しい。陽白は、透熱灸を最も避けるべき経穴である。なぜなら、顔面は、体の他の部位に比べて皮膚が薄く、灸痕が非常に目立ちやすいため。
・陽白は、頭部、眉の上方1寸、瞳孔線上に位置する。
2.× 陽谷は、手関節後内側、三角骨と尺骨茎状突起の間の陥凹部に位置する。
3.× 陽池は、手関節後面、総指伸筋腱の尺側陥凹部、手関節背側横紋上に位置する。
4.× 陽交は、下腿外側、腓骨の後方、外果尖の上方7寸に位置する。
問題175 有痕灸施術部の消毒で最も適切なのはどれか。
1.清拭圧は強めで行う。
2.施灸前後に行う。
3.施灸部を往復するように拭く。
4.次亜塩素酸ナトリウムを用いる。
解答2
解説
1.× 必ずしも、清拭圧は「強め」で行う必要はない。
なぜなら、清拭圧を強めにすると、皮膚の表面を傷つけてしまい、かえって細菌が侵入しやすくなる可能性があるため。また、「強め」という設定も、施術者によって、強さが異なり個人差が生じやすい。消毒薬を十分に含ませた脱脂綿などで、皮膚を優しく、しかし確実に拭き取ることが重要である。
2.〇 正しい。施灸前後に行う。なぜなら、感染を防ぐため。基本的に手洗い同様、一回の手技行う前に消毒する。
3.× 施灸部を「往復」ではなく片方向に拭く。なぜなら、往復で行うと感染部位を広めてしまう結果となるため。原則、清拭は①一方向性か、②遠心性渦巻き状に行う必要がある。
4.× 「次亜塩素酸ナトリウム」ではなく消毒用エタノールを用いる。
・次亜塩素酸ナトリウムとは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。