第33回(R7年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前26~30】

 

問題26 動脈血における酸素飽和度の正常値はどれか。

1.約67%
2.約77%
3.約87%
4.約97%

解答

解説

パルスオキシメーターとは?

パルスオキシメーターとは、皮膚を通して動脈血酸素飽和度と脈拍数を測定するための装置である。赤い光の出る装置で指をはさむことで測定する。検知器を指先に装着し、非侵襲的な方法で、脈拍数と経皮的動脈血の酸素飽和度 をリアルタイムでモニターするための医療機器である。

1~3.× 約67%~約87%は、動脈血酸素飽和度の正常値よりも低い値である。90%を下回る値は、低酸素血症が示唆される。

4.〇 正しい。約97%は、動脈血における酸素飽和度の正常値である。酸素飽和度とは、酸素はヘモグロビンと結合している比率のことで、正常ではヘモグロビンの約96~99%に酸素が結合している。

 

 

 

 

 

問題27 大腸について正しいのはどれか。

1.多数の細菌が常在する。
2.消化管内水分の約80%が吸収される。
3.大蠕動は1時間に数回起こる。
4.蛋白質分解酵素を分泌する。

解答

解説
1.〇 正しい。多数の細菌が常在する。大腸内には、100兆個以上とも言われる非常に多数の細菌が常在しており、「腸内細菌叢(腸内フローラ)」を形成している。これらの細菌は、食物繊維の分解、ビタミン(ビタミンK、ビタミンB群など)の合成、病原菌の定着を防ぐなどの役割を持つ。

2.× 消化管内水分の約80%が吸収されるのは、「小腸」が担う。
・大腸では、小腸で吸収されなかった残りの水分や電解質が吸収され、内容物が固形化されて糞便が形成される。したがって、大腸での水分吸収率は約10~20%程度である。

3.× 大蠕動は、「1時間」ではなく1日に数回起こる。例えば、食事後や朝起きた時などに起こる。排便時には、大蠕動が結腸から直腸へと伝播し便を肛門へと運搬する。
・消化管は摂取した食物を移送、消化するために運動を行っており、その運動には、①蠕動運動、②分節運動、③振り子運動がある。①蠕動運動(大蠕動)は、大腸内容物の推進運動を行う。②分節運動は、一定の間隔で腸管が収縮してくびれ、多数の分節に分けたようになるのが特徴で、腸内容物と消化液とを混合する。③振り子運動は、腸管がジャバラ状に伸縮する運動で食べ物を混ぜ合わせながら移動できる。

4.× 蛋白質分解酵素を分泌するのは、「胃や膵臓」である。蛋白質の分解酵素は、ペプシン、トリプシン、キモトリプシンなどが該当し、主に分泌するのは、胃や膵臓である。

 

 

 

 

 

問題28 ホメオスタシスについて正しいのはどれか。

1.1日の尿量は成人で約400mLである。
2.血液のpHは約7.4である。
3.細胞外液の浸透圧は3%食塩水に等しい。
4.細胞内液は体液の約15%を占める。

解答

解説

ホメオスタシスとは?

ホメオスタシスとは、外界がたえず変化していたとしても、体内の状態(体温・血液量・血液成分など)を一定に維持できる能力のことある。 例えば、体温が下がると鳥肌になり体温の低下を防いだり、体を震えさせて強制的に運動を起こして体温を上げるなどをさす。

1.× 1日の尿量は成人で、「約400mL」ではなく1,000~1,500mL程度である。健常者の尿は、1日に8回程度で、1,000~1,500mL程度である。尿は、生体内代謝産物を排泄するため、腎臓で血液が濾過され作られる。健康人では体重1kgあたり、1時間に約1mLの尿が排泄されるとされている。膀胱は通常100~150mLで最初の尿意(初発尿意)を感じる。成人膀胱の容量は、およそ300~500mL前後である。
・希尿とは、日中に3回以下である。尿量は関係ない。
・頻尿とは、日中に8回以上である。尿量は関係ない。
・無尿とは、100 mL/日以下である。
・乏尿とは、400 mL/日以下である。
・多尿とは、3,000 mL/日以上である。

2.〇 正しい。血液のpHは、「約7.4」である
【酸塩基平衡】
・血液(体液)のpH:7.40 ± 0.05
→pH7.30:酸性に傾いている状態
→pH7.50:アルカリ性に傾いている状態
アシドーシス(酸性):pHが低下している状態。
アルカローシス(アルカリ性):pHが上昇している状態。

3.× 細胞外液の浸透圧は、「3%」ではなく約0.9%食塩水に等しい。細胞外液(血漿や組織間液)の浸透圧は、主にナトリウムイオンやブドウ糖などの溶質によって決まっている。したがって、輸液を行う際には、細胞外液とほぼ等しい浸透圧を持つ生理食塩水や乳酸リンゲル液などが用いられる。

4.× 細胞内液は、体液の「約15%」ではなく約40%を占める。人体は体重の約60%が水分(体液)で占められており、①細胞内液(40%)に、②細胞外液(20%)として分けられる。そのうち②細胞外液の内訳としては、細胞間質(間質液):15%、血管内(血漿):5%となる。

 

 

 

 

 

問題29 インスリンについて正しいのはどれか。

1.肝臓で産生される。
2.グリコ―ゲンの分解を促進する。
3.血糖値が上昇すると分泌が抑制される。
4.細胞内へのグルコースの取り込みを促進する。

解答

解説

MEMO

膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。
②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。
③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるδ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

1.× 「肝臓」ではなく膵臓(ランゲルハンス島にあるβ細胞)で産生される。肝臓の機能として、①胆汁の生成とビリルビンの代謝、②血漿蛋白質と尿素の合成、③脂質代謝、④糖の貯蔵と放出、⑤ビタミンDの代謝、⑥ホルモンの代謝、⑦解毒・薬物の代謝である。

2.× グリコ―ゲンの分解を「促進」ではなく抑制する。インスリンは血糖値を下げる働きがあるため、グリコーゲンの分解を抑制し、むしろ合成(グリコーゲン合成)を促進する。一方、グリコーゲンの分解を促進するのは、血糖値を上昇させるホルモンであるグルカゴンなどである。

3.× 血糖値が上昇すると、分泌が「抑制」ではなく促進される。なぜなら、インスリンは血糖値を下げるホルモンであるため。体の仕組みとして、血糖値が上昇すると、それを感知した膵臓のβ細胞からインスリンの分泌が促進される。これにより、上昇した血糖値を正常範囲に戻そうとする。逆に、血糖値が低下すると、インスリンの分泌は抑制される。

4.〇 正しい。細胞内へのグルコースの取り込みを促進する。これにより、血液中のブドウ糖が減少し、血糖値が下がる。
・インスリンの働きの1つとして、筋肉細胞や脂肪細胞など、インスリン感受性を持つ細胞において、細胞膜にあるブドウ糖の輸送体を細胞膜表面に移動させることで、血液中のブドウ糖(グルコース)が細胞内へ効率よく取り込まれるのを促進する。

 

 

 

 

 

問題30 寿命が最も長い細胞はどれか。

1.神経細胞
2.赤血球
3.血小板
4.上皮細胞

解答

解説
1.〇 正しい。神経細胞は、寿命が最も長い細胞である。なぜなら、神経細胞は、一度成熟して機能的なネットワークを形成すると、原則として細胞分裂を行わないため。したがって、誕生してから死ぬまでの個体の一生を通じて機能し続けるものがほとんどである。ただし、損傷を受けると再生能力は非常に限られており、失われた神経細胞の機能は回復しにくいことが多い。

2.× 赤血球の寿命は、約120日間である。約120日間の寿命を終えると、主に脾臓や肝臓でマクロファージによって破壊される。絶えず骨髄で新しい赤血球が産生されることで数が維持されている。

3.× 血小板の寿命は、約10日間である。血小板とは、血液凝固や止血に重要な働きをする。しかし、自己修復能力がないため、循環血中を約10日間程度循環した後、脾臓などで処理される。

4.× 上皮細胞の寿命は、種類によって大きく異なり、比較的短いものから長いものまである(乳腺や前立腺の一部上皮細胞は、10年ともいわれる)。なぜなら、上皮細胞は、体の表面や臓器の内腔を覆う細胞で、存在する部位によって役割や再生能力が異なるため。
・例えば、消化管の上皮細胞は食物との接触などにより損傷を受けやすいため、数日~数週間という短い周期で活発に細胞分裂を繰り返し、入れ替わるものもある。

 

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